扶桑嫁提督の皆さん、ごめんなさい。
※現在、活動報告にて過去編のアンケートを実施しています。よろしければご協力お願いします。
side 提督
──第603鎮守府、執務室──
「ふふふっ……うふふふふふふっ♪」
扶桑さん、そんな顔しないでください。怖いです。けど、言えない。言ったら取り返しのつかない事になりそう。
「あー……涼月、扶桑さんを部屋に案内してやってくれ。その後、
まずは此処を旅行してもらって、扶桑さんに何処に何があるか覚えてもらおう。
「了解しました」
涼月は真面目な顔で敬礼。そして扶桑さんを連れて執務室を出て行った。
(似ているな)
どうでもいいが、涼月の声が、扶桑さんと山城の声と似ている気がする。気のせいかもしれんが。
「今更だけど、涼月ちゃんと扶桑さん、山城さんの声、初○ミクの元になった人の声に似てるわね」
「言われてみれば……」
確かに似ているな。というか、千歳さん○音ミク知ってるんだ。
「よく音楽を聴くから、知ってるわ」
へぇ、そうなんだ。俺の考えている事を的確に当ててきたけど、驚かない。
此処の皆は、俺の考えている事を簡単に言い当ててくるからね。もう諦めてる。
「考えている事、顔に出過ぎよ?」
「そうですか」
小嶋提督にも言われたな。簡単に顔に出る、って。気を付けているつもりなんだけどなぁ。
「正直過ぎるのよ。もう少し捻くれてみたら?」
「努力するよ」
そう言われてもなぁ。自分じゃ結構捻くれてると思うんだが。
……さて、考え事はここまでにして、仕事しますか。なるべく、ゆっくり。扶桑さんに絡まれた際、仕事が忙しいと言い訳する為に。
「ゆっくり仕事をして、扶桑さんと接する時間を減らす気みたいね」
「」
何故バレた。顔はポーカーフェイスを保っていた筈だぞ!?
「顔に出ていたわよ」
いい笑顔で言わないで。
「今日は何とか出来ても、明日以降も出来るとは限らないわ。それに、
「そ、そうなのか?」
もしそうなら、早めに対応しないといけないな。というか、何で断言出来るんですか?
「扶桑さんと私って、考え方が似てる気がするから」
あぁ、そうなんですか。確かに、目的の為に深海棲艦殲滅する所とか。似てますね。
「怯えて接すると、余計に悪化する恐れがあるから、堂々としなさい」
「分かった」
アドバイス貰えた。これは有難い。そうだ、千歳さんに説得を手伝って…
「あ、説得はしないわ。あなたがするのよ?」
「……」
千歳さんに頼んで説得を手伝ってもらおうと思ったが、そう言われた。ダメか……。
「やるだけやってダメだったら手伝うわ。だから、頑張りなさい?」
「……はい」
仕方ねぇ。やってやるよ。
それから、無言で仕事をした。
………………。
「……よし、終わった」
承認のハンコを押し、ファイルに閉じて、引出しに仕舞った。鍵をかけて……よし。
時計を見ると、17:50だった。集中していたから、予定していた時間内に終える事が出来た。幸い、扶桑さんは来なかった。
(少し前までなら、まだ終わっていなかった)
矢矧のスパルタ指導のお陰で書類捌きが早くなった。感謝しないとな。今度、何かお礼しよう。
「お疲れ様。私が話をしなければ、もっと早く終わっていたのに。ごめんなさいね?」
「気にしなくていい」
本当に気にしてないよ?それに、親父の事を少し知ることが出来た。感謝してる。
「さて、そろそろ夕食の時間だ。食堂に行こうか」
「そうね、そうしましょう」
昼は食欲が無くて殆ど食べなかったから、結構空いている。今夜は何だろう?扶桑さん着任祝いをするから、豪華な筈だ。先日、買い出しに行ったから、その食材を使う筈だ。
(確か、今日は足柄が夕食担当だったな)
揚げ物確定だな。カツかな?ガッツリ行きたい気分だったから丁度いい。
(扶桑さんの対応は、堂々と)
食堂に向かいながら、千歳さんからのアドバイスを心の中で繰り返す。
大丈夫。大丈夫だ。緊張するな。自然体で行け。落ち着いて対応すれば、きっと何とかなる。
………………。
「……と思ってたんだけどなぁ」
ダメでした。
扶桑さん着任を祝って、軽く挨拶をしたあと椅子に座ると、目にも止まらぬ速さで俺の隣に扶桑さんが座ってきた。あの、近い。近いですよ。
「扶桑、離れなさい!」
「お断りします♪」
あの、扶桑さん、右腕をそんな強く掴まないで。痛いです。もげそう。瑞鶴も、左腕を強く掴まないで。
「久々の再会なんです。少しくらい好きにさせてください」
うん、その気持ちは分かる。分かるけど腕を掴む力をもう少しだけ緩めて頂けないでしょうか?
「ダメよ!提督さんは、瑞鶴の彼氏なんだから!」
あー、瑞鶴の奴、完全に頭に血が上っているな。これ以上傍観していたらドンパチ始まりそうだ。仕方ない、注意しよう。
「扶桑さん、瑞鶴、落ち着け。此処は食堂だ。静かに出来ないのなら、二度と利用するな」
少しだけキツい口調で注意した。
食事を摂る時は、誰かの邪魔をせず、自由で……なんて言うか、救われてなきゃダメなんだよ。孤○のグルメで○ローさんが言ってた。合ってるよね?うろ覚えだから間違ってるかもしれん。今度、マンガを読み返そう。
「……分かりました」
「……分かったわ」
お、大人しく聞いてくれた。良かった、聞き入れずドンパチ始めるのかと思ったよ。
「は〜い、お待たせ!足柄特製、トンカツよ!」
「待ってました」
うん、予想通りトンカツだ。足柄が調理担当の日は必ず揚げ物が出る。けど、絶品だから飽きない。
「今日は金曜日だから、カレーも作ったわ!」
マジか、最高じゃねぇか。
せっかくだから、カツカレーにするか。えっと、皿は何処だ?
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
瑞鶴が皿に米とカレーを盛って置いてくれた。あれ、何で俺が食べようとした物に気付いたの?
「提督さんの考えてる事なら、何でも分かるわ♪」
わーい、嬉しい。んじゃ、早速頂くとしよう。
カレーの上にカツを乗せて……頂きます。
「……」
「」
あの、扶桑さん、能面みたいな真顔で見つめないでください。食べづらいです。山城、君の姉様を何とかして?こっそり山城にアイコンタクトを送る。しかし、
「……」
「……」
あのさぁ、なんで首を横に振るのかな?
「……」
「……」
扶桑さん、山城をガン見。山城、目を逸らす。あっ、冷や汗垂らしてる。
「提督さん、あーん♪」
あっ、瑞鶴がスプーンにカレーよそって俺に差し出してきた。食べたい。けど、それをしたら扶桑さんが暴走する恐れがある。
「すまん、自分で食べる」
瑞鶴にアイコンタクトを送る。悲しそうな顔しないで。
「では、私が♪」
「いや、自分で食べます」
今度は扶桑さんがスプーンを差し出してきた。けど、食べない。一人で食べる。……あの、だから能面みたいな顔しないでください。
…ん?視線を感じる。誰だ?視線を感じる方をこっそり見ると、
「……」
「……」
「」
由良と榛名が俺を見ていました。二人とも、ハイライトが消えている。
(少しずつ回復してきているが、まだまだ不安定だな)
カウンセリングを受けて貰っているが、未だ完全に回復していない。まだまだ時間はかかりそうだ。
「両腕を折ってしまえば、あーんして食べさせる事が出来ますね…」
「やめてください」
扶桑さん、冗談でもそんな事言わないで?というか、両腕折られたら仕事出来なくなっちゃう。
「その手があったか……」
「本当にやめようね?」
瑞鶴、俺の腕掴まない。力込めない。やめなさい。
「マジでやめろ。大人しく食べろ」
少しだけマジトーンで注意。
「「申し訳ございません」」
二人とも、大人しくなってくれた。本気で怒っていないから、安心して。けど、今は言わない。言ったら再び騒ぎ出しそうだから。
それから、俺は一人でカツカレーを食べた。
幸い、扶桑さんは暴走しなかった。
………………。
(風呂入ろう)
食事を終え、自室に戻り入浴の準備を整える。
食堂では足柄達が酒を飲んで騒いでいるから、近寄らないでおこう。見つかったら飲まされる。
(……また減ってる)
タンスに入れた下着を見て溜息。明らかに数が減ってる。俺自身で洗濯し、乾かして仕舞ったのに。誰が持って行ったんだか。というか、男のボクサーパンツなんか盗んでどうすんだ?あれか?メ○カリとかで売って小遣い稼ぎしてるのか?
(恥ずかしいが、今度注意しよう)
会議室で海域攻略の話ついでに言っておこう。
さて、風呂に入るか。
今更だが、此処、第603鎮守府には艦娘用の入渠槽(皆はお風呂と呼んでいる)と、女性用の風呂(結構大きい)、そして男の俺専用の小さい風呂の3つがある。俺用の風呂は俺の自室に備え付けられているから、部屋を出なくて済む。
(一応、鍵掛けておくか)
少し前までは、涼月や榛名が突撃して来たが、今はそれが無い。けれど、扶桑さんが来たから念の為。部屋のドアの鍵をかけて、チェーンロックして、脱衣場の電気を付けてドアを開ける。
(最近暑くなってきたな)
お湯じゃなくても大丈夫な位、暑くなってきている。水で身体を洗った方がいい位だ。その方が風呂上がり、汗をかかなくて済む。
………………。
「……寝るか」
風呂から出て髪をドライヤーで乾かし、布団を敷いて横になる。
てっきり、扶桑さんが吶喊して来るかと思ってたんだけど、来なかった。逆に不気味で怖い。
(けど、怯えて接すると傷付ける恐れがある)
千歳さんに言われた、怯えて接するのは良くないと。
形や方法はアレだが、俺に好意を向けてくれているんだ。しっかり受け止めて接しよう。
(よし、腹決めた!)
養成所の時みたいに接しよう。逃げるな。
とりあえず、寝て頭と身体を休めるか。部屋の電気を消し、目を閉じ、無心になる。
すぐに眠気が来て、俺は意識を手放した。
side 提督 out
───────
────
─
side 扶桑
「それじゃあ、寝ましょう?」
「はい、姉様」
私が異動して来る事を知った渡良瀬さんが、妹と同室にしてくれた。本当に気配りが上手な人です。
(あの時は心に余裕が無かったから、あんな事をしてしまった)
数ヶ月前、彼に会いたくて休みを無理やり取って来た際、暴れてしまった。反省しないと。それに、先程食堂で暴走しかけた。気を付けないと。
(時雨の計画、上手くいってないみたいね)
そう。
(昔からの悪い癖ね。焦ったり、心に余裕が無いと、やらかしてしまう)
もういい歳なのだから、落ち着きを持たないと。
ああ、そうだ。時雨にあの計画を無かったことにしてくれないか、って話さないと。
(やる事が多いわね)
頭の中でやるべき事を考える。とりあえず、昨夜は興奮し過ぎて一睡も出来なかったから、寝ましょう。脳を休めないと、正常な判断が出来なくなってしまう。
(早く、結ばれたい……)
……だから、落ち着きなさい。今まで冷静になって挑んで失敗した事は無い。だから、落ち着くのよ、私。今は寝なさい。
「電気、消しますね」
「お願い」
妹がそう言い、部屋の電気を消し、暗闇に包まれる。
考えるのは終わり。寝る事に集中しなさい。
side 扶桑 out
───────
────
─
side 提督
──第603鎮守府、執務室──
正午。
「引き続き、警戒してくれ」
『了解しました』
「……ふぅ」
扶桑さんが着任して一夜が明けた。何か起きるかと思ったが、何も無かった。それが逆に不気味に思えてならない。とりあえず、仕事に集中しろ。
さっき、出撃組──旗艦翔鶴、葛城、扶桑さん、足柄、初霜、夕立──から深海棲艦を発見したと報告が入り、戦闘に突入した。幸い、全員無傷で殲滅出来たと翔鶴から無線で報告を受けた。
「みんな強いから、大丈夫だって」
「だからって、油断していい理由にはならない」
本日の秘書艦、摩耶がそう言ってきたが、注意した。幾ら強くても、油断すれば死ぬかもしれない。
「相変わらず慎重だなぁ」
「ほっとけ」
由良が言ってた。戦場じゃ臆病な位、慎重になれって。
……早く元気になってくれないかな。
カウンセリングを受けてもらってから、由良と榛名に声をかけたりしたが、本調子には戻っていない。けど、少しずつだが元気になってきている。
(近日中に何処か連れて行こう)
カウンセラーの先生に言われた、同じ所──この場合、鎮守府──に留まらず、気分転換に出かけた方が心に良い影響を与える。人によるが、由良と榛名は出かけた方がいいケースらしい。シフト調整しよう。引出しからシフト表を取り出し確認しようとした時だった。
無線から、翔鶴の焦った声が聞こえた。
『こちら翔鶴、姫級及びその護衛艦隊と遭遇!』
「んなっ!?」
今、姫級って言ったか!?嘘だろ?今翔鶴達が居る海域に、鬼・姫級は出ない筈。
(小嶋提督から連絡は来ていない)
(他の深海棲艦と違い、鬼・姫級は頭が良く、劣勢になると一も二もなく逃げる習性がある)
小嶋提督から教わった事を思い出す。向こうが姫級と戦って、その姫級は敗走しているわけじゃ無さそうだ。偶然出くわしてしまったのか?
『姫級は、空母棲姫と思われます!』
「くっ……」
再び翔鶴から報告。
空母棲姫。その名の通り、桁外れの数の艦載機を操る深海棲艦。
弾幕を張りながら撤退させようと思ったが、翔鶴達が居る海域は本土から僅か数十kmしか離れていない。今ここで殲滅しないと、艦載機で本土を攻撃される恐れがある。
……やるしかない。
「翔鶴、命令だ。敵深海棲艦、空母棲姫及び、その護衛艦隊を殲滅せよ!」
『了解!』
「すぐに援軍を送る!それまで持ち堪えてくれ!」
言葉は悪いが、今日の出撃メンバーは対鬼・姫級を想定していないメンバーだ。火力が足りない。
(千歳さんを呼ぼう!)
彼女は待機組だった。あとは火力のある山城、対空要員に摩耶と涼月、器用万能の阿武隈、そして航空戦力のある瑞鶴。このメンツを送ろう。
(由良と榛名は出撃させない)
彼女達は精神が不調だ。そんな状態の彼女達を出撃なんてさせない。もし万全だったなら、出撃してもらおうと思っていたが。
(ともかく、千歳さん達に連絡を……)
マイクにスイッチを入れて呼び出そうとした時だった。
無線から、扶桑さんの狂気に包まれた声が聞こえた。
『あなた達。首持ってますよね?』
「」
思わず硬直。マイクが目の前にあるのに、身体が動かない。隣に居る摩耶も硬直してる。あ、あの、扶桑さん?
『ねぇ……持っているんでしょう?
『ふっ、扶桑さん!?』
翔鶴が悲鳴に似た声出してる。えっ、何?何が起きてるの?
……あっ、今、シャランって音聞こえた。抜刀するような音だ。そういや扶桑さん、日本刀持って出撃してたね。妖精さん曰く、深海棲艦を斬れる特別な日本刀らしい。斬れ味は鋭いけど、非常に脆い、斬る事だけに特化した物だって報告受けてる。えっ、あの、もしかしなくても、それで斬り殺したりしないよね?ねっ?
『貴様らの血は何色だああああぁぁぁああああああ!!! 』
「」
「」
あっ、斬り殺すみたいですね。隣に居る摩耶、冷や汗ダラダラ流してる。タオル使う?引出しに入れてあるからそれ使って拭きな?
『首を置いてけえええええぇぇぇぇぇええええ!!!』
『ああっ!扶桑さんが姫級とその護衛艦隊に吶喊して行きました!』
翔鶴が実況してる。聞くか。
『ちょっ、夕立ちゃん!?』
『ヒャッハハハハハ!!!』
あ、夕立が楽しそう。そういや君、サシで鬼・姫級をガンガン倒してたね。戦績にそう書かれてたね。忘れてたよ。
『戦じゃ〜!!』
『あっ、足柄さんまで!?』
おっ、足柄も参戦したか。飢えた狼の2つ名を持つ艦娘だったね。
『翔鶴さん、空母棲姫が艦載機を発艦しました!』
『ッ!?葛城さん、こちらも艦載機を!』
『了解!』
……いかん、ボッーとしてた。早く援軍を出さないと。マイクのスイッチを……
『邪魔だ……どけええええぇぇぇぇぇえええ!!!』
扶桑さん、それ、
『嘘……斬撃波を飛ばして艦載機を全部撃墜するなんて!?』
扶桑さん、あなた艦娘ですか?
『〜〜〜〜〜〜〜!!!』
……ん?何だ、この声?聞いてるだけで不快になる声だ。誰が出してるんだ?
『相変わらず、深海棲艦の悲鳴はみっともないですね。何度聴いても不快です』
えっ、今の深海棲艦の悲鳴だったの?けど、扶桑さんが「何度聴いても不快だ」って言ったから、そうなのかもしれない。
『〜〜〜〜〜!!? 』
あ、また不快な声が聞こえた。
『分かりませんねぇ。何を仰っているのか、さっぱり分かりません。日本語を話してください。日本語を話せないのなら……』
ちょっと待って、その台詞、どっかで聞いた事ある。えっと……あ、思い出した、ド○フターズの薩人マシーンのセリフだ。扶桑さん、もしかして知ってるの?リスペクトしてるの?
『死ぬがよい』
扶桑さん、それ、ド○フターズちゃう。怒○領蜂や。
……やめて。肉が裂ける音と骨が折れる音聞かせないで。俺、グロ耐性無いんだよ?
『……敵護衛艦隊、全滅。空母棲姫、扶桑さんの斬撃と、夕立ちゃんの零距離魚雷斉射で大破しました』
「」
翔鶴が呆然とした声で報告してきた。
……援軍呼ばなくて良さそうだね。
side 提督 out
───────
────
─
次回予告
渡良瀬少佐、只今戻りました♪
あっ、お土産があるんです♪
はい、大将首、空母棲姫の生首です♪
どう?凄いでしょう?
……渡良瀬少佐?白目剥いて泡吹いて倒れてしまいました。どうしたのでしょう?
……あら、由良さん。渡良瀬少佐に何か用?
……お兄ちゃん?えっ?ちょっ!?
第46話・歳上の妹
「お兄ちゃんみたいです。甘えていいですよね?ねっ?」