追跡鶴   作:EMS-10

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後書きにて、お知らせがあります


第28話・隠し味は愛情?いいえ、媚薬です!

 

side 提督

 

─工廠─

 

 

「降ろしてくださぁい!私、高所恐怖症なんですぅ!」

 

「降ろしたら、相棒に要らん負担をかけるだろ?そこで反省してろ」

 

「ふえぇ〜ん…」

 

今朝、阿武隈が第603鎮守府に着任、執務室でドンパチしてから約2時間が経過した。

木曾と鈴谷がノックアウトされ、絶体絶命かと思った時、騒ぎを聞きつけた山城が瑞雲ラリアットをかまし、阿武隈を気絶させた。その後、妖精さん特製の絶対にちぎれないロープで身体を縛り上げた後、阿武隈は高所恐怖症だったのを思い出した俺は、意識を取り戻した木曾達に頼んで、阿武隈を工廠のクレーンに括り付けた。

 

「準せんぱい、冗談抜きで降ろしてくださぁい!本当に無理ぃ!」

 

「提督だ、阿武隈」

公私混同しちゃイカンよ、阿武隈。今は仕事中。役職名で呼べ。余談だが、阿武隈は約2mの高さで吊り上げられている。一応、安全を考慮して、マットを敷いてある。万が一落下しても怪我しない。艤装の加護で怪我しないだろうが、念の為。

 

「もう無理ですぅ!怖くて漏らしそうなんですぅ!」

 

「…」

…おっと、イカン。想像したら少しだけムラっと来た。

 

「ふんっ!」

頭を殴る。アホな事考えてんじゃねぇぞ、俺。

 

「何やってんだ?」

 

「イヤらしい妄想でもしたんじゃない?」

 

「変態」

 

木曾の疑問に、鈴谷が正解を言い、山城が俺を罵る。男だから思わず反応しちゃったんだよ!

 

「…阿武隈」

しっかり目を見て声をかける。瞳に光は…戻っている。どうやら恐怖のせいで正気に戻った?みたいだ。

 

「なっ、なんでしょうか?」

 

半べそかきながら、か細い声で返事をした。そんな顔しないで。なんか、罪悪感が…。

 

「今後、今朝みたいな事をしないと約束するなら、今すぐ降ろす。だが、またやったら…」

 

「約束します!だから、降ろしてくださぁい!」

 

「最後まで聞け。もし、またここの艦娘達に危害を加えたら」

そこで一旦言葉を止め、ある場所を指さす。阿武隈は俺の指さした方を見た。そこには、阿武隈を吊るしているクレーンより、更に高いクレーンがあった。それを見た阿武隈は何かを察したのか、ただでさえ青い顔を更に青くした。

 

「あそこに吊るして一晩放置する」

 

「ひぃっ!?」

 

俺が指さしたクレーンは、此処で1番大きいクレーンだった。最大約10mまでの高さまで伸びる物だ。高所恐怖症の人には絶望を感じるだろう。

 

「さぁ、選べ。今後二度と暴れず大人しく過ごすか、それか…」

 

「誓います!二度と暴れたりしません!絶対守ります!!!」

 

即答。やり方は乱暴だが、解決した。俺はクレーンを操作して阿武隈を地面に降ろした。

 

「あぶぅ〜…」

 

地面に足をつけると、変な声を出して倒れた。

 

「木曾、ロープを解いてやってくれ」

 

「あいよ」

 

木曾は俺の指示に素直に従ってくれた。手際よくロープを解き、阿武隈の身体は自由になった。

 

「ふえぇ〜ん…怖かったよぉ…」

 

「抱き着くな」

半べそかきながら俺に抱き着いてきた。

 

「スンスン…」

 

「匂いを嗅がないでください」

胸に顔を埋めたと思ったら、匂い嗅ぎやがったよ、こいつ。

 

「うへへへへ…」

 

「離れなさい」

 

「あと5年…」

 

「長いわっ!」

5分じゃなくて5年って、あんた…。

とりあえず、執務室に戻ろう。そろそろ瑞鶴達から連絡が来る筈だ。

 

「さて、木曾。阿武隈を連れて、此処を案内してやってくれ。終わったら自由にしてくれて構わない」

 

「了解だ」

 

「鈴谷、俺と執務室に戻って仕事するぞ」

 

「オッケー」

 

俺は木曾に阿武隈を案内するよう指示し、秘書艦の鈴谷と執務室に向かった。

 

 

………。

 

 

『こちら瑞鶴。侵入した深海棲艦を殲滅。こちらに負傷者はいないわ』

 

 

「了解だ、付近を偵察し、異常が無ければ戻って来い」

 

『了解よ!』

 

「…ふぅ」

無線を切る。良かった、みんな無事で。

 

「瑞鶴から連絡?」

 

「あぁ。無事、殲滅できて負傷者は無し、だ」

 

「良かったぁ…」

 

「さて、キリがいいから、仕事は一旦やめて、食堂へ行こう」

時刻は11:40。瑞鶴達はあと1時間位で戻って来る。今日の調理当番は翔鶴だ。アイツの料理の腕は瑞鶴を上回る。瑞鶴も追い付けるよう、必死に頑張っているが、一歩及ばないそうだ。

 

「翔鶴を手伝うか」

 

「そうだね」

 

俺達は仕事をやめ、食堂へ向かった。

 

 

…………。

 

 

約1時間後。食堂。

 

「…」

 

「…」

 

提督です。食堂の空気が重いです。理由?出撃から戻って来た瑞鶴と阿武隈が顔を見た途端、臨戦態勢に入ったからです。

 

「…何でアンタが此処に居るの?」

 

「…本日付で、此処に配属になったからです」

 

「…」

 

「…」

 

空気が、重い!

 

「…なぁ、2人とも。思う所はあるかもしれないが、ここは食堂だ。食事の時くらい、仲良くやってくれ」

一応、注意する。

 

「…分かったわ」

 

「…分かりました」

 

素直に言う事を聞いてくれた。良かった。もしドンパチ始めたら、泣く。全力で泣く。泣いてやる。

とりあえず、食器を運ぶか。俺は皿を運び、テーブルに置く。

俺が皿を運ぶのを見た皆も、それぞれ食事の準備を整え始めた。そして、食事の準備が整った。

 

「それじゃ、いただきます」

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

俺の言葉に合わせて、全員いただきますを言う。今日のメニューは、翔鶴特製イワシのハンバーグだ。近所の漁師さん達から頂いた物だ。時々、こうして魚や野菜などをお裾分けしてくれるから、食費があまりかからない。有難い。

 

「…お、美味い」

 

「ふふっ、腕によりをかけて作りましたから♪」

 

調理者の翔鶴が嬉しそうに微笑んだ。

 

「…」

 

「いででで!」

翔鶴の微笑みに見とれていると、隣の席の瑞鶴に脇腹を抓られた。痛い!痛いって!

 

「ふんっ!」

 

あーあ、そっぽ向いて拗ねてる。

 

「悪かったって…」

 

「知らない!」

 

完全に拗ねてる。でも可愛い。

 

「…何イチャイチャしてるんですか」

 

阿武隈がジト目でそう言った。イチャイチャ…なのか?

 

「というか、何で瑞鶴が提督の隣に座っているの?」

 

「何で、って…私、提督さんの彼女だし」

 

「…はぁ!?」

 

めっちゃ驚いてる。そういや、まだ阿武隈には説明していなかったな。

 

「また、付き合う事にしたんだ」

俺はそう言った。すると、阿武隈は顔を歪めた。

 

「なんで…別れたのに…」

 

「あー…それについては、食事が終わったら説明する。食べ終わったら、談話室に来てくれ」

 

「むぅ…分かりました」

 

本当は今ここで聞きたいのだろう。けど、俺の真剣な顔を見て渋々従ったみたいだ。

それから皆と談笑しながら食事を摂った。

 

 

………。

 

 

「…さて、何から聞きたい?」

食事を終え、食器を片した後、阿武隈と瑞鶴を連れて談話室に来た。他の皆は気を利かせてくれたのか、俺達3人しかいない。

 

「…まず、何で復縁したのか知りたいです」

 

「分かった」

俺は阿武隈に説明した。俺が話している間、阿武隈はずっと真剣な表情のまま俺の目を見て聞いていた。

そして、全てを話すと目を閉じ、大きく息を吐いた。

 

「…そう…ですか…」

 

「…」

静寂。なんて声をかければいいのか分からない。どうすればいいか悩んでいると、瑞鶴が口を開いた。

 

「…私は、もう、提督さんに…準に迷惑をかけない。そう誓った。だから…」

 

「…ずるいよ」

 

「…えっ?」

 

瑞稀の言葉を遮り、仁美はそう言った。

 

「そこまで想われているなんて…ずるいよ…」

 

「仁美…」

仁美は、静かに涙を流した。

 

「せんぱいの心が、瑞稀さんに向いていたんじゃ、私、勝てないよ…」

 

「…」

 

「…」

 

俺と瑞稀は無言で仁美を見る。

 

「…はぁ。私、頑張ったんだけどなぁ。初恋は実らない、って本当なんだね」

 

「…」

大粒の涙を零し、微笑みながら、仁美は俺達を見ながら言った。

 

「…うん。分かりました。私、二人の仲を応援します!」

 

「仁美…」

 

「せんぱいが悲しむ顔なんて、見たくありません。だから…だから…幸せになってください」

 

しゃくりあげながら。大粒の涙を零しながら、仁美は俺達にそう言った。

 

「…ねぇ、瑞稀さん」

 

「…なぁに?」

 

「…もし、仲が悪くなったら、容赦なくせんぱいを奪っちゃいます。だから、気を付けてくださいね?」

 

「…えぇ、肝に銘じるわ」

 

「…時々。時々でいいので、せんぱいに頭を撫でてもらっても、いいですか?」

 

「…いいわ」

 

「…時々、せんぱいとお話しても、いいですか?」

 

「勿論よ」

 

「…ありがとう、ございます」

 

「…」

なんて言えばいいんだ?仁美は、俺の事を諦めた…のか?

 

「…あの、準せんぱい、今まで変な事してごめんなさい。もう、あんな事しません」

 

「…そうか」

 

「…1度だけ。1度だけでいいです。今、ぎゅっとして、頭を…撫でてくれませんか?」

 

「…」

俺は瑞稀の顔を見る。瑞稀は無言で頷いた。

 

「…ほら、おいで」

 

「…ありがとう」

 

そっと俺の胸に飛び込み、顔を埋めた。俺は優しく仁美の頭を撫でた。昔は黒髪だったが、今俺の目の前にあるのは、綺麗な金色の髪だった。彼女、仁美は変わった。

出会った時は、少しふくよかで、分厚いメガネをかけていた。しかし、俺と出会い、俺を想い、変わった。そこまで想われていたのに、それを俺は…申し訳ない気持ちでいっぱいだ。ふと、仁美は胸から顔を上げ、俺の顔を見た。

 

「…気にしないでください。私自身が変わりたいと思って、努力したんです。せんぱいのせいじゃないです」

 

俺の顔を見て、考えている事が分かったのか、そう言ってきた。

 

「…すまん」

 

「だから、気にしないでください」

 

「…分かった」

それから暫く、仁美を抱き締め、頭を撫で続けた。

 

 

…………。

 

 

「んんっ!阿武隈、完全復活しましたぁ!」

 

あれから数分後。抱き締めて頭を撫でていると、阿武隈は吹っ切れたのか、穏やかな表情になった。まだ、瞳から透明な雫が零れ、目が赤いが。

 

「…そうか」

本人が大丈夫と言うのなら、それを信じよう。ここで大丈夫か?と聞いてはいけない気がした。

 

「提督、瑞鶴、ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした」

 

「俺は気にしていない」

 

「私もよ」

 

「…ありがとう」

 

満面の笑み。髪の色も相まって、まるで、向日葵の様だ。

 

「…さて、すまんが俺は執務室に戻って仕事をする」

 

「分かったわ」

 

「分かりました!」

 

…もう、大丈夫そうだな。俺は談話室を出て執務室へ向かった。

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

side 阿武隈

 

「…」

せんぱいが、談話室を出て行った。さっきはああ言ったけど、本音を言えば奪いたかった。でも、そうしたらせんぱいは悲しむ。彼が悲しむ姿は見たくない。だから、我慢することにした。決して、諦めてはいない。仲が悪くなったら、一切迷わず奪ってやるんだから!

 

「…ねぇ、阿武隈」

 

「なぁに、瑞鶴」

彼女、瑞稀さんが声をかけてきた。

 

「その、なんて言えばいいのかしら…」

 

「?」

 

「なんで、そんなアッサリ諦めたのか、気になるの。教えてくれない?」

 

「…私、諦めてないよ?」

 

「えっ!?」

 

私がそう言うと、瑞稀さんは驚いた顔をした。そして、警戒するような、険しい顔になった。そんな顔しないで。私は、理由を話した。

 

「…そう、なんだ」

 

「うん。だから、油断しないで!」

 

「えぇ、しっかり警戒するわ」

 

理由を聞くと、納得したのかニヤリと笑った。釣られて私も笑った。

 

「…さて、私は出撃したから、報告書を纏めるわ。阿武隈は自由にしてて」

 

「うん、分かった」

 

「あぁ、そうそう。今夜は阿武隈の着任祝いをするわ。楽しみにしてて?」

 

「ホント?期待してるね」

嬉しいなぁ。こんな私を歓迎してくれるなんて。艦娘になる前は色々酷い目に遭った。艦娘になってからは出撃やら演習やらで辛かったけど、支えてくれる、励ましてくれる人が居た。今がとても充実していて楽しい。

 

「艦娘になって良かった…」

 

「何か言った?」

 

「ううん、何でもない。独り言」

着任祝いかぁ。ただ歓迎してもらうだけって、何か申し訳ない気がする。…そうだ!

 

「ねぇ、瑞鶴。歓迎会だけど、私、皆に料理を作ってもいいかな?」

 

「えっ?な、何で?」

 

「何か、申し訳ない気がして…」

 

「うーん、気にしなくてもいいのに…」

 

「ダメ?」

 

「いいえ、ダメじゃないわ」

 

「本当!ありがとう!」

許可を貰えた。よぉし、頑張る!美味しいものを作って、皆に食べさせてあげるんだから!

 

「もし良ければ、私と一緒に作らない?」

 

「え?いいけど」

あれ、確か、瑞稀さん、お料理苦手だった筈じゃ…。いつだか、せんぱいが学校で私に愚痴っていた気がするんだけど。疑問に思っていると、私の考えている事に気付いたのか、苦笑いしながらこう言った。

 

「昔は苦手だったけど、あれから必死に頑張って上達したの。だから、大丈夫よ?」

 

「そうなんだ」

私みたいに頑張ったのかな?

 

「とりあえず、私は一旦部屋に戻って報告書を纏めるわ。30分以内で仕上げるから、それまでのんびりしてて。あ、そうだ!L○NEやメアド交換しない?」

 

「うん、いいよ」

ポケットからi○honeを取り出し、連絡先を交換した。

 

「i○honeなんだ」

 

「何かマズいの?」

そういえば、向こう(第8492離島鎮守府)の皆はスマホだった。何かマズいのかな?

 

「マズくはないけど…」

 

「けど?」

 

「○これ出来ないじゃない」

 

※この小説内では、○これはPCではなく、スマホ(Android)でしか遊べない、という設定となっています※

 

「メタいよ、瑞鶴…」

○これは出来ないけど、ア○ールレーンは出来るよ?10-4を4000周以上マラソンしているけど、未だ神通が泥してくれない。…なんか、イラついてきちゃった。

 

「ど、どうしたの?そんな顔して」

 

「…10-4マラソンが終わらなくて、それ思い出しちゃって」

 

「あっ…(察し)」

 

「…報告書終わるまで、マラソンしてるね」

 

「え、えぇ…頑張ってね…」

 

引き攣った笑みを浮かべながら、瑞鶴はそう言った。そして談話室を出て行った。

 

「…さて、やろう」

充電は大丈夫。燃料もある。さぁ、待っていなさい!アプリを選択して、起動して…

 

 

【只今、メンテナンス中です】

 

 

「ん"ん"っ"!」

起動すると、無慈悲なメンテナンス中の文字が視界に入った。

 

「こんなのって、あんまりだよぉ〜!」

 

 

───────

 

「…」

 

《…阿武隈には、言えないわね》

 

そうね。

 

《攻略中。それも、2周目で神通が泥したなんて》

 

そのせいで、上司にヘッドロックかまされたわね…

 

《嫌な事件だったね…》

 

※実話

 

《…報告書、纏めましょう?》

 

…そうね。

 

 

───────

 

 

「…あ、L○NE」

無慈悲な通告(ア○レンメンテ)を受け、渋々自室に戻って戦術書を読んでいたら、L○NEの着信音が鳴った。どうやら終わったみたい。本に栞を挟んで閉じ、部屋を出る。

 

「…あ、来たわね」

 

「報告書、お疲れ様」

食堂に行くと、既に瑞鶴が頭に三角巾、エプロンをして調理場に立っていた。

 

「はい、エプロン」

 

「ありがとう」

瑞鶴からエプロンを受け取って身に付けた後、三角巾を付けた。髪が崩れるから付けたくなかったけど、お料理に髪の毛が入ったら大変だから、付ける。髪は後でいくらでも直せるけど、お料理はそうもいかない。

 

「今夜はクリームシチューを作るわ」

 

「分かった。野菜は私が切るね」

 

「うん。じゃあ、私は肉をやるわ」

 

瑞鶴と分担して調理を行った。

特にミスも無く、私達は手際よく調理した。暫くすると…

 

「あら、あなたは…」

 

「えっと…涼月?」

此処に所属する艦娘の1人、銀色の髪が特徴の涼月が食堂に入って来た。

此処に着任する事が決まった日に、小嶋提督から書類を渡され、此処に所属する艦娘達を把握するよう言われた。その時に写真やプロフィールを見て頭に叩き込んであるから、誰だか一目で分かった。

 

「初めまして。私は、秋月型防空駆逐艦三番艦、涼月と申します」

 

「ご丁寧にどうも。私は、長良型軽巡洋艦六番艦、阿武隈って言います」

互いに自己紹介をする。とっても礼儀正しい娘だなぁ。立ち振る舞いが、お嬢様みたい。

 

「…阿武隈、気を付けなさい」

 

「えっ?」

涼月の立ち振る舞いに感動していると、瑞鶴が険しい顔をしながらそう言った。気を付けるって、何を…

 

「そいつ、アンタより危険よ。ここじゃ、ゾンビって呼ばれているわ」

 

「ぞ、ぞんびぃ?」

嘘だ。こんないい娘がゾンビだなんて…

 

「…常に提督さんの貞操を狙い、徘徊し続ける。何度シバいても直ぐに立ち上がるわ」

 

「んんっ!?」

貞操!?狙ってる!?嘘ぉ!

 

「…私の十八番、ノーザンライトボムをかましても、数秒で立ち上がって何事も無かった様に提督さんに襲いかかろうとするわ」

 

「」

ゾンビだ。

 

「瑞鶴さん、酷いです…」

 

ああ、瑞鶴の言葉を聞いた涼月が顔を俯かせてる!って、あれ、何で…何で、嗤っているの?その笑みは怖い。

 

「…せっかく、阿武隈さんをこちら側に連れ込もうとしたのに」

 

「」

あ、この娘アカン奴だ。良かった、瑞鶴に忠告されて。騙される所だったよ。

 

「…そ、そうだ、涼月は何でここに来たの?」

話題を変える為、涼月に質問する。

 

「はい、提督に、お料理を作ってあげようと…」

 

「…あんた、料理に怪しい薬入れるから、先日、厨房の出入り禁止にされたでしょ。ダメよ」

 

「…チッ」

 

「」

あ、私の中で涼月のキャラが確定した。この娘ヤヴァイ。人の事言えないけど、私よりヤヴァイ。今、ハッキリと分かった。

 

 

………。

 

 

「やめなさいって、言ってるでしょ!」

 

「離してください!でないと!でないと、提督に!」

 

「せっかくの料理を台無しにされてたまるかっ!」

 

「…」

もう、突っ込まない。

あれから、瑞鶴と料理をしていたんだけど、涼月が隙を衝いて料理に何か危ない物を入れようとしたりした。

 

「マムシを入れれば…」

 

「やめてください」

私の目に止まらない速さで、鍋に食材を投入されそうになった。直後、瑞鶴にボディスラムをかまされる。

 

「スッポンを…」

 

「ダメです」

しかし、私が止める間もなく投入されてしまった。瑞鶴、涼月に無言の腹パン。私、下茹でされたスッポンの肉を救出。いつの間に調理したのか、気になるけど突っ込まない。

 

「ヤモリ軍団、突貫!」

 

「ヤモリを鍋にぶち込まないでください」

調理済みのヤモリを鍋から救出。瑞鶴、涼月にパイルドライバー。

 

「うふふ♪涼月はこの程度では止まりません♪」

 

「止まってください」

もう何も考えない。味見…うん、大丈夫。

それから涼月の妨害を受けながらも、黙々と調理を続けた。最終的にはブチ切れた瑞鶴が、十八番のノーザンライトボムをぶちかまして止めてくれた。シチューは味見したけど、特に問題無かったのでそのまま出した。

歓迎会はとても楽しかった。皆、私を歓迎してくれた。

 

(頑張ろう)

向こうの皆も私を暖かく出迎えてくれた。そして、此処でも。

 

(私、幸せだなぁ…)

これで、提督が私の彼氏になってくれれば…

 

(…ううん、ダメ。今は、ダメ。見守ろう)

昼間、瑞鶴に言ったけど、邪魔はしない。見守ろう。

騒がしいくらい賑やかな食堂で、私はそっと提督を盗み見ながらそう思った。

 

 

side 阿武隈 out

 

 

───────

────





次回予告


此処は、とても暖かい。心地良い。
瑞稀と、彼が居る。私という存在を、暖かく包んでくれる。
…そういえば、まだ此処の皆に、私の存在を教えていなかった。
静流…翔鶴は知っているけど、それ以外の娘達は知らない。
…打ち明けよう。覚悟は、出来ている。


第29話・新たな仲間


「角は性感帯なの!ダメなのっ!」









※お知らせ※
アンケートを実施します。宜しければ、御協力ください。詳しくは、活動報告をご覧頂ければと思います
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