はい、榛名は大丈夫です!
今回はまだ大丈夫。平和です。
side 提督
─第603鎮守府、提督私室─
朝。
「やっと朝か」
ゾンビと俺の貞操をかけた激戦から一夜が明けた。
経○秘孔の一つを突き、怯んだ隙にヘッドロックをゾンビにかまし、気絶させた後、妖精さん特製手足をロープで縛って部屋の外に放り投げた。直ぐに復活したのか、ドアの向こうからゾンビの呻き声がずっと聞こえてきたが、無視。時折、ドアを体当たりしてきたのか、何度も部屋が揺れた。お陰で一睡も出来なかった。
「目薬さしておこう」
その前に冷たい水で顔洗って気合を入れるか。
…………。
─執務室─
「ボーキサイトの貯蔵が、少し減ってきていますね」
「そうか。まだ余裕はあるが、大本営に申請しておこう」
本日の秘書艦、阿武隈が資材の残量が書かれた書類を見ながらそう言った。
外洋に出て深海棲艦の対応をするようになった為、資材の消費が多くなった。
少し前までは小規模な戦闘ばかりだったが、今は違う。エリートやフラグシップといった強力な深海棲艦を相手にしている。しかも、無傷の状態の奴らを、だ。
(下手すれば死ぬかもしれない)
だから、俺は皆に今ある最高の武装を与えた。しかし、俺の心配を他所に、皆はどんどん殲滅してくれる。
(でも、油断してはならない)
油断すれば、死ぬかもしれない。だから、朝礼をする度に全員に油断するなと注意をしている。
「今日の出撃メンバーは…」
旗艦・山城、榛名、翔鶴、由良、夕立、初霜。
(…あっ)
初霜を除いて、超武闘派メンバーじゃないですかー、やだー!
まず、山城。あいつは容赦が無い。例え敵がボロボロでも、主砲でトドメを刺す。副砲で倒せそうな位、ボロボロな深海棲艦だろうと、必ず主砲でトドメを刺す。
次に榛名。アイツも山城と同じ位、容赦が無い。高速戦艦の足の速さを生かし、高速で航行して駆逐イ級とか、比較的装甲が薄い敵は、弾を節約する為に
翔鶴は、艦載機の他にボーキサイト節約の為に、ス○ナーKの最大チャージの電撃を深海棲艦にぶち当て、痺れている敵にスタンプして挽肉にしたりする。君、艦娘でしょ?ブ○ストランナーじゃないんだから、ス○ナーK使うのやめようよ。
由良と夕立は、敵の手足や頭を引っこ抜く。そしてそれを戦利品として持ち帰って来る。いつだか戦艦タ級フラグシップ改の首を持ち帰ってきた事があった。それを見た俺は卒倒した。やめようね、そういうの。俺、グロ耐性皆無だから。精神に甚大なダメージ受けるから。
「初霜が心配だ」
天使が精神的ダメージ負ってPTSDにでもなったら、俺、割と本気で泣くよ?責任取って首吊るよ?
「あ、あははは…」
阿武隈も、出撃メンバーを見て苦笑いしている。阿武隈は、彼女らと一緒に出撃して精神にダメージを負った。しかし、慣れとは恐ろしいもので、今は何とも思っていないそうだ。素直に尊敬する。俺だったら絶対慣れない。
(いつ、話そう)
書類を捌きながら、瑞稀と静流の二人と付き合う事にしたのを、いつ話すか考えていた。涼月には既に話した。一応、俺が話すまで黙っているよう頼んでおいた。
(なるべく早く話した方がいいな)
とりあえず、仕事を終わらせよう。
………………。
─提督私室─
夜。
「明後日は全員待機だから、その時に話さない?」
「そうだな」
仕事を全て終え、夕食を摂って入浴を済ませた後、部屋に瑞稀と静流を呼んだ。そして、二人と付き合う事にしたことをいつ話すか相談した。
明後日。
シフトを確認すると、全員の出撃が無く、鎮守府で待機する事になっている。この時に全員を集めて話そう。
「何が起きても、私は準の味方よ?」
「心配しないで。ずっと傍に居るから」
「ありがとう」
瑞稀と静流に励まされた。覚悟を決めろ。
それから、3人で今後について色々話し合った。
もし、俺と重婚したいと言ってきたら、受け入れるべきか否か。千歳さんに言われた事、残された方は辛い云々の話をした。すると2人は。
─【正規ルート】─
「別に、いいよ?」
「私も、構わないわ」
あっさりとそう言った。でも、いいのか?
「いいわ。ただし、一番は私よ?」
「二番は私です。これは譲れないわ」
どうやら、第一夫人は瑞稀。第二夫人は静流。これを守ってくれるのなら、重婚しようがイチャつこうが構わないそうだ。
不誠実な男だよ、俺は。そう思っていたら、考えている事が分かった瑞稀に言われた。誠実さを見せるなら、責任取って好意を持っている娘達を娶れと言われた。昨日、涼月にも言われたな。
(覚悟を決めろ。俺は)
好意を持っている娘達を受け入れよう。
───────
─会議室─
2日後、朝。
ついにこの時が来た。どんな事を言われるのだろう。緊張と不安で身体が震える。既に会議室には此処に所属する娘達全員が集まっている。
瑞稀と静流が無言で俺を見つめている。そして、小さく頷いた。
俺は息を吸って、深く吐く。全員の顔を見る。
(涼月…)
彼女が、俺の目を真っ直ぐ見つめている。そして、微笑んだ。どうやら、これから俺が何を話そうとしているのか、察した様だ。余談だが、涼月の目はとても穏やかで、慈愛に満ちた物だったと言っておく。
(…よし)
話そう。
「──集まってくれてありがとう。少し、話したいことがあって集まってもらった」
───────
────
─
「ハァ…ハァ…」
提督です。俺は今、敷地内にあるトレーニング用のグラウンドを全力疾走しています。何故かって?
「逃げないでください!」
「無理だよ!」
血走った目をした
「重婚は!榛名が!許しません!」
榛名ァ!般若みたいな顔しながら追っかけて来ないでぇ!
(予想していたけど、ここまでとは!)
今から約1時間前。会議室に集まってくれた皆に、瑞鶴と翔鶴の二人と重婚を視野に入れたお付き合いをする事にしたと説明。直後、会議室は揺れた。比喩ではなく、本当に揺れた。
話を戻そう。俺の爆弾発言により騒がしくなった直後、様々な質問をされた。それらに全て答えると、少しだけ大人しくなってくれた。
そして、その時は訪れた。
『重婚なんて、認めません!』
目を血走らせながら榛名が言った。
ゆっくりと、俺に向かって歩いてくる。本能的恐怖を感じ、逃げようとしたが、瑞鶴と翔鶴がすぐに動いて榛名の前に立ちはだかった。
『榛名、提督さんに何をするつもり?』
『お仕置きです♪』
瑞鶴の問に嬉しそうな顔で答えた。榛名、とりあえず落ち着いて?
『榛名さん、一先ず落ち着いてください』
『はい!榛名は大丈夫です!』
翔鶴の説得に対し、大丈夫だと即答。指や首をバキバキ鳴らしてる時点で、全然大丈夫じゃないと思います。
『さぁ、提督!榛名しか見れなくなるよう、【自主規制】の【自主規制】な【自主規制】教育をしてあげます!!!』
『翔鶴姉!止めるよ!』
『えぇ!』
次の瞬間、榛名は瑞鶴と翔鶴を跳躍して飛び越え、そのまま俺目掛けてル○ンダイブしてきた。慌てて回避。榛名、壁に激突。哀れ、壁は爆発四散…じゃなくて、凹んだ。もし受け止めていたら、壁にめり込んでいたかもしれん。冷や汗が背中を伝う。
『榛名、全力で犯します!』
そして、鬼ごっこが始まった。
途中、瑞鶴と翔鶴が止めようとしてくれたが、轢き倒されてしまった。他の娘達は、傍観しているだけで、助けてくれなかった。余談だが、涼月は榛名に絞め落とされてた。だから涼月は助けてくれなかったのね。
『恋する乙女は、ブレーキの壊れたダンプカーです!誰も、榛名を止められません!』
整備不良で捕まってください。
「ハァ…ハァ…」
そして、今に至る。
グランドを走り抜け、目の前には崖。後ろからは榛名。
「登るっきゃねぇだろ!」
提督服の上着と帽子を脱ぎ捨て、ロッククライミング開始。
「提督の汗が染み込んだ帽子と上着!榛名、感激です!」
崖を数メートル登ると、榛名の嬉しそうな声が聞こえた。良かった、脱ぎ捨てた帽子と服に気を取られて。今のうちに、登ろう。
………………。
「あ"〜、しんどい」
崖を登り終え、山の中へ逃げ込んで一息つく。夏だから、虫が多くて鬱陶しいが我慢。この後どうしよう?そう思った時だった。
「提督の匂いがします!」
(げぇっ!?)
榛名の声が聞こえた。やべぇ、そろそろ逃げないと。
「あ、見つけました!」
約30メートル先に、榛名が居た。見つかっちゃった。逃げよう。
(しかし、ここは山。木が多いから上手く利用すれば逃げられる!)
そう思っていました。
「よいしょ、っと」
「嘘ォ!?」
片手で木を軽々と引っこ抜いたよ、あの娘!
「榛名と提督の恋路を邪魔する木は、1本残らず引っこ抜きます!」
「環境破壊はやめなさい!」
「はい、榛名は大丈夫です!」
「おおっと、会話が出来ていない!」
君は大丈夫でも、山は大丈夫じゃないです。
このまま山の中に居たら、根こそぎ伐採もとい、木が引っこ抜かれ禿山になる恐れがある。仕方ないから、山を降りて鎮守府に戻ろう。
………………。
「提督〜!何処に隠れているんですか〜?」
山を降り、鎮守府に戻った俺は、工廠の燃料保管庫に隠れた。俺の汗の匂いで捜しているらしく、燃料の匂いで誤魔化す為に逃げ込んだ。
「ここではないみたいですね…」
足音が遠ざかっていった。どうやら、上手く誤魔化せたようだ。
「…はぁ」
燃料の匂いがキツい。もう少ししたら、ここを出よう。
さて、次は何処に逃げよう。瑞鶴と翔鶴は復活したかな?まだならどうしよう?
「バイクに乗って逃げるか」
それか、夕張が扶桑さん襲来の際に作ってくれたスーツでも着て逃げるか。
ふと、燃料保管庫の上を見た。そう、何となく上を見た。
「」
早霜が燃料保管庫の天井に両足だけで張り付いて俺を見下ろしていた。
「」
何時から居たんですか?気配を感じなかったんですが。
「うふふっ…うふふふふふふ…ふふふふふふふふふ」
薄暗いから、怖さ倍増です。まさか、早霜も俺を襲いに来たのか?
…いや、それは無いな。だって、見るだけで満足している、って言ってたもんな。きっと、俺を心配して助けに来てくれたんだ。そうに違いない。
「慌てふためく司令官、可愛いです」
「」
うっとりした顔でなんてこと言うの、早霜ちゃん。
「もっと、慌てふためく司令官を、見せてください…うふふふふ…」
あの、早霜さん、その手に持っているの、スマホですよね?何をするつもりでしょうか?
「榛名さん、司令官は工廠の燃料保管庫に居ます」
「オンドゥルルラギッタンディスカー!!!」
まさかの裏切り。このままだと、捕まる!慌てて燃料保管庫から飛び出し、スーツが保管されているコンテナへ向かって走る!走る!走る!!!
「あった!」
スーツの保管されているコンテナ発見!鍵はかかっていない。慌てず、焦らず、諦めず、迅速に。頭の中で長門教官から教わった言葉を繰り返しながら、スーツを纏う。
「提督!」
やべっ、榛名だ!もう来やがった。スーツ装着完了。コンテナ内に置いてあったブ○イザー・アグニを装備。スーツのエネルギーや弾薬はフルだ。アグニを構え、チャージ。
「提督、逃がしません!」
「バカヤロウ!俺は逃げるぞ!超逃げるぞ!」
捕まってたまるか!チャージ完了。照準、良し。狙うは榛名の頭部!
「墜ちろ!」
引き金を引く。直後、青紫の光弾が榛名の頭部目掛けて発射された。命中!榛名は吹っ飛んだ!
この光弾は無害な物です。直撃しても身体が痺れるだけです。
ヘッドショットされた榛名はピクピクしている。今だ!
「こんな所に居られるか!俺は逃げるぞ!!!」
コンテナから出る際、中にあった幾つかの武器を背部の武器収納スペースに入れて、工廠を離脱。このまま逃げてやる!
ちなみに、俺が装備した武装はこれだ。
提督:ス○ィールスーツ高機動型Ver.3装着
E:ブ○イザー・アグニ
E:ドー○ハンマー
E:ヴォ○ペ・スコーピオ
E:KO-4○4/MIFENG
説明終わり!俺は海へ向かった。そしてそのまま海上を走る。
「勝手は!榛名が!許しません!」
「復活早すぎだろ!」
アグニのフルチャージを頭部に受けたのに、もう復活したよ。しかも艤装纏って追っかけて来やがった。
「──あっ!」
逃げるのに必死で、沖に出てしまった。そのせいで、深海棲艦と遭遇。えぇい、邪魔だ!
「提督様のお通りだァ!退きやがれえええぇぇぇ〜!!!」
アグニを撃つ。直撃。捕まったら終わるんだ。退いてくれ!退くんだ!退いてください!
───────
────
─
─第8492離島鎮守府、執務室─
「…それで、ここまで逃げてきたと」
「…はい」
ただ、持っていた武器の残弾が殆ど残っていなかった。
それに、スーツの燃料が切れて動けなくなってしまった。幸い、燃料が切れても海上に浮かび続けられた。途方に暮れていると、艦娘達と遭遇した。
どうやら、先程の深海棲艦の大軍を殲滅する為に第8492離島鎮守府から出撃してきたらしい。
『そこのアンタ!所属と名前を教えなさい!』
そして、旗艦を務めていた霞にそう声をかけられた。俺は正直に所属と名前を答えると物凄く驚かれた。ヘルメットを外し霞に顔を見せると更に驚かれたが、顔見知りだったから警戒は解いてくれた。そして俺は艦娘達に曳航され、第8492離島鎮守府へ向かった。
「渡良瀬提督、その、色々言いたいことがありますが、一先ず、深海棲艦を殲滅して頂き、ありがとうございます」
「き、恐縮です」
そして、それから色々あったが小嶋提督に呼ばれ、執務室に居る。そして何故あの海域に居たのか説明した。
「まさか、あの大規模な敵艦隊を一人で殲滅するとは。あなた、エ○オンシステムでも搭載されているんですか?」
「AL○CEシステム辺りが搭載されていると思います」
自分じゃ気付かないうちに身体が動いていたから、きっとAL○CEが何とかしてくれたんだと思う。
「それにしても、渡良瀬提督。ついに覚悟を決めたのですね」
「えぇ、まあ…」
小嶋提督に逃げた理由、瑞鶴と翔鶴と重婚を視野に入れた付き合いをすると説明したら追っかけられ逃げた、と説明するとそう言われた。
「そのお気持ち、痛いほどに分かります」
小嶋提督の目がとっても優しい。
「私も、川内くんと神通くんの2人と重婚しましたが、納得してくれない娘が居まして、苦労しました…」
あれ、そうなの?てっきり愛を向けてくれてるの、川内と神通の2人だけだと思っていたんだけど。
「今でも納得していないらしく、時折アプローチをかけられています」
初耳です。
「ちなみに、川内と神通を除いて、何名からアプローチをかけられているのでしょうか?」
気になったから聞いてみる。
「…5人です」
「」
「5人とも、重婚を認めてくれず、未だ毎日ドンパチ始まったりします」
マジですか。…あれ、そういえば以前、俺がここに来た時は何も起きなかったけど?疑問に思っていると、俺の顔を見て察したのか、小嶋提督が説明してくれた。
「あの時は、渡良瀬提督がお越しになると前もって知る事が出来たので、長時間の遠征に向かわせました。その後が大変でしたが…」
「そう、ですか…」
だから平和だったのね。小声で何か言ったが、聞かなかった事にしよう。そう思った直後だった。
執務室の外から、足音が聞こえてきた。どうやら走っているようだ。あれ、小嶋提督どうしました?顔面真っ青ですよ?
「この足音は。奴だ…奴が来た!」
「奴?」
さっきまで丁寧だった口調が崩れて、素が出てる。それ程ヤバい奴なのか?
<テ〜イ〜ト〜ク〜
外から嬉しそうな声が聞こえた。そして近付く足音。
「渡良瀬提督、伏せてください!」
「えっ?はいっ!?」
鋭い声で小嶋提督が言った。疑問に思うが、とりあえず言われた通り伏せておこう。俺が執務室の床に伏せると同時に、執務室の扉が吹っ飛んだ。比喩ではなく、本当に吹っ飛んだ。危ねぇ!俺の頭を掠ったぞ!?
「テ〜トクゥ!バーニング・ラアアァァァアアアブッッッ!!!」
「ぬわああああああああ!!!」
「ッッッ!!?」
扉が吹っ飛んだのと同時に、榛名と似た巫女装束を纏った女性が叫びながら、小嶋提督へ飛び掛った。小嶋提督、咄嗟に回避。
ズガァン!!!
「うわー…」
すっげぇ音がした。どうやら、この女性─艦娘─が壁に激突した音みたいだ。壁は凹んでいる。あれ、この光景、今朝俺の鎮守府で見たな。
「テ〜トクゥ、何で避けたネ?」
「避けなかったら、岩盤に叩き付けられたベ○ータ状態になっちまうよ!」
あ、素の小嶋提督だ。
「今日という今日こそは、ワタシだけを愛してもらいマース!」
「お前だけを愛する事は出来ないと、何度説明すれば分かるんだ!」
「なら、ワタシだけしか見えなくしてあげマース!」
なんか、邪魔しちゃ悪そうだね。こっそり逃げよう。
「渡良瀬提督、助けてください!」
ちょ、逃げようとしてたのに、ヘイト向けないで!
「ン〜?誰か居るのデスカ?」
「ッ!?」
その女性の目を見て俺は硬直した。だって、その女性の目、ハイライトが無いんだもん。
「誰も居ないネ?テートク、ワタシの気を逸らそうと嘘を言うの、良くないネー?ワタシから目を逸らしちゃ、NO!なんだからネ!」
あ、この娘、やっべぇ奴だ。以前秋雲から教えてもらったが、ヤンデレには幾つかのタイプがあるそうだ。その中の一つに、自分と愛する人以外見えない、という、タイプがあるらしい。恐らく、この女性はそのタイプに該当する。
「ウフフフ…アハハハハハ!!今日は二人で朝までTogetherしまショウ!」
「断る!」
川内と神通はどうした?彼女達なら、そろそろ現れてこの女性を制圧する筈だ。
「くそっ!あの2人を大本営のお偉いさんが乗る船の護衛に就かせなければ!」
あ、2人は不在なのね。でも、あの2人の練度と戦闘力なら、1人だけで充分だと思うんだけど。
「大本営は何で2人を絶対就かせろと命令したんだよ!1人でも充分でしょうが!」
上からの命令なら仕方ないね。
「目を逸らさないでって言ったのにぃ!テートクゥ、何してるデース!」
「だあああぁぁぁ〜!服を脱がそうとするな!」
小嶋提督、苦労されているんですね。あ、ボク、邪魔しちゃ悪そうなんでお散歩してきますね?
………………。
『バアアアアァァァァニング、ラアアアァァァァアアアアアブッッッ!!!』
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーーッ!!!』
執務室から、巫女服を纏った艦娘と小嶋提督の声が聞こえる。
執務室から逃げた俺は、適当に散策していた。そして偶然居合わせた霞に案内され、談話室に来た。
「金剛さんも諦めが悪いわね」
「金剛?」
「小嶋提督の重婚を認めず、アプローチをかけている1人よ」
執務室の方を呆れた目で見ながら霞は言った。
どうやら、あの女性は金剛という艦娘らしい。金剛─つまり、榛名の適性艦、金剛型高速戦艦のネームシップか。
「そういえば、アンタは何であの海域に居たの?」
「ん?あぁ、実はな───」
そういえば、まだ説明していなかったな。俺は霞に説明した。
「…アンタも苦労しているのね」
説明を聞いた霞は、同情的な視線を向けてきた。
「とりあえず、今日はここに泊まっていきなさい」
「いいのか?」
「いいわ。私からクズに言っておくから」
相変わらず、小嶋提督の事、クズって呼んでるんだ。
「そういえば、最近
「ん?あぁ、そうだ」
小嶋提督から聞いたのかな?
「そっちが外洋に出て、深海棲艦の殲滅をしてくれるようになったお陰で、仕事が楽になったわ。感謝するわ」
「どういたしまして」
今まで沢山世話になった。というか迷惑をかけた。だから、少しでも恩返し出来ればいい。
…あ、そうだ。向こうに連絡しないと。
「なぁ、電話をしたいんだが」
何処かで借りる事は出来ないか。そう言おうとしたが、
「私のを貸すわ。使って」
霞がポケットからスマホを取り出し手渡してくれた。
「ありがとう」
スマホを借り、第603鎮守府へ電話をかけた。
色々ありすぎてとんでもない事になっているだろうな。
(…はぁ)
内心で溜息を吐きながら、電話をかけた。
side 提督 out
───────
────
─
次回予告
あらあら。予想以上に騒がしくなっちゃった。まるで、昔の私を見ているみたい。うふふ。
さて、そろそろ傍観するのをやめて、皆を止めようかしら。…あら、時雨さんが居ない。何処へ行ったのかしら?
第37話・牙を剥く忠犬
「提督、僕を見て。僕だけを見て」