追跡鶴   作:EMS-10

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第20話・お前は俺のお袋かよ!?

 

 

side 提督

 

─提督私室─

 

 

「『先っちょ、先っちょだけだから!』」

 

「全く信用できん言葉だ!」

俺の貞操をかけた攻防が開始されて数分経過。何とか抑えられているが、このままだと瑞稀達に食われる!いや、俺の理性が耐え切れず食うのが先かもしれん。必死に腕を掴んで抵抗しているが、艦娘のパワーで徐々に押し負け始めている。

 

「『近藤さん使うからぁ!大丈夫だよぉ!』」

 

「針、で、穴とか、開けて、ないよなぁ!?」

…なんで目を逸らすの?ねぇ、ねぇ!?

 

「『味見!味見程度でいいからァ!』」

 

「味見と言って、ガッツリ食う気だろ!?」

 

「『そうよ!…あっ』」

 

「いやあああああ!犯されるううううう!!」

あれ、普通逆じゃね?何で男の俺がこんな事言ってるの?

 

「『ああもう、うっさい!キ○タマ付いてるの?』」

 

「女の子がキ○タマとか言っちゃダメでしょ!?」

静流といい、瑞稀といい、どうしてそういった事をサラッと言えるの?

必死の抵抗虚しく、布団に押し倒されてしまった。そのまま瑞稀達は俺のズボンのベルトを外し、脱がした。下はボクサーパンツと靴下状態。靴下脱がされ、パンツに手をかけられた。これまでか。そう思った時だった。

 

「準!!」

 

静流が部屋のドアを蹴破ってログイン。あ、ピンク…

 

「今、助け…る…わ…」

 

俺達を見て硬直。

状況を整理しよう。

俺、ズボンを脱がされ布団の上に横になっている。

瑞稀達、俺を押し倒し馬乗りになって、俺の上着を脱がそうとしている。

この状況を見て、普通なら何を考える?俺なら、これから男女がお楽しみタイムに突入しようとしているんだな、と思う。

 

「…」

 

静流さん、違うんです。ボク、被害者なの。あの、何で無言で歩み寄ってくるの?

 

「し、静流姉…」

 

突然静流がやって来て、驚いたからか、瑞稀は元に戻っている。ついでに俺から離れてくれた。

 

「…」

 

あのぉ、静流さん?俺の頭の上で片足持ち上げて、何を?パンツ見えてるよ?興奮しちゃうよ?まさかとは思うけど、その足、振り下ろしたりなんて、しないよね?俺、女の子に踏まれて喜ぶ趣味なんて無いよ?

 

「うるあああああああっ!!」

 

「ぬおおおおおおおおっ!!」

気合いの入った声と共に勢い良く振り下ろした!一切加減無く足を振り下ろしてきやがったよ、この娘!

 

 

ズドンッ

 

 

音!音ヤバイよ!畳が凹んでるよ!咄嗟に避けたけど、踏まれてたらスイカ割りされたスイカみたいな事になってたよ!何?ストンプで俺の頭を割りに来たの!?

 

「チッ…外したか」

 

口調!いつものお淑やかな口調が崩れてるよ!

 

「心配して来てみれば…うらやまけしからんっ!」

 

「やめろおぉぉおおおおお!!!」

ストンプやめてぇ!パンツ見えてる!興奮しちゃう!あと今、なんて言った?避けるのに必死で聞こえなかった。

 

「避けないで!」

 

「死んじゃうから無理!」

 

「なら、これで!」

 

そう言って取り出したのは、昼間食堂で見たゴツいスタンガン…待て!それ、明らかヤヴァイ奴です!めっさバチバチ言ってる!音!音で分かる!本能的に分かる、殺す為の物だって!

 

「小嶋提督の所から送られてきた設計図を元に、妖精さん達に作って頂いた、ス○ナーKです!」

 

「棄てなさい!」

それ、対ブ○ストランナー用の兵器!俺、人間!死んじゃうよ!ニ○ード争奪戦争でもする気か、小嶋提督とウチの妖精さん達は!ダメだよ!この小説は原作:艦○これくしょんなんだから!ボー○ーブレイクじゃないよ!?

 

「フルチャージすれば、確実に当てられる…」

 

「やめて!マジで洒落にならない!やめてええええええ!!!」

 

 

…………。

 

 

「ごめんなさい」

 

「いや、気にするな」

パンツ見れたしゲフンゲフン。

数十分後。必死に説明したら、静流は大人しくなってくれた。スタンガンは瑞稀が空手チョップで破壊してくれました。艦娘のパワーってすげぇ(小並感)。

静流曰く、彩雲妖精が1人居ない事に気付き、視界を共有して捜した所、俺の部屋に居たらしく、瑞稀が深海棲艦の様な姿になったのを見て駆け付けてくれたそうだ。

 

「…つまり、深海棲艦ではないのね?」

 

「そうだ」

静流が落ち着いた後、瑞稀と2人で説明し、納得してくれた。

 

「色々言いたい事や聞きたい事があるけど、いい時間だから、また今度にするわ」

 

「ありがとう。それにしても、よく信じてくれたな」

 

「貴方が言うから、信じているのよ?」

 

「静流…」

途方も無い話なのに、そこまで信用してもらえるなんて、少し。いや、かなり嬉しい。この信用を裏切らないよう、気を付けよう。

 

「それじゃあ瑞稀、部屋に戻りましょう?」

 

「えっ、あー…うん、分かった」

 

物凄く残念そうに俺をチラッと見ながら瑞稀が言う。そんな悲しそうな顔すんなよ。

 

「女の性欲って、1度スイッチが入ると中々止まらないんだよ?」

 

「いきなり何を言い出すんだ」

そうなの?知らなかった。

 

「だから、夜道には気を付けてね」

 

「殺されるのかよ」

 

「背後から忍び寄ってズッコンバッコン…」

 

「お黙り!」

だから女の子がそんな事言っちゃいけません!慎み持ちなさい!静流を見習え。

 

「あらあら、大変ね?準、ゴムを常備しておきなさい?」

 

静流ゥ!信じてたのに!お前までそんな事言うのかよ!?女性って皆こうなの?ウチだけだよね?ねっ?由良の口癖移っちまった。

 

「あーもう!ゲームでもして忘れてやる!」

 

静流の蹴りで壊れたドアを退かして、瑞稀は部屋を後にした。

 

「…ドア、壊してごめんなさい」

 

「いや、大丈夫だ」

 

「本当?」

 

「本当だ」

そこまで寒くないから、問題なく寝れるだろう。明日、妖精さん達に頼んで直してもらうか。

 

「涼月さん達が侵入して来そうね」

 

「あっ」

そうだった。アイツら、絶対侵入して来る。仕方ない、仮眠室で寝るか。

 

「…残念だったわね」

 

「何が?」

そういや、風呂まだだったんだ。着替えとタオルを用意しようと思っていたら、静流がそう言った。

 

「私のせいで、お楽しみ出来なくて」

 

「んぐっ!?」

唾液が変な所に入っちまった。何言い出すの!?

 

「私でよければ、相手になるわ?」

 

「ぁ…ぅ…」

おいおいおい、しなだれかかるな。柔らかい物押し付けるな。ただでさえムラムラしててヤバいんだから。そんな流し目で妖艶に笑うな。2つの形のいい山が物凄く主張していらっしゃる…

 

「…はい、不合格。しっかりしなさい?」

 

「ぉ…あ…?」

不合格?

 

「そんなんじゃ、安心して瑞稀を任せられないわ?」

 

そういう事か。気を付けよう。

 

「それじゃ、おやすみなさい」

 

「お、おやすみ…」

今の俺、阿呆みたいな顔しているんだろうな。いくらムラムラしているからって、一瞬だけ静流の言葉に魅力を感じてしまった。

 

「…大馬鹿野郎」

頭を殴る。本当に、何やってるんだよ。

 

「風呂、入るか」

水でも被って頭を切り替えよう。着替えを持って…あれ、パンツが無いぞ?

 

「こちらです」

 

「おう、ありが…」

 

「うふっ♪」

 

いつの間にか、涼月が居た。俺のボクサーパンツを持っている。

 

「ふんっ!」

 

「あぁん♪」

 

ラリアットをかます。全く、油断も隙も無い。

 

「さっさと風呂入ろう」

じゃないと、いつ襲われるか分からん。

 

「お供します♪」

 

「どぅらァ!!」

 

「あふんっ♪」

 

ラリアット、テイク2。復活早!怖いよ!

 

「お背中、お流ししますね♪」

 

「そぉい!」

 

「ぶべっ♪」

 

ねぇ、何で嬉しそうな顔してんの?何でラリアット喰らって喜んでんの?何で?

それから、風呂場に行こうとしたがゾンビに付き纏われて入るのに時間がかかってしまった。最終的には由良が止めてくれたから、食われる事は無かったと言っておく。

 

「は、はるなは…だいじょうぶじゃ…ないです…」

 

余談だが、榛名は外で一夜を明かした。艦娘の力を使ったからか、風邪はひかなかったそうだ。

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

side 翔鶴

 

「そろそろゲームをやめなさい?」

 

「はーい…」

 

スマホを弄る瑞稀に注意する。

 

「あと1分だけ待って?」

 

「分かったわ」

入浴し、パジャマに着替え部屋に戻ると、先に入浴を済ませた瑞稀がゲームをしていた。最近、よくスマホのゲームをしているけど、どんなゲームをしているのかしら?気になったからスマホを覗いた。

 

「あずーる…れーん?」

女の子が戦うゲームみたい。

 

「…よし、委託完了」

 

そう言うとスマホのスイッチを押して電源を切った。

 

「部屋の電気、切るわ」

 

「うん、おやすみ」

 

「おやすみなさい」

部屋が暗闇に包まれる。瑞稀はあっという間に寝息を立てて眠ってしまった。

…彼の前では、ああ言ったが、本音は違う。少しだけ、瑞稀を不気味に思った。

 

(隠し事、されちゃった…)

彼に説明してもらうまで、知らなかった。私、信用されていないのかしら?それに、瑞稀と致そうとしてると勘違いして、思わず頭を踏み潰そうとしてしまった。余裕が無いと激情的になるの、やめないと。

 

(もっと、彼の心を私に向けなくちゃ…)

そうしなければ、手に入れる事など出来ない。道程は、まだまだ遠い。

 

(…必ず、必ず手にしてみせる)

部屋を出る前、彼に胸を当てて少しからかった。

 

(ふふっ♪)

ガッツリ、私の胸を見てくれた。触ってくれても良かったのよ?

 

(絶対、逃がさないから…)

早く、彼と結ばれたいなぁ。

 

 

 

side 翔鶴 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

─執務室─

 

翌朝。

 

 

「……」

性欲を持て余す。

 

「ゲンドウポーズ取ってないで、仕事しなさい」

 

おっと、矢矧に怒られちった。仕方ない、やるか。

 

「えっと、これは…」

時雨の第二次改装案か。確か、対空性能が大幅に向上するんだったな。本当はもっと早く改装してやりたかったが、時雨という艤装の第二次改装は、他よりも複雑な機構になるから、部品が中々入手しづらい。

そういった重要な部品は、横須賀等の規模が大きな鎮守府に優先的に送られるから、ここには中々来ない。数え切れない程大本営に申請し、ようやく手にする事が出来た。きっと、小嶋提督が手を回してくれたんだろう。今度、高いお菓子もってお礼言いに行こう。

 

「あー…これは…」

 

「これはこう書くのよ」

 

書類に手こずっていると、矢矧が助け舟を出してくれた。

 

「あんまり、改二用の書類を書いた事がないのね?」

 

「ああ。自慢じゃないが、これで2度目だ」

1度目は摩耶。そして、今回の時雨で2度目。瑞鶴の時は小嶋提督が書いてくれた。本当にありがとうございました。

 

「これから増えるかもしれないから、しっかり覚えなさい?」

 

「はいよ」

書き方、コピーして見本にしたい。けど、機密情報の1つだから、そんな事出来ない。頭の中に入れておく必要がある。

 

「だらしない返事をしないの。しっかりしなさい」

 

「はーい」

いけね、また気の抜けた返事しちゃった。

 

「言ってるそばから…そんなんじゃダメよ」

 

案の定、怒られた。

 

「全く。昔からあなたは…」

 

腰に手を当てて説教し始めた。こうして見ると、年下とは思えない。お姉さん…いや、これは…

 

「ありゃ、ママだね。矢矧ママだ」

 

そうそう、ママだ…

 

「秋雲、いつから居た?」

ノックの音聞こえなかったぞ?それに、耳元で囁くな。榛名かと思って鳥肌立ったぞ。

 

「いやあ、それがさ、廊下歩いてたら床が急に開いて落ちちゃって。せっかくだから探索してたら、提督の声が聞こえてきたの。んで、声の方に向かって歩いてたら梯子があったから登ったら、仮眠室に繋がってて、ドア開けて出てきた所」

 

「…一応聞いておくが、お前が作ったんじゃないよな?」

ツッコミどころしか無いが、突っ込まんぞ。

 

「誓って、私じゃないよ?」

 

「じゃあ、誰が…」

 

「榛名が作りました!」

 

「由良ァ!執務室に来てくれ!今すぐ来てくれ!提督ピンチ!超ピンチだから!マッハで来てくださいおねがいします!なんでもしまかぜ!」

放送で由良に救援要請。殲滅対象はサキュバス(榛名)

 

「戦争ですか!?」

 

「サキュバス狩りだ」

飛行甲板に瑞雲セット済の状態で入室してきた。早いな。呼び出して10秒も経ってないよ?

 

「ひぃ!?」

 

「っ!?」

 

あーあ、イイ笑顔浮かべてるから、榛名が悲鳴あげちゃった。矢矧はビビって声も出さずに硬直してる。

 

「由良劇場の開幕?」

 

「だな」

秋雲は見慣れているから、怖がっていない。由良、派手にやっちゃってくれて構わない。ただし、表でな。

 

 

………。

 

 

「あの由良って人、いつもあんななの?」

 

「普段はとてもお淑やかな、いい娘だ」

引き攣った笑みを浮かべながら、矢矧が聞いてきた。そうそう、榛名が妖精さん達を脅して作らせた通路は、妖精さん達に頼んで塞いでもらっている。余計な仕事させちゃってゴメンね。今度、お菓子差し入れしますから許して。

 

「そうは見えなかったけど…」

 

「見かけだけで判断するな」

確かに怖い。怖いが、決して悪い娘じゃない。むしろ、いい娘だ。外見だけで判断するなよ?

 

「分かったわ。変な事言って、ごめんなさい」

 

「俺に謝るな。由良に謝れ」

 

「そうするわ」

 

自分の非を認め、素直にそう言う。

 

「さて、次の書類は…」

サキュバスの乱入で仕事が中断された。今頃、演習場で瑞雲祭が開催されているだろう。

 

「さっさと終わらせましょう?」

 

「ああ」

矢矧はテキパキと書類を捌き、終わった物を1箇所に纏める。思わず見ていると、視線に気付いた矢矧に睨まれてしまった。

 

「こら、ボーッとしない」

 

こうして叱られると、なんか…

 

「ママだな」

 

「は、はぁ!?」

 

あかん、思わず口に出してしまった。怒られる!

 

「マ、ママって、私、そんな歳じゃないわよ!」

 

「す、すまん」

顔を真っ赤にして怒る。うん、仰る通り。君、俺より年下だもんね。でもね、叱る時は叱り、褒める時は褒める。そんな姿や言動がママっぽいと思います。

 

「…ママ、か」

俺が物心着く前から、親は居なかった。正確には両親が居なかった、だ。俺は、父方の祖父に育てられた。俺の両親って、どんな人だったのだろう。何度か爺ちゃんに聞いてみたが、はぐらかされてばかり。今度帰省したら、聞いてやる。絶対聞き出してやる。

 

「もう、からかわないでよ」

 

「…すまん」

 

「…どうしたの?悲しそうな顔してるわ」

 

どうやら顔に出ていた様だ。

 

「いや、その、ママって言葉を聞いて、俺の両親ってどんな人なんだろう、って気になって…」

 

「…」

 

あちゃー、気まずそうな顔してる。そういや、養成所で俺は両親が居ない事知ってたな、コイツ。俺が話したんだった。

 

「…寂しい?」

 

「分からん」

幼い頃は寂しかったが、今はどうなんだろう。

 

「少なくとも、今は寂しいとは思わない」

だって。

 

「なんで?」

 

「お前らが居るからな」

こんな俺について来てくれる。支えてくれる。信用してくれる。色々苦労するけど、楽しいし、嬉しい。そんな気持ちになれるから、寂しさをあまり感じなくなった。

 

「〜ッ!」

 

…あれ、何で顔赤くしてるの?

 

「…この、タラシ」

 

「タラシ?俺が?」

冗談言うなよ。俺はタラシじゃないぞ?

 

「と、とにかく、仕事するわよ!まだまだ、書類はあるんだから!」

 

「お、おう」

顔赤くして俯いたと思ったら、いつもの矢矧に戻った。

 

「気の抜けた返事はしないって、何度言えば分かるの!」

 

「は、はい!」

 

「ほら、気が抜けてる!」

 

「はいっ!」

厳しい。やっぱり。

 

「ママだな」

 

「ッッッ!!!だから、私は、ママじゃない!」

 

「お、落ち着け」

 

「誰のせいだと思っているのよ!この、タラシ!」

 

「だから、タラシじゃねぇよ!」

それから、暫く言い合いながら書類を捌いた。

なんだかんだ言っても、助けてくれる。有難い。いつまでも甘えるわけにはいかないな。これからもっと艦娘が増える。しっかりしないと。

 

 

side 提督 out

 

───────

────

 

 

Another side

 

「…」

まただ。また、つまらない話を聞かされる。もう、うんざり。イライラする。

 

「白露型駆逐艦四番艦、夕立」

 

「…」

 

「おい、聞いているのか!?」

 

「…なに?」

うるさいな。聞こえているから大声出さないで。眼球ごと眼鏡叩き割るよ?

 

「貴様の態度が一向に改善されん。もうウンザリだ。俺の命令に従わない奴は不要だ!」

 

「へぇ、そう」

解体するの?なら、容赦なく暴れるよ?

 

「よって、貴様を別の鎮守府に異動させる!」

 

「…はぁ?」

異動?なんでそんな面倒な事をしなくちゃならないの?まぁ、渡良瀬さんの所になら喜んで行くけど。

 

「聞こえなかったのか?異動させる、と言ったんだ!」

 

聞こえてるよ。だから、さっさと用件を言って。

 

「本当は貴様程の戦力を手放したくは無いが、命令に従わないなら、要らん。幸い、貴様の代わりに使えそうな奴を見つけられたから、貴様が抜けても問題ない」

 

御託はいいから、さっさと言え。

 

「夕立、貴様は2日後に、第603鎮守府へ異動してもらう」

 

…第603鎮守府?確か、そこって!

 

「あんな辺鄙な所に飛ばされるなんて、残念だったな」

 

渡良瀬さんとお姉ちゃんが居る所だ!

 

「着任から6年近く経つが、未だ少佐のクズが提督をしている所だ。貴様にはお似合いだ」

 

…今、なんて言った?クズ?

 

「がっ!?」

 

気が付けば、眼鏡の首を片手で締め上げていた。

 

「もう一度、言ってみるっぽい」

あの人を侮辱した。あんなに素晴らしい人をクズ?階級なんて関係ない。お前は何も知らない。

 

「ダメですよ」

 

「ッ!ガッ!?」

殺気を感じ、咄嗟に身を引いたけど、お腹に強烈な衝撃が走り、その場に蹲る。な、何?

 

「提督に手を出すなんて、ダメですよ、夕立さん」

 

…ちっ、赤城さんか。気配を消して執務室に居たみたい。普段なら察知出来たけど、ここに来る前からイライラして我を忘れてたから、気配を察知出来なかった。咄嗟に身を引いていなかったら、風穴が空いていたかもしれない。

 

「あ、赤城…もう少し早く助けろ!」

 

「申し訳ございません」

 

「と、とにかく、貴様は第603鎮守府に異動しろ!もう貴様の顔なぞ見たくない!とっとと荷物を纏めて出て行け!」

 

「…了解」

お腹が痛むけど、我慢して執務室を後にした。

 

「逢える。逢えるんだ」

嗚呼、やっとだ。

 

「楽しみっぽい!」

急いで荷物を纏めなきゃ!

 

「急いで此処からサラダバー!するっぽい!」

 

 

Another side out

 

───────

────

 






次回予告


…不幸だわ。…何よ。…はぁ。扶桑お姉様の声が聴けなくて、不幸なの。…電話すればいい?あんたバカァ!?生の声じゃなきゃ意味無いのよ!あの!色気ムンムンの!扶桑お姉様の!生声じゃなきゃ!意味無いのよ!…何よ、その目。いいわ、これからアンタに扶桑お姉様の素晴らしさについて講義してあげるわ。まず…あっ、こら、逃げるな!…うぐっ、鼻緒が切れた。不幸だわ。


第21話・狂犬と忠犬


「ケツ穴に魚雷突き刺して、奥歯ガタガタ言わせたるっぽい!」
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