side 瑞鶴
─第603鎮守府、執務室─
「榛名と提督さんが、深海棲艦の大群と遭遇した!?」
会議室で榛名に倒されて気絶して、再び目を覚ますと矢矧からそう知らされた。
「えぇ、さっき榛名さんから連絡があったわ」
どうやら提督さんは、夕張が作ったスーツを着て海上を走って榛名から逃走したみたい。そして、逃走していたら深海棲艦の大群と遭遇してしまった。
「早く助けに行かなくちゃ!」
下手したら死んじゃう。提督さんと榛名を助ける為、執務室を出ようとした。扉に手をかけて開けようとしたら、矢矧に声をかけられた。
「あー、瑞鶴さん、落ち着いて聞いて」
「何よ!」
落ち着いていられないわ。早く助けに行かなくちゃ。
「榛名さんからの報告によると、彼、提督は深海棲艦を沈めて逃げたそうよ」
「…はい?」
今、なんて言ったの?沈めた?深海棲艦を?
「
「え〜…」
ナニソレ、イミワカンナイ。
「一隻残らず殲滅して、そのまま猛スピードで走って逃げて行ったって、榛名さんが言ってたわ」
「なんじゃそりゃ」
《彼、追い込まれると凄い力を発揮するから、多分大丈夫よ》
確かに。準は普段、そこそこの身体能力だけど、追い詰められると凄まじい力を発揮する。殺人的加速でサイドステップしたり、生身のまま海上走ったり、崖を道具無しで軽々登ったり。
《彼なら大丈夫よ。信じましょう?》
うーん、でも…。
助けに行くべきか否か悩んでいると、執務室の固定電話が鳴って、矢矧が電話を取った。
「はい、こちら、第603鎮守府です。…提督、無事だったんですね」
どうやら、準からの電話みたい。矢矧を見ると、目が合った。
「瑞鶴さんと代わるわ」
そして、受話器を私に差し出してくれた。それを受け取り、声をかける。
「もしもし?」
『もしもし、瑞鶴か?』
準の声だ。良かった。
「えぇ、そうよ。深海棲艦の大群と遭遇した、って聞いて心臓止まるかと思ったわよ!」
思わず怒鳴っちゃった。でも仕方ないよね。心配したんだから。
『本当にスマン…』
「本当に反省してる?」
いけない、きつい口調で言っちゃった。
『申し訳ございません…深く反省しています』
「反省しているのなら、いいわ。今後、こんな事しないでよ?」
準から教わった、相手が反省しているならそれ以上追求しない。この心掛けを思い出し、優しい口調で注意をした。
『はい。気を付けます』
「ん、分かった。ところで今、何処に居るの?」
受話器からは波の音が聞こえない。それに、人の話し声が聞こえる。
『今、第8492離島鎮守府に居る』
「そうなんだ」
何故
『あー、その、そっちはどうなっている?』
どうなっている。つまり、準が重婚宣言をしたから、皆がどうなっているか気になってそんな事を聞いてきたんだと思う。
気絶して目を覚ました後、会議室に残っていた皆の様子を思い出す。
「えっと、一部を除いて平和よ?」
まず、摩耶と足柄、秋雲は驚いていたけど、納得していた。
『こりゃ、鎮守府に血の雨が降るんじゃね?』
『式場の予約しないといけないわね』
『うはっ!いいネタ頂きましたァ!薄い本が厚くなる!』
この3人は私と静流姉が準と重婚する事を認めてくれた。というか、どんちゃん騒ぎする気満々だ。
『涼月は、提督の意志を尊重します』
意外なことに、涼月は大人しかった。てっきり暴走してデンジャラス・ラブ・ゾンビになると思っていたんだけど、そんな事は無かった。
『じ、重婚ですか!?え、えっと、お祝いの輪形陣をしないといけませんね!』
『流石相棒。俺の予想斜め上を行くな。魚雷花火でも作って祝ってやるか』
初霜は目をグルグルさせながら、祝ってくれた。祝ってくれるのはいいけど、何で輪形陣…。
木曾は嬉しそうに笑いながら、妖精さん達と魚雷を仕込み始めた。いや、魚雷花火って…作れるの?
『重婚!?そ、そんな!ズルい!私もしたい!』
『いいなぁ。私も立候補したいです!』
『あいつ、女に興味無いと思ってたけど、そうじゃなかったのね。安心したわ』
葛城は…認めてくれたのかな?あと、重婚したいなら準に相談しなさい。
阿武隈は驚いた後、重婚したいと言ってきた。あなたも準と相談して。
満潮は、嬉しそうに微笑みながらそんな事を言ってた。養成所で準と一緒に過ごしたから、色々心配してたみたい。
『うふふふ』
最近着任した千歳さんは、微笑むだけで何も言わなかった。賛成派なのか反対派なのか分からないから、暫く注意して様子を見ましょう。
『重婚してもいいけど、第一夫人は姉様よ』
山城は普段通りだった。ただ、第一夫人は扶桑さんじゃないとダメだって言ってた。これは、よく話し合わないといけないわね。
『……』
『……』
『……』
その他の娘達は、特に何も言わなかった。ただ、あの3人。
時雨と、あの二人は無言・無表情だった。
『い、一部を除いて平和か…』
「えぇ。今のところ、ドンパチは起きていないから安心して?」
『そうか…』
「とりあえず、可能だったら今日はそっちに泊まって?今戻っても色々大変な事になりそうだし」
現に、榛名が暴走したし。
『あぁ、そうする。迷惑かけて、本当にすまない』
「気にしないで、旦那さんの為なら、何ともないわ」
『だ、旦那って…』
あ、照れてる。可愛い。
それから、準と今後について色々話し合った。
「それじゃ、切るね」
『あぁ、それじゃ、明日』
通話が切れた。
「…さて、説得してきますか」
受話器を置いてそう呟く。
「…大変ね」
「…そうね」
矢矧が頭に手を当てながら溜息吐いてる。
「私は応援するわ。頑張って」
「ありがとう」
応援してくれた。頑張ろう。
「もう一度、皆を会議室に集めて話し合おう」
放送用のマイクを持って、スイッチを入れる。さて、上手く説得できるかな?
side 瑞鶴 out
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Another side 1
「まさか、重婚されるなんて」
確かに、提督は人気があります。それにしても、人気過ぎです。
「養成所でも、こっそり見ていましたが、とても良い男性です」
私に対して、優しく接してくれた。下心や打算無しに。
外見ではなく、中身─私自身─を見てくれた。
「見ているだけで満足していましたが、我慢出来なくなってしまいました」
重婚すると聞いて、見ているだけでは満足出来なくなってしまいました。
「やっと、
いきなり攻めると、拒絶されてしまう恐れがあります。だから、少しずつ、少しずつ、攻めましょう。
「遅効性の薬物のように。気が付けば依存するように。提督の心を私に向くようにしましょう」
そうと決まれば、色々準備しなければいけませんね。
「…あはっ♪」
そうだ、お姉さんに相談してみよう。
Another side 1 out
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─
Another side 2
「ふぅん?重婚。そうなんだ」
やっぱり。なんとなくこうなると予想していた。でも、まだ先だと思っていた。
「もっと観察眼、鍛えないといけませんね?ねっ?」
「昔の私なら、信じられないでしょうね」
戦うこと─頭がイカれる様な戦いを常に望んでいた─が大好きで色恋沙汰に興味なんて無かったのに、此処へ異動して彼と出会って色々変わってしまったみたい。
「三大欲求の性欲を戦闘欲に変えて生きてきたつもりだったけど、ダメみたい」
少し前までは我慢出来ていたけど、ここ数ヶ月は抑えられなくなってしまった。
「山城さんと榛名さんが着任された時から、少しずつ、おかしくなっちゃった」
きっかけは、私が秘書艦をしていた時。彼にノーザンライトボムをかまされた時。
「お股、触られちゃったんだよね…」
彼の事だから、決して性的な目的の為に触ったわけじゃない。技をかける為、私のお股を触ってきた。そのせいで、
「目覚めちゃったんですよ…」
性欲が。かれこれ10年以上、そういった事をしなかった。だから、触られた時、頭に痺れるような快感が走ったのを今でも覚えている。
「暫くは勘違いだと言い聞かせて我慢したけど、無理だったなぁ」
結局、私は人間だった。三大欲求からは逃れられなかった。
「普段通り過ごして来たけど、意識すると大洪水。はしたないなぁ…」
今までは信頼出来る相棒の様な存在だと思っていたけど、触られてから少しずつ、意識してしまうようになってしまった。…正直になりなさい。触られる前から、気になっていたでしょう?
「周囲の評価は殆どアテにしないで、自分で見聞きして、接してから決めるなんて…」
珍しい人─最初はお人好し、甘ちゃん─だと思った。でも、共に過ごしていく間に少しずつ惹かれていった。
「重婚してくれるのなら、立候補したいなぁ」
でも、彼は受け入れてくれるかな?こんな、
「血塗れの私を…」
Another side 2 out
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side 時雨
「……」
重婚?冗談じゃない!彼は、提督は僕だけのモノだ!
「こんな僕を、支えてくれた。助けてくれた。あの優しさを、独り占めしたいのに!」
下心無しに優しく接してくれた男性は、彼が初めてなんだ。それに、見た目で判断しない。
「学校でも、見た目のせいでからかわれたっけ」
艦娘になる前、普通の学校に通っていたけど、男の子っぽい見た目のせいで馬鹿にされたりした。
「養成所でも、からかわれたっけ」
男の子っぽいと、提督候補生達に笑われたりした。
「でも、彼だけは違った」
決して馬鹿にしたり、笑ったりしなかった。それどころか、
「可愛いって言ってくれた」
今でも覚えている。他愛ない会話をして、ふと、笑ったら、そう言ってくれた。
「…独り占めしたい」
歪んだ考えだと自覚している。でも、我慢出来ない。
「提督、僕を見て。僕だけを見てよ」
ふふふふ…あははははは!!!
「重婚なんてしたら、僕だけを見てくれない。僕だけを愛してくれない」
それじゃダメだ。
「諦めないよ。絶対、手に入れてやる!」
………………。
「…というわけで、提督さんは今日1日、居ないわ」
「……」
放送が入り、会議室に行くと瑞鶴さんにそう説明された。
(逃げられちゃったか)
しかも、深海棲艦の大群と遭遇した。更に、一隻残らず沈めた。
(提督は本気を出すと、凄まじい力を発揮するから気を付けなきゃ)
仕留めるなら、一撃で。
(さて、どうしようかな?)
提督が居ないから、大人しく過ごす?そんなの、
(無理だ)
我慢出来ない。甘えたい。なら、答えは決まっている。
(第8492離島鎮守府へ行こう)
幸い、今日は出撃も警護も無い。夕立にこっそり説明して出発しよう。
(武器は艤装のと、あの手榴弾を持って行けばいいか)
side 時雨 out
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side 提督
─第8492離島鎮守府、談話室─
「あぁ、それじゃ、明日」
どうやら予想以上に騒がしくなっているみたいだ。
「スマホ、ありがとう」
画面をハンカチで拭いて霞に手渡す。
「どういたしまして」
「…どうすりゃいいんだ」
思わず呟いてしまった。
「覚悟を決めたんでしょ?男なら、好意を向けてくれる娘、全員娶ってやりなさい」
「お、おう…」
霞にハッキリ言われた。
「法的に認められているジュウコンカッコカリをするのだから、躊躇う必要は全く無いわ」
「……」
「ただ、条件を満たしていないから時間はかかりそうね」
そう。ジュウコンカッコカリの条件─提督の場合、階級が准将以上。年収が1000万以上。更に、2人以上の異性、3人目以降の異性と関係を持つ為には、甲種勲章を最低5つ以上持っていなければならない─を、俺は満たしていない。
「甲種勲章なんて、どうすりゃいいんだよ…」
甲種勲章を得るためには、一定数の鬼・姫級と呼称される強大な深海棲艦を殲滅しなければならない。一定数殲滅すれば、1つ貰える、という物だ。ゲームで例えるなら、トロフィー的な物─鬼級または姫級を10体殲滅する事で、甲種勲章1つを入手出来る─だな。
「あんたの所、最近外洋に出てるじゃない。あそこの海域にも出るから、確実に取れる筈よ」
「そうなのか」
かつて、霞達が出撃していた
「…話は変わるけど、聞きたい事があるわ」
「なんだ?」
霞が少しだけ不安そうな顔をしながら言った。どうしたんだ?
「あんたの所に、満潮って艦娘、居るでしょ?」
「あぁ、居るぞ?」
「満潮は、元気にしてる?」
「元気だぞ?」
どうして満潮の事を聞いてきたんだ?疑問に思った事が顔に出ていたのか、霞は苦笑しながら教えてくれた。
「第603鎮守府の満潮は、私の姉なの」
「そうだったのか」
言われてみれば、満潮と霞の目元が似ているな。
「…私の事、何か言ってなかった?」
「んー、特に、何も言っていないな」
「…そう」
凄く悲しそうな顔をしている。気になるが、聞かないでおこう。下手に干渉してはいけない。
「変なこと聞いて悪かったわ」
「気にしなくていい」
「また、会いたいな…」
「……」
霞が小声で「また会いたい」と言ったのが聞こえた。
今度、時間を作って満潮を此処に連れて来よう。小嶋提督に相談してみるか。
「そろそろ、執務室に行っても大丈夫かな?」
話題を変えてみる。あれから1時間近く経つ。もうドンパチは終わっただろう。
「いえ、恐らく他の人、重婚を認めない艦娘達が騒ぎを聞きつけて、執務室に集まって余計賑やかになってると思うわ」
「マジですか」
おいおいおい、小嶋提督大丈夫か?少し心配になってきた。
「様子を見に行ってみる?」
「あぁ。そういや、重婚を認めていない艦娘達って、金剛以外に誰が居るんだ?」
気になるから聞いてみる。確か、金剛を含めて5人居るって言ってたな。
「まず、金剛さん。あとは筑摩さん、羽黒さん、阿賀野さん、そして、浜風よ」
「戦艦娘1人に重巡洋艦娘2人、軽巡洋艦娘1人に…あれ、浜風って」
陽炎型駆逐艦だよな。駆逐艦娘じゃん。小嶋提督、駆逐艦娘はマズいですよ。
「えぇ、浜風は駆逐艦娘よ」
「憲兵さん呼ばなくていいの?」
「…ここの浜風は、駆逐艦娘の皮を被った戦艦娘よ」
「は?」
まさか、ウチの夕立みたいな戦闘力持っているの?夕立は別名、駆逐艦の皮を被った重巡洋艦と呼ばれている。
「…見ればわかるわ」
「???」
物凄い不安になってきた。とりあえず、執務室に行けば分かるか。マジでやばかったら、助けよう。
霞に連れられ、執務室に近付くと、艦娘達の声が聞こえてきた。
『提督、いい加減重婚をやめて私だけを愛してください』
『筑摩さん、あなたは自分のお姉さんのお世話をしてあげてください。司令官さんは羽黒を愛でるのに忙しいみたいですし』
『あははっ!羽黒さんったら面白い事言うのね。提督さんは阿賀野だけを見てくれてるのに』
『ふざけたこと抜かしてんじゃねーデス。提督はワタシだけを愛してくれると言ったネ!』
(絶賛修羅場中でした)
霞の言った通り、執務室は修羅場になっていた。というか、あの阿賀野って艦娘、矢矧のお姉さんじゃん。まさかここに着任していたなんて。それに、病んでるとは。矢矧に教えようかな?そう思っていると、
『提督、あなたの大好きな駆逐艦娘ですよ?』
(色っぽい声だな)
4人とは別の声が聞こえた。駆逐艦娘、つまり、今の声が浜風という艦娘の声なのだろう。
執務室の扉が少しだけ開いていた。こっそり中を見よう。足音を立てないように気をつけながら、そっと覗く。
『さぁ、愛でてください!』
『いや、それは…あ、渡良瀬提督!助けてください!!』
「やべっ」
小嶋提督に気付かれた。それと同時に、執務室に居た5人の艦娘が一斉に振り返ってきた。うわぁい、皆、ハイライトが消えてる。
「ッ!離脱!!」
「「「「「あっ!!!」」」」」
5人が俺の居る扉へと振り返った事で隙が出来た。その隙を逃さず、小嶋提督は後ろの窓を開け、そこから逃げた。
「提督が逃げたデース!」
「瑞雲を飛ばして追跡します!」
「羽黒、追いかけて機銃で牽制します!」
「ネットは阿賀野が使うわ!」
「浜風、先回りして待ち伏せします!」
さっきまで険悪だったのに、小嶋提督が逃げたら協力的になったよ。仲いいね、君達。
(この娘が、浜風)
執務室の扉を開けて駆けて行った艦娘をチラッと見る。
銀髪で、片目を髪で隠した大人びた駆逐艦娘。あの娘が駆逐艦の皮を被った戦艦。どれ程の戦闘力を持っているのだろう?
「今日は何分間逃げられるかしら?」
5人が執務室から出て行った後、霞が苦笑いしながら言った。
「小嶋提督、苦労されているんだな…」
重婚するとこうなるんだ。大変だなぁ。俺の所もこうなるのかな?
「川内さんと神通さんが居ないから、あっさり捕まるでしょうね」
「うわぁ…」
可哀想。あ、外から小嶋提督の叫び声が聞こえる。頑張ってください。
「…で、浜風を見てどう思った?」
「どう、って…芯の強そうな娘だと思った」
顔付きが、霞のような覚悟を決めた様なものだった。
「やっぱり、見てないのね」
「?」
見てない?何を?疑問に思っていると、
「浜風の胸よ」
「胸?」
何で胸を見なきゃならないんだよ。
「…浜風の胸、大きいのよ」
「…は?」
いきなり何を言い出すの?
「駆逐艦娘離れした胸なのよ。だから、皆からこう言われているわ。
駆逐艦の皮を被った戦艦って」
「……」
おい。
「もうね、おっきいの。戦艦娘並にね、おっきいの。信じられないくらい、おっきいの」
「か、霞?」
あの〜、ハイライト消して真顔で言わないで。なんか、怖いよ。
「何であんなにおっきいのよ…同じ駆逐艦娘…同い歳なのに…なんでよ…なんで…なんでなんでナンデ…」
「」
霞さん、落ち着いてください。
「毎日牛乳飲んでマッサージしてるのに何で大きくならないのよ意味が分からないふざけないで何で…」
「」
「…はぁ」
あ、ハイライト戻った。
「…取り乱して悪かったわ」
「…気にするな」
胸や年齢は女性にとって重要らしいから、何も言わないでおこう。
この後、霞に連れられ、第8492離島鎮守府を見て回った。
side 提督 out
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side 時雨
─第603鎮守府、工廠裏─
「だから、今から向こうに行くね」
夕立を呼び出し、事情を説明した。僕が話している間、夕立は大人しく聞いてくれていた。彼女はいい娘で僕の言う事をよく聞いてくれる。
「…ダメだよ」
「…えっ?」
だから、二つ返事で快く送り出してくれる。そう思っていた。でも、夕立からの返事は拒否だった。
「な、何でさ!?」
君なら理解してくれると思っていた。それなのに、何で?
「渡良瀬さんに迷惑かけちゃ、ダメ。だから、ダメ」
「そ、そんな!?」
「時雨…ううん、紗奈の気持ちは分かるよ?でも、そんな事したら、渡良瀬さんは悲しむ。迷惑かけちゃう。だから、私は止める」
「……」
そう。それなら、
「実力行使しか無いね」
あまりやりたくなかったけど、仕方ない。夕立─夕奈─を倒して第8492離島鎮守府へ行く。
「姉妹喧嘩なんて、何年ぶりだろう?」
艤装は使わない。使ったら、被害が出て騒ぎになる。だから、使うのは拳と足─己の肉体─のみ。
艦娘になる前は、よく喧嘩したね。いつも僕が勝っていた。今回も勝たせてもらうよ?
「ふふっ。いつも私は負けていたけど、今回は勝つよ?」
互いに構える。そして。
「ふっ!」
「あはっ♪」
互いに踏み込み、拳を顔目掛けて振りかぶった。
side 時雨 out
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────
─
次回予告
言葉が伝わらないのなら、拳で伝えるのみ、っぽい!
お姉ちゃん、お祈りは済んだ?
用は足した?
入渠槽でガタガタ震える覚悟はOK?
さぁ、素敵なパーティー始めましょ?
第38話・お前が正気に戻るまで、殴るのをやめない
「