私は、夢見がちな性格でした。
理想の殿方と出会い、結婚して幸せになる。
私も、そうなれると信じていました。
箱入り娘
─第603鎮守府、桟橋─
「追い詰めましたよ、提督!」
「来るな!来るなァ!」
「諦めてください。瑞鶴さんや翔鶴さんは、榛名が絞め落としました」
「由良ァ!夕立ィ!助けてくれェ!!!」
「そのお2人は出撃中で居ませんよ?」
「うわあああああああ!!!」
そんなに拒絶しないでください。榛名、傷付いちゃいます。こんなにも好意を向けているのに、何故拒絶されるのでしょう?
【Page:HARUNA】
─6年数ヶ月前─
「陽菜、そろそろ現実を見なさい」
「現実、ですか?」
ある日、学校から帰宅すると、お母さんにそう言われました。
現実を見なさい。つまり、夢を見るな、という事ですか?
「そうよ。陽菜は少し。いいえ、かなり夢見がちな性格と考えをしているわ。もう18歳になるのだから、現実的な考えを持ちなさい」
「は、はぁ…」
確かに。陽菜は他の人より夢見がちな性格と考えをしていると自覚しています。でも、それの何処が悪いことなのでしょう?
夢という目標があるから、頑張れる。だから、今まで頑張ってこれた。それを否定されると、悲しいです。
「夢を持つ事は決して悪いことじゃないわ。夢という目標を持つ事で、努力することができる。ただね…
白馬の王子様が現れて、めでたく結婚出来て幸せになる、なんてのは夢や物語の中だけなのよ」
「そ、そんなっ!?」
白馬の王子様は存在しないというのですか!?
「小学生くらいまでなら、そんな考えを持っていてもいいけど、あなたはもう18歳になるのよ?いい加減、その考えは捨てなさい」
「うぅ…」
やっぱり、ダメなのでしょうか?
気付いていました。気付いていましたが、諦めずにこの歳になっても白馬の王子様、つまり理想の男性と出会えると信じていました。ですが、
(お父さんが過保護と言いますか、必要以上に男性と接触させたがらないせいで、出会いがありません)
そう。陽菜のお父さんは過保護と言いますか、親バカと言いますか、とにかく陽菜をお父さん以外の男性と接触させたがらないのです。学校は小学校から中学、高校まで一貫性の女子校に通わされています。
そのせいで出会いが無く、嫌になっちゃいます。
「結婚は、とっても難しいものなのよ?そんな理想ばかり持ち過ぎると、ろくな目に遭わないわよ?」
やっぱり、そうなのでしょうか。テレビを見ると、男女のドロドロした話をよく見聞きします。
「…あんまりやりたくなかったけど、仕方ないわね」
「お母さん?」
お母さんは溜息を吐きながら、大きな封筒を取り出し、陽菜に手渡しました。
「これは?」
「先日、艦娘適性者を捜していると軍からお知らせが届いたの。この封筒にはそれについて書かれているわ」
「艦娘…」
今から約70年ほど前に海から現れた化け物。その化け物に対抗する為の存在。
「とりあえず、適性検査受けてきなさい。受かったら、高校卒業後、養成所行って根性叩き直されてきなさい」
「ちょっ、そんな理由で艦娘適性検査を受けろって言うの?もし適性があって艦娘になったら、戦わなくちゃならないんですよ!?下手したら、死んじゃいます!」
「大丈夫よ。アンタ、殺しても死ななそうだし」
「お母さん…」
酷いです。
「陽菜が5歳の時、ダンプカーに轢かれても無傷だったし、中学生の時に学校行事で山に行って崖から落ちても無傷だったし、大丈夫よ!」
「そんな!?酷いです!陽菜はか弱い乙女なんですよ?大丈夫じゃないです!」
「大丈夫。だって、お母さんの娘だもの」
「お母さん…」
お母さんは昔、艦娘だったそうです。更に、お母さんのお母さん。つまり、陽菜の祖母ですね。祖母も艦娘だったそうです。だからか、陽菜や2人のお姉様、妹も身体がとても頑丈です。なので、怪我や病気をした事が殆どありません。
お父さんとの出会いは未だ教えてくれません。とても気になるのに。
「ともかく、検査を受けなさい」
「わ、分かりました。そういえば、お父さんはこの事は…」
お母さんはともかく、お父さんは絶対反対しそうです。現に、陽菜のお姉様2人が艦娘になると言った時は、号泣しながら足にしがみついて「やめてくれぇ!」と懇願していました。お姉様2人に蹴り飛ばされ、すぐに黙りましたが。
「あ、大丈夫よ?お父さんには話してあるから。物理的に」
「物理的に」
「泣いて喜んで送り出すって言ってたわ」
お母さん、絶対それ、喜んでいないと思います。
──────────────
─5年数ヶ月前、横須賀養成所─
「─それでは、最終確認をするぞ。山井陽菜。君はこれから、艦娘候補生となるが、本当にいいんだな?」
「はい!」
色々ありましたが、陽菜に適性があったらしく、艦娘になりました。いえ、正確には艦娘候補生、ですね。
適性艦は、金剛型高速戦艦三番艦、榛名という
艦でした。
余談ですが、陽菜が養成所へ行く日、お父さんは泣きながら陽菜を引き留めようとしました。ですが、お母さんに物理的にお話をされて、最終的には大人しく見送ってくれました。
(それにしても、目付きが鋭い人達ですね)
陽菜…いいえ、榛名の目の前に居る藤原准将という男性─提督─と、カーキ色の制服を纏った男性の目付きを見てそう思いました。
「…すまぬ、怖がらせてしまったか」
「…えっ、あっ」
どうやら、榛名は怖がってしまったようです。顔に出てしまったのでしょうか?
藤原准将とカーキ色の制服を纏った男性が、申し訳なさそうなお顔をされました。
「癖なのか、気付かぬうちに険しい顔をしてしまうんだ。許してくれ」
「い、いえ、お気になさらないでください」
それから、藤原准将から色々説明をされました。
「さて、艦娘の装束の採寸を行う。外に案内の者が居るから、そいつに付いて行ってくれ」
「分かりました!」
──────────────
「──よし、異常無し。艤装との接続を解除する」
「お願いします」
あの後、部屋を出た榛名は日向と呼ばれる艦娘さんに連れられ、艦娘の装束の採寸を行いました。巫女服の様な紅白の装束と、カチューシャ型の電探。これが、金剛型高速戦艦の装束らしいです。サイズはピッタリで問題が無かったので、次に艤装─日向さん曰く、深海棲艦と戦う為の武器─を装着しました。
(とても大きい)
榛名の艤装を見た時の第一印象はソレでした。そして、接続を行い、異常が見当たらなかったので検査は終わりました。
「それじゃ、格納しよう。妖精さん、頼んだ」
日向さんがそう言うと、妖精さんが榛名の艤装や肩に群がりました。次の瞬間、巨大な艤装は跡形も無く消えました。
「えっ!?」
消えた?何処に!?
榛名が驚いていると、日向さんが説明してくれました。
妖精さんの技術により、榛名の中に艤装が格納されたのだと。再び展開する時は頭の中で妖精さんに頼めば直ぐに展開出来るそうです。
試しに一度やってみると、上手く展開することが出来ました。
「一体、どんな原理なのでしょう?」
榛名の疑問に、日向さんが答えてくれました。
「妖精さんの謎技術によるものだ。あまり、気にしない方がいい」
「は、はぁ…」
榛名、気になります。気になりますが、深く考えるのはやめましょう。
──────────────
「これより、提督候補生との合同訓練を受けてもらう」
榛名が艦娘養成所に入って数ヶ月が経ちました。座学や実技の訓練や艦隊指揮のお勉強を受け、少しずつ艦娘や深海棲艦について知る事が出来ました。
(提督候補生。つまり、男性と出会える!)
中には女性の提督も居るそうですが、今回此処には居ませんでした。
講堂へ向かうと、既に提督候補生達が居ました。皆さん、榛名と同い歳位の男性ばかりです。
「戦艦娘か」
「皆、同い歳位だな」
「どんな適性艦が居るんだろう?」
「……」
端末と榛名達、戦艦娘を見て、そのような事を話していました。
「おっ、金剛型高速戦艦が居る」
「扶桑型戦艦も居るな」
「大和型戦艦…は居ないみたいだ」
(皆さん、真面目な方達なんですね)
この時は、そう思っていました。
………………。
「それじゃ、よろしく」
「はい!よろしくお願いします」
提督候補生達と顔合わせをした後、彼らと組んで訓練を行う事になりました。そして今、榛名の前に居る男性と挨拶を交わし、訓練を行おうとした時でした。
(榛名を見ている)
いえ、正確には榛名のカラダ、胸を見ていました。
「な、なんでしょうか?」
初めての事で戸惑ってしまいました。
「あ、いや、なんでもない。訓練を始めようか」
そして、訓練が始まりました。
航行。砲撃。対空射撃。その他、一通りの訓練を行いましたが、ずっと提督候補生に見られていました。いえ、見るのは当然なのですが、
(榛名ではなく、榛名のカラダをジロジロ見てくるのは、少し嫌です)
纒わり付く様な視線、とでも言えばいいのでしょうか?本日組んだ候補生の方に胸や足を沢山見られた気がしました。
………………。
「…はぁ」
あれから数週間が過ぎました。座学や訓練、艦隊指揮といったお勉強や訓練の毎日。最初は辛く感じましたが、今ではすっかり慣れました。
(でも、これは慣れません)
今日も提督候補生にカラダを見られました。榛名以外の艦娘候補生の方達も、カラダを見られたと言っています。
(一度、藤原准将に相談してみましょう)
………………。
「…はぁ」
藤原准将に相談して一週間後。あれから榛名や他の艦娘候補生達のカラダを見る方は減りました。しかし、完全に居なくなったわけではありません。
「気にし過ぎ、なのでしょうか?」
初めての事だから、どうすればいいか分かりません。
榛名以外の艦娘候補生達は、あまり気にしていない─鼻で笑ったり、睨み付けるだけで引き摺っていない─ようですが。
(男性って、怖い生き物なのでしょうか?)
以前、お姉様が言っていました。
『男の人は皆、狼ネー!油断すると、襲われるネ!』
もしそうなら、気を付けないといけません。榛名は、他の艦娘候補生の方達が言うに、天然で無自覚に隙を晒すそうです。自分ではしっかりしているつもりなんですが…。
そう思っていた時でした。
「姉様を誑かす、悪い提督候補生は居ねぇかぁ!!!」
「やめてえええええええぇぇぇぇ!!!」
「や、山城さん!?」
同じ部屋で榛名に優しく接してくださる山城さん─適性艦が扶桑型戦艦の二番艦で、本名は梓さん─が、演習用の弾丸を入れる木箱を担ぎ、一つ一つ戦艦のパワーで、一人の提督候補生へ向かって投げ付けていました。
「な、何をしているのですか!?」
慌てて止めました。
「止めないで榛名!私は、姉様を誑かすコイツを仕留めなくちゃならないの!」
「だ、だからって、そんな事したら死んじゃいます!」
「邪魔しないで!アイツに制裁を加えないと気が済まない…あっ!」
「えっ?」
山城さんの視線の先を見ると、木箱を投げ付けられた提督候補生が、走って逃げる後ろ姿が見えました。
「待ちなさい!」
「あっ!」
山城さんは木箱を担いだまま追いかけて行きました。
その後、陸奥教官によって止められ、この場は収まりました。
………………。
「…はぁ」
倉庫で本日の訓練に使う的の用意をしながら溜息を吐きました。
提督候補生達と合同訓練をするようになってから、更に数日が過ぎました。
(また、カラダをジロジロ見られました…)
藤原准将が提督候補生達に注意をしてくれたそうですが、未だカラダをジロジロ見られます。
(怖いです)
自意識過剰なのかもしれない。そう思いましたが、明らかに見られています。
男の人は怖い。
改めてそう思いました。
(所詮、陽菜の妄想だった、という事ですか)
絵本のような素敵な出会いなど無い。あるのは、己の欲を満たそうとする男の人ばかり。
(これが、現実…)
お母さんの言った通りでした。思い知らされました。
(なんだか、嫌になってきました…)
そのような事を考えていました。その時でした。
「おーい、そろそろ訓練の時間になるぞ」
「あっ、はい!」
一人の提督候補生が倉庫に入ってきて、榛名に声をかけました。
いけない、ボーッとしていて準備が未だ済んでいません。慌てて用意をしようとしたら、的の入った箱を落としてまいました。あぁ、やってしまった。
「おっと、手伝うよ」
「ぁ…」
彼はそう言うと、素早く的を拾い、箱の中に入れました。その視線は。
(榛名のカラダを見ていない)
大抵の提督候補生は、チラッと胸を盗み見てくるのに、この人はそのような事をしませんでした。
「…よし、それじゃ、運ぼうか」
「は、はい」
彼は微笑みながら、榛名の目を見て言いました。
(カラダを見てこない?)
いえ、もしかしたら、この場だけで、訓練が始まれば盗み見てくるに違いありません。
「あぁ、自己紹介まだだったね。俺は提督候補生の渡良瀬準だ。今日はよろしく」
「こ、金剛型高速戦艦三番艦、榛名と申します。よろしくお願いします」
これが、彼。渡良瀬準さんとの出会いでした。
この時の榛名は、警戒していました。この人も、カラダをジロジロ見てくるに違いない。そう思っていました。
でも、それは間違いだと、後に知る事になりました。
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榛名、運命を感じました!
※仕事が修羅場ってて投稿する余裕がががががが…。決してア○ールなレーンのイベントやってて投稿が遅れたわけじゃないです。
まだノーマルの1面クリアしていねぇ。間に合うのか?
Q:榛名の学歴どうなってんの?
A:高卒、という設定です。榛名の母親に艦娘になれ!と言われたのは夏頃。
夏頃に検査を受ける→適性有→受験勉強をせず、学校生活を送る→卒業後、養成所へ
という流れになっています。学校側も艦娘になる事を認めています。
Q:涼月の過去編でも出てたけど、何で憲兵が居るの?
A:後ほど本編で主人公(提督)が説明しますので、もう暫くお待ちください。
その他、色々疑問に思う事があると思いますが、本編や他の艦娘の過去編などで説明しますので、ご了承ください。
※アンケートを実施します。よろしければご協力お願いします。