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結果は活動報告にてお知らせしています。
あと、質問箱的な物を活動報告につくりました。
宜しければコメントしてやってください。
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side 提督
─第08鎮守府─
「というわけで加藤中佐、服を貸してください」
「いきなりスマホに連絡してきたかと思ったら、服を貸せって…」
うん。言いたいことは分かる。俺が加藤中佐…浦樹の立場だったら同じこと言う自信がある。
第603鎮守府から瑞鶴を連れて、愛の逃避行から約2時間後。ブライトさんも納得の弾幕を阿武隈達は放ってきたけど、主人公補正により被弾ゼロで逃走に成功。余談だが、一般道に出るまでの間、バイクで時速642kmを記録。よくそこまで出せたなと思う。
一般道に出てからは慌てず、少しずつ速度を落とし、法定速度内で走った。車やバイクが殆ど走っていなかったから、事故らずに済んだ。お巡りさんに見つかっていたら、問答無用で免許剥奪されてムショにぶち込まれていたな。
逃走に成功したのはいいが、俺は提督服。瑞鶴は艦娘の装束。とにかく目立つ。バイクの中にジャケットがあって、それを羽織ったがそれでも目立つ。そこで、途中で第08鎮守府に寄り、服を借りることにした。ポケットにスマホを入れておいたから、道中、コンビニに寄って休憩した際、浦樹へ連絡して服を貸してくれと頼み、今に至る。
ちなみに、メールや留守電の通知が沢山来ていたが、全て無視した。特に翔鶴と涼月、榛名からのメールと留守電が多かった。電源切っとこ。瑞鶴にもスマホの電源を切るよう言っておいた。
「…ったく。この間の事、忘れてないからな?」
「本当にすみません…」
先日の電話の事、まだ根に持ってるみたいだ。それもそうか。しかし浦樹は文句を言いながらも、服を貸してくれた。身長と体格も似ているから、サイズは大丈夫だ。瑞鶴も、ここの艦娘に頼んで服を借りている。この恩は、絶対必ず返す。
「これでいいか?」
「はい、ありがとうございます」
「準、今は誰もいないから、いつもの口調でいい」
「…おう」
「詳しくは聞かないが、顔が死人みたいだぞ。あまり、無理するなよ?」
「…ありがとう」
そんな顔なの?今度、手鏡買うか。そんな事を考えていたら、瑞鶴…瑞稀がやって来た。服装はシャツ。そして…ホットパンツだとぉ!?
…いい。
…さて、魅惑的な瑞鶴の太ももを視姦ゲフンゲフン見るのは後だ。
「それでは、失礼します」
「加藤中佐、ありがとうございます」
「どういたしまして。気を付けていってらっしゃい」
浦樹に見送られながら、俺達は再びバイクに乗って実家に向かう事にした。
───────
うへぇ、やっと大人しい速度になったよ。時速600km超えるバイクにしがみつくのがどれだけ大変なのか、分かっているのかな?全く、妖精使いの荒い人だ…いえ、何でもありません!引き続き、情報を送ります!…はぁ。何でああなっちゃったんだろ。恋か?恋のせいかコンチクショー!
───────
─T県N市─
「そろそろ、だな」
「そうだね」
第08鎮守府を出て更に数時間後。途中、パーキングエリアやコンビニ等に寄り、小まめに休憩を取りながら、目的地である俺の実家に向かった。道中、瑞稀に「何処へ行くの」と聞かれたので、俺の実家だと言ったら驚かれた。
「…お仕事とか、大丈夫かな」
「大丈夫だ、ギャグ小説特有の演出で、大丈夫になる」
「それなら大丈夫ね」
ご都合主義って素晴らしい。…おっと、この先を右折するんだったな。
既に周りの景色は見慣れた物になった。10年以上過ごした場所だから、道には迷わない。もう、ナビの必要も無い。峠を登り、暫く進むと。
「あっ、見えてきた!」
瑞稀の嬉しそうな声が聞こえた。
「帰ってきたな」
6年ぶりに帰ってきた。
俺と瑞稀、静流が出会った町が、見えてきた。それと同時に、硫黄の臭いが鼻腔を刺激した。
………。
「…緊張してきた」
「大丈夫だよ。お父さんもお母さんも喜んでくれるって」
俺は今、瑞稀の家の前に居た。いや、決して瑞稀のご両親は怖いとか、そういうわけじゃない。ただ、俺は瑞稀を見捨てて提督になった。瑞稀のご両親は、当時の事を知っているから理解してくれたが。
「振っておいて、また付き合う事にしました、なんて言っていいのか…」
「大丈夫だよ!もしごねたら、私が助けてあげるから!」
「あ、あぁ…」
俺は、震える指でインターホンを押した。
…………。
「……」
「あ、あははは…」
あれから数時間が過ぎた。外は既に暗くなり始めている。
俺達が帰ってきた事を知った瑞稀のご両親は大層驚いたが、暖かく迎えてくれた。そして、再び瑞稀と(結婚する事も視野に入れて)付き合う事にした、と話したら、おじさんはひっくり返った。おばさんは…
『あらあら、まるで私達みたいですね、あなた』
頬に手を当てながら、そう言った。私達みたい?俺が疑問に思っていると、おばさんは言った。
『お母さんとお父さんはね、昔、艦娘と提督だったの♪』
今度は俺がひっくり返った。瑞稀は石化した。
『まるで、昔の私達を見ているみたい♪』
話を聞くと、おじさんはおばさんから逃げる為に提督になって、おばさんは追う為に艦娘になった…もう、俺は突っ込まんぞ。絶対突っ込まん。
『準くん、じゃじゃ馬な娘ですが、よろしくお願いします』
ここまでは良かった。おばさんが次に発した言葉で、俺は気絶しそうになった。
『提督なら、頑張れば重婚が可能になるわ。準くん、よければ静流の事も、瑞稀と一緒に愛してあげてください♪』
おばさん、何その、セットにポテトはいかがですか、的なノリで重婚を薦めるの?静流はポテトじゃないよ?
おじさん、おばさんがこんな事言ってますがいいんですか?目で語りかけると、
『君なら、安心して2人を任せられる。だから、私は一向に構わん!』
サムズアップしながら、そう言った。ちょい待てや!いいのかよ!?
「胃が痛くなってきた…」
胃潰瘍が治ったり再発したりと、忙しいな、俺の胃袋。負担かけてごめんよ。
「唾液、摂取する?」
「…後で頼む」
ここは往来のド真ん中だ。そんな事をすれば、誰かに目撃されてネタにされかねん。第603鎮守府周辺ほどじゃないが、ここも田舎だ。田舎は怖いんだぞ?すぐに噂が広まるし、広まったら最後。死んだ後でも町内会の集まりとかで、酒の席とかでネタにされる。
「しかし、おじさんとおばさんが、提督と艦娘だったとはな…」
おばさんは、当時最新鋭だった夕雲型駆逐艦の一番艦、夕雲という艦娘だったそうだ。本人曰く、今年で○○歳になるそうだが、絶対嘘だ。外見年齢20代だぞ。詐称してるんじゃないの?おじさんも見た目、若々しいし。
「…静流姉とも、結婚したい?」
「はあっ!?」
バイクを押しながら俺の実家へ向かっていると、突然、瑞稀はそう言った。
「静流姉、準のこと好きみたいだし、どう?」
「瑞稀まで薦めるのかよ…」
いったい、どうしたんだ?
俺は瑞稀一筋で行くと心に決めたんだ。それに、重婚なんて、瑞稀と静流に失礼な気がする。というか、静流って俺の事好きなの?もしそうなら、俺は…
「難しく考える事無いよ。したいと思うなら、してもいいよ?」
「…瑞稀は、いいのか?」
「本音を言えば、嫌。でも、私だけが幸せになって、静流姉が悲しむ姿を見るのは、もっと嫌。だから…」
「…その話は、ここじゃなくて、俺の家でしよう」
「…そう、だね」
ここ、往来のド真ん中だからね。そういった重要な話をするのは良くない。
「…着いたね」
瑞稀の視線の先には、俺の実家があった。瑞稀の実家から、十数m離れている、俺の実家が。田舎だから、近所と言っても少し離れている。田舎ならでは、って奴だ。
おじさんとおばさんには、瑞稀は今日、俺の実家で一泊すると話してある。おじさんとおばさんは喜んで許可を与えてくれた。それはいい。いいんだけど、家を出る際、おばさんがお見せできない指の形を、俺にだけこっそり見せたのが気になる。人差し指と中指に親指を入れた…説明しちゃったよ。とにかく、俺はまだそういうことしませんからね?何れするけど!
「…さて、やるか」
バイクのスタンドを立て、インターホンに指を伸ばす。瑞稀の家のインターホンを押した時より緊張する。だって、俺の爺ちゃん、めっちゃ怖いんだもん。もしかしなくても、手拭いでぶっ飛ばされるかもしれん。
手拭いで身長約180cm、体重約70kg超える人間をぶっ飛ばせるわけがない。そう思うだろ?でも、爺ちゃんならそれが出来る。出来ちゃうんだよ。今年で90になるって言うのに、パワフルなんだよ。
ガタガタ震えながら、インターホンを押す。チャイムが鳴る。無音。
「…寝てるのか?」
爺ちゃんは寝るのが早く、起きるのが早い。必ず21時までには寝るようにしていて、4時頃に起きる。今は18時を過ぎている。もしそうなら、ヤバい。食事と睡眠、そしてウ=ス異本の読書の邪魔をされるのを、とても嫌っているから。
…あ、プレッシャー感じる。何を言っているんだ、と思うかもしれないが、爺ちゃんはキレるとプレッシャーを放つんだ。とにかくヤバい。さっきからヤバいとしか言ってないが、とにかくヤバいんだよ。あ、プレッシャー強くなった。
『…新聞の勧誘なら、断るぞ』
インターホンから爺ちゃんの低い声が聞こえた。あ、コレ、キレてる。このキレ方は、ウ=ス異本の読書を邪魔された時の声だな。ごめんよ、爺ちゃん。
「じゅ、準だよ、爺ちゃん」
震えた声で言った。
『準準詐欺か?』
「んな詐欺があるか!」
なんか、パンダみたいな名前だな。バカな事考えるな。対応を間違えたら、タコ殴りにされる。最悪、石○天驚拳かまされる。
『ほう?なら、なんだ?』
「なんだって…俺だよ、渡良瀬茂の孫、渡良瀬準だよ」
『……』
無言。更に強まるプレッシャー。俺、冷や汗ダラダラ。瑞稀、距離を取る。うん、それ、正解だ。
「クワッーーーー!!!」
「ぬおおおおおお!!!」
玄関のドアが勢いよく開いたと同時に、1人の老人が弾丸の様な勢いで飛び出してきた。その手には、手拭いを持っている。
「こんの、バカ孫がああああああああ!!!」
「マスタークロオオオォォォスッッッ!!!」
老人もとい、俺の祖父、渡良瀬茂が俺めがけて手拭いを勢い良く振る!
バチーン!
なんともいい音が出た。俺の脇腹に手拭いが当たった音だ。それと同時に、俺の身体は空中高く吹っ飛ばされた。
…………。
─渡良瀬家、客間─
「まったく、帰って来るのは明後日だと言っておっただろうに」
「予定が変わったんだよ」
「口答えをするなぁ!」
「ごぼぉ!?」
手拭いが頬に直撃。しかし、横に倒れるだけで済んだ。室内だから、加減してくれたようだ。
「…ったく。せっかく、う○べに屋の新作を読んでデュフフしていたというのに、邪魔しおって」
「わ、悪かったって」
あのサークルは俺も好きだ。邪魔してごめんよ、爺ちゃん。
「さて、瑞稀ちゃん。見苦しい物を見せてすまんのぉ」
「い、いえ、気にしないでください」
爺ちゃんは優しそうな笑顔で瑞稀に声をかけた。爺ちゃん、瑞稀や静流には滅茶苦茶優しいからなぁ。その優しさを、ほんの少しでいいから俺にも分けて欲しい。
「瑞稀ちゃん、ワシは少し、バカ…準と話をするから、すまんが席を外してくれんかのぉ?」
「はい、分かりました。…あの、あまり準に乱暴な事、しないでね?」
「あぁ、約束しよう」
爺ちゃんにそう言われると、瑞稀は席を外した。
「…さて、バカ孫よ。色々聞きたい事があるが、これだけは聞きたい」
「なんだ?」
険しい目で俺を睨む爺ちゃん。
「…お前は瑞稀ちゃんと、再び付き合う事にしたのか?」
「…あぁ」
どうやら、俺と瑞稀の様子を見て、そう思ったようだ。
俺は肯定した。すると、
「何故、また付き合う事にしたんだ?あぁ、決して復縁した事を咎めているわけではない」
そう聞いてきた。俺は、思った事を素直に話した。
数ヶ月前、俺の鎮守府に瑞稀が着任した事。
最初は拒絶した事。
瑞稀と共に過ごしていくうちに、好きなんだと気付いた事。
そして、色々あったが再び付き合うことになった事。
「…というわけなんだ」
全てを話した。それを聞いた爺ちゃんは、目を閉じ腕を組んだ。
無言。
壁時計の針の音が、大きく聞こえる。
やがて、爺ちゃんは目を閉じたまま口を開いた。
「…そうか」
「……」
「お前が出した答えがそれなら、ワシからはこれ以上何も言わん」
「爺ちゃん…」
「…今度は、泣かせるなよ」
「…あぁ」
絶対、泣かせるものか。
「…さて、バカ孫よ。腹は減っているか?」
「え、あ、あぁ。減っている」
爺ちゃんは目を開いてそう言った。ここに来る途中、何度かパーキングエリアやコンビニに寄ったが、殆ど何も食べていない。
「よし、分かった。昨日狩ったクマの肉がある。そいつを食わせてやる」
「まだやってるのかよ…」
爺ちゃんは猟師をやっている。もういい歳なんだから、家で大人しく過ごしなよ…。余談だが、爺ちゃんは猟銃の免許を持っていない。違反だって?大丈夫。素手で倒すから。鉄砲も罠も一切使わない。冗談だと思うだろ?事実です。
「生涯現役だ。死ぬまで続けてやる」
「さいですか…」
死んでも続けていそうで怖い。
この後、瑞稀を呼んで熊鍋を食べた。瑞稀は美味しいと喜んでいたが、爺ちゃんが熊肉だと暴露したら硬直していた。そらそうだ。臭みがなく、とても美味しいからな。ちなみに、全部食べました。お残しは許しまへんでー。
………。
「さて、そろそろワシは寝る。ぐっすり眠るから、1人増えても大丈夫だぞ?」
食器を片し、瑞稀が入浴している間、テレビを見ていると爺ちゃんが言った。1人増える?どういうこと?俺が首をかしげていると、爺ちゃんはニヤリと笑った。
「瑞稀ちゃんのお腹の中にもう1人増えても、ワシは気付かん、と言っているんだ」
「オイ」
下ネタ言うな。いずれはそうしたい。けど、今じゃない。
「恥ずかしがる事は無い。生き物なら、当然の行為だ」
「やかましい!」
からかわれているな、これ。…あ、そうだ。
「なぁ、爺ちゃん」
「マットとローションが欲しいのか?なら、ここにあるぞ!」
「いらねぇし、使わねぇよ!」
「貴様ァ!ローションプレイを侮辱するのかァ!?」
「してねぇよアホ!」
襖開けてマットとローション取り出すな。というか、何で持ってるんですか。疑問は尽きないが、
「聞きたい事があるんだ」
「近藤さんなら、お前と瑞稀ちゃんが寝る寝室の布団の上に一箱置いといたぞ?」
「何してんだこのエロジジイ!」
瑞稀がそれ見たら、俺、確実に襲われちゃうよ。…じゃなくて。
「…俺の両親について、教えて欲しいんだ」
俺がそう言うと、爺ちゃんはニヤけ顔から、とぼけた様な顔に変わった。
「…何度も言っておるだろ。お前の両親は、騎空士になって旅をしていると」
「今度は騎空士かよ」
リ○クスだったり、ジェ○イだったり。とにかく架空の職業に就いていると嘘を言って誤魔化されてきた。今回は騎空士ときた。なら、無理矢理にでも聞き出してやる。
「藤原大将…藤原さんから聞いたんだ」
俺がそう言うと、爺ちゃんは固まった。
「藤原…剛か?」
「そうだ」
藤原大将の名前を聞くと、爺ちゃんは真面目な顔になった。
「…そう、か。剛から聞いたのか」
「あぁ。ただ、詳しくは教えてもらっていない。だから教えてくれ」
「…しかし…」
渋っている。なら、取っておきの切り札を切ってやる。
「千歳さんって人が、俺の親父について知っている様な事を言ってた」
渡良瀬大佐。千歳さんは電話でそう言った。これがどんな意味か。親父はきっと、軍属だった筈。教えてくれ、爺ちゃん…あれ、爺ちゃん?どうしたの、そんなに震えて。顔青いよ?
「お、お前、今、千歳さんって、言ったか?」
「い、言った」
尋常じゃないくらいに震えてる。本当にどうしたんだ?
「ど、何処の鎮守府所属だ!?」
「江ノ島鎮守府だ」
凄い慌てた感じで聞いてきた。俺は冷静に答えた。
「ぬわぁん」
頭抱えるのと同時に変な声出したぞ。この様子じゃ、千歳さんの事、知っていそうだな。
「ちなみにだけど、今度、俺の鎮守府に異動してくる」
「うそやろ?」
爺ちゃん、口調。関西弁になってる。関東出身でしょ、アンタ。
「…あんまり話したくないんだが」
「千歳さんけしかけるぞ」
ちょっと脅してみる。
「分かった話そう今すぐ話そうだから千歳さんをけしかけるのだけはやめてくれ頼む」
「お、おう…」
効果絶大。千歳さん、あなた何をしたんだ?
「…さて、話す事が多いが、まず、お前の両親だが、生きている」
「そう、か…」
藤原大将も言っていた。生きている、と。しかし、気になるのは、
「俺の親父、大佐だって千歳さんが言ってたけど、軍属だったのか?」
そう。これである。答えてくれよ、爺ちゃん。ダメなら千歳さんけしかけるの、確定だからな。
「…そうだ。お前の両親は、提督と艦娘だった」
「……」
そう、だったのか。どうりで俺の身体能力が高いわけだ。
以前説明したと思うが、艦娘だった女性から産まれた子どもは、生身の人間同士で結ばれ産まれた子どもより、身体能力が高く頑丈だ。だから、海上走ったり、ドゥエりながら移動出来たり、殺人的な加速でサイドステップしたり出来るわけだ。
「…悟、お前のお父さんが19歳の時。今から36年前の事だった。悟に、提督の適性があることが判明したんだ」
「…」
「当時は、今よりも提督適性者が少なくてな。軍も必死になって探していた。そして、この町に検査をしに来たんだ。その時に、悟と、悟の友人だった剛。この2人に適性がある事が判明した。」
「なるほど」
「最初、ワシは反対した。提督になる、という事は、命を落とす恐れがあるから。戦うのは艦娘になった女性達だが、それでも死ぬ可能性がある。当時は、今よりも深海棲艦の数が多く、よく鎮守府や警備府などに侵攻され、死亡率が高かった」
爺ちゃんは、顔を歪めながら言う。
そう。養成所で教わったが、今は深海棲艦の数は減ってきていて提督や艦娘の殉職率が下がったが、今から20年近く前までは、よく本土に侵攻され、甚大な被害を受けたそうだ。
「悟は、ワシに似て頑固な所があった。それに、正義感が人一倍強い奴だった。自分の住む国を滅茶苦茶にされ、腹を立てていた。テレビや新聞で深海棲艦の襲撃により被害が出た事を知る度、怒りで顔を歪めていた」
「…」
「話を戻す。提督になった悟は、必死に努力し、次々に戦果を挙げていった。勿論、剛の奴も戦果を挙げていった」
「…続けてくれ」
「…そして、ある日。悟は提督を辞めた。悟が28歳の時だったな」
「なんで提督を辞めたんだ?」
言っちゃ悪いが、提督業は結構稼げる。しかも、福利厚生もしっかりしている。何かやらかさない、例えば運営資金をちょろまかしたり、艦娘に乱暴な扱い…あー、性的虐待やら無理な出撃をさせたりしない限り、辞めさせられることは無い。もしくは、機密情報を漏らしたり。ともかく、自分から辞める提督は殆ど居ない。
「…痴情のもつれだ」
「…はい?」
今、なんて言いました?
「…悟は無口で、必要以上に喋らない奴だった。艦娘になった娘達からは、硬派な人間だと思われ、人気があった。実際は人見知りが激しく、会話が苦手だから硬派に見えていただけなんだが」
「は、はぁ…」
「ある日、休暇を利用して家に帰ってきたのだが、その時、女性を2人、連れてきたんだ。正確には、無理矢理付いてきた、だが」
「えー…」
もしかして、そのうちの1人って…
「…その2人の女性は、悟が運営する鎮守府の艦娘だった。名前は、千歳型航空母艦一番艦、千歳さんと、同じく二番艦、千代田さんだった」
「あっ…(察し)」
「…悟の目は死んでいた。所謂、ハイライトオフな目をしていた。悟と違って、千歳さんと千代田さんの目はキラキラ輝いていた」
「おぉん…」
親父ィ…
「そして、千歳さんと千代田さんは言った。息子さんを私にください、と」
「うわぁ…」
「…当時は、まだジュウコンカッコカリなんて制度は無かった。そこで、千歳さんと千代田さんは、どちらが悟の妻に相応しいかアピールする為にワシの所に来た」
「そ、それで?」
「悟は悩んだ。どうするか悩みに悩んでいた。口から胃袋を吐き出す程に」
「口から胃袋を吐き出した」
「比喩ではない、本当に吐き出したんだ。ラクダの様に」
「ラクダの様に」
「そうそう、ラクダは胃袋ではなく、口蓋という喉の奥の柔らかい部分を膨らませているだけなんだ。胃袋じゃない。世界の果てまでイッ○Qでイ○トが解説していた」
「○モトが解説していた」
…トリビア語ってる場合じゃないでしょ、爺ちゃん。と思ったらテレビで得た知識を披露しただけだった。
「…ともかく、悟は悩んだ末に千代田さんを伴侶に選んだ。結果、千歳さんが覚醒した」
「千歳さんが覚醒した」
F覚かな?S覚?それともE覚かな?空母だからS覚だと俺は予想するぜ!ヅダはS覚使うと安定する気がします。
「艦載機を格納する箱の様な艤装を、まるで連邦軍の61式戦車を投げるシ○ア専用ズ○ックの様に担いで投げるようになった。時々それで千代田さんを殴りに行ったが、あまりにも速かった。あの速さ、恐らくF覚を選んでいたな」
「まさかのF覚」
千歳さん、あなた軽空母でしょ。インファイトしないで艦載機飛ばしなさいよ。脳筋なの?ウチにも約2名ほど、脳筋な正規空母が…おっと、第603鎮守府から白髪の正規空母から殺意の電波を受信した気がするから、黙ろう。
「と、ともかく、悟は千代田さんを選んだ。家を壊されたくなかったから、千歳さんに悟が欲しいなら、日本に侵攻して来ている深海棲艦を押し返してくれ、そうすれば悟を説得してやると言ってしまった。その結果…」
「その結果…?」
なんだろう。聞きたくない。
「日本に侵攻していた深海棲艦の9割が殲滅された」
「意味が分かりません」
あのさぁ、もしかして。いや、もしかしなくても、戦線のラインが上がって日本本土に侵攻して来る深海棲艦が減ったのって…
「千歳さんの功績により、日本は平和になった」
「わーお…」
千歳さんすごぉい(小並感)。恋する乙女は無敵なんだね。
「…あまりの恐ろしさに、ワシは卒倒してしまった」
「まぁ、そうなるな」
俺ならショック死する自信がある
「…その後、程なくして悟と千代田さんは提督と艦娘を辞めたと、剛から聞かされた」
「そ、そうなんだ…」
「そして、今から24年前。悟と千代田さん…いや、千代田さんは艦娘を辞めたから名前で言うべきだな。
「…そう、だったのか」
「それ以来、悟と玲奈さんはワシに姿を見せる事は無くなった。だが、準を託されてから毎月、ワシの口座にお金が振り込まれている。今も、だ。きっと、何処かから振り込んでくれているのかもしれん」
「親父…お袋…」
「何度か何処から振り込んでいるのか、調べてもらったが、毎回別の所から振り込まれているらしく、場所を特定する事は出来なかった」
「……」
「そして、千歳さんは悟達を捜す為、艦娘のまま戦い続けている。どうやら、艦娘特有のネットワークを使う為に今も軍にいるそうだ」
「女性の執念って凄いね」
それしか言えない。
「…話は変わるが、千歳さん以外にも、他所の鎮守府でも似た様な事をした艦娘が多く、事態を重く見た大本営は提督と艦娘を守る為に。修羅場を減らす為に、ジュウコンカッコカリという制度を許可したそうだ」
「艦娘って怖い(KONAMI感)」
そんな理由でジュウコンカッコカリが可能になったんだ。
「…さて、ワシはもう寝るぞ。これ以上話したら、頭がアッパッパーな事になりそうだ」
「…なんか、ごめん」
「…気にするな。ときに準よ」
「なんだ?」
「ふと思ったんだが…お前、瑞稀ちゃん以外の艦娘の娘達に好意を寄せられたりは…していないよな?」
懇願するような目で爺ちゃんは言う。あの、その…えーと…なんて言えばいいのでしょうか。はい、好かれています。そう言いたかったが、もし、そう言ったら爺ちゃんはどんな反応をするのだろう。俺が言うか否か迷っていると、俺の顔を見て何かを察した。
「…頼むから、面倒事を起こさんでくれ。ただでさえ悟の時の事でトラウマになっているのだから」
「…すいません」
疲れ切った声で顔をげんなりさせていた。こんな爺ちゃん、初めて見たぞ。
「…さて、今度こそワシは寝る。色々あると思うが、此処に居る間は何も考えず、ゆっくり休め」
「…ありがとう。おやすみ」
「うむ、おやすみ」
そして、爺ちゃんはゆっくりと、自分の寝室へ向かった。
「…あ、スマホ充電しとくか」
ケーブルを繋ぎ、充電をする。
…ちょっと怖いけど、電源付けるか。完全に電源を落としていたスマホを起動させる。暫くすると、通知が表示される。そこには…
「ふぁっ!?」
【メール…1919810件】
【留守電…114513件】
とんでもない数の通知が表示された。きったねぇ数字だなぁ。でも、留守電は1足りない。惜しいなぁ。そう思った時だった。
【通話:静流】
「ひぃ!」
静流から通話が入った。思わずスマホを放り投げてしまった。現在、10コール。…コールは未だ続いている。仕方ない、出よう。
「…も、もしもし?」
スマホを握る手と身体、そして声も震えている。頼む、穏便に済んでくれ。頼む!ギャグ小説特有の、笑って済ませられる展開になってくれ!
即行通話を切った。
聞いていない。俺は何も聞いていない。スウィイイイイトでエロい感じの、静流のウィスパーボイスなんて聞いていない。
【通話:静流】
「」
電源を切るか?いや、やめよう。ここは展開的に通話に出て怖い思いをしないと。読者もそれを望んでいる筈だ。通話ボタンを押し、出る。
「も、もしもし?」
「鎮守府で大人しくしていてください」
…あ、切れた。あ、また静流から通話だ。
切れる。それと同時に、メールが届く。相手は静流。画像付きだ。画像をクリックすると、俺と瑞稀が此処に来る途中に寄ったパーキングエリアの写真があった。空の色は茜色。夕方の様だ。今、外は真っ暗。つまり、数時間前に撮った写真という事になる。あれ、まさか?
あ、また静流から通話だ。あははは、まさか。
切れる。そして画像付きメール。開く。俺達の居る町の写真だ。写真の空は真っ暗。あははははは。
通話。出る。
切れる。画像付きメール。静流と瑞稀の実家の写真だ。
…さて、逃げるか。
通話。相手は静流。
…逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。
出る。
おい。今、貴方のお家の前に居るの、を飛ばしてるぞ。さっきのは君のお家でしょ?俺のお家じゃないよ?ダメじゃないか静流ぅ。抜けてるなぁ。まったく、おっちょこちょいなんだから。あははははははは。トイレ行こう。
俺はスマホの電源を切り、立ち上がって振り返った。
side 提督 out
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次回予告
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第31話・野獣 姉妹鶴の眼光
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