追跡鶴   作:EMS-10

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小説情報に注意事項を増やしておきました。
これで被害者が減ってくれる…筈。


活動報告に、質問箱的な物を作りました。もし気になる事がございましたら、気軽に質問してやってください。




※警告※
\アッー/




第33話・湯煙と男と姉妹鶴

 

side 提督

 

 

─渡良瀬家─

 

 

夜。

 

 

「いいか、部屋には絶対入るなよ、絶対だぞ!?」

瑞稀と静流、俺の3人で某世界遺産を見て回り、気が付くと夕方になっていた。どこかで食べていっても良かったが、そうすると爺ちゃんが寂しい思いをするかもしれない。なので、家に戻る事にした。その際、爺ちゃんに電話をして食材はあるのか聞いた。幸い、食糧は沢山あるらしく、買出しする必要は無かった。どうやら俺が帰省すると知った日に、色々買い込んでくれたらしい。なんだかんだ言って、爺ちゃんは優しい。

さて、帰宅して4人で夕飯を作り食べるまでは良かった。その後が問題だった。まず、風呂に入ろうとしたら、瑞稀達に「背中流すよ?」と言われた。とても魅力的な提案だったが、襲われそうな気がしたので却下。案の定、1人で入浴していたら淫乱姉妹が突入してきた。その場は風呂桶を使ってお話(物理)してご退場して頂いた。が、その後が問題だった。

 

『さぁ、一緒に寝ましょう!』

『大丈夫、ナニもしませんから!』

 

瑞稀と静流に客間に連行されそうになった。このままでは昨晩みたいな事になりかねない。なので、俺は自分の部屋で寝ることにした。幸い、部屋には寝袋があるのでそれを使う事にした。何で寝袋があるかって?昔よく瑞稀が泊まりに来たから、買ったんだ。

そして、2人に部屋に入るなよと釘を刺し、今に至る。

 

「懐かしいな」

自分の部屋を見て、そう呟く。たった6年だが、懐かしさを感じた。爺ちゃんが掃除してくれたのか、埃は溜まっていない。ありがとう、爺ちゃん。

 

「あ、静流に頭叩き付けられた跡がある」

昔、ここに静流がカチコミしてきた際、俺の頭を掴んで叩き付けられた壁を見る。ベッコリ凹んでいる。

 

「あの静流が、俺の事を好きだなんて…」

未だ信じられない。人生、何が起こるか分からないもんだな。とりあえず、ドアの前にバリケード作っておくか。気休め程度だが、中身がほぼ空の小さい衣服タンスをドアの前に設置。このドアは、室内から引いて開けるタイプだから、こうすれば外から開けるのに少し手こずる筈。

寝袋を敷き、中に包まる。季節は夏だが、俺の実家周辺は1年を通して気温が低い。暑くれ眠れない、なんて事にはならない。

 

「…はぁ」

ムラムラする。仕方ないだろう?数ヶ月も発散していないから。理由?瑞稀の盗聴器が原因です。瑞稀が着任して、本人から仕掛けたと言われた時からずっと我慢している。もし発散しようものなら、光速で瑞稀が突撃してきて襲われる。間違いなく襲われる。それが怖くて我慢しているんだ。

 

「……」

我慢しろ。欲に負けたら終わりだ。今は静流も居るんだ。2人に襲われたら、確実に手を出す自信がある。

 

「…柔らかかったなぁ」

今日1日、腕を組んで共に過ごした。その際、腕に柔らかい感触が…感触が…

 

「ふんっ!」

頭を殴る。煩悩退散、煩悩退散。我慢だ。我慢するんだ。性欲に任せて2人に手を出すのはダメだ。それは最低な事だ。手を出す時は、心から愛を持って接しなければダメだ。2人は俺の欲を満たす為の存在じゃない。

 

「…はぁ」

悶々としながら、何度目か分からない溜息を吐く。

襲いたいなぁ。

 

 

…………。

 

 

翌朝。

結局、一睡もできなかった。あの後ずっと悶々としていたせいで、気が付けば朝になっていた。幸い、瑞稀と静流は俺の言いつけを守ってくれたのか、襲っては来なかった。

…顔洗ってサッパリしよう。タンスをどかし、洗面所に向かった。途中、いい香りが鼻腔を刺激する。台所を覗くと、エプロンを着けた瑞稀と静流が居た。

…襲いたい。

 

「…はぁ」

どうしちまったんだよ、俺。昨晩からそればっかりだぞ。自己嫌悪していると、俺の溜息に気付いた2人が振り返った。

 

「あ、おはよう♪」

 

「おはようございます♪」

 

「あ、あぁ。おはよう」

嬉しそうな笑顔で挨拶してくれた。

 

「目が真っ赤だけど、大丈夫?」

 

「あー…なんか、目が痒くてな。朝飯食べたら目薬でも買ってくるよ」

言えない。2人を襲いたくて。ムラムラしていたせいで一睡も出来なかったなんて。

 

「花粉症かしら?大丈夫?」

 

「かもしれん。鼻の方は大丈夫だが、目が少し痒い」

静流にも心配される。本当の事なんて言えないから嘘をついた。

 

「今朝は焼き鮭と味噌汁と納豆よ」

 

「そろそろ出来るから、お皿の用意をお願い」

 

「おう」

食器棚から食器を取り出す。何故か食器が多いんだよな。何でか説明するが、爺ちゃんの友人が飲みに来たり、町内会の集まりが終わった後に、よく家に人が集まるから多めにあるんだ。ここ周辺の家もそうらしい。田舎あるあるの一つです。

それから朝食の準備を整え、庭で日課の鍛錬をしている爺ちゃんを呼び、4人で朝食を摂った。

 

 

…………。

 

 

「準よ」

 

「なんだ、爺ちゃん」

朝食を終え食器を片していると、爺ちゃんに声をかけられた。瑞稀と静流は朝食を作ってくれたから、食器を洗うのは俺がやると言って、2人をリビングの椅子に座らせ休ませている。

 

「ワシは今日から2日間、ゲンの所に行ってくるから、家の鍵を渡しておく。ここで過ごすも良し。瑞稀ちゃんや静流ちゃんと何処かに出かけるも良し。好きにして構わん」

 

ゲンさん。爺ちゃんの幼馴染であり、友人だ。爺ちゃんと同い歳で、未だ元気な爺さんだ。

 

「分かった」

鍵を受け取る。そして爺ちゃんは財布とスマホを持ち、タクシーを呼んでゲンさんの所へ行った。

 

「さて、どうすっかな」

食器を洗い終え、乾かし、食器棚へ戻す。

昨日、世界遺産を見て回ったからどうするか悩む。まだ見て回っていない所があるから、そこに行くか?とりあえず、瑞稀と静流に相談しよう。いや、待てよ。その前に、

 

「静流がまだ、おじさんとおばさんに帰省している事を知らせていないな」

今更だが思い出した。何処かに出かける前に、おじさん達の所に行こう。

 

 

…………。

 

 

─風見家─

 

 

2人におじさん達の所に行こうと提案し、風見家へ向かった。再び俺が来た事に驚いたが、快く迎えてくれた。そして静流の姿を見ると、おばさんは笑顔になった。

 

「あらあら♪」

 

「ほう…」

 

おじさんも嬉しそうな顔してる。

俺はおじさんとおばさんに、瑞稀と静流の2人をくださいと、土下座して頼んだ。結果は…

 

「じゃじゃ馬な娘達ですが、よろしくお願いします」

 

「一昨日も言ったが、君になら安心して2人を任せられる」

 

快諾。良かった。もし断られたらどうしようと思ってた。

それから、色々話をした。主におばさんの惚気話ばかりになったが。

 

「そうだ、これ、あげるわ」

 

暫く話を聞いていると、突然おばさんがそう言って部屋を出て行き、チケットを持って来た。

 

「この間、福引で当てたの。使おうか悩んでいたけど、準くんにあげるわ」

 

「これは?」

チケットを見ると、此処から少し離れた温泉宿の1泊2日無料招待券だった。結構大きな温泉宿で、人気な宿らしい。これ1枚で3人まで無料で宿泊出来て温泉に入れるらしい。

※田舎の「少し離れている」は、数十km単位である事が多い※

 

「い、いいのでしょうか?」

 

「いいんです。私達が使うより、あなた達が使った方がいいわ。提督業と艦娘業は激務だから、これで心と身体を癒して♪」

 

「あ、ありがとうございます」

言えない。辺鄙な所で小規模な鎮守府。いや、今はもう中規模か。規模が小さいので仕事が他よりも少ないなんて。ともかく、おばさんが思うほど激務でもないんです。しかし、言えない。こんなに嬉しそうなおばさんに、事実を言うなんて。だから、言わずに受け取った。

 

「早く、孫が見たいわぁ♪」

 

「ごほっ!?」

唾が変な所に入ったせいでむせた。ちょ、いきなり何言い出すの!?決してそういう事したくないわけじゃないんですが…だからおばさん、俺にだけ見えるよう、こっそりアカン指の形を作って俺に見せないで?女性がそういう事しちゃダメですよ?

暫くおばさんにからかわれ、賑やかな時間を過ごした。

 

 

…………。

 

 

「そろそろ着くぞ」

風見家でおばさんたちと数時間お話をした後。渡良瀬家に戻って着替えを持ち、戸締りを確認して家を出て、車で目的地に向かった。ここから少し距離があるから、結構時間がかかってしまった。おまけに慣れない峠だから、通常より倍以上時間がかかっている。

 

「凄い賑わってるね」

 

「私達の所より人が多いわね」

 

後部座席に座る瑞稀と静流が言った。今、俺達は隣町の温泉街に来ている。言っちゃ悪いが、俺の実家近くの温泉街より賑わっている。恐らくだが、此処の方が向こう(俺の実家付近)より温泉が多く、交通の利便性がいいから人が多いのだろう。人に注意しながら運転し、目的地の宿に到着した。空は既に暗くなり始めている。

ここに来る前に電話で確認を取ったが、部屋は空いているそうで予約を取る事が出来た。

車から降り、荷物を持って歩く。石造りの階段を上ると、立派な宿が見えてきた。

 

 

…………。

 

 

「どうぞ、ごゆっくり」

 

「ありがとうございます」

受付でチケットを見せ、部屋の鍵を受け取る。3人で一部屋だ。夜が少し不安だが、なんとかなるだろう。

部屋はグレードが1番高い所らしく、俺達以外の人は居なかった。平日だからかな。休日なら人でごった返していそうだ。部屋の鍵を開け、中に入ると、

 

「広いな」

 

「うわー!」

 

「凄い景色」

 

まず、部屋が広い。次に、窓から見える景色が素晴らしい。語彙力が無いから上手く表現出来ないが、山と街が一望出来る。普段、海ばかり見ているから新鮮だ。

 

「い草の香りがなんとも言えん」

 

「この香り、好きだなぁ」

 

「落ち着く香りですね」

 

い草の畳の香りに感動。どこか懐かしさを感じる。

 

「ねぇねぇ、温泉入ろうよ!」

 

「そうね、そうしましょう?」

 

2人は大はしゃぎ。俺も内心、はしゃいでいる。この広さなら、枕投げが白熱しそうだ。ガキみたいな事考えてないで、荷物を置こう。純和風の部屋を一通り見渡した後、荷物を起き温泉へ向かう事にした。

 

 

…………。

 

 

「それじゃ、また後で」

男湯と女湯の暖簾の前で、2人にそう言った。一つ下の階に休憩スペースがあるから、風呂を出たらそこで落ち合う約束をして、男湯に入る。温泉なんて、久々だから興奮する。俺以外誰もいない脱衣所で服を脱ぎ、タオルを持って、引き戸を開けると、

 

「おおっ!」

思わず声を出してしまった。広い浴場。俺以外、誰も居ない。ここは他の温泉と違い、1番高いグレードの宿泊客しか使えないから、人が居ない。ラッキーだ、こんな素晴らしい温泉を独り占めできるなんて。身体を洗い、頭にタオルを乗せてゆっくりと足を温泉に浸ける。そのまま、上半身まで浸かる。

 

「あぁ〜…」

思わず声が出た。凄く身体にいい気がする。日々の疲れが吹っ飛んで行く感じがします。温泉っていいね。

暫く浸かっていると、あることに気付いた。

 

「露天風呂がある」

そう。壁に露天風呂と書かれた看板があるのだ。その下に何か書いてあるが、文字が掠れてて読めない。足元が滑りやすいから注意してくれ、とでも書いてあるんだろう。

せっかく温泉に来たのだから、浸かるか。今入っている温泉からゆっくり立ち上がる。急に立ち上がると立ちくらみを起こす恐れがあるから、温泉やお風呂に浸かっている時は気を付けよう。思わぬ事故に繋がる恐れがある。

ゆっくりと露天風呂へと続く引き戸に近付き、開けると。

 

「凄いな」

さっきから凄いしか言っていないが、それしか言えない。扉の先には、広大な山の景色が視界に入った。そして、扉から少し先の所に、大きな檜風呂があった。こんな素晴らしい場所を独り占めなんて、悪い気がしてきた。

 

「…入ろう」

軽く頭を降って、露天風呂に向かって歩き、ゆっくり入る。このお湯は濁っていて、底が見えない。

 

「すっげぇツルツルになる」

どんな湯源か知らないが、肌に良さそうだ。現に、腕を触るとツルツルしている。

思い切り手足を伸ばし、寛いでいると。

 

「…ん?」

俺の所から約1m先から、気泡が上がった。そして次の瞬間。

 

ザバァ!

 

「うおおぉ!?」

何かが露天風呂の中から出てきた…え、瑞稀と静流。なんで?突然の出来事に思考がフリーズしていると、

 

「来た来た♪」

「潜っていた甲斐がありました♪」

 

2人が嬉しそうにそう言った。いやいやいや、ちょっと待って、

 

「君達、ここは男湯ですよ?」

思わず敬語になる。2人は今、一糸まとわぬ姿だ。目を瞑り、顔を逸らす。ダメじゃないか、女性が男湯に侵入して来ちゃ。

 

「大丈夫よ。ここ、混浴だから♪」

 

「ここ、混浴だったのね。あはははは」

コンヨクって何ですか?コンヨク…コンヨク…あっ、混浴ですか。あはは、それなら大丈夫か…大丈夫じゃないよ!問題だ!瑞稀、ありがとう、教えてくれて。すぐに出ていくからね?

 

「どうやら今日は私達以外、ここを利用する人が居ないそうです。先程、温泉に入る前に女将さんに教えて頂きました♪」

 

嘘だっ!嘘だと言ってよ女将さん!いや、嘘だろうと本当だろうと、関係ない。とにかく、このままここに居るのはマズい。というか、

 

「2人はいつごろから潜っていたのですか?」

何故か敬語になってしまった。

 

「ん〜…5分位?」

 

「艦娘の力で肺活量を強化して潜っていました♪」

 

そんな事に艦娘の力を使うんじゃありません。

 

「さぁて、誰も来ないなら…ふふふ♪」

 

あっ、嫌な予感。急いでここから逃げよう。立ち上がろうとしたら、真正面から瑞稀に抱き着かれた。あああああああ!柔らかあああああああい!やめて!対面!密着!アカン!離れて!反応しちゃう!…おいコラ、掴まない。やめて、本当にやめてください反応してしまいます…反応しちゃった。

 

「あはっ♪」

 

嬉しそうな声出さない。ニギニギしない。あーこれ、ダメみたいですね。

 

「はい、おしまい」

 

…えっ?助かった?掴んでいた俺のアレから手を離した。少し。いや、とても残念。

 

「どうしたの?そんな顔して」

 

「ぁ…」

きっと、情けない顔しているんだろうな。

 

「とっても残念そうな顔してるよ?」

 

やっぱり。本音を言うと、凄く嬉しかった。でも、俺達はまだ結婚していない。手を出していいのか?

 

「その為にゴムがあるのよ」

 

静流さん、黙ってください。そんな事言われたら、俺、手を出しちゃうよ?

 

「…ねぇ、本音を聞かせてよ」

 

ぬわああああん!静流さん、耳元で囁かないで!

気が付くと、俺は2人に左右から抱き着かれていた。柔らかさがダイレクトに伝わってくる。

 

「ぁ…ぁ…」

だ、ダメだ、持ちこたえろ、俺。今、手を出したら欲望を満たす為に2人に手を出したクズになるぞ。

 

「いいんだよ。欲望に従っても」

 

「貴方の本音を聞かせて?」

 

「ぁぅ…ぁ…」

本音…俺の…本音…

抱きたい。滅茶苦茶にしたいです。

 

「我慢するのは、心と身体にとっても悪いんだよ?」

 

そう、なのか?

 

「貴方は沢山頑張ってきた。だから、我儘しなくていいのよ?」

 

いい、のか?

 

「準は難しく考えすぎなの。だから、欲望に従っていいんだよ?」

 

本当にいいのか?

 

「私達は、貴方になら何をされてもいいと思っているわ」

 

本当に自重しないぞ?

 

「ほら、部屋に戻ろう?」

 

「続きは部屋で、ね?」

 

「…あぁ」

 

 

……。

 

 

気が付くと、脱衣所に居た。

さっきのは夢だったのか?妄想だったんじゃないのか?

 

「…」

いい加減、現実逃避をするのをやめろ。いつまでも2人を不安にさせるな。覚悟を決めろ、俺!

 

「…やってやる」

やってやるよ。2人を抱いてやる!

服を着て、男湯を後にする。そして、一つ下の階にある休憩所へ向かう。

椅子に座り、待つこと十数分後。2人がやってきた。その顔は赤い。決して、湯上りだからじゃない。勿論それもあるが、これからする事を想像して赤くなっているのだろう。俺の顔も赤いかもしれない。

2人と合流すると、無言で部屋に向かった。

そして俺は、2人を…

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

 

side 時雨

 

 

 

─時雨、夕立私室─

 

夜。

 

「…」

 

紗奈(時雨)、元気がないよ?」

 

「…」

あれから、色々考えた。彼を監禁する場所や方法を。けれど、いい案は思いつかなかった。扶桑に連絡したけど、向こうも同じく上手くいっていないそうだ。ただでさえ忙しいのに、その合間に監禁に適した場所を探すなんて。

 

(扶桑より仕事が少ない僕が頑張るしかない)

しかし、この状態も長くは続かないだろう。最近、深海棲艦の出現頻度が増えてきた。恐らく、それに対応する為に此処の艦娘が増えたんだと思う。

 

(もう、ダメなのかな…)

心が折れそう。

 

紗奈(時雨)!」

 

夕奈(夕立)?」

妹が僕の名前を大声で呼ぶ。どうやら、考え事をしていて気付かなかったみたいだ。

 

「紗奈、元気がないよ?大丈夫?」

 

「…ありがとう、夕奈。艤装の整備が難しくて、色々考えていたんだ」

嘘を言う。

思えば、昔から僕は、夕奈に対して嘘を吐き続けていた。

本当は辛いのに、大丈夫だと。

本当は悲しいのに、元気だと。

そして、今も。

 

(心配してくれている夕奈に対して、僕は不誠実な事ばかりしている)

心に罪悪感が重く伸し掛る。

 

「…紗奈、私は、例えどんな事が起きようと、紗奈の味方よ?」

 

「夕奈…」

 

「だから、力が必要なら何時でも言うといいっぽい!お悩み事、あっという間にぽい!してあげるから!」

 

「…」

力こぶを作って、満面の笑みで妹がそう言った。

ありがとう。本当にありがとう。

でも…

 

「本当にどうしようもなくなったら、助けを求めるよ」

こればかりは、僕だけで解決しなくちゃならないんだ。

だから、ごめんよ、夕奈。

 

「そう…分かった。私は大人しくいい子にして待ってる。困ったらいつでも助けを求めてね?おねーちゃん♪」

 

「……」

太陽のように眩しい笑顔。羨ましい。僕にはこんな笑顔、できない。

 

(羨ましい…)

僕は、他の娘達の劣化版。

…提督に聞いてみよう。僕は、他の娘達の劣化版なの?って。

 

(きっと、提督なら、否定してくれる)

そうだよね、提督?

 

 

side 時雨 out

 

───────

────

 

 

Another side

 

 

「まったく、うちのバカ孫はキ○タマ付いとんのか!」

 

「そう言うなよ、シゲ。準は誠実な男だ。結婚する前に手を出す事に、罪悪感を覚えたんだろう」

 

「かっー!まったく、覚悟決めてしまえばいいものを!」

 

「飲みすぎるなよ、医者に言われてるだろ?」

 

「知るかっ!くたばる時はくたばるんだ。悔いの残らないよう好き勝手生きてくたばる。それがワシの考えじゃ!」

 

「相変わらずだなぁ」

 

「…はぁ。まさか、バカ孫が提督になるとは思わなんだ」

 

「提督…か…」

 

「…まだ、気にしておるのか?」

 

「…あぁ」

 

「…とても、良い娘じゃったのに」

 

「…私がもっと強く言っておけば、彼女は…うぅ…」

 

「あーもう、男が泣くな!ゲン、飲むぞ!飲んで暗いふいんきをぶっ飛ばすぞ!」

 

「雰囲気な」

 

「わざと間違えたんじゃ!」

 

「…ふっ、そうかい」

懐に入れたロケットペンダントを取り出し、開く。

そこには、私と2人の女性が写った、古い写真があった。

 

(大切な部下を、1人、失ってしまった)

あれから、何十年も経った。彼女は、私を恨んでいるだろう。

 

(君のお姉さんは、5年前に逝った。君は、妻…お姉さんと逢えただろうか…)

 

「ほれ、飲め!飲め!酒の席は楽しく!そして周りに迷惑をかけない!」

 

「お、おい、鼻に焼酎流し込もうとするな!」

 

「ガッハッハッ!酔って口と鼻を見間違えてしまったわい!」

 

「こんの野郎!」

 

「ハッハッハッ!」

 

「…ははっ!」

私がくたばるまで、あとどれ位かかるか分からない。もし。もし叶うなら。

 

(あの世で君に謝りたい)

私の妻の妹。瑞鶴の適性を持った彼女の顔を思い浮かべた。

 

 

 

Another side out

 

 

───────

────





次回予告

涼月さん、提督のボクサーパンツを盗みましょう!えぇ、コンビを組めば、榛名達は負けません!いざ、出撃です!
…あ、由良さん。山城さん。飛行甲板に瑞雲を乗せて…まさか、瑞雲ラリアット!?なら、私は涼月さんガードを…あれ、涼月さんが居ない…は、謀りましたね、涼月さん!榛名、激おこプンプン丸です!あ、ちょ、待ってください!待っ…きゃあああああああ!!!


第34話・魔王、降臨!


「彼の、悟の血が半分流れているなら、悟を犯すのと半分同じ、って事よね…?」
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