追跡鶴   作:EMS-10

36 / 214

※警告※
ゾンビ!ゾンビ!めっちゃゾンビ!



第16話・染めるな、危険

 

side 提督

 

 

─第603鎮守府、執務室─

 

 

「うひひひ…」

 

「…」カリカリカリ

 

「くっくっくっ…」

今日だ。

 

「…」ペラッ

 

「でゅふふふ…」

ついに、今日だ。

 

「…司令官、仕事、しましょう」

 

「はい」

おっと、いかん。嬉しさの余り変な笑いが出た。早霜に怒られちまった。

第603鎮守府に艦娘が新たに配属、更に規模を拡大すると説明してから1週間が過ぎた。説明したら大騒ぎになったが知ったこっちゃねぇ。こっちはついに癒しが手に入るんだ。

 

「天使が来てくれる」

 

「諸説ありますが、天使とは、本来死者の魂を運ぶ存在らしいですよ?つまり、司令官はその天使と呼ぶ艦娘達に…」

 

「怖い事言わないで!」

いや、でも、あいつらになら…

 

「ダメです。ダメですよ、司令官」

 

顔に出てたか。

 

「(<⚫>)(<⚫>)ニガシマセンヨ?」

 

「…ハイ」

今日も早霜さん絶好調。目がとっても怖ゲフンゲフン可愛い。

 

 

………。

 

 

「そろそろだな」

時刻は14:26。到着予定時刻は14:30。迎えは翔鶴に頼んだ。まだか?まだなのか?…来た!

 

『提督、新たに着任された方達をお連れしました』

 

「入れ」

養成所の時以来だから、約6年振りだな。元気にしてたかな。ゆっくりとドアが開き、翔鶴が入ってきた。それに続き、2人の黒髪の女性が入って来た。

 

「失礼致します!本日付で舞鶴鎮守府より第603鎮守府に配属となりました、阿賀野型軽巡洋艦三番艦、矢矧です!」

 

「同じく、初春型駆逐艦四番艦、初霜です!」

 

敬礼しながら彼女達はそう言った。…うん。元気そうな顔だ。矢矧はあの時より更に凛々しくなった。初霜は…お、青い鉢巻きしてる。服装も養成所の時と違う。第二次改装を受けた、って書類に書かれてたから違うんだろう。相変わらず可愛い。

 

「遠路遥々ようこそ。第603鎮守府の提督、渡良瀬だ。歓迎しよう、盛大にな!」

…あ、やべっ、いつもの癖で言っちゃった。この2人、オタ知識無かったんだった。特に矢矧、君は確かあまり好きじゃなかったんだよね。怒られるかもしれん。

 

「相変わらず面倒な事が嫌いそうね、提督」

 

あれぇ?矢矧さん分かるんですか?

 

「…向こうで色々あったのよ」

 

「お、おう…」

聞きたい。何があったのか、めっちゃ聞きたい。けどやめよう。話したくなさそうだし。

 

「お久しぶりです、渡良瀬提督」

 

初霜ぉ。相変わらず天使だよ君ぃ。オジサン、お小遣いあげたい。可愛い。

 

「…さて、長旅で疲れているかもしれないが、もう少しだけ付き合ってくれ。翔鶴、彼女達の部屋に案内して荷物を置いたら、ここを案内してやってくれ。終わったら自由にしてくれて構わない」

部屋なら余ってる。まだまだ余っている。足りなくなったら家具職人妖精さん達に頼めばいい。彼ら…彼女ら?は増改築したくたウズウズしているらしいから、近いうちに頼むかもしれん。

 

「分かりました」

 

「君達も、終わったら自由にしてくれ」

 

「「了解」」

 

おぉう、見事な敬礼。向こうで厳しくされたからかな?無駄が無い。決してウチの娘達に無駄がある、ってわけじゃない。うまく言葉にできないが…うん。無駄が無い。語彙力が来い。

 

 

───────

 

数時間後。

 

 

「書類多過ぎだろ」

2人増えただけでこの量。俺の処理速度が遅いだけなんだろうけど。これの倍以上を毎日処理してる小嶋提督凄い。…ん?ノック?

 

「誰だ?」

 

『矢矧です。提督にお話があって参りました』

 

矢矧か。なんだろう?とりあえず入室させるか。

 

「入れ」

 

『失礼します』

 

矢矧が入室してきた。ドアを閉め、俺に真っ直ぐ向かって来た。そして、書類をチラッと見て…

 

「…はぁ。相変わらず書類捌きが遅いわね」

 

開口一番、叱られた。

 

「あなた、養成所でもそうだったじゃない。あれから何年経つと思っているの?だらしないわよ?」

 

おぉん。相変わらず辛口ィ。早霜もポカーンとしてるよ。

 

「…あー、話があったんじゃないの?」

話題を逸らしてみる。

 

「建前よ。あなたの様子を見に来たんだけど…変わってないわね」

 

「そう簡単に変わるかよ」

 

「書類くらい早く捌ける様になりなさい」

 

正論です。

 

「まったく。手伝うわ」

 

「えっ、でも…」

 

「いいから!」

 

そう言うと書類の山から半分持っていった。

 

「椅子は?」

 

「な、無い」

執務室には執務机の椅子と秘書艦用の椅子しか無い。あとは小さなソファーと机位だ。

 

「そう。それじゃ、ここ、借りるわね」

 

そう言ってソファーに座り書類を捌き始めた。あんな無理な姿勢で…すまん。…胸デカイな…何見てんだよ。俺には瑞鶴(瑞稀)がいるだろ!俺は自分の頭を殴った。

 

「…何やってるのよ」

 

「喝を入れた」

ジト目で見られちった。気を付けよう

 

「あなたも男なのね」クスッ

 

…バレてる?

 

「女は視線に敏感なのよ?」

 

バレテーラ。

 

「まぁ、悪い気はしないわ。女って意識してもらえるから」

 

あら、優しい。矢矧は厳しいが、優しい所もある。というか、あの厳しさは優しさでもあるから、とっても優しくていい娘なんだ。養成所の連中はそれが分からなくて鬱陶しいと感じていた様だが。

 

「ほら、ボーッとしてないで、終わらせましょ?」

 

「お、おう」

それから俺達は書類を捌いた。終始早霜が気圧されてたのか目を見開いていたのが印象的だったと言っておこう。

 

 

………。

 

 

「あいつら…」

書類を全て終わらせた後、彼女達の歓迎会を開いた。足柄や瑞鶴、涼月が料理を頑張ってくれたんだが、瑞鶴と涼月が台所で戦争を起こしかけたのは勘弁して欲しかった。

 

『涼月が、提督に、美味しい料理を食べさせます!』

『それは私の役目よ!』

 

…仲良くしてくれよ。

んで、歓迎会が始まったのは良かったが、足柄と由良がどこからか酒を持ち込み、飲み始めやがった。それはいい。いいが、

 

「瑞稀と静流に飲ませるなよ…」

酒に弱い2人に飲ませた事により、食堂はカオスに包まれた。

 

『わらしの旦那さまはぁ〜、準なんらからぁ〜!』

『みずきぃ〜、おねえちゃんを置いて行かないでぇ〜!私のお嫁さんになってぇ〜!』

 

うん、旦那になってやる。だがもう少しだけ待ってくれ。貯金がアレなんだよ。辛うじて諭吉さん3桁の人数を所持しているけど、まだまだ足りない。あいつと…その…家族を…子どもを養うのには、足りない。翔鶴、落ち着け。自分が何言ってるのか分かってんのか?

 

「マジでオタやめようかな」

そうすりゃ貯金を増やせる。でも、気分転換する方法が無くなるのは…新しい趣味を作るか?

 

「…ん?」

お手洗いに向かっていたんだが、声が聞こえた。今ここの艦娘達は皆、食堂に居る。なのに、食堂から離れたここから声が聞こえるとは。

 

(侵入者?)

一瞬だけそう考えたが、それは無い。何故なら鎮守府の中と外には武装した妖精さん達が巡回してくれているからだ。

 

妖精さん(警備型)

E:ヴォ○ペ・スコーピオ

E:強化型グレネードランチャー

E:LM-ジ○オス

E:AC-マ○チウェイ

 

この装備をした妖精さん達(警備型)が居るから、何かあればすぐにドンパチ始まる。主武装(3点バースト式アサルトライフル)は目押し完璧でヴォ○ペ-FAM-スコーピオ状態。更にクイッ○ステップしようが確実に頭部をぶち抜ける神エイム。おまけに全員身体に広範囲索敵レーダー(センサー音無し)付けているから索敵は完璧。それなのに静か。有り得ない。例え伝説の蛇でも見つけられる厳重警備なんだぞ。

 

(なら、艦娘の誰かが居る、って事か)

それ以外考えられない。来客なら、妖精さん達から俺に連絡が来る。

恐る恐る声のする方へ行くと…

 

「提督は、いいですよ♪」

 

「す、涼月さん…」

 

初霜に壁ドンしている涼月が居た。

 

(何やってんの涼月!)

声に出しそうになったが、堪えた。一体、何を話しているんだ?

 

 

side 提督 out

 

───────

────

 

side 初霜

 

 

渡良瀬提督と、ここに所属する艦娘の皆さんに歓迎会を開いて頂き、少し時間が過ぎた時の事でした。

飲み物を飲みすぎてしまったせいか、言葉に出すのがアレですが、催してしまいました。こっそりこの場を後にして向かいましょう。そうだ、私が居なくなって不要な心配をかけてはいけませんね。誰かに行先を伝えましょう。…あ、涼月さんが居ました。彼女に声をかけましょう。

………。

…さて、食堂に戻りましょう。廊下は節電の為、消灯されていて月明かりしか無いから、少し不気味ですね。そう思った時でした。

 

「初霜さん」

 

「ひっ!」

背後から声をかけられました。誰!慌てて振り返ると、そこには涼月さんが居ました。びっくりしました。

 

「あ、涼月さん」

 

「驚かせてすみません」

 

「いえ、こちらこそ…」

良かった、侵入者でなくて。それより、涼月さんは何故ここに?そう思った直後でした。

 

「…初霜さん」

 

「な、なんでしょう?」

涼月さんが私に歩み寄ってきました。な、何を…?

 

「初霜さん、提督の事、どうお思いですか?」

 

提督のこと?疑問に思う私をよそに、涼月さんは提督の事について語り始めました。

私はただ、黙ってそれを聞きました。だって、

 

(涼月さんの目、怖いです…)

 

「(<⚫>)(<⚫>)」

 

暗闇で、瞳孔を大きく開き、私に迫る。どこのホラー映画ですか!というか涼月さん、落ち着いてください!怖いです!こんな人ではないのに!

 

「…初霜さん」

 

「は、はい」

養成所の時の涼月さんに戻って…。

 

「提督は、いいですよ♪」

 

「す、涼月さん…」

何を言っているの?提督はいい?当たり前じゃないですか。駆逐艦だからと馬鹿にしない。私の考えを尊重してくれる。とてもいい人です。

 

「提督の匂いはいい物ですよ♪」

 

「…はい?」

コノヒトハ、ナニヲイッテイルンデスカ?

 

「初霜さんも、嗅いでみませんか?」

 

そう言ってポケットから取り出したのは…

 

「し、下着!?」

男性物の下着でした。…ああ、分かりました。アレですね、養成所の教官、長門さんや、向こう(舞鶴鎮守府)の大井さんの様な、欲望に忠実になって暴走して(ヘンタイ淑女になって)いるんですね?…頭が痛くなってきました。渡良瀬提督…苦労なされているのですね。なら、私が提督をお守りしなくては!そう思った直後でした。

 

「初霜逃げてー!超逃げてー!」

 

提督の声が聞こえました。

 

 

side 初霜 out

 

───────

────

 

 

side 提督

 

「初霜逃げてー!超逃げてー!」

思わず声に出しちゃったよ。だって、涼月が俺のパンツを初霜の顔に押し付けようとしていたんだもん。どうして俺のパンツを持っているか。疑問に思ったが気にしない事にした。

 

「てい…とく?」

 

おぉん、ゾンビがこっち向いた。うん、いつものゾンビだね。お目目が凄い事になってる。

 

「(<⚫>)(<⚫>)」

 

「はつしもぉ!」

 

「っ、はい!」

 

俺の切実な声に反応し、その場から逃げ出してくれた。

 

「こっちだ!」

 

「了解です!」

 

一先ず、外へ逃げるか。

 

「提督♪」

 

「ぎゃああああああ!!」

早い!このゾンビ早いよ!いや、プラーガか。

 

「うぅ、どうしてこんな事に…」

 

うん。俺もそう思うよ初霜。どうしてこうなった。

 

「はつしもふもふぅ!何とかしてくれェ!」

 

「えぇっ!?わ、分かりました!」

 

そう言うと、何処からかビー○マグナムを取り出した…って、おォイ!?

「どっから取り出した!あと、それ何!?」

 

「艤装格納の要領で、格納領域から取り出しました!あと、これは夕張さんから頂いた猛獣用麻酔ビー○マグナムです!」

 

うん、ツッコミどころ満載だけど、突っ込まんぞ。というか猛獣用麻酔なんて、何に対して使うんだよ!ここ日本だぞ?猛獣なんて出ないぞ!猛獣みたいなゾンビは居るけど。目の前に。

 

「提督♪」

 

うわぁ、来るな、来るな〜!

 

「初霜ォ!撃てェ!」

 

「うぅ…涼月さん、どうして…」

 

ああ、養成所で一緒に過ごして仲良かったもんね、君達。そら撃つのに抵抗があるか。

 

「早く撃つんだ!」

でもごめんね?撃ってください。ゾンビに喰われたくないんで。

 

「提督、涼月さんが元に戻る可能性って、無いのでしょうか?」

 

「無い!」

即答。ゾンビになった奴は、人間に戻れないんだ。分かってくれ。

 

「私は…元に戻る可能性を信じたいです!」

 

「迷うな、撃て!可能性に殺されるぞ!」

主に、俺が。

 

「うぅ…」

 

あー、ダメみたい。仕方ねぇ。

 

「貸せっ!」

 

「あっ!」

 

初霜からビー○マグナムを奪い取る。あ、結構重い。というか、撃ったら関節痛めそうだな。デ○タプラスみたいに。でも、撃つ!

 

パシューン

 

音しょっっぼ!!炭酸飲料の蓋開けた時の音より小さいよ、これ。反動も殆ど無いし。

銃口から細長い光が飛び出し、涼月の胸に直撃した。

 

「あぁん♪」

 

色っぽい声出すな。あ、倒れた。

 

「…あ"ー、怖かった」

 

「提督ぅ…」

 

「おー、よしよし」

よほど怖かったのか、俺の胸に飛び込んできた。凄い震えてる。さて、この後処理どうすっかな。皆に知らせようか?いや、歓迎会やってるんだ。水を差すのはやめよう。

 

「とりあえず、食堂に戻るか」

 

「えっ、でも、涼月さんは…」

 

「ほっとけ」

コイツの耐久力なら、すぐに立ち上がる…あれ、居ない?

 

「あれ、涼月さんが…?」

 

ゾンビが倒れた所を見るも、そのゾンビが居ない。初霜もその事に気付き、震え出した。や、やめてよね、こういうの。ギャグ小説なんだから、ホラー要素なんて要らないよ?とにかく、ここを離れよう。初霜と2人で食堂に向かおうと振り向くと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(<⚫>)(<⚫>)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「」

「」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

─提督私室─

 

 

翌朝。

 

 

「………」

 

『提督、早く仕事しましょう?』

 

無理。

あの後、俺と初霜の絶叫を聞きつけた妖精さん達(警備型)が駆けつけて助けてくれた。完璧な目押しで蜂の巣(ゴム弾)にしてくれた。しかし、奴はゾンビ。何度も立ち上がり、俺に向かってきた。最終的にはベロベロに酔った由良がテキーラストライク(テキーラの空き瓶を頭に叩き付ける)かまして黙らせてくれた。ウチの鎮守府、バイオレンスな娘多くね?俺のせいか?

んで、精神的ショックを受けた俺は部屋に篭もり、ボ○ブレしてた。早く正式稼働しないかな。いつまで経っても執務室に来ない俺に痺れを切らした矢矧がやって来て、今に至る。

初霜?虚ろな目で秋雲とバ○オ3やってるらしい。秋雲からL○NE来た。無言でショットガン使ってゾンビ倒しまくってて秋雲がドン引きしてたそうだ。

 

『あーもう!しっかりしなさい!私が護ってあげるから!』

 

嬉しい事言ってくれる。なら、頑張ろうかな。丁度試合も終わったし。

 

「相変わらずア○○様強いな」

あの人は俺の憧れだ。さて、仕事しますか。

 

 

─執務室─

 

「ふぃ〜、働きたくねぇ」

 

「ダメよ」

 

分かってるよ。さて、仕事…ん?封筒があるな。

 

「あぁ、それ?今朝、大本営から届いたわ」

 

「そうなんだ」

封筒を開け、書類を取り出し手にしていると、矢矧が俺の疑問に答えてくれた。どれどれ…

 

「………」

 

「だ、大丈夫?」

 

ダメです。

 

「顔色が一瞬で真っ白になったわよ?それに、凄い汗よ?」

 

そらそうなるよ。だって…

 

【○月△日を以て、佐世保鎮守府より第603鎮守府に、金剛型戦艦三番艦榛名及び、扶桑型戦艦二番艦山城を異動させる】

 

地獄を告げる書類が俺の手にあるのだから。

 

「…お願いだ、矢矧。俺を、護ってくれ」

 

「ど、どうしたの!?」

 

余程酷い顔で必死に言ったからか、心配された。無言で矢矧に書類を見せた。…あれ、顔が真っ白になった。震え出して顔中に汗が…矢矧?矢矧さん?

 

「…ごめんなさい、提督。私には無理」

 

待って!君、俺の部屋の前で護ってあげる!って言ってくれたじゃん!嘘なの!?

 

「あの2人は無理よ!特に山城さん!!」

 

「そう言わずにさぁ、助けてよ、やはぎん!!」

 

「やはぎん言うな!だー!腰にしがみつくな〜!」

 

初霜と矢矧が着任したから忘れてたが、あの2人もここに着任するんだった。浮かれてて忘れてた。

 

「や〜は〜ぎぃ〜!!」

 

「落ち着きなさい!離して!私だって死にたくないのよ!」

 

「提督さん、騒がしいけど何かあっ…た…」

 

「…あ」

騒ぎを聞き付け、瑞鶴がやって来た。

俺、矢矧の腰にしがみつく。

矢矧、半泣き。

ここから導き出される答えは1つ。

 

「…1つ、私は貴方に対して数々の暴言を吐いた」

 

そう、

 

「…2つ、私は貴方の信用を何度も裏切った」

 

彼女の十八番をぶちかまされる。

 

「…3つ、貴方のボクサーパンツを盗み、穿いて何度も出撃した」

 

何それ、初耳。もしかして、今も穿いてる?

 

「穿いてるわ」

 

何それ、興奮する。あ、俺の首に左手を巻き付けてきた。

 

「私は自分の罪を数えた」

 

顔近い。キスしたいな。

 

「さぁ、貴方の罪を数えなさい」

 

「瑞鶴に興奮して何度も押し倒したいと思った」

正直に罪を答えた。

 

「押し倒してくれてもいいのに」

 

「甲斐性無しだから、お金もっと貯めてからだ」

 

「楽しみに待ってるわ」

満々の笑みだ。可愛い。

 

「でも、ギルティ」

 

知ってる。

 

「だらっしゃああああああいっ!!!」

 

直後、俺の頭は執務室の床に叩き付けられた。

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

side 涼月

 

失敗してしまった。

初霜さんなら、こちら側に付いてくれると思ったのに。

 

「彼を壊す手駒を増やせると思ったのですが…」

…まぁ、いいでしょう。時間ならある。

 

(…本当に、いいのでしょうか?)

壊れてしまったら、頭を撫でてもらえなくなる。

優しい声で話しかけてもらえなくなる。

彼に構ってもらえないから、わざとあんな事(ゾンビ)をしていますが。それにしても、

 

「提督の怯えた顔、可愛かったです♪」

もっと見たいな…

でも、壊したい…

どうしましょう…

 

 

side 涼月 out

 

 

───────

────

 

 

Another side

 

 

「…」

彼が食堂から離れたから妖精さんに確認させたけど、まさかあんな事になるなんて。

 

「…もっと、耐性付けようかしら?」

アルコールに弱い身体のせいで、彼の所に行けなかった。幸い、初霜さんのお陰で事なきを得たけど。

 

「あの娘は大丈夫そうね」

でも、涼月さんの例がある。警戒しておきましょう。

 

「…あら?」

彼が書類を見たと思ったら、顔色を悪くした。そして矢矧さんにしがみついた。

 

「…いいなぁ」

私にも、そうして欲しいなぁ。でも、我慢。まだまだ、その時ではない。

 

「…アハッ♪」

明後日だ。明後日、彼と出掛けられる。その時に。

 

オンナ()魅力(カラダ)を、たっぷりと教えてあげなきゃ♪」

そして、意識させる。ふふっ。楽しみ♪

 

 

 

Another side out

 

───────

────





次回予告


提督、翔鶴さんとお出かけするんだ。いいな…。僕?うん、また、出かけたいな。…ホント?約束だよ?また、牛丼食べたいな。…え、それ以外の食べ物でもいい?牛丼は素晴らしい食べ物なんだよ?効率よくタンパク質を摂取できる。安い早い美味いの三拍子揃ってる。それに…あ、待って、まだ僕の話は終わってないよ!


第17話・妖艶な姉鶴


「私で少し、お勉強してみない?」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。