追跡鶴   作:EMS-10

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第41話・オーバーキル

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、埠頭──

 

 

『よろしい、ならば戦争(クリーク)です』

 

 

「」

榛名ァ!!君、なんて事言ってくれちゃったのォ!?

由良さん、ブチ切れちゃったじゃないですかー!やだー!海が榛名の血で赤くなっちゃう!鎮守府近海、血に染めて、になっちゃうよ!

 

「ギャハハハハハ!!!」

「言っちゃった、言っちゃったよオイ!」

「これは瑞雲ラリアット祭が開催されるわね」

 

無線から、榛名と由良のやり取りが聞こえたんだけど、榛名の奴やりやがった。由良を煽りやがった。しかも、禁句を言いやがった。

それを聞いた摩耶は腹を抱えて大笑い。

秋雲は顔を青くして震えている。

足柄は今後起きる事を予想した。

いや、マズいぞ?下手したら榛名がPTSDになるかもしれん。

 

「……」

「……」

 

あの、瑞鶴さん?葛城さん?艤装纏って何しようとしているのかな?

 

「胸って、脂肪の塊よね?」

「なら、燃やせば溶けますね」

 

君達、ハイライト消えた目のまま、艦載機に焼夷爆弾付けないで。

 

「機銃や砲弾で抉ればいいんじゃないかな?」

 

時雨さん、君もハイライト消したまま主砲構えないでください。

 

「吸い取れば萎みますよね?ふふっ……うふふふっ…」

 

早霜さん、吸引力の変わらない唯一の掃除機取り出して何する気ですか?

 

「私、脂身好きなんです」

 

阿武隈さん、コンバットナイフ持ってニタニタ笑わないで?

 

「胸なんて、大きいと肩が凝るし、動く時揺れて邪魔なだけよ?」

 

翔鶴、事実だとしても、今言わないで。ほら、瑞鶴達の顔が大変な事になっていますよ?

 

「提督は、身体で判断しない人ですから、気にしなくていいと思いますよ?」

 

初霜ぉ。いい事言ってくれた!そうだよ!俺は身体で選んだりはしない!だから皆落ち着いて!

 

「胸じゃなくて、心で繋ぎ止めないと長続きなんてしないわ」

 

千歳さん、ナイスアシスト。お陰で皆は、少しだけ大人しくなってくれた。

 

「……あ、由良が仕掛けた!」

 

摩耶が双眼鏡構えながら言った。マジか!?もう?

急いで双眼鏡を構え由良を見る。速い!

由良は波と風を利用して進んでいるから、予測不能な動きをしている。その為、榛名の主砲と副砲を軽々と避けている。

 

(焦っているな)

榛名の顔を見ると、額に汗を浮かべ、必死になって砲撃を行っている。

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

 

side 榛名

 

 

「主砲、発射!」

一旦停止してから、第一砲塔を目標(由良さん)に向けて発射。外れる。

 

(動きが不規則ですね)

波と風を利用して航行しているから、偏差射撃をしても外れてしまいます。

 

(まるで、舞っているみたいです)

どこか美しさを感じる動きです。でも、同時に不気味さも感じます。

 

(まだ余裕はあります)

榛名と由良さんとの距離は、目測約20,000m。まだ由良さんの主砲と副砲の射程圏外。でも、魚雷が飛んでくるかもしれない。警戒しましょう。今の所、魚雷を発射する素振(そぶ)りは見せていません。

 

『はい、ドーン』

 

「……えっ?」

突然、無線から由良さんの声が聞こえました。それと同時に、足元から突き上げられるような衝撃が走る。

 

「ッ!?魚雷!?」

そんな、いつの間に!?

演習用の魚雷なので沈む事はありませんが、それでも衝撃と痛みは感じます。鉄パイプで殴られたような痛みを感じるのと同時に、航行速度が少しだけ落ちてしまいました。

 

『ダメじゃないですか。注意力散漫ですよ?』

 

「くっ!」

おかしい。しっかり由良さんを見ていたのに。魚雷をいつ撃ったのかしら?…待ってください、確か、由良さんは甲標的を搭載できる。あと、瑞雲も。

 

(もしそうなら、足元も注意しないと!)

厄介ですね。由良さんと甲標的、瑞雲の3つを注意しないといけない。

由良さんばかりを見ていると、甲標的に魚雷を撃ち込まれる。

甲標的に注意していると、由良さんが接近してきて撃たれる。

その2つに気を向けさせて、瑞雲で爆撃してくる可能性もある。

 

(でも、そんなに幾つも操作すると、)

脳に凄まじい負担がかかります。恐らく短期決戦するつもりですね。なら、

 

(逃げ回って時間を稼ぎます!)

先程の雷撃の影響で速度が落ちましたが、それでも25ノット以上は出せます。

 

(ある程度時間を稼いだら、身体の頑丈さを生かして、強引に接近して主砲で仕留めましょう)

被弾上等の突撃戦法を行って、轢き倒してから撃って仕留める。この方法で沢山の鬼・姫級を沈めてきました。

 

(覚悟してくださいね?)

勝つのは榛名です!

 

 

side 榛名 out

 

 

───────

────

 

 

(あらあら、バレちゃいましたね)

波を利用して、こっそり甲標的を射出。榛名さんは長距離から主砲を撃つ時、一旦止まる癖がある。一緒に出撃した時、何度も見た。一応注意したんだけど、未だ直っていないみたい。

 

(弱点を残したままだと、死ぬのに)

まぁ、ここら辺は平和だから、すぐに死ぬ事は無いでしょうけど。

 

(……あっ、逃げ始めましたね)

恐らく、逃げ回って脳に負担がかかって動きが鈍くなった所を仕掛ける気なんでしょうけど。

 

(残念でしたね?ねっ?)

一度に複数の艤装──正確には武器。主砲や甲標的、大発動艇など──を操ると脳に負荷がかかり、激しい頭痛と共に目や鼻、耳、口から血を流してしまう。

瑞鶴さんが此処に来て間もない頃、一度そうなって満足に動けなくなっていましたね。※1

由良も最初はそうでした。でも、何度もやって、慣れさせました。だから、時間を稼ごうが無意味。

 

(それに、戦い方が粗い)

基礎・基本は出来ていますが、戦艦の火力と装甲でゴリ押ししています。そういう相手ほど、

 

(荒らしに弱い)

今までの経験から、榛名さんはソレに該当します。でも、油断はしない。

 

(予想できない事をしでかしてくる恐れがありますね?ねっ?)

パニックを起こし、予想不能な行動をしてくるかもしれない。だから、ビビりながら。でも大胆に攻めましょう。

獲物(榛名さん)が主砲を撃ってきた。

波を利用して、跳ねる。

前転しながら進みつつ、砲弾を回避。

背中に風圧。

後ろに弾着。

獲物との距離、目測約15,000m。

舞う様に跳ねながら接近。

再び主砲を撃ってきた。

今度は斜めに側転。

回避。

後ろに弾着。

水飛沫がかかる。

……今のは近かったわね。

 

(嗚呼、楽しくなってきちゃった)

今回は抑える必要は無い。

獲物は、言ってはならないことを言った。

分からせてやりましょう。

煽った相手が誰なのか。

 

「クハハハハハッ!!!」

 

『ッッッ!!?』

 

あら、そんな顔してどうしたんですか?

ほら、もっとよく見てください?

あなたが煽った相手が、どんな存在なのか。

しっかり、教えてあげますから。

 

(キ○ガイや、イカれているは褒め言葉だけど、)

()のカラダを笑うのは許せない。

親から貰った大切なカラダ(私という存在)

それを笑うという事は、()の両親を侮辱する事と同じだと思っている。

だから、分からせてやる。

 

「さぁ、断末魔を上げるお時間ですよ♪」

 

 

side 由良 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

「足柄、氷取ってくれ」

 

「はーい。…あ、摩耶、炭酸水ある?」

 

「ん?あぁ、あるぞ。ほい」

 

「……」

完全に宴会モードだ、コレ。でもまぁ、最近色々あったから、今日位は大目に見よう。相変わらず足柄と摩耶は酒強いな。結構飲んでるのに酔っていない。

 

「……あっ、由良が単装砲棄てた」

 

「「「「「「ッッッッ!!!!」」」」」」

 

俺がそういった直後、全員双眼鏡を持って由良を見始めた。

 

「さて、どうなる?」

端末を見ると、榛名の弾薬と耐久値には未だ余裕がある。対して由良は、主砲の弾が空。今回は主砲・甲標的・瑞雲を積んでいる。副砲を積まなかったのには理由があるのか?ともかく、見れば分かるか。

 

「殺れ、由良!」

「殺れ!殺れ!」

 

瑞鶴、葛城、落ち着いて?気待ちはわかるが、榛名は仲間なんだよ?

 

「由良さん、殺っちゃって。榛名の無駄乳を削ぎ落として」

 

時雨、物騒なこと言わないの。というか、君、結構大きいじゃん。口に出さないけど。

 

「うふふふ……うふふふふふっ……」

 

あの、早霜さん、コードレスダ○ソンのスイッチON/OFFしながら笑わないで?ちょっと怖いです。

 

「瑞雲ラリアットで無駄乳を凹ましちゃえ!」

 

……阿武隈、君も充分ある方だと思うんですが。何故女性はそこまで求めるのだろう?論文書いてみようかな?

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

side 由良

 

 

「クハッ!クハハハハハッ!!!」

殺意を最大限にして、獲物に叩き付ける。

主砲の弾は撃ち尽くしてしまった。

でも、砲塔を2つ使用不能判定に出来た。

右側の主砲──獲物から見て左側2つ──を潰したから、残りは左側の2つしか使えない。

 

「~~ッ!!」

 

あらあら、焦っていますね。でも、こういう時は冷静にならないと、

 

「足元をすくわれますよ?」

敢えて獲物の生き残っている主砲側を航行し、その隙に甲標的を起動・魚雷を撃たせる。魚雷は真っ直ぐ進み、左脚部に直撃。

 

「きゃあっ!?」

 

クリティカルヒット。主砲で片側にダメージを与え続けたから、傾斜し始めた。バランスを取るのに必死みたい。

 

(このまま接近してアレをぶちかましたいけど、轢かれる恐れがある)

何度も見た。一緒に出撃した時、頑丈さを生かして深海棲艦を轢き殺す所を。なら、

 

(波を利用してフェイントをかける!)

あの娘(・ ・ ・)が得意だった、波を利用してのフェイント。インファイトが苦手な艦娘が多いから、これを初見で対応するのは難しいでしょう。

飛行甲板を水平に構え、瑞雲をセット。

 

ソレ(・ ・)はっ!?」

 

おや、気付きましたか?そうです。ソレです。

あらあら、目付きが変わりましたね。

 

「ソレをするなら、轢くまでです!」

 

うん、予想通り。真っ直ぐ向かって来ました。

()も行きましょう。

艤装、最大出力!

戦速一杯!

縮まる距離。

1000m。

800m。

600m。

主砲を撃ってきた。

顔を横にずらす。

頬を掠る。

出血。

構わない、進め!

200m。

副砲を撃たれる。

身体中に被弾。

中破寄りの小破。

行ける。……いいえ、行く!

風と波を計算。

距離、10m。

目の前には、獲物が全速力で突っ込んで来ている。

推定、28ノット。()は約38ノットを出している。

轢かれれば、大破は確実。

失敗は許されない。

距離、5m。

まだ。まだよ。

距離、2m。

まだだ。この距離では反応されてしまう。

距離、1m。

 

(今だッ!!)

計算通り、波が来た!

それを利用して、バク宙。

後ろへ翔ぶ。

 

「……えっ!?」

 

予想外の動きに、獲物は間抜けな声を出している。

そして、()に飛び込もうとしたけど、対象が居ないから転倒。

 

「ふっ!」

瑞雲を落とさないよう、細心の注意を払いながら着水。

バランスを崩した獲物へ、飛行甲板を振りかぶる!!!

 

「堕ちろおおおおおおおッッッッ!!!」

 

「~~~ッッッ!!?」

 

驚愕の表情を浮かべる獲物の顔面目掛けて、叩きつける!!!

鈍い音。

大爆発。

飛行甲板を切り離して離脱。

爆風の影響で、中破判定を貰っちゃった。獲物は?

……中破か。流石に硬いわね。なら、

 

「これで!」

甲標的を操作し、()の足元へ移動させる。

……よし、あと1発だけ魚雷が残っている。

甲標的を拾い上げ、魚雷を取り出してそれを獲物の口に押し込む。

顔面に瑞雲ラリアットを叩き込まれたからか、一時的に意識が朦朧としていて抵抗してこない。

あらあらあらあら、そんな泣きそうな顔してどうしました?コレは()からのプレゼントです♪

 

「ほらほらほらほら!もっと鳴いて?鳴いてよ?鳴けって言ってるでしょ!!?」

そんなくぐもった音じゃなくて、豚みたいな悲鳴をあげなさい?ほら。ほら!

……おっと、甚振らずにトドメを刺しましょう♪

 

Vive memori mortis(死を心に置いて生きなさい)

 

甲標的を振りかぶって、魚雷に衝撃を与えて起爆。

しようとした時だった。

 

『そこまでだ!由良!やめろ!!過剰攻撃だ!!!』

 

「……了解です」

無線から、提督さんの慌てた声が聞こえてきた?

やっちゃった。昂り過ぎて過剰攻撃しちゃった。

 

(あーあ、負け、かなぁ…)

演習開始前に言ってましたね。過剰攻撃を行ったら、即敗北だ、と。

 

「……はぁ」

負けた。つまり、重婚の話は無くなったも同然。どうしましょう。諦めたくないなぁ。そうだ、榛名さんを脅しましょう♪そうすれば万事解決です♪

 

「榛名さん、あのね?」

……あら、気絶してる。仕方ない。引き摺って行きましょう。

 

「……重いなぁ」

決して榛名さんの体重が重いわけじゃない。艤装を纏っているから、重い。それに、

 

「死体や意識を失っている人間は、重い」

死体や意識が無い人間は、動かないから余計重くなる。だから、運ぶのに苦労する。

 

「……あーあ」

気分が重い。判定は由良の反則負けでしょうね。

 

「皆に、どんな顔して会えばいいのかな……」

きっと、失望しているでしょう。

……嫌だなぁ。

 

 

side 由良 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、執務室──

 

翌朝。

 

 

「提督~、終わったから確認よろしく~」

 

「あぁ」

由良と榛名の演習から一夜が明けた。

由良がルール違反をした事で、榛名の勝利になった。

観戦していた重婚肯定派の娘達の落ち込み方が半端じゃなかった。特に瑞鶴。本気で艦載機発艦させようとしていたから、慌てて止めた。

俺は事実を受け止め、榛名と単婚する覚悟を決めた。しかし、意識を取り戻した榛名は信じられない事を言い出した。

 

『は、榛名、重婚を認めます。だから、もう提督を独り占めしようと思いません』

 

まさかの重婚肯定宣言。どんな心境の変化があったんだ?

 

(由良の殺気のせいか?)

恐らく、それが原因かもしれない。

 

「提督、ボーッとしてるよ?」

 

「……ん?あ、あぁ」

イカン、昨日の事を思い出していたから、ボーッとしてしまった。

 

「色々思う事あると思うけど、榛名さんがああ言ったんだから、気にするのやめよう?」

 

本日の秘書艦、秋雲が苦笑いしながらそう言った。

いや、まぁ、何度か榛名に確認する為に聞いたが、重婚を認めてくれた。

 

(ケアしないといけないな)

榛名は、今も部屋に閉じこもっていると山城から教えてもらった。

あと、由良もケアしないと。

 

(反則した事を相当気にしている)

確かにやり過ぎたが、ちゃんと反省しているから、それ以上糾弾しない。何度か優しく声をかけたが、元気がない。由良も部屋に閉じこもってしまった。

 

(メンタルケア、俺に出来るのか?)

不安だ。確か、大本営にメンタルケアを行う部署があったな。連絡してみるか。

……その前に、秋雲が提出してくれた書類を確認しよう。

えっと、何何、今月の食糧の経費と資材の消費量。それから。

 

(演習のお誘いか)

第603鎮守府は小規模から中規模になり、戦力が増したからお誘いが来たみたいだ。初めてだから不安だ。ちなみに、相手は第08鎮守府だ。

 

(そうだ、服を返さないと)

加藤中佐──浦樹──から借りた服をこの時に返そう。

頭の中で今後の予定を組みながら書類に目を通した。

演習は1週間後、第08鎮守府で行うみたいだ。

 

(……カウンセリングの予約取っておくか)

その前に、由良と榛名のメンタルケアしないといけないな。予約を入れるか。えっと、確かあの部署の電話番号は…あった。

引出しからカウンセリング部署の電話番号が書かれた書類を取り出す。

 

(……昼休憩中だから、また後だな)

時刻は13:30。カウンセリングの部署は午前と午後に別けて診察していて、13:00~14:00の間は診察や電話を受け付けない。

 

(……やるべき事が多いなぁ)

少し前までのんびり出来たけど、今はそれが出来ない。まぁ、別にいいんだけど。

 

(……あっ、書かないと)

メンタルケアをする理由や症状を書いて提出する必要があったんた。なんて書けばいいんだ?

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

side 榛名

 

 

──榛名私室──

 

 

「……」

怖い。

あんな殺気、初めてです。

 

(もし、あのまま続いていたら……)

魚雷を口に押し込まれ、起爆されそうになった。

幸い、提督が止めてくれたので、起爆されなかった。

 

(……諦めたくないのに)

本音は、重婚を認めたくない。でも、もし。もし、認めずにいたら、殺されてしまうかもしれない。

由良さんだけでなく、瑞鶴さんや翔鶴さん、阿武隈さん、葛城さん。彼女達に目を付けられ、殺されてしまうかもしれない。

 

「死にたくない……」

だから、重婚を認めた。

もっと力があれば、強引に単婚を認めさせられたかもしれない。

でも、今は無理ですね。

……そうだ。第二次改装を受ければ!

 

(でも、どうやって?)

提督の許可が無ければ、改装を受けられません。

それに、此処は最近戦闘が増えたせいで、資材にあまり余裕がありません。

 

(……はぁ)

榛名、悲しいです。

……そうだ、お姉様に相談してみましょう!

 

 

side 榛名 out

 

 

───────

────

 

 

side 由良

 

 

「……」

やってしまった。

侮辱されて、加減するのを忘れてしまった。

 

(嫌われちゃった、よね…)

命令違反をして、彼を失望させてしまった。

演習後、彼は優しく声をかけてくれたけど、悲しそうな顔をしていた。

 

「榛名さんは認めてくれたけど…」

重婚を認める様なことを言っていたけど、あの顔を見るに、完全に納得していないでしょう。

 

「……気持ちを切り替えなきゃ」

いつまでも塞ぎ込んでいると、彼や此処の皆に迷惑をかけちゃう。昔なら直ぐに気持ちを切り替えられたんだけど。

 

「平和ボケしちゃったなぁ…」

今の私を見たら、あの戦艦娘(・ ・ ・ ・ ・)はどんな反応をするのかしら?

 

(大和さん…)

会いたいなぁ。

 

 

side 由良 out

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

「はい。では、よろしくお願いします」

カウンセリングの予約取れた。これで良し。

 

「カウンセリング受ける娘が出るの、初めてだね」

 

「言われてみりゃ、そうだな」

秋雲に言われて気付いた。確かに、今回が初めてだな。命懸けで戦っているから、何人か精神的不調を訴える娘が現れると思っていたんだが。

 

「秋雲は大丈夫なのか?」

こいつは明るく元気で、おふざけキャラだと此処の皆に認識されているが、人一倍感受性が豊かだ。此処に来たばかりの頃は、1人で泣いていた事もあった。

 

「秋雲さんは大丈夫ですぜ?心配要らないよ~」

 

「そうか…」

 

「ただ、最近提督が構ってくれないから、ちょっと寂しいかなぁ」

 

「…すまん」

言われてみれば、瑞鶴や翔鶴ばかりに構っていたな。

 

「悪いと思ってるなら、今度一緒にアキバデートしようぜぇ?」

 

「あぁ、いいぞ」

最近構ってやれなかったから、連れて行ってやろう。

 

「おっ、言ったね?とことん振り回すから、覚悟しといてよ?」

 

「上等だ」

今の所は大丈夫そうだな。…ん?電話?

 

「はい、こちら第603鎮守府、渡良瀬準少佐です」

固定電話が鳴った。誰からだろう?

この時の俺は知らなかった。

この電話が、地獄の宴の合図になるなんて。

 

『こちら、佐世保鎮守府、浅田凛准将です』

 

さ、佐世保鎮守府の提督から電話!?一体何故!?というか、声が物凄い疲れているぞ。

 

『渡良瀬少佐、単刀直入に言います。扶桑型戦艦一番艦、扶桑をそちらに異動させます』

 

「……はい?」

おい、今なんて言った!?

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告

まさか、榛名が重婚を認めてくれるなんて。
これで問題は解決されたね!
…あ、提督さん、どうしたの?顔を真っ青にして。…はぁ?扶桑さんが!?嘘!?しょ、翔鶴姉、どうしよう?
…えっ、その前に演習?わ、分かった。相手は何処?
…第08鎮守府ね、了解よ。


第42話・曇天の海上で輝いて


「撃て!撃ちまくれ!砲身が焼けるまで、撃ち続けろ!!!」



※1…本編第3話参照
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