暴力的、及びグロテスクな表現があるっぽい。
ご覧の際は、ご注意くださいっぽい!
side 提督
─第8492離島鎮守府、談話室─
夕方。
「…………」
「…大丈夫ですか?」
目の前で真っ白になっている小嶋提督へ声をかける。
霞に案内され、工廠を見学していると、小嶋提督が逃げ込んできた。そして、その後ろから例の5人が追っかけてきた。
『明石くん!助けてくれたら、研究費3倍に増やします!!!』
『お任せ下さい!!!』
そして、明石に研究費を増やすと言い、助けを求めた。明石は二つ返事で了承し、何処からかN○XTを召喚、妖精さん達がそれに乗り込み、あっさり制圧してしまった。
5人を拘束し、特製の檻に閉じ込めた後、俺は小嶋提督に誘われ、談話室に来た。
「…駆逐艦娘愛でたいです」
「白目剥いたまま言わないでください」
大丈夫そうですね。
「…山風くんを愛でたい」
「呼んだ?」
緑色の髪の艦娘─海風と似た制服を着ている─が小嶋提督の呟きに反応し、やって来た。
「山風くん…」
「提督、お疲れ様」
「あぁ〜…」
いい歳した大人が、幼女に頭撫でられてアへ顔してる。犯罪臭がします。
「…あなたは?」
山風と呼ばれた艦娘が、警戒するような目で俺を見ながら聞いてきた。
「俺は第603鎮守府の渡良瀬だ」
警戒させないよう、微笑みながら自己紹介した。
「…そう。あたし、白露型駆逐艦の山風」
山風は警戒したまま自己紹介してくれた。どうやら相当警戒心が強い娘みたいだ。あまり強引に接すると嫌われそうだから、必要以上に話しかけない方が良さそうだな。
「山風くん。彼、渡良瀬提督は信頼出来る人です。だから、警戒しなくても大丈夫ですよ」
「…提督がそう言うなら」
(相当懐かれているな)
小嶋提督と山風の様子を見ながらそう思った。ここまでの信頼関係を築くのに、どれ程の時間がかかったのだろう。気になったが、詮索しないでおこう。
「提督、困った事があったら、あたしに言って?すぐに助けるよ?」
「ありがとう、山風くん。その気持ちだけで充分ですよ」
「……そう」
(ハイライト、山風のハイライト消えてますよ、小嶋提督!)
何で気付いていないの?
「提督の為なら、あたし、何でもするよ?」
あ、ハイライト戻った。
「はっはっは!嬉しい事を言ってくれますね。本当にありがとう、山風くん」
「んっ♪」
山風、頭撫でられて嬉しそうに目を細めてる。
「あぁ…癒される…駆逐艦娘はいい…」
「うっとりした顔でなんて事言ってんですか」
憲兵さん案件ですよ?そう思った時だった。山風が俺の目をジッと見てきた。その目は、
(だから、何でハイライト消えてるの)
怖いよ。まさかとは思うけど、君まで病んでる、なんてオチじゃないよね?山風じゃなくて病ま風ですか?
「いいじゃないですか。普段苦労しているんです。駆逐艦娘を愛でて癒されてもいいじゃないですか!」
「あー…そう、ですね」
毎日あんな目に遭っているなら、仕方ないかな。
「提督、他の駆逐艦娘じゃなくて、あたしだけを愛でて?」
「ん〜…それもいいんですが、やはり、駆逐艦娘全員を愛でたいから、少し難しいですねぇ。はっはっは!」
「…………」
小嶋提督、山風の目を見て!ヤバいですよ!あと顔も!能面みたいな顔してハイライト消えてますよ!何で気付かないの!?
それから、小嶋提督と山風のイチャイチャ(?)を見せつけられた。終始、山風の目からハイライトが消えていた、とだけ言っておく。小嶋提督、そのうち、山風に襲われるんじゃね?
side 提督 out
───────
────
─
side 時雨
「ガハッ…!?」
そ、そんな…。
「もう、やめよう?」
夕立が見下ろしながらそう言った。
僕は腹部を殴られ、膝をついてしまった。
何で…何で、勝てない?
あれから、夕立と素手で殴り合った。最初は勝てると思っていた。でも、すぐにそれは間違いだと思い知らされた。
(あんなに、速いなんて!)
僕が殴る前に、夕立に殴られる。
隙を突いて攻撃しても、あっさり避けられるか、カウンターを喰らう。
どうして…。
「ま、まだ…」
「……」
「まだ、諦めない!」
夕立に一方的にボコボコにされて、既にフラフラだ。それでも、僕は諦めない。やっと、やっと見つけたんだ。僕の…
(理想の、男性を!)
諦めてたまるか!
歯を食いしばって立つ。視界はボヤけて良く見えない。
「…そう」
「ッ!?」
ゾッとする程冷たい声が聞こえた。次の瞬間、僕の腹部に強烈な衝撃が走った。それと同時に、乾いた音が鳴った。
「ごぼっ!?」
気が付くと、僕の身体は宙を舞っていた。
そして、背中に衝撃。地面に落下したみたいだ。
「…
「……」
声が、出せない。指も動かない。そん、な。
「ねぇ、どうして独り占めしたいの?」
どうしてって。それは、
(僕だけを見てもらいたいからだよ)
「独り占めしたら、渡良瀬さんに好意を寄せる人達に迷惑かけちゃうよ?」
(知っている)
それでも、独り占めしたいんだ。
「それに、無理矢理渡良瀬さんを手に入れても、虚しくなるだけだよ?」
(知っているよ)
「…ねぇ、お姉ちゃん。お姉ちゃんはいつも私に言ってたよね?他人に迷惑をかけちゃダメだよ、って」
「…………」
そうだ。僕達が艦娘になる前、よく
「…お姉ちゃん、考え直そう?今なら、まだ間に合う。戻れるから」
「…………」
分かっている。間違った事をしようとしていたのは。
「奪われる辛さと悲しさを、お姉ちゃんは知っているでしょ?」
「……」
よく分かる。奪われる事の辛さと悲しさが。
「自分がされたら嫌な事を、なんでしようとするの?」
「…」
視界が暗くなってきた。瞼も重いや。
「私が知っているお姉ちゃんは、とっても優しくて、他人を思いやれる人だよ?」
「…」
「お姉ちゃん、少し、頭を冷やしてよく考えよう?」
「」
「…お姉ちゃん?」
………………。
…………。
…。
「……ぁ…」
ここ…は?入渠槽?湯気が立ち込めている。
「あ、気付いたっぽい?」
「ゅぅ…ッ!」
夕奈の声が聞こえた。
声を出そうとしたら、激痛が走った。そうだ、僕は夕奈と殴り合って、それで…
「暫く大人しくするっぽい。肋が4本、折れてるから大人しくして」
「……」
どうりで痛むわけだ。
「ちょっと、やり過ぎたっぽい」
夕奈の犬耳みたいに跳ねた髪が、垂れた。僕の髪もそうだけど、どういった原理で動いているんだろう?
「あと十数分で完治するから、我慢して?」
「……」
普通なら数ヶ月かかるのに、艦娘になった事で大怪我を負っても直ぐに治る。でも、痛覚は感じるから、気が狂いそうになる。
「久々の姉妹喧嘩は、私の初白星っぽい」
「……」
まさか、負けるとは思わなかった。改二になったから強くなったと思ったけど、そんな事はなかった。やっぱり、鍛錬しなくちゃダメだね。
「色々言いたい事があると思うけど、それは完治してからにしましょ?」
「……」
無言で頷く。と同時に激痛が走った。動かない方がいいみたい。
それから、夕奈が一方的に話しかけて、僕は無言でそれを聞いていた。
………………。
「…よし、大丈夫みたいだ」
十数分後、試しに身体を動かしたら違和感や痛みが無くなった。
「それじゃ、出よう?」
夕奈はそう言って勢いよく入渠槽から出て行った。
(大きいなぁ)
僕より歳下なのに、胸とお尻が大きい。羨ましい。
(なんで、大きくないんだろう…)
思わず自分の胸を触る。決して小さいわけじゃない。しかし、夕奈と比べると小ぶりだ。
「…はぁ」
自信無くなるなぁ。
「紗奈〜、早く上がるっぽい!のぼせちゃうよ〜?」
「今行くよ」
夕奈に急かされてしまった。ゆっくりと入渠槽から出て脱衣所へ向かい、身体を拭いて服を纏った。
………………。
「…で、何があったか説明してくれる?」
「……」
僕と夕立は、執務室に来ている。理由は簡単だ。僕と夕立が殴り合いをした所を海風に見られ、瑞鶴さんに報告され知られてしまったからだ。
(何て説明すればいいんだろう?)
提督に会いに行こうとしたら、夕立に止められ殴り合いに発展した、なんて話せない。話したら、怒られてしまう。それだけじゃない。警戒され提督と接する事が出来なくなる恐れがある。
(嫌だ。そんなの、嫌だ!)
身体が震える。どう説明すればいい?
「力試しをしてたっぽい」
「…えっ?」
僕が瑞鶴さんに何て言おうか考えていると、夕立がそう言った。
「力試し?」
瑞鶴さんが聞き返してきた。
「うん。どっちが強いか決める為、殴り合ったっぽい!」
「あんたねぇ…」
瑞鶴さんが呆れている。
「最初はお互い加減していたけど、ヒートアップしてガチの殴り合いになって、時雨の肋折っちゃった♪」
夕立、嬉しそうな顔をしながら言わないで。
「全く。夕立、あんたはもう少し冷静になりなさい」
「ごめんなさいっぽい…」
今度は申し訳なさそうな顔をしている。もしかして、僕を庇ってくれているの?
「…もう。こんな事、二度としないで?いいわね?」
「ぽい〜…」
「……ごめんなさい」
一応、申し訳なさそうに謝罪をしておこう。
「反省しているのなら、これ以上言わないわ」
「…えっ?」
もっと叱られると思っていたら、瑞鶴さんがそう言った。何で?疑問に思っていると、瑞鶴さんは苦笑いを浮かべながら言った。
「準…提督さんから教わったの。相手がちゃんと反省しているのなら、それ以上追求しない、って。だから、これ以上言わないわ。ちゃんと反省しているみたいだし」
「……」
そう、なんだ。提督らしい考えだね。
「さて、あんた達は部屋に戻りなさい。私はやらなくちゃいけない事が沢山あるから」
そう言って瑞鶴さんに退室を促された。
…………。
「…」
「…貸し、だからね?」
「…うん」
執務室を出て部屋に向かっていると、夕立がそう言った。夕立が庇ってくれたお陰で、大事にはならなかった。感謝しよう。
(独占したいなぁ)
正直言って、我慢出来そうにない。彼を独り占めしたい欲がある。でも、また行動を起こそうとすれば、夕立に止められる恐れがある。
さっき殴り合って、ハッキリ分かった。今の僕じゃ、夕立に勝てない。
(鍛えなくちゃ)
毎日鍛錬をしているけど、それだけじゃ夕立に勝てない。
「また変なこと考えてるっぽい?」
「ッ!?」
いつの間にか夕立の顔が目の前にあった。その目は黒く濁っていた。
「また、渡良瀬さんに迷惑かけようとしてるっぽい?」
犬歯を剥き出しにしながら夕立は笑っている。
本能的恐怖を感じ、思わず後退りしてしまった。何だ、この殺気は!?
「お姉ちゃんが悪いことするなら、何度でも止めるよ?」
…嗚呼、駄目だ。ハッキリ分かった。分からされた。
実力行使は無理だ。
(諦めたくないのに…)
「…どうして独占したいの?皆と仲良く共有しようと思わないの?」
「どうして、って…僕以外の娘に優しくする所を見たくないんだ」
「なら、見なければいいじゃない」
「…確かに。でも、僕以外の娘を愛でる事には変わりない」
「なら、その分沢山甘えたり、愛でて貰えばいいじゃない」
「…」
「紗奈は少し、難しく考え過ぎよ」
「…」
夕奈が
「独占するんじゃなくて、誰よりも渡良瀬さんに甘えて、愛でられまくればいいじゃない」
「…」
そんな事、出来るの?
「紗奈は心の何処かでブレーキをかけちゃってる。だから、甘え方が下手くそなのよ」
「うぅ…」
仰る通り。僕なんかが甘えていいのか、と考えて思い切り提督に甘えられない。
「改二になって、犬っぽい見た目になった。だから、犬みたいに擦り寄って甘えればいいのよ」
「犬っぽい…」
確かに。改二になって、髪の毛が犬耳みたいに跳ねた。頭を洗っても、すぐに跳ねる。それに、どういう原理か分からないけど、僕の感情に反応してピコピコ動いたり、垂れたりする。
「
「…いい、のかな?」
「いいのよ」
「…そう」
なら、解き放とう。彼──提督──に嫌われない程度にブレーキを壊して心を解き放とう。
「とりあえず、今は大人しくお留守番しましょう?番犬の如く、
「…そう、だね」
今までもそうだった。僕が頑張れば、提督は褒めてくれた。
(それに、癒しキャラを求めている)
癒しキャラだった涼月が覚醒してから、彼は心労が重なって胃潰瘍になった。なら、その心労を癒せるよう、振舞ってみよう。
「瑞鶴さんと翔鶴さん以上に、僕を求める様にすればいい」
「何か言った?」
「ううん、独り言」
決めた。僕は、癒しキャラになる。そして、振り向かせてみせる。
(…扶桑は、どうしよう?)
…………。
何も思い付かない。
(後で考えよう)
…そういえば、何で僕は扶桑を
少し前までは、さん付けで呼んでいたのに。
(…分からない)
どうしてだろう?
「ねぇ、時雨。提督さんの写真集見せて?まだ他にもあるんでしょう?」
「…うん、いいよ」
何故呼び捨てになったんだろう…ちょっと待って、
「夕立、今なんて言った?」
考え事をしながらだったけど、聞こえた。
提督の写真集を見せて、と。
「ん?だから、提督さんの写真集を見せて、って言ったの」
「…なんの事かな?」
お、落ち着くんだ。夕立の冗談だ。きっとそうだ。
「下着を入れるタンス、二重底」
「」
おおおおおっおっおちちつくんだ、僕。きっと、カマをかけているだけだ。冷や汗なんて出ていない。
「黒い箱、ダイヤルは紗奈の誕生日、写真集の表紙に『提督日誌』」
「」
あ、ダメだ。バレてる。
「…提督さんが知ったら、どんな反応するかしら?」
「」
「貸し二つね」
「…はい」
ううっ…バレた。二番目にバレて欲しくない相手にバレた。一番は勿論、提督だ。
それから、夕立にからかわれながら部屋に向かった。
…隠し場所、変えよう。
「紗奈は単純だから、何処に隠そうが、すぐに見つけてやるっぽい♪」
「やめてくださいお願いします」
何で僕の考えている事が分かったのだろう?
隠すのが無理なら、金庫買おうかな。
「金庫買っても無駄っぽい。ぶっ壊してこじ開けるっぽい」
「」
この妹、もうやだ…。
side 時雨 out
───────
────
─
side 提督
─第8492離島鎮守府、提督私室─
夜。
「ここはよく、空母棲姫と装甲空母鬼が出現します」
夕食をご馳走になり、入浴を済ませた後、小嶋提督に呼ばれ彼の私室に来ていた。
そして、海図を広げ、鬼・姫級の出現する海域と種類について教えてもらっている。
「対空性能を高め、空母には艦攻・艦爆より、戦闘機を多めに積んで戦わせるといいでしょう」
「成程」
メモを取りたいが、機密情報に含まれる為、頭にしっかり叩き込む。
「さて、他に聞きたい事はございますか?」
「いいえ、ありません」
「分かりました。渡良瀬提督の所の艦娘達なら、充分殲滅が可能です。それでも、油断してはいけませんよ?」
「はい!」
色々アドバイスを貰えた。向こうに帰ったら、編成や武装について、もう一度よく考えよう。
「…さて、まだ時間に余裕があります。もし、渡良瀬提督が良ければ、雑談でもしませんか?」
「喜んで」
断る理由が無い。というか、ただでさえ迷惑かけてるのに、断る勇気は俺には無い。
「…おっと、誘っておいてアレですが、テレビを付けますね」
「え、あっ、はい」
壁に掛けられた時計を見ると、小嶋提督はそう言った。見たいテレビでもあるのかな?
リモコンを取り、電源ボタンを押してチャンネルを回した。
テレビの画面には、今流行りのアイドル達が映っている。
「始まった所ですね」
嬉しそうな顔してる。小嶋提督、アイドルに興味あるのかな?意外だ。
「那珂ちゃんがテレビに出るんですよ」
「マジですか」
俺の顔を見て考えている事を察し、そう言った。俺も、相手の顔見て考えている事が分かるようになりたいな。夕張にでも頼んで、相手が考えている事が分かる機械でも作ってもらおうかな?
<みんな〜!艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよ〜!
「お、那珂ちゃんだ」
横須賀鎮守府所属、日本海軍公認のアイドル艦娘、那珂ちゃんが笑顔で観客に手を振っている姿が映った。
那珂ちゃん本人曰く、 「ちゃん付けで呼んでくれないと、拗ねちゃうゾ☆」と、トップアイドルになってインタビューされた時に言ったらしく、それ以降、皆ちゃん付けで呼ぶようになった。噂だと、大本営のお偉いさん方も、ちゃん付けで呼んでいるらしい。
「歌って踊って戦うアイドル。それも、トップクラスの実力を持っている。とても遠い存在になってしまいました…」
「小嶋提督…」
どこか寂しそうな目をしている。
そうそう、今テレビに映っている那珂ちゃんは、川内と神通の実妹だ。小嶋提督とも面識がある。昔から歌や踊りが好きだったらしく、まさかトップアイドルになるとは思わなかったと、以前、小嶋提督が言ってたっけ。
<それじゃ、行っくよ〜!恋の2-○-11♪
那珂ちゃんがそう言うと、アップテンポな曲が流れ出した。新曲だ。
「彼女の歌声は、いつ聴いても元気が出ます」
「俺もそう思います」
それから、黙って那珂ちゃんの歌を聴いた。
<みんな〜、あっりがとぉ〜☆
「…那珂ちゃん、いいですね」
「…那珂ちゃん、いい」
多くは語らない。CD買おう。
<今日の歌はぁ〜、那珂ちゃんが大好きな人に想いを伝える為に作った歌で〜す☆
「…えっ?」
余韻に浸っていると、那珂ちゃんがそう言った。会場は騒然としている。
<な、那珂ちゃん、その、大好きな人って…
グラサンをかけた名物司会者、タ○リさんがめっちゃ焦りながらインタビューしてる。
<それはぁ〜…もっちろん、那珂ちゃんを応援してくれる、みんなだよぉ〜☆
「……」
なんだ、ファンの人達に伝える為か。騒がしかった会場から、安堵のため息が聞こえた。そして、那珂ちゃんは舞台裏へ向かって去って行った。
…あれ、小嶋提督、どうしました?顔面蒼白で冷や汗垂らしてますよ?大丈夫ですか?そう思っていると、小嶋提督のスマホが鳴った。どうやらメールのようだ。
スマホを弄る小嶋提督。そして、真っ青だった顔色が土気色になった。
「ど、どうしたんですか?」
恐る恐る声をかけた。すると、無言でスマホを差し出してきた。え、見ろって?
えーと、メールだ。なになに…差出人は、長瀬紬。あのー、もしかして…。
「……那珂ちゃんからのメールです」
うん。予想的中。メールの差出人は、那珂ちゃん─本名、長瀬紬─だった。内容は、要約すると、
・小嶋提督を想って作詞・作曲した
・今度、二人きりで一緒に出かけよう?
というものだ。
「……」
俺、無言でスマホを小嶋提督に返す。小嶋提督、項垂れたまま受け取る。おぉう、目のハイライトが消えてるよ。
「…渡良瀬提督、すみませんが、1人にして頂けないでしょうか?」
「わ、分かりました」
俺はそっと部屋を出た。本当に、その、なんて言いますか、お疲れ様です。
「…寝よう」
どっと疲れた。
「…あ」
「…ん?」
部屋に向かっていると、山風と遭遇。パジャマ姿で、枕を持っている。
「……」
一瞬だけ目が合うと、無言で俺の横を走って行ってしまった。あ、あれ?山風が向かった所、小嶋提督の私室…。
「…見なかったことにしよう」
俺は何も見ていない。
色々あり過ぎて疲れた。何も考えずに寝よう。来客用の部屋のドアを開け、室内に入った。
電気を消し、布団に横になる。
(…明日、どうすっかな)
とりあえず、今は寝よう。考えるのは朝になってからにしよう。瞼を閉じ、俺は意識を手放した。
side 提督 out
───────
────
─
次回予告
迫れば逃げる。捕まえても逃げる。まるで猫みたいですね、ねっ。
なら、下手に迫るより、向こうからこちらに来るようにすればいい。でも、どうすればいいのかしら?ネットで調べましょう。
…母性?オギャリティ?最近は、女性に甘えたい男性が増えている?
…これだ!
うふふ。本気、出しちゃおう♪
第39話・母性
「バブみを感じてオギャってください♪」