追跡鶴   作:EMS-10

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【用語解説】
41型手榴弾・改…第8492離島鎮守府の淫乱ピンク工作艦明石と妖精さん達が作り上げた、変態技術愛と勇気と性欲の結晶の1つ。
駆逐艦娘用武装。一応、全艦種使用できるが、駆逐艦娘に持たせるのが望ましい(ヒット&アウェイに適している武装の為)。
敵へ投げ付ける武装。
41型手榴弾・改は破壊力に特化しており、例え無傷の戦艦だろうと一撃で轟沈させられる火力を秘めている。しかし、爆発範囲が極端に狭い為、使用するには技術が必要。
普段はリミッターがかけられており、この状態なら例え生身の人間だろうと直撃しても、アフロヘアーになり服が破けるだけで済む。リミッターを外すと、上記の通り、凶悪な物に変貌する。
決してニ○ード争奪戦争用に作られた物ではない。



第32話・壊れ始める雨

 

 

side 提督

 

─渡良瀬家、実家─

 

 

早朝。

 

 

 

「ぁ…ぁぁ…」

 

「ぅ…ぅぅ…」

 

布団に横たわったまま、呻き声を出す瑞稀(途中で元に戻った)と静流。俺、ボクサーパンツ一丁。

 

「あ、あんなの…ないよ…」

 

「ひ、酷いわ、準…」

 

ああ。分かっている。酷いことをしたのは自覚している。

 

「だが俺は謝らない!」

昨晩、俺は瑞稀と静流を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明鏡止水で返り討ちにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、艦娘のパワーを超えるなんて…ズルいよ…」

 

「うぅ…16万馬力のパワーなのに…」

 

「力だけで勝てると思うな」

さて、何をしたか説明しよう。

昨晩、服を脱がされ手足を掴まれ絶体絶命に陥った。

そして、静流が俺のボクサーパンツに手をかけた瞬間、俺は覚醒した。

 

『見えた!見えたぞ!水のひと雫』

昔、爺ちゃんが1度だけ見せてくれた、あの境地。俺は明鏡止水の境地へ達した。身体の色は肌色のままだったが。

瑞稀達の動きがスローモーションの様に見えた。

まず、スーパーモード(仮名)の瑞稀の角を掴んだ。腕を掴まれていたが、手は動く。どうやったか覚えていないが、とにかく角を掴んだ。

 

『ああああああっ♡』

 

以前、性感帯だと言っていた角を掴み、スーパーモード(仮名)瑞稀に強襲!あっさりと掴んでいた俺の腕を離してくれた。

 

『えっ!?』

 

次に、瑞稀の嬌声を聞き戸惑った静流の両脇腹を自由になった手で容赦なく突く!

 

『アォンッ♡』

 

他の人なら軽く悶える程度だが、静流は脇腹がとにかく弱い。着ているのはパジャマで、私服より生地が薄いから、効果は絶大!俺の足を離してくれた。

こうして自由になった俺は、急いで2人から距離を取る。

その後は…すまん、うろ覚えだ。確か、経○秘孔突きまくったような気がする。

そして、気が付けば朝になり、瑞稀と静流は布団の上で息も絶え絶えの状態になっていた。

 

「うぅ…そんなに私達とするのが、嫌なの?」

 

「したいです」

即答。

 

「な、なら、何で逃げたの?」

 

「初心者が3Pなんて厳しいです」

知識はあるにはあるけど、実戦で出来る自信が無い。

 

「私達で練習しようよ!だから今からドンパチしよう?」

 

「黙らっしゃい!」

何でそういう事言うの。もっと恥じらい持ちましょう、瑞稀さん。

 

「おねーちゃん、拒絶されたみたいで悲しい…」

 

「…すまん」

手で顔を覆って涙声で言わないで、静流。物凄い罪悪感が…。

 

「あーあ、静流姉泣かせた。罰として【自主規制】して責任取って」

 

「わ、分かっ…お断りします!」

危うく騙される所だった。

 

「「…チッ」」

 

おい、舌打ちすんな。女って怖い(今更)。

…ん?襖の外から気配を感じるぞ?

既に明鏡止水は解けているが、それでも未だ感覚が鋭いままだ。俺は素早く襖を開けた。

 

「…あっ」

 

耳に紙コップを当ててこちらの様子を聞いていた爺ちゃんが居た。

 

「…」

「…」

「…」

「…」

 

無言。壁時計の針の音だけが大きく聞こえた。

 

「…朝食の準備をしてきます」

 

爺ちゃん、惚けた顔でそう言って逃げようとする。

 

「茂さん」

「何をしていたんですか?」

 

しかし、2人に肩を掴まれる。物凄くイイ笑顔だ。…あ、この笑顔はヤベー奴だ。

 

「はっはっは」

 

爺ちゃん、笑う。冷や汗ダラダラだぞ。

 

「ねぇ、茂さん?」

「もう一度聞きますね?」

 

 

「「なにをしていたの?(ですか?)」」

 

 

 

「…曾孫が誕生する瞬間を聞こうとしていました」

 

「オイ」

何やってんの。…あ、瑞稀、LM-ジ○オス取り出した。刀身を舐めながら流し目で爺ちゃん見て笑ってる。静流はス○ナーK取り出してチャージしてる。

 

「こ、これ、老人に乱暴なことするでない。ほ、ほら、瑞稀ちゃん、笑顔笑顔。女の子がそんな顔するでない」

 

爺ちゃん、瑞稀はさっきから笑っているよ?攻撃的な方の笑顔だけど。

 

「し、静流ちゃん、ワシは信じてるからな?そんな、物騒なスタンガンをワシに当てないと」

 

静流、無言の笑顔のままフルチャージ。爺ちゃん、骨は拾ってやる。

 

「じ、準!助けてくれ!」

 

「無理です」

助けたら、確実に俺がとばっちり受ける。

 

「ふふふふふ♪」

「ふふふふふ♪」

 

「ま、待ってくれ、出来心!出来心じゃったんじゃ!頼む、許…ぬおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

渡良瀬家に、老人の絶叫が響いた。

 

 

…………。

 

 

「…電話するか」

瑞稀と静流が爺ちゃんをシバき始めて数分後。まだ続きそうだから、俺は鎮守府に連絡を入れる事にした。流石に放置するわけにはいかないからな。怖い。けど、放置したらもっと怖い。

静流が持ってきてくれた私服に着替え、充電ケーブルに繋いだままスマホの電源を入れると。

 

「…ヤバい」

メールと留守電の数がとんでもない事になっていた。こんな数、もう二度と見る事は無いだろう。…無いよね?

震えながら、鎮守府へ電話。ワンコー…

 

『はい、こちら第603鎮守府です』

 

ル。鳴る前に電話が繋がった。この声の主は…ヤバい。

 

「も、もしもし…」

声ひっくり返った。

 

『…』

 

無言。やべぇよやべぇよ。だって、電話の相手は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何処に居るんですか、提督♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、矢矧…」

おかん系艦娘、矢矧だった。やべぇよ…なんだよ、そんな甘えたような高い声出して。君のお姉さん、阿賀野みたいな声じゃん。君、普段そんな声出さないでしょ?

 

『何処に居るの?提督♪』

 

「じ、実家に居ます」

声がかすれた。全身汗だく。頭の中で処刑用BGMが…北○の拳の、例のあの曲が流れ出した。

 

『そう。分かりました♪』

 

お、落ち着け。対応次第では何とかなる。まだ処刑用BGMはイントロが始まったばかりだ。テーレッテーが流れる前に何とかしよう。えーと、なんて言い訳しよう?考えていると、

 

『…帰ったら覚えておきなさい』

 

テーレッテー♪テレレレテッテテテー♪はい、処刑確定。終わり。閉廷!

もう無理。地獄の底から響くような低い声で言われた。逆転勝利不能。

俺が何か言う前にそう告げられ、俺はorzのポーズをとる。

 

『…はぁ。いい、あなたは提督なのよ?もっと自覚を…』

 

それから暫く、おかんに怒られた。

 

『…次からは気を付けなさい。いいわね?』

 

「…はい」

 

『声が小さい!』

 

「はい!」

おかんだ。

 

『これ以上電話では叱らないわ。とりあえず、提督には有給を2日分追加、瑞鶴さんと翔鶴さんには有給を5日分使っている事にしておいたわ』

 

「…すまん」

帰ったら再びお説教する気なのね。あと、色々面倒な手続きさせて本当に申し訳ない。ありがとう、矢矧。

 

『悪いと思っているなら、今後二度としないで。いいわね?』

 

「はい」

 

『…それじゃ、切るわね。あぁ、そうそう、帰ったら色々大変な目に遭うかもしれないわ』

 

「…矢矧に叱られる事か?」

確かに大変だな。

 

『…涼月、榛名』

 

「あっ…(察し)」

すっかり忘れてた。矢矧より、その2人の方がやっべぇじゃん!

 

『…とにかく、休暇を楽しみなさい。それじゃ』

 

「あっ、ちょ…切れた」

色々聞こうとしたが、通話は無慈悲に切られた。

…矢矧よりやっべぇのが居たんだったな。

…よし。

 

「瑞稀と静流に慰めてもらおう」

ただし、R15内の方法でな!

 

 

<フタエノキワミ…アッー!

<瑞稀ちゃん、や、やめてくれ!ワシが悪かった!

<電撃マッサージしてあげます♪

<静流ちゃん、それはマッサージにならない気がします!

 

 

…頑張れ、爺ちゃん。

それから1時間ほど、瑞稀と静流の怒声と、爺ちゃんの悲鳴が渡良瀬家に木霊した。

 

 

 

side 提督 out

 

───────

────

 

 

side 時雨

 

─第603鎮守府、会議室─

 

 

「提督達は実家に居るそうよ」

 

提督が瑞鶴さんを連れて脱走、翔鶴さんがそれを追って一夜が明けた。工廠で艤装の整備をしていると、矢矧さんから放送で会議室に集まるよう言われ、中に入るとそう説明された。

実家。提督が生まれ育った家。確か、ここ周辺ほどじゃないけど、田舎だって提督が言ってたっけ。それに、日本有数の温泉街でもあるそうだ。

 

「色々言いたいことがあると思うけど、それは提督達が帰ってきてからにしましょう」

 

確かに。言いたい事が山ほどある。でも、それは提督が帰ってきてからにしよう。

それから、矢矧さん達と提督の居ない間どうするか話し合った。

 

 

…………。

 

 

「…はぁ」

あの日。扶桑が此処に襲来してから色々準備をしてきたけど、あまり上手くいっていない。

まず、提督を連れ出す方法。決して誰かに、僕が連れ出した事を悟られてはならない。もし僕が連れ出した事がバレれば、計画は破綻してしまう。

次に、提督を監禁する場所。あまり人目につかない、かといって山奥等の人が来ない所に監禁すると、いつかボロが出てしまう。食料品などを買いに行く必要があるから、あまりそういった辺鄙な所に監禁すると、怪しまれる恐れがある。人目があまりなく、かつ目立たない場所。これらの条件を満たす場所が中々見つからない。

 

「どうしよう…」

他にも問題が山積みだ。監禁して洗脳するなら、艦娘を辞める必要がある。艦娘で在り続けると、艤装を格納していても妖精さんの特殊な電波で場所を特定されてしまう恐れがある。養成所で教わったんだけど、敵前逃亡した艦娘を捜す、という目的の為にこの様な措置が取られているそうだ。それもそうか。

艤装、例えば駆逐艦の主砲は大体、ハンドガン位の大きさなのに大砲並の火力がある。悪用されたら大変だもんね。そういった措置が取られるのも仕方ないか。

 

「しぐしぐ、どったの?」

 

「あ、鈴谷さん」

僕が考え事をしていると、先日異動してきたばかりの鈴谷さんに声をかけられた。外見はイケイケな女子高生みたいな人だ。艦娘の装束もそれっぽい。まだ此処に来てそんなに時間は経っていないけど、持ち前の明るいキャラで皆と打ち解けている。それに、皆に渾名をつけて呼んでいる。僕の事は、しぐしぐ、って呼んでくる。

 

「そんな暗い顔して、ダメだよ?女の子は笑顔でなきゃ♪」

 

「…」

提督が言ってたっけ。鈴谷さんは元気の塊で、一緒に居ると悩んでいるのが馬鹿らしくなる、って。

 

「何が原因でそんな顔してるか知らないけど、笑顔笑顔!」

 

「鈴谷さん…」

 

「それが無理なら、お腹いっぱいになろう?お腹が空いていると、余計イライラしちゃってダメになるよ?」

 

「…」

言われてみれば、今日はまだ何も食べてないや。

空腹は、怖い。正常な判断が出来なくなる。イライラする。力が出なくなる。

艦娘になる前、僕と僕の家族は常に空腹に悩まされていた。それを解消する為に、僕は、僕達は艦娘になった。

僕と僕の姉妹は艦娘適性検査を受け、艦娘になった。なれたのは、僕と夕奈もとい夕立。姉と三女の4人だった。他にも姉妹が居るけど、残念ながら適性は無かった。

艦娘になって此処に所属してからは、安定した生活を送る事が出来ている。お金も貰えて、毎月家に幾らか振り込んでいる。

 

「ほーら、何か食べよう?今朝は鈴谷がゴハン作ったんだ。自信作だから食べて食べて♪」

 

「す、鈴谷さん!?」

そんな、いきなり手を引かないで。転びそうになったけど、なんとかバランスを取った。

 

「1名様、ご案内〜♪」

 

「…」

とても明るくて、元気のある人だ。僕も、鈴谷さんみたいなキャラになれば、提督は振り向いてくれるのかな?

 

(…とりあえず、何か食べよう)

難しい事を考えるのは後にして、今は胃に何か詰めよう。僕は鈴谷さんに手を引かれながら、そんなことを考えた。

 

 

side 時雨 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

瑞稀と静流が爺ちゃんをシバき終え、俺の所に戻ってくると、静流が言った。

 

『私達は久々に此処に戻って来たのだから、少し出かけない?』

 

確かに。俺は6年ぶりに実家に帰ってきた。静流達もそうらしい。だから、3人で出掛ける事にした。

 

『き、気を付けて行ってくるんだぞ』

 

全身ボロボロの爺ちゃんが言った。おぉう、顔中青アザだらけだ。あの爺ちゃんがここまでボコボコになっているの、初めて見た。珍しいから記憶にしっかり残しとこう。

財布とスマホを持ち、静流が乗ってきた車で某世界遺産へと車を走らせた。

ここは温泉街でもあり、世界遺産もある。見て回る所は多いが、地元の人達にとっては当たり前にある存在の為、「いつか見に行けばいいや」程度の感覚で、見て回らない人が多い。俺達もその中に含まれている。

 

(そういや、温泉の予約、取り消すか)

以前、瑞稀と2人で温泉に行く、と約束し、此処とは別の温泉街のとある宿を予約したんだが、今は静流も居る。

 

(数ヶ月待ちの人気な所だったけど、仕方ないな)

ほんの少しだけ残念だが、静流を置いて行く気は無いので、キャンセルしようと思う。

…おっと、運転に集中しよう。考え事をしながらだと、事故るかもしれん。

いいか、ながら運転は非常に危険だ。特にスマホやナビを弄りながらの運転は危険だ。絶対するなよ?俺との約束だぞ?

 

 

…………。

 

 

車を走らせて数十分後。目的地に到着した。名前は出さないが、見ない猿、聞かない猿、言わない猿がある世界遺産だ。

駐車場に車を停め、降りた。周りを見ると、学生さんが多い。どうやら修学旅行の団体さんみたいだ。

 

(艦娘の娘達が頑張ってくれているから、こんな平和な光景が見られるんだな…)

深海棲艦によって観光地に人が来なくなり、一時期日本の観光地は経済的な意味の壊滅的打撃を受けた。しかし、今では深海棲艦出現前と同じ位にまで人が来るようになった。平和って素晴らしい。

 

(こうなったのって、千歳さんのおかげ…いや、千歳さんのせい、って言った方がいいのかもしれない)

そんな、とんでもない人が今度、俺の鎮守府に異動してくるんだよなぁ。爺ちゃん曰く、俺のお袋の実姉らしい。どう接すればいいんだ?

 

(あっ、ポンポンペイン)

胃が痛み出した。

 

「大丈夫?唾液飲む?」

 

「飲…ここは観光地です。やめましょう」

 

「チッ…」

 

瑞稀、舌打ちしない。とても魅力的な提案だけど、誰かに見られる恐れがある。観光客とかに写真とか撮られてSNSなんかにうpされてみろ、社会的に終わる。

 

「路地裏に行けば、バレないわ」

 

「そうだな…行きませんからね?」

静流、耳元で囁かないで。反応しそうになった。…おい、その手に持ってるの、小型のスタンガンじゃないですか。例のゴツいスタンガン(ス○ナーK)じゃないけど、そんな物騒な物、持ち歩かない。もしかして、気絶させて乱暴な事する気なの?やめて!提督に乱暴な事する気なんでしょ!?同人誌みたいに!

 

「チッ…」

 

静流、お前も舌打ちしない。

…あ、胃の痛み引いた。これなら大丈夫そうだ。

 

「ほら、行こうぜ」

2人に促す。

 

「分かった♪」

「分かりました♪」

 

2人は嬉しそうにそう言うと、瑞稀は俺の右腕に、静流は左腕にそれぞれ腕を絡ませた…って、オイ!

 

「何してんの!?」

これ、アレじゃん、カップルとかがやる、所謂、腕組み。しかも、手をカップル繫ぎされている。恥ずかしい!

 

「何って」

「腕組みです」

「ついでに」

「カップル繫ぎです」

 

いや、2人してキョトンとした顔で首をかしげながら「こいつは何を言っているんだ?」みたいな顔しながら言わないで。腕組みされているのは分かる。俺が聞きたいのは、何で腕を組んでいるか、って事なの。

 

「お嫁さんだから」

「イチャイチャしたいから」

 

俺の顔から何を考えているのか察して、そう言った。…さいですか。

 

 

<見ろよ、イチャついてんぞ

<マジかよ

<写真撮ろうぜ

<リア充爆発しろ

 

 

「……」

修学旅行に来ていると思われる、学生の集団からそんな声が聞こえた。やめて、見ないで、写真撮らないで。

 

「見せびらかしましょ?」

「いいわね、それ」

 

瑞稀、静流、勘弁してください。精神的に死ぬ。

それから、2人に腕を組まれたまま、世界遺産を見て回った。周りの人達からジロジロ見られたけど、瑞稀と静流の嬉しそうな顔を見たら、どうでも良くなった。

 

(幸せだなぁ)

とても嬉しい。こんなに幸せでいいのか?…いいんじゃないか?今まで色々苦労したんだ。幸せになってもバチは当たらないさ。

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

side 時雨

 

 

「…はぁ」

鈴谷さんと食事を摂ったあと、再び工廠で艤装の整備をしている。夕張さんに任せればいいって?そうもいかないよ。彼女にいつも任せっきりにするわけにはいかない。それに、もし夕張さんが居ない時に故障したら、直せなくなる。だから、整備方法を覚える為にこうして自分の艤装を弄っている。

 

「複雑過ぎるよ」

今までの艤装と違い、分離・合体が可能になった。背中に付けるのは従来の物と同じなんだけど、左右に分離し、両手で持てる様になった。砲身の形も変わり、涼月や摩耶さんほどじゃないけど、対空性能が大幅に強化された。そのせいか、機構が複雑で整備する箇所が物凄く増えた。

 

「…なんだかなぁ」

第二次改装によって艤装が別物と言って良い位に変わった。それだけでなく、僕のカラダも劇的に変わった。

今まで低かった背は、同年代の娘達の平均より高くなった。それでも涼月には負ける。

胸も大きくなった。それでも涼月には負ける。

お尻も女性らしい形になった。それでも涼月には負ける。

対空性能も高くなった。でも、涼月と比べると劣る

 

…あれ、僕、涼月の劣化版じゃない?

 

それだけじゃない。妹の夕立と僕。

夕立は重巡を超える火力を持っている。

夕立は僕より背が少しだけ高い。

夕立は僕より胸とお尻が大きい。

 

 

妹より劣っている

 

 

昔は僕と同じ背格好だったのに、夕立は第二次改装によって大きく成長した。

言葉は悪いけど、夕立の精神は僕より幼い。でも、それを補って肉体は非常に大きく育った。

 

「ぁ…」

気付いた。気付いてしまった。

僕は。僕は。

 

「他の娘達の劣化版だ…」

このままじゃ、提督を手に入れる事が出来ない。

…落ち着いて。その為に彼を拉致・監禁して洗脳するんだろう?大丈夫。大丈夫だから。

 

「落ち着くんだ、僕」

…でも、不安だなぁ。

 

 

…………。

 

 

「─ぐ──ぐ─」

 

…なんだい、煩いなぁ。

 

「─しぐ──時雨!」

 

「ッ!?」

気が付くと、目の前に鈴谷さんの顔があった。その顔は、心配そうに僕を見ていた。

 

「すず…や…さん?」

 

「あー、やっと気付いたよ」

 

「僕…あれ?」

いつの間にか小型のケースに、41型手榴弾・改が大量に詰め込まれていた。数えると、30個もあった。しかも、対深海棲艦用にリミッターを解除された、殺傷力のある物だ。今まで鎮守府の中で使った物とは違う、アフロヘアーになり服が破けるだけでは済まない、肉片すら残さない凶悪な物が、だ。

 

「そろそろお昼だから呼びに来たんだけど、しぐしぐったら、ケースを見つめたまま微動だにせず立っていて、声を掛けたんだけど、中々反応してくれなくて焦ったよ」

 

「…そう、なんだ」

 

「うっへぇ、これ、やっばい奴じゃん!1個だけでも直撃すれば、無傷のフラル改(ル級改flagship)が轟沈する奴が、30個も!鬼・姫級でも相手にする気なの?」

 

「…そう、だね」

ある意味、鬼・姫級と戦うようなもの、かな。

 

「宅配しようと思っているんだ」

 

「たっ、宅配ぃ!?」

 

「…ふふっ」

 

「ッッッ!!?」

 

「どうしたの?」

僕の顔に、何か付いているのかい?鈴谷さん。そんな驚いたような顔をして。

 

「…あー、そろそろお昼だから、しぐしぐを呼びに来たの。鈴谷、準備があるから先に食堂に行くね?」

 

「うん、分かった」

鈴谷さんはゆっくりと工廠を出て行った。

…これ、しまおう。今はまだ、使わない。今は、ね。

…数ヶ月前の僕が見たら、どんな反応をするのだろう。

あの頃は、ただ見ているだけで満足していた。

それが今じゃ、こんな事をしている。

瑞鶴さんがここに来てから、僕の心は少しずつおかしくなっていった。

ちゃんと、自覚している。本当は、悪い事なんだと。

でも、止められない。止まりたくない。

欲しいんだ。提督、君という存在が。

 

「…壊れてるなぁ」

イカれているとしか思えない。

それでも、いい。

僕は、僕の欲望を満たすために、提督。君を拉致して監禁、そして洗脳する。

理性なんて。良心なんて捨てるんだ。

 

「心なんて、簡単に壊れる物なんだよ、提督」

些細な理由や出来事で、あっさりと壊れてしまう。今の僕みたいにね。

 

「…あはっ♪」

覚悟してね、提督♪

 

 

side 時雨 out

 

 

───────

────

 

side 鈴谷

 

(っべー、マジ、っべーなんですけど!)

そろそろお昼だから、工廠で作業をするって言ってたしぐしぐを呼びに行ったんだけど。

 

(しぐしぐのあんな顔、初めて見た)

笑顔。だけど、本能的恐怖を感じさせる笑顔だった。

 

(それに、秋雲から借りたアニメと同じ目だった)

School ○aysの、言葉様みたいな目をしてた。あれ、明らかヤバい奴だ。

 

(何かあったのかな?)

養成所では大人しい、どこか達観したような少女だった。

 

(何があったんだろう)

聞きたい。でも、怖い。

 

(あの日、ってわけじゃなさそうだし…)

うーん…分からん!

とりあえず、

 

「ご飯食べてから考えよう!」

鈴谷、難しく考えるの、苦手なんです。

それに、私一人だけじゃ解決出来ないかもしれない。そうだ、提督に相談しよう!

 

(あっ、でも今、瑞鶴と翔鶴さんと休暇中だったんだ)

オタノシミを邪魔して瑞鶴に爆撃されたくないし、帰ってきたら相談しよう。

 

(早く帰ってこないかなぁ)

此処、田舎すぎて遊べる所少なくて、退屈なんだよねぇ。

 

「そうだ、熊野からかって気分転換しよう!」

江ノ島鎮守府に居るお嬢様キャラを作っている実妹の顔を思い浮かべる。

 

「あの奇声聴かないと、なーんか調子出ないんだよねぇ」

とおおぉぉぉう!だっけ?あれ、初めて聞いた時、呼吸困難になるほど笑ったなぁ。

 

「あ〜、くまのんに会いてぇ〜」

私が付けた渾名が、某ご当地キャラと名前被ってるからTシャツあげたらマジギレしたっけなぁ。あっはは!

 

「…っと、到着!」

目的地の食堂に到着。さてさて、準備しちゃいますか!

 

 

side 鈴谷 out

 

───────

────






次回予告


修羅場ッ!それはッ!愉悦ッ!圧倒的ッ!愉悦ッ!
…ゴホン。失礼、夜戦明けテンションのせいです。
執務が終わり寝ようとしたら、神通くんに襲われ朝までコースですよコンチクショウ!
睡眠時間をください!本当に勘弁してください。寝かせてください。
…そういえば、今日からでしたね、渡良瀬提督が三日間、休暇を取るの。
私も、あと少しで休暇になります。そしたら、山風くんと暁くんを連れて遊園地に行くんだ…デュフフフ…
…川内くん、いつの間に後ろに。
あっ、待って、やめて!やめっ…グワーッ!!!


第33話・湯煙と男と姉妹鶴


「ここ、混浴だったのね。あはははは」
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