追跡鶴   作:EMS-10

51 / 214

※警告※
少し性的な表現が含まれています。
閲覧の際はご注意ください



第31話・姉妹鶴の眼光

 

side 翔鶴

 

 

鍛錬中、窓ガラスが割れる音が聞こえた。何かあったのかしら?鍛錬をやめ、急いで音のした方へ向かう途中、車庫からバイクの轟音が聞こえた。そして、凄まじい勢いでバイクが飛び出した。強化された動体視力が捉えたのは、バイクに乗る彼と瑞稀。

秘書艦の摩耶さんが叫んだ。提督が逃げた、と。

…逃げた?

 

「お姉ちゃんも連れていきなさい(どこへ行くんですか、提督!!!)!!!」

…あっ、本音と建前が逆だ。とにかく、足止めしないと。慌てず、しかし急いで艦載機を発艦させる。機銃でタイヤを狙うも、彼はバイクを巧みに操り全て避けた。このままでは、逃がしてしまう!摩耶さんはブ○イザー・アグニを。阿武隈さんはコ○マライフルを。矢矧さんはポ○トロンライフルを撃つも、全て躱されてしまった。こうなったら、妖精さん!お願い!

烈風改から妖精さんを飛び降りさせ、バイクにしがみつかせる。これで良し。あとは彼の行き先を突き止めるだけ。

 

「…はぁ。逃げられたか」

「うぅ…ダメでしたぁ…」

「こらー!仕事をほったらかすなー!」

 

摩耶さんと阿武隈さん、矢矧さんがそれぞれ走り去った提督達に向かって呟く。矢矧さんだけは叫んでいるわね。

 

「私が追いかけるわ」

3人に、彼のバイクに妖精さんを張り付かせた事を説明し、暫く彼らを泳がせてから車に乗って後を追う事にした。

 

 

……。

 

 

「お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ん゙っ゙っ゙っ゙!!!」

 

「んんっ!3号機、緊急停止の信号を受け付けません!暴走です!」

 

「ポ○トロンライフルをぶち込め!矢矧、撃て!」

 

「さっき提督に撃った時、充電が切れたわ。今、充電中だから使えないわ」

 

あら、ヱ○ァンゲリオン3号機(涼月さん)が暴走しているみたい。秋月型防空駆逐艦三番艦だから、3号機、か。安直ね。

 

「提゙督゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ゙っ゙っ゙!!!」

 

「私の指示に従ってくださぁい!んんっ!従ってくださあああああい!!!」

 

「チクショウ!やってやらァ!ATフィールドなんか怖くない!摩耶様を舐めるなァ!!!」

 

「3号機なんて粉砕よ!」

 

3号機の対応は、阿武隈さんと摩耶さん、矢矧さんに任せましょう。

 

「皆さん、初霜が、お護りします!」

 

「夕立も戦うっぽい!」

 

「秋雲さんも助太刀するよ〜?ついでに曲かけて盛り上げちゃうよぉ〜?」

 

♪魂のル○ラン♪

 

「ゔお゙お゙お゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙!!!」

 

「「「「「「ぎゃああああああああああ!!!」」」」」」

 

秋雲さんが魂のル○ランを流したら、3号機は更に暴走した。

…このままだとマズいわね。皆さん、後は頼みます。

この場からこっそり逃げ、妖精さんの視界を共有した。

 

 

………。

 

 

「実家に向かっている?」

妖精さんを通して、彼と瑞稀の会話を聞くと、目的地は彼の実家のようだ。行き先が分かれば、慌てる事は無い。私の着替えと護身用のスタンガンを持ち、トランクに荷物を入れる。ついでに、彼と瑞稀の着替えも持っていきましょう。

私服に着替えて車に乗り、数時間後。一度、パーキングエリアに寄って休憩しよう。…あ、そうだ!彼にちょっとお仕置きしたいから、写真を撮って送ろう。ついでに、メリーさんみたいに電話をして怖がらせよう♪

 

 

……。

 

 

「…重婚、か」

妖精さんが聞いた言葉を呟く。

お父さんとお母さんは、瑞稀と私の2人と重婚するのを認めているようね。

それに、瑞稀自身も、重婚を認める様なことを言っている。

彼の心は瑞稀に向いている。

今、私は必死に彼の心を私に向かうよう、アプローチをかけている。

失敗する可能性が高い。

…。

そうだ。重婚して、彼のココロとカラダを私に向けてしまおう。

瑞稀にバレないよう、こっそり。

そうだ。そうしよう!

表向きでは、私は第二夫人。表向きは瑞稀が第一夫人。

でも。

 

「私に夢中にさせてしまおう」

裏側では、私が第一夫人。

…ふふっ、いいかもしれない。

重婚すれば、それが出来る。合法的に彼と肌を重ねられる。

 

「アハッ♪」

いい。

いい!

スゴくイイ!

 

「楽しくなってきちゃった♪」

おっと、いけない。アクセル踏み過ぎてしまった。速度違反で捕まっちゃう。慌てず、ゆっくり減速っと。

少し道が細くて複雑ね。運転に集中したいから、一旦妖精さんとのリンクを切りましょう。

それにしても、お父さんとお母さんが提督と艦娘だったなんて。少し驚いたわ。

 

 

…………。

 

 

「私、静流さん♪今、貴方の後ろにいるの♪」

目的地に到着。彼の実家の庭に車を停めて、と。よし。

庭は広く、家から少し離れた所に停めたから、エンジン音で気付かれる事は無い。

…うふふっ。彼、震えてる。可愛い♪

大丈夫よ、危害なんて加えないわ?

妖精さんと共有した視界に、彼が震える姿が映る。

車から降り、彼の実家の庭から何度か通話し、彼にそう言ったあと通話を切り、ピッキングツールを使ってこっそり家に侵入した。

さぁ、振り向いて、準♪

貴方の2人目のお嫁さんですよ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(<⚫>)(<⚫>)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんばんは、旦那様♪

 

 

 

side 翔鶴 out

 

 

 

───────

────

 

 

 

 

side 提督

 

 

「ハッハッハ!まさか、本当に1人、増えるとはのぉ!」

 

「も、申し訳ございません」

 

「なぁに、謝らなくて良い。静流ちゃんも、わざわざ此処に来てくれるとは。なんだか、すまんのぉ」

 

「静流姉、ビックリしたよ!」

 

「ごめんね、瑞稀。驚かせちゃって」

 

いや、うん。驚いた。驚いて悲鳴あげちゃったよ。

遡ること数分前。静流の通話を切り、トイレに行こうとしたら、俺の背後に静流が立っていた。白い髪と白い私服も相まって、幽霊が出たのかと思い、俺、絶叫。

俺の絶叫を聞き、瑞稀、バスタオル姿で参上。

爺ちゃん、寝る邪魔をされてマジギレ、手拭いで俺の顔面をシバく。

そして、俺、畳の上でダウンなう。

 

「準、大丈夫?」

 

「…大丈夫です」

瑞稀に心配される。

俺の顔がクレヨンし○ちゃんの「前が見えねぇ」状態になっているけど、そのうち戻るだろう。

 

「バカ孫なんざ放っておいて大丈夫だぞ、瑞稀ちゃん」

 

「千歳さんけしかけ確定」

 

「準よ、しっかりせい。今、経○秘孔の一つを突いた。これで傷の治癒が早くなり、顔が元に戻るだろう。だから千歳さんけしかけるのだけはやめてくださいお願いします」

 

俺が脅すと、爺ちゃんの態度が一変。少しだけ優しくなった。千歳さん便利だな。時々利用させて頂きます。俺の胃袋を破壊しようとするんだ、少しくらい利用してもバチは当たらないだろう。あ、顔が元に戻ってきた。

 

「そういえば静流姉、どうして私達が此処に居ると分かったの?」

 

静流が持ってきた私服に着替えた瑞稀が聞く。俺も思った。何で?

 

「ふふっ、それはね?」

 

静流は微笑むと、俺の右肩を指さした。え、何?…あ、妖精さんだ。俺と目が合うと敬礼してくれた。成程、そういう事ね。

 

「仕事を放り出して行くんですもの。驚いたわ」

 

「…すまん」

思い付きで行動してしまった結果、皆に迷惑をかけてしまった。今後、気を付けよう。あーあ、帰りたくねぇなぁ。きっと、矢矧がブチギレてるだろう。おかん系艦娘だもんな、あいつ。

 

「でも、何で逃げ出したの?それに、明後日、実家に帰省するって言っていたのに…」

 

「確かに。まだ、説明してもらってないや」

 

「あー、実はだな」

俺は静流と瑞稀に理由を話した。

千歳さんが異動して来る事。

千歳さんがヤバい人だという事。

心が耐えられなくなり、瑞稀を連れて逃走した事。

全て話すと、2人は同情的な視線を向けてきた。

 

「…準、何があろうと私は貴方の味方よ?絶対、助けるわ」

 

「私もよ!だから、心配しないで!」

 

2人は俺の味方をしてくれると言った。嬉しい。

 

「さて、静流ちゃん。お腹は空いてるかい?」

 

「あ、大丈夫です。此処に来る途中で食べたので」

 

「そうか…」

 

爺ちゃん、ちょっとしょんぼりしてる。ご馳走してあげたかったんだな。

それから、今度こそ爺ちゃんは寝ると言って部屋をあとにした。

 

「…とりあえず、風呂入るか。俺は最後でいいから、静流が先に入ってくれ」

長時間の運転で疲れているだろうし。それに、レディファーストって奴だ。…あれ、静流、何その、いいこと思い付いた、みたいな笑みは。

 

「ねぇ、準?」

 

「な、なんでしょう?」

すんごく妖艶な笑みを浮かべないで。ただでさえ数ヶ月発散していなくてムラムラしてんだから。そんな俺の思いを裏切る事を静流は言った。

 

「私、ずっとハンドルを握っててタオルを持つ握力が無いの。だから、身体を洗ってくれないかしら?」

 

「」

…はい?何言ってんの君。

 

「さ、さっき、ボストンバッグ持ってきてた…」

 

「準?」

 

静流さん、落ち着いて。こっちに四つん這いで迫ってこないで!シャツの隙間から北半球見えちゃってる!黒!レース!やべぇ(やべぇ)。

 

「静流姉、何言ってるの!?身体なら、私が洗ってあげるから!」

 

瑞稀が慌てて静流を止める。ありがとう、瑞稀。助かった。

 

「瑞稀、あなた、さっきお風呂に入ったのでしょう?何度も入ると、お肌がふやけて良くないわ。だから準に頼んだの」

 

「そ、そんなの、大丈夫よ!私、若いんだから!」

 

「ダメよ、お肌は女性の命よ?ねぇ、いいでしょ?」

 

「ぁ…ぅ…」

そんな流し目で言わないで!理性ブレイクしちゃう!

 

「それなら、私達の家に行って入ってくればいいじゃない!お母さんに頼めば手伝ってくれるわ!」

 

「…ちぇ。分かりました。大人しく1人で入ります」

 

そう言うと、静流はタオルと着替えを持って風呂場へ向かった。

 

「な、何だったんだ?」

あんな静流、初めて見たぞ?いや、何度か似た様な事をスマホ買いに行った時にされたが、今回のは特に色っぽかった。

 

「静流姉、やっぱり準を狙ってる」

 

「…はい?」

瑞稀がそう言った。俺を狙っている?嘘だろ?いや、自惚れかもしれんが好かれているとは思っていた。でも、それは友達として好き、って事だと思っていた。

 

「静流姉がお風呂から出たら、聞いてみる」

 

「お、おう…」

怖い。静流がなんて言うのか、怖い。返答次第でエラいことになりそうだ。

 

「…はぁ。巨乳になりたい」

 

「いきなりどうした」

俯きながら瑞稀が言う。

 

「だって、準、静流姉の胸、ガン見してた」

 

…すいません。仰る通りです。思わず見ちゃいました。俺の視線を釘付けにされました。ごめんなさい。

 

「…準は外見で人を選ばない、って分かっているけど、不安になる」

 

「……」

不安にさせてしまった。何やってんだよ、俺。

気が付くと、俺は瑞稀を優しく抱き締めていた。

 

「あっ…♪」

 

頭を撫でる。すると、嬉しいのか俺の胸に頭を擦り付けてきた。それから暫く互いに抱き合っていると、静流が戻って来た。名残惜しいが、瑞稀から離れる。イチャイチャしてると、スタンガンでお仕置きされそうな気がしたから。俺の悪い予感は良く当たるんだ。

 

「お風呂、頂きました」

 

「おう。それじゃ、入ってくる」

タオルと着替えを持って、風呂場へ行く。脱衣所のドアを開けると…

 

 

 

黒い布が2つ、出入口の床に目立つように置いてあった。

 

 

 

 

「静流ァ!」

急いで静流達の所へ行く。静流の顔は…笑ってらっしゃる。確信犯だな。

 

「あらあら、どうしたの、準?大声出すと、茂さんが起きてしまうわ?」

 

「お前なぁ…」

からかわれているな、これ。

 

「どうしたの?」

 

「…風呂場に行けば分かる」

顔に手を当て、ため息を吐きながら瑞稀に言った。

頭にクエスチョンマークを浮かべながら瑞稀は風呂場に向かった。数秒後。

 

「『静流姉ぇぇぇぇぇぇ!!!』」

 

スーパーモード(仮名)の瑞稀が声を荒らげながら戻って来た…あの、瑞稀さん?何で両手で静流の下着を目立つように広げて持ってきたの?

 

「『なっ、ななな、なんてことしてるのよ静流姉!準はウブなんだから、こんな事すると泣いちゃうんだよ?』」

 

瑞稀さん、確かに俺はそういった事に対してはウブです。ウブですけど、泣きはしないよ?…多分。

 

「てへ♪」

 

瑞稀、キレ気味。

静流、てへぺろ。

俺、俯いて心頭滅却なう。

 

「な、なんでこんな事したのよ」

 

あ、通常瑞稀に戻った。

 

「何でって、準に異性として意識してもらいたいからよ♪」

 

…はい?異性として意識してもらいたい?それって、

 

「私、風見静流は、渡良瀬準の事が好きです」

 

…え?

 

「静流姉、やっぱり…」

 

「…ずっと、見ていました。昔、沢山貴方に暴力を振るいました。それは、貴方の気を引く為でもありました。勿論、瑞稀を護る為でもありますが」

 

「静流…」

 

「瑞稀と再び付き合う事にした。瑞稀が第二次改装を施され、第8492離島鎮守府から第603鎮守府に戻ってきた際、貴方がそう言った時、自覚しました。私は、貴方の事が好きなのだと」

 

「…」

今の俺、アホみたいな顔しているんだろうな。口開けてポカーンとしてる。瑞稀は…苦笑いだ。

 

「最初は祝福しようと思いました。でも、日に日に想いが強くなり、我慢出来なくなりました」

 

「……」

そうだったのか。

それから、俺達は静流の話を聞いた。

どうやら、俺達の後を追わせた妖精さんから、瑞稀のご両親の「重婚?一向に構わん!」を聞き、我慢ができなくなり告白したそうだ。

 

「卑しい女と思われるかもしれません。それでも…それでも、私は…」

 

顔を俯かせる静流。俺は…俺は、どうすれば…

 

「静流姉、それ、本気なの?」

 

俺がどう答えればいいか悩んでいると、瑞稀が静流に質問した。

 

「本気です。嘘偽り、一切ありません」

 

顔を上げ、真剣な表情で静流は言った。

 

「…だって、準。どうするの?」

 

「どうする、って…」

瑞稀はイタズラが成功した子どもの様な笑みを浮かべている。

どうするって…重婚…いいのか?本音を言えば、静流の事は好きだ。好きだが、それは友愛的な物だ。いや、だった。そう言うべきだろう。気が付けば、時々静流の事を考える様になっていた。

 

「私は構わないわ。重婚すれば、合法的に一緒に過ごせるから。それに、準の家に来る途中話したけど、私が幸せでも静流姉が悲しい思いをするのは嫌なの。だから、3人で幸せになろう?」

 

「瑞稀…」

いい、のか?

 

「準は難しく考えすぎなんだよ。ほら、あの時、医務室で彼女に言ったじゃない。頭で考えるな、心に思った事をそのまま言葉にして吐き出せ!って」

 

そういや言ったな。けど、どうして瑞稀が知っているんだ?

 

「彼女に教えてもらったの」

 

疑問に思っていると、俺の顔を見て何を考えているのか察し、教えてくれた。成程。

 

「俺は…」

心に思った事をそのまま言葉に出せ、か。

なら!

 

 

─【正規ルート】─

 

 

「俺は、静流の事が好きだ!」

 

「…」

「…」

 

「順番なんて付けられない…と言いたいけど、1番は瑞稀だ」

思った事をそのまま言葉にして出した。

何で静流を好きになったかって?あそこ(第603鎮守府)で共に過ごしていく間に、少しずつ惹かれていったからだ。

俺に優しく微笑みながら、仕事を手伝ってくれた。

料理当番の日には、美味しい食事を作ってくれた。

それに…

 

(最低な事だと分かっているが、その…胸押し付けてきたり…正直、嬉しかった)

と、とにかく、俺は、静流のことが好きみたいだ。いや、好きだ。

胸を云々の所以外を、正直に話した。

 

 

「…最低な男だろ?幻滅してくれて構わない」

言ったぞ。言ってやった。さぁ、何とでも言え!単純な理由で好きになったんだ。罵られようが、ぶたれようが、瑞稀に呆れられ、振られる覚悟もできている!

 

「それが準の本音なら、私から言う事は何も無いわ」

 

「…えっ?」

色々覚悟していたが、待っていたのはそんな言葉だった。

 

「好きになるのに、理由なんて無いと思う。気が付いたら好き。それでいいと思うよ?」

 

「瑞稀…」

いい…のか?

 

「どこかで聞いた言葉だけど、恋は頭じゃなくて、心でする物、って言われてるし、準のそれは間違いじゃないと思うよ?」

 

「…」

 

「静流姉、おめでとう!」

 

俺が呆然としていると、瑞稀は静流にそう言った。

 

「…本当にいいの、瑞稀?」

 

静流は恐る恐るといった感じで瑞稀に言う。しかし、瑞稀は、

 

「いいよ!…それに、私だけ幸せで静流姉が不幸なんて、嫌。だから、さっきも言ったけど、3人で幸せになろうよ!」

 

笑顔でそう言った。

本当にいいのだろうか?こんな、不誠実な男を…。

色々考えていると、

 

「さて、まだまだ話すべき事は多いけど、お話は終わりにして今日はもう寝よう?」

 

「…分かった」

確かに。まだまだ話し合う事は多い。けど、時刻は23:30だ。爺ちゃんは既に寝ている。静かにしよう。

 

「とりあえず、俺は風呂に入る。瑞稀と静流は先に寝室に行ってくれ」

 

「分かった。あ、私たちが寝る所、布団1組しか用意してないから、押入れから布団出しておくね」

 

「頼んだ」

この家には布団が3組ある。内、1つは爺ちゃん用。もう1つは俺用。残り1つは予備だ。今日は瑞稀と2人で1つの布団に横になる予定だったから、俺達が寝る客間には1つしか敷いていない。結構大きな布団だから、布団が2組でも3人は余裕で包まれる。

再びタオルと着替えを持ち、風呂場へ向かった。

 

 

───────

 

 

「お布団出すから、ちょっと待ってて」

 

「ありがとう、瑞稀…あら?」

 

「どうしたの、静流姉?」

 

「み、瑞稀、これ…」

 

「ん〜?何…えっ!?」

 

「…」

 

「…」

 

「…あはっ♪」

 

「…これって、そういう事、よね?」

 

「だね」

 

「…あの、瑞稀」

 

「2人で襲おう!」

 

「えっ!?」

 

「いつまでもフラフラさせたくないし、準に覚悟決めさせたいから、2人で襲おう!」

 

「い、いいの?」

 

「うん、いいよ。既成事実作っちゃおう?」

 

「…分かったわ」

 

「ふふふ…あはははは♪」

 

「…うふっ♪」

 

 

───────

 

 

…………。

 

 

「ふぅ、いい湯だった」

こんなにゆったりと風呂に入ったのは、いつ以来だろう?向こうじゃ、ゾンビやサキュバスが突撃してくる恐れがあるから、のんびり入っていられない。

髪をドライヤーで乾かし、台所で麦茶を飲んで水分補給。さて、寝るか。瑞稀と静流が待つ客間への襖を開けて…あれ、2人とも、俯いたまま布団の上で正座して、どうしたんだ?

 

「……」

「……」

 

2人は無言。本当にどうしたんだ?疑問に思い、声をかけようとしたら、瑞稀が口を開いた。

 

「…ねぇ、準」

 

「な、なんでしょうか?」

何故か本能的恐怖を感じた。何でかって?瑞稀の声が…なんて言うの?嬉しさを堪える様な、とにかく嬉しそうな声だ。マジで何があったんだ?

 

「既に、臨戦態勢なのね…うふふ…」

 

「は、はい?」

静流の声も、どこか嬉しそうだ。だから、何でそんなに嬉しそうなんだ?疑問に思っていると、正座したまま瑞稀は箱を俺に見せてきた…って、オイ!近藤さんじゃねーか!何でそんな物が…そういや、爺ちゃんが用意したんでしたね、それ。

 

「「……」」

 

あ、2人からオーラが見える。めっちゃ見える。ピンク色した如何わしいオーラが…あ、待って、瑞稀さん、急に立ち上がったと思ったら、俺の両腕掴まないで!静琉さん、無言で襖閉めないで。待って、待って、ねぇ、ちょっと待って!落ち着いて話し合おう!話せば分かる、きっと分かり合える。だから落ち着いて?ね?服脱がそうとしないで?ねぇ?聞いてる?ねぇ?ねぇってば!?

 

「暴れないで、暴れないで、貴方の事が、ずっと好きだったんです!」

 

「マズいですよ!」

うん、静流。俺の事好きなのは分かったから、冷静に俺の足を掴まないで?あと、その言葉は色々マズいですよ?結構前に涼月にそれ、言われたっけ。懐かしいなぁ。

瑞稀は腕、静流は足を持っているから、今の俺は宙に浮いている。そのまま布団の上まで運ばれた。

 

「じゃけん夜戦イきましょうね〜!」

 

「瑞稀、そんな汚ったない言葉、何処で覚えたの?」

 

「足柄達と一緒に見た」

 

「足柄ァ!!!」

1ヶ月禁酒にするぞバッキャロー!瑞稀になんてもん見せてんじゃー!

 

「『さぁ、素敵なパーティー、始めましょう?』」

 

「それ、夕立の台詞ゥ!」

他の娘のアイデンティティ奪っちゃダメでしょ!というか、スーパーモード(仮名)にならないで!本気出さないで!

 

「あらあら。ここには私と瑞稀の2人が居るのに、他のオンナの名前を言うなんて…お仕置きが必要ね?ねっ?」

 

それ由良の口癖ェ!

 

「ま、待て待ってくれ!こ、心の準備が…」

 

「「『40秒で準備しな』」」

 

「ドー○船長おおおおぉぉぉぉぉ!!!」

名作の名言をアレンジして言わないで!ファンの人怒っちゃうよ?

 

「「『うふふ…うふふふふふ♡』」」

 

「ぁ…ぁぁ…」

腕…スーパーモード(仮名)瑞稀に押さえられている。

足…静流に押さえられている。

瑞稀と静流…艦娘のパワーを使っている。

翔鶴型航空母艦…16万馬力。勿論加減してくれている。

2人の目がハート。

ここから導き出される答えは…

 

「「『貴方がパパになるのよ!(ですよ!)』」」

 

「う、うわあああああああああああああッッッ!!!」

待て待て待て待て!俺達、まだジュウコンカッコカリしてない!

 

「ま、まだダメだ!ジュウコンカッコカリしていない!」

 

「大丈夫よ!」

 

「何でだよ!」

何で大丈夫って言えるんですか、瑞稀さん。

 

「準、世の中にはこんな言葉があるわ。バレなきゃ犯罪じゃない」

 

「ダメでしょ!」

静琉さん、そんなドヤ顔で言っていい言葉じゃないですよ、それ。…あ、待て、待って、上着脱がさないで。ズボン下ろさないで。待って、待って、待ってえええええぇぇぇぇ!!!

 

「『ジュウコンカッコカリの条件まで遠いけど、必ず満たせるよう頑張るわ!』」

 

「えぇ!私達なら、直ぐに出来るようになるわ!沢山戦果を挙げて、準の階級を准将まで上げてあげます!」

 

瑞稀…静流…ありがとう。そこまで俺の事を想ってくれて。でもな、でもな!

 

「2人して鼻血ダラダラ垂らしながら恍惚とした顔で言わないで!」

色々台無しだよ!あ、ちょ、本当に待って!ボクサーパンツに手をかけないで!アッーーー!!!

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


提督達、今頃何してるのかなぁ。ナニだったり。あははっ、まっさかねぇ。もしそうだったら、提督、パパになるんだよねぇ。お祝いの品、考えとこ。それにしても退屈ぅ。鈴谷、つまんなーい!…あれ、時雨、どうしたの?手榴弾なんか箱に詰めちゃって。えっ、宅配…する?…え?…えっ!?


第32話・壊れ始める雨


「心なんて、簡単に壊れる物なんだよ、提督」














※今回、ルートが分岐しました。IFルートは番外編で書こうと思います。
※今週金曜辺りに、ゾンb…涼月の過去編を投稿する予定です。胸糞です。覚悟を決めておいてください(迫真)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。