追跡鶴   作:EMS-10

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第49話・休養その3

 

side 提督

 

 

──某県某所──

 

 

 

もう何日も同じ所──ショッピングモールに居る気がする。

 

 

「ボーッとして、どうしたの?」

 

「謎の電波を受信してた」

心配しなくていいぞ、瑞稀(瑞鶴)。俺は大丈夫。

最近謎電波を受信しなくなったのに、ここ数話で再び受信するようになっちまった。医者に診てもらおうかな?

 

「何それ……」

 

やめて。そんな、頭が可哀想な人を見るような目で見ないで。心に来る。

 

「空腹と、私達がお買い物で振り回したせいかもしれません」

 

そんな事無いよ?俺の頭がおかしいから、受信しているだけだよ、きっと。不安にさせてごめんよ、涼子(涼月)

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

はい、提督は大丈夫です。本当に大丈夫だよ、陽菜(榛名)

フラグ立ったな、と思った奴。後で工廠裏な。

さて、ふざけたこと考えてないで、フードコートに行こう。えっと、現在地はここだから、丁度反対側か。インフォメーションで場所を確認。少し歩いてフードコートへ向かった。それにしても広いな。流石、日本最大のショッピングモール。初めて来た時、迷子になりかけたな。

 

「席を確保しておくから、選んできてくれ」

 

「分かった。お願いね」

 

「あいよ」

瑞稀(瑞鶴)達はそれぞれ食べたい物を選びに行った。さて、席を探しますか。えっと、席は……ここにするか。4人が座れるテーブル席を確保。戻ってくるまで、何を食べるか決めておこう。そういや、最近ラーメン食べてなかったな。よし、ラーメンにしよう。

 

(醤油の気分だな)

ラーメンの店は何処だ?あった。腹減ってるから大盛りにするか。最近、体重増えてきたから食べる量減らすべきなんだけどなぁ。いや、今日だけ贅沢しよう。明日から本気出す。明日、トレーニングしよう。

 

「お待たせしました」

 

「おっ、お帰り」

食べる物を決めた直後、涼子(涼月)がトレイを持ってやって来た。何を選んだんだ?天丼か。何故かカボチャが多い。そういや君、カボチャが大好きだって言ってたね。

 

「準さん、私が席を確保しておくので、選んできてください」

 

「ありがとう、行ってくる」

涼子にお礼を言って、さっき決めた所へ行く。幸い、人が並んでいないから直ぐに買えた。料金を払って、トレイを持って、受け渡し口に移動。

 

(この待ち時間、ワクワクする)

何故かワクワクするんだよな。俺だけかな?

数分後、店員さんにラーメンと飲み物、箸とレンゲを渡され、トレイに載せる。さて、席に行きますか。

人が少ないけど、全く居ないわけじゃないから、周りに注意しながら運んで……おっと、子どもだ。一旦立ち止まって道を譲って……よし、行こう。

 

「お待たせ」

確保した席に行くと、既に3人が座って待っていた。

涼子は野菜天丼、陽菜はオムライス、そして瑞稀は。

 

(ナポリタンか)

相変わらず好きだな。

学生時代、俺の家に遊びに来た瑞稀によく作ってやったなぁ。それ以来、コイツ(瑞稀)はナポリタンが好物になった!って言ってた。また、作ってやろうかな。

 

「ほら、座って座って!」

 

「あいよ」

こら、椅子を叩かない。お行儀悪いぞ。

瑞稀の隣の席に腰掛けて。よし、食べよう。

余談だが、俺の左隣に瑞稀。テーブルを挟み、俺から見て正面に涼子、その左隣に陽菜(榛名)が座っている。

 

「それじゃ、食べよう。いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

食材と、その食材を生産してくれた人。食材を運搬してくれた人、調理してくれた人に感謝を込めて、いただきます。

まずはスープから。うん。美味い。次に麺。これも美味い。太麺派だけど、細麺もいいな。

 

「ね、ね、準」

 

「ん?」

NA○UTO……じゃない、ナルトを食べようとしたら瑞稀が声をかけてきた。どうした?隣に座る瑞稀を見ると。

 

(利き腕(右手)で持ったフォークにナポリタン巻いて差し出してるよ…)

これ、もしかしなくても、あーんする気ですね?いや、嬉しいよ?嬉しいけど、今はマズい。何故なら、涼子と陽菜が居るから。今ここで差し出されたナポリタンを食べたら、確実に2人(涼子と陽菜)も、差し出してくる。鎮守府ならいい。ここはフードコート。他のお客さんが沢山居る。つまり、

 

(恥ずかしい)

流石に無理。申し訳ないが、断ろう。衆人環視のド真ん中で桃色空間を展開し、練乳を一気飲みしたような甘い空気を作る勇気は無い。近くの席に座ってるおばさん達の食べているカレーを激甘カレーにしたくない。

 

「す、すまん、瑞稀。今は(・ ・)勘弁してくれ」

本当は食べたい。けど、さっきも思ったが、勘弁してくれ。こんな根性無しな俺を許してくれ。……ハイライト消さないで?無言で俺の顎に左手伸ばして掴まないで?痛いです。

 

「顎の関節外されて無理矢理食べさせられるのと、大人しく食べるの、どっちがいい?」

 

どっちも嫌です。言いたかった。言いたかったけど、言えない。くそっ、やってやるよ!

 

「あ、あーん……」

羞恥心を捨てろ!今の俺は雛鳥だ。親鳥が餌を与えてくれるのを待つ雛鳥だ!丁度、顔を掴まれてるから顔が(・8・)みたいになっている。今の俺は小鳥ちゃんだ!

 

「はい、あーん♪」

 

あのさぁ、ハイライト消えたまま、俺の顔を掴んだままあーんしないで?逃げないから!抵抗しないから!というか、怖い!……あれ、このシーン、まるでアレだな。バ○オ7のベ○カー家の食事シーンみたいだ。拘束された状態で無理矢理食わされる所とか、そっくりだ。いつの間に俺はバ○オ7の世界に迷い込んだんだ?誰か教えてくれ。

 

「んぐっ!?」

押し込むな!フォークが喉に刺さりそうだったぞ!落ち着きなさい!……あっ、美味しい。ケチャップの酸味と甘味が程良い。

 

「美味しい?」

 

「お、おいひいれす」

顔を掴まれたままだから、声がおかしくなってる。あの、お願いだから手を離して?

 

「そう、良かった♪」

 

とっても嬉しそうな顔してる。ただ、ハイライト消えてるから怖いです。あっ、手を離してくれた。

 

「……」

「……」

 

ふえぇ、涼子と陽菜が能面みたいな顔してるよぉ。怖いよぉ。予想通り、2人はそれぞれの料理──涼子はカボチャの天ぷらを箸で持って、陽菜はオムライスをスプーンに乗せた──を差し出してきた。……覚悟を決めろ。断ったら、再びベ○カー家の食事シーンが再現されるぞ。一旦、飲み物──烏龍茶を飲んで口内をサッパリさせよう。

 

「どうぞ♪」

「召し上がれ♪」

 

「あ、あーん……」

俺は雛鳥だ。小鳥(・8・)ちゃんだ。差し出された料理を無心で食べろ!涼子と陽菜の目からハイライトなんて消えていない。気のせい。

まずは涼子が差し出してくれた天ぷらを食べる。うん、カボチャの甘味とタレのしょっぱさが絶妙。急いで烏龍茶を飲んで口内をサッパリさせる。次、陽菜が差し出しているオムライスを食べる。うん、デミグラスソース美味しい。

 

「私、ラーメン食べたいなぁ?」

 

ぬわぁん。瑞稀さん、ヤメロォ!(建前)ヤメロォ!(本音)

次は俺が食べさせる番ですか!?恥ずかしいです!

……落ち着け。さっきは俺が小鳥ちゃん──雛鳥だった。今度は俺が理事長……じゃない、親鳥になればいい。俺は雛鳥に餌を与える親鳥。俺は雛鳥に餌を与える親鳥。よし。レンゲに少しだけスープを入れて、箸で麺を乗せて──

 

「ほら、あーん」

 

「あーん♪」

 

餌だよ、たんとお食べ♪

…キモいな。男が♪使うとキモい。美味しそうに食べてくれてる。よし、次!再びレンゲにスープと麺を乗せ、涼子に食べさせる。

 

「あ、あーん…」

 

恥ずかしそうに頬を赤く染めてる。可愛い。少し前までゾンビだったけど、今は癒しキャラに戻ってくれた。頼むから、またゾンビにならないでね?

 

「(<⚫>)(<⚫>)」

 

陽菜、そんな目で見なくても食べさせてやるから落ち着きなさい。再びレンゲに(ry

よし。さぁ、食べるがいい!

 

「あーん♪」

 

そんなに大きく開けなくて大丈夫だよ?ゆっくりと陽菜の口にレンゲを入れる。

よし、食べてくれた。これで終わり。お疲れ様でした。……陽菜、レンゲをしゃぶるな。やめなさい。はしたないぞ。

 

「ん〜!ん〜!」

 

「やめなさい」

ほら、しゃぶるのをやめなさい。……ったく、何がしたかったんだ?

 

「渡良瀬さんの唾液を味わえました♪」

 

ヒエッ。ヤベーよ、この娘。ごめん陽菜、ちょっとだけ引いた。流石にそれはやり過ぎだと思います。

 

「……」

「……」

 

瑞稀?涼子?どうしたの、ハイライト消して顔に血管浮かび上がらせて。ほら、ハイライト入れて?血管元に戻して?女の子がそんな顔しちゃダメだよ?

 

「私も」

「お願いします」

 

えっ?何?何がしたいの?まさか、君達も?

 

「準の唾液を」

「味わいたいです」

 

「帰っていいかな?」

流石に勘弁して?食べさせるのは構わない。けど、それはちょっと……。

 

「「ごめんなさい」」

 

素直に謝ってきた。うんうん。素直な娘は大好きだ。

 

「ふふん!」

 

陽菜、ドヤ顔やめなさい。瑞稀と涼子も、キレたポ○子みたいな顔しない。今にも釘バット持ち出して暴れそうだ。止めておくか。

 

「これ以上騒ぐなら、俺は帰るぞ」

 

「「「申し訳ございません」」」

 

大人しくなってくれた。良かった。これで言う事聞いてくれなかったから、泣くところだったよ。

この後、大人しく食事を摂った。

余談だが、周りに居た人達は生暖かい目で俺達を見ていた、とだけ言っておく。ごめんなさい、騒がしくして。

 

 

………………。

 

 

「さて、次はどうする?」

昼飯を食べ、フードコートを出た。買い物は済んだ。次はどうしよう?時間は未だ余裕がある。

 

「ん〜、どうしよっか?」

 

「特に思い付きませんね」

 

「陽菜は、皆さんに合わせます」

 

うーん。どうすっかな?遊ぶ所が沢山あるから、迷う。

……そうだ。

 

「VR体験でもしないか?」

先日、美波(満潮)が言ってたな。香澄()と出かけた際、VR体験コーナーで遊んだ、って。

 

「へぇ、そんなのがあるんだ」

 

「面白そうですね」

 

「体験したいです!」

 

皆も賛成してくれた。よし、そうと決まれば行くか。再びインフォメーションで場所を確認。すぐ近くにあるな。

 

 

………………。

 

 

「大丈夫だって!」

 

「むり」

ぼく、あっちの、ぎゃくばんじーが、いい。

 

「ただの映像と音声ですよ?」

 

「やだ」

へいわな、VRが、いい。

 

「陽菜が傍に居ますから、大丈夫です!」

 

「やー!」

あっ、マ○オカートVRがある。こっちにしよう?

 

「4名でお願いします」

 

「瑞稀ァ!!」

きさまー!ゆ"る"さ"ん"っ"!

……あっ、幼児退行してたけど、元に戻った。

さて、逃げるか。

 

「おおっと、逃がさないわ♪」

 

「HA☆NA☆SE!!!」

俺はマ○オカートVRを体験するんだ!絶対、瑞稀が選んだ奴は体験しないぞ!

 

「男でしょ!キ○タマ付いてんでしょ!」

 

「女の子が大声でキ○タマ言わない!」

あっ、俺も言っちゃった。

さて、何が起きているのか説明しよう。俺達はVR体験コーナーに向かった。向かったのはいいが、何を体験するか悩んだ。チケット制なので、先に購入してコーナー内を彷徨いていたんだが、瑞稀がヤベーのを選びやがった。そのヤベーのとは、

 

 

【CR○EPING TERROR】

 

 

不気味な文字で書かれた「ホラー体験VR」だった。

ホラーならまだいい。いいんだが、俺は逃げようとした。だって、

 

 

【このVRには、暴力的及びグロテスクな表現が含まれています】

 

 

って書かれてた。

いや、ホラーならまだしも、グロテスクなのは無理。バ○オとか遊んでるから大丈夫だろって?いや、それが無理なんだ。理由?美波からあの説明を聞かされたんだ。

 

 

『CR○EPING TERRORってホラーVR、物凄くグロかったわ。まるで実写よ』

 

 

まるで実写。それを聞いていたから、俺は逃げようとしているんだ。美波曰く、バ○オなんかと比べ物にならないくらいリアルでグロいそうだ。今まで何度か言ったと思うが、俺、グロ耐性無いのよ。バ○オとかは未だゲームだ!と思えるから大丈夫なんだけど。とにかく、このままだと体験させられちまう。こんな所に居られるか!俺はマ○オカートVRを体験するぞ!

 

「よっこいしょ」

 

「いやあああぁぁぁぁ!!!」

瑞稀さーん!担がないで!お米様抱っこしないで!恥ずかしい!やめてぇ!?

 

「そぉい!」

 

「ぬああああああ!!!」

暗幕の張られた薄暗いシアター内に運ばれ、ギミックシートに座らされたァ!?……いいぜ、やってやろうじゃねぇか。俺は逃げん!退かぬ!媚びぬ!省みぬ!提督に逃走の二文字が無いことを、教えてやる!!(←錯乱中)

 

「あ、あの、本当に大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です、問題ありません」

係の人が心配そうに声をかけてきた。すいません、騒いでしまって。

係の人からVRゴーグルを受け取り、装着。サイズを調整して、次にヘッドフォンを装着。異常が無いか確認。

──異常なし。

 

(どっからでもかかってこいやああぁぁぁぁ!!!)

今の俺は阿修羅すらも凌駕する存在だ!そう思ってなきゃ、やってられん!

 

『では、行ってらっしゃい』

 

係の人がそう言った直後、ゴーグルに映像が映る。同時に不気味な唸り声がヘッドフォンから鼓膜に響く。あっ、バ○オハザードですか?バ○オハザードですね?

ちなみにだが、このCR○EPING TERRORのストーリーは、カルト教団に捕まった捜査員の視界をジャックして捜査の手がかりを得る、という物だ。詳細はググッてくれ。

……どんどん唸り声が近くなってきてる。それに伴い、ギミックシートから風が吹き、首筋に当たる。リアル過ぎだろ!というか、この唸り声、どっかで聴いた事があるな?どこで聴いたんだっけ?

 

(あっ、これ、涼子の唸り声だ)

デンジャラスで俺にラブを向けていたゾンビだった頃の涼子の唸り声だ。今は違うけど。

よし、この唸り声の主を涼子だと思おう。それなら怖くない。たとえ全身血塗れだったとしても、血じゃなくてミートソースの入った鍋を引っくり返して全身ミートソース塗れになった涼子だと思えばいい。なんだ、怖くねぇじゃん。ははっ、ビビってたのが阿呆らしくなってき───

 

 

<ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!

 

 

「たあああああぁぁぁぁ〜〜!!!!!??」

出たァ!出てきたァ!?ゾンビだよ!めっちゃゾンビ!!誰だよ、コレを涼子だなんて言った奴!俺じゃん!俺のおバカ!!!全然違うじゃねーか!涼子はこんな怖くない!涼子ちゃんは可愛い!

 

 

<ゥ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!

 

 

「いやああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

怖い怖い怖い!無理無理無理!!うおぉい!血飛沫がァ!これは劇場版仮面ラ○ダーア○ゾンですか!?4D技術凄い!ふざけんな!技術を無駄使いしやがって!あっ、やめて!血飛沫ぶっしゃあああああ!!!ヒャッハー!!梨をモチーフにしたゆるキャラみたいに血飛沫ぶっしゃあああああ!しないでぇ!!!あっ……あっ……あっ…………。

 

 

……………………。

…………。

…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

──車内──

 

 

「渡良瀬さん、本当に大丈夫ですか?」

 

「大丈夫」

大丈夫だよ。心配かけてごめんよ、陽菜。

 

「じ、準、本当にゴメンね?」

 

「いいよ、気にしないで」

瑞稀、気にしないで?グロ耐性の無い俺が悪いだけだから。

 

「お、お茶、飲みますか?」

 

「ああ、飲む」

ありがとう、涼子。有難く貰うよ。

助手席の窓から外を見る。

空が茜色に染ってる。ふふっ。まるで血みたいに真っ赤だなぁ。

VR体験後、気が付けば俺は車内に居た。瑞稀達が言うには、俺は気絶はしなかったが、悟りを開いたような顔をしていたらしい。係の人や瑞稀達に心配されたが、大丈夫だと答えたそうだ。その後、俺は無言で食料品売り場に向かい、鎮守府の皆用のお土産を買い、コインロッカーに預けた荷物を回収して車に向かったそうだ。全く覚えていない。

流石にマズいと思ったのか、瑞稀が運転をしてくれている。うん、正解だ。こんな精神状態で運転なんかしたら、バー○アウト並の大事故を起こしかねん。

 

「あそこまでグロ耐性が無いとは思わなかったわ」

 

ごめんよ、こんな情けない男で。慣れようと頑張っているんだけど、無理なものは無理みたいだ。

それから車内は鎮守府に戻るまで、気まずい空気が流れ続けた。本当にすまん。

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 

 

Another sideと言う名の番外編

 

 

現在時刻、17:50。

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

やあやあ諸君、私だ。キャットだ。今、私は会議室に居る。今、私は馬鹿共を眺めている所だ。

おうおう、顔面蒼白になってるよ。ようやく気付いたみたいだ。翔鶴、葛城、由良、扶桑、今更気付いても遅いよ?

 

「資材の残りが」

「ヤバいです」

「や、やっちゃった……」

「ど、どうしましょう?」

 

うん。さっきも言ったけど、気付くの遅いよ?さて、提督が知ったらどんな事を言われるのやら。ただでさえホラーVRでメンタルが死んでるのに、この事を知ったら再起不能に陥るかもしれないね?

 

「……翔鶴さん、葛城さん、由良さん、この付近に集積地棲姫は居ますか?」

 

おい扶桑、何をする気だ?まさかとは思うけど、資材を強奪する気か!?

 

「第8492離島鎮守府の担当海域になりますが、居ます。先日、川内さんが教えてくれました」

 

おい夜戦忍者、情報をばらすな。何してんの?幾ら、かつて共に戦った戦友だからって、重要な情報を簡単に渡すな。

 

「よし、かっぱらいに行きましょう!」

 

行くな!大人しくしてろ!佐世保鎮守府に居た頃、よくかっぱらってたけど、それを此処(第603鎮守府)でやろうとするな!

 

「準備してきますね?ねっ?」

 

由良、やめろ。やめなさい。ただでさえ資材がヤバいんだ。これ以上消費するな。

 

「や、やめましょう?他所の鎮守府の担当海域の獲物を横取りなんてしたら、大問題に発展しますよ!?」

 

葛城ぃ!よく言った!まともな娘が居て安心したよ。君まで頭のネジがぶっ飛んでいたら、手が付けられなくなる所だった。

 

「確かに。それが原因で提督の負担をさらに増やすのは良くありませんね」

 

おお、翔鶴がまともだ。もう少し早くまともになってくれれば、こんな事にはならなかったけど。

 

「……そうですね。やめておきましょう」

 

「大人しく、提督さんが帰って来るのを待ちましょう」

 

おー、薩人大和撫子(扶桑)戦闘狂(由良)が大人しく待つ、を選んだ。良かった良かった。

 

「……土下座の準備をしておきましょう」

 

「そうですね」

 

うん。本当はそんなんで許されないけど、あの提督なら笑って許してくれるよ。きっと。翔鶴、葛城、もう二度と、こんな事するなよ?

 

「資材が鋼材を除いて一桁しか残っていませんが、許して頂けるでしょうか?」

 

うん、馬鹿だ。こいつら、馬鹿だ。救いようがない。扶桑、君は聡明な娘だと思っていたが、認識を改める必要がありそうだ。

 

「ただの土下座じゃ許されません。ここは、焼き土下座をしましょう」

 

バカヤロー!そんな事したら、提督が口から心臓吐き出しちまうぞ!?ただでさえホラーVRで精神に大ダメージ受けてるのに、トドメを刺す気か!!由良、馬鹿な事言うな!!!

 

「提督はグロ耐性が無いから、やめておきましょう?」

 

うん。それ、正解だ。普通の土下座にしときな?翔鶴の言う通り、やめておきな?

──さて、そろそろ提督達が帰って来る。一体、どんな反応をするのやら。

……そろそろ私も帰るとしよう。諸君、機会があれば、また会おう。

 

 

 

Another side out

 

 

 

───────

────

 

 

side 提督

 

 

数時間後。事故も無く、無事鎮守府に帰ってきた。鎮守府よ、私は帰ってきた!

 

「車を車庫に入れてくるから、荷物お願い」

 

「ああ」

任せろ。トランクからSガ○ダムのプラモと、お土産を取り出す。何を買ったんだ?えっと、シュークリームにプリン、アイス。その他はスナック菓子が多数。妖精さんの素敵技術で作られた箱に入れられてるから、アイスは溶けていないし、シュークリームとプリンは傷んでいない。運びますか。

 

 

………………。

 

 

「ただいま」

半日程度しか離れていなかったのに、久々に帰ってきた気がする。

 

「あっ、提督、お帰りなさい」

 

おっ、初霜だ。休養状態だから、艦娘の装束ではなく、私服姿だ。なんか新鮮だな。おや、何か後ろに隠したぞ。何を隠したんだ?

 

「あ、あの、どうかされました?」

 

「すまん、私服姿が新鮮で、つい」

いかん。幾ら私服姿が珍しいからって、ジロジロ見るのは失礼だろ。気を付けろよ、俺。ところで初霜、何を隠したんだ?ヤバい物じゃないよね?頼むよ?ただでさえ精神的にボロボロなんだ。追い討ちかけないで?いや、待て。初霜だぞ。天使だぞ。なら大丈夫だ。信じてる。オイ、 そこ。フラグとか言わない。

 

「そ、そうですか。楽しめましたか?」

 

「あー、うん、楽しめた」

ごめん、嘘です。途中までは楽しめたけど、最後は……うん。忘れよう。

 

「……何か、あったんですか?」

 

いかん。初霜が心配そうに俺の顔を見ている。誤魔化すか。

 

「その、買物が少しだけ大変だった」

嘘は言っていない。洋服と水着、(下着)を買うだけでああなるとは思っていなかった。

 

「あー……女の人の買い物って、男の人と比べて時間が掛かりますからね」

 

「予想より長くてビックリしたよ」

良く分かった。分からされた。けど、嫌ではない。良い勉強になった。というか、ファッションセンス磨こう。今のままだと迷惑をかけるかもしれん。

 

「そういや、初霜は何してたんだ?」

気になる。初霜ってどんな趣味があるんだ?私、気になります。

 

「えっと……お、音楽を聴いていました」

 

「音楽か。いいな。どんなのを聴くんだ?」

気になる。ちなみに、俺は色々聴くが、最近はアニソンや電波ソングばかり聴いてる。特に電波ソングは気分が落ち込んだ時に聴くと、元気になれるんだ。悩んでいるのが、落ち込んでるのが馬鹿らしくなるから、重宝している。アレだ、合法電子ドラッグって奴だ。

 

「……激しめの曲を聴きます」

 

「激しめの曲?」

メタルとか、ロックかな?意外だ。俺も時々聴くけど、ああいった激しい曲はテンション上がるから、いいモノだと思う。

 

「……す」

 

「え?」

すまん、声が小さくて聞こえなかった。すまん、もう1回言ってくれ。

 

「……デスメタルを良く聴きます」

 

「そうか、デスメタルか。いいんじゃないか?」

今度は聞こえた。相変わらず小さい声だったけど。それにしてもデスメタルか。確かに激しいね。良いと思うよ?……デスメタル?はい?デスメタルって、あの、デスメタル?マジで?

 

「ほ、本当ですか!?」

 

わぁい、初霜の目がキラキラしてる。可愛いなぁ。それにしてもデスメタルか。一応、音楽プレイヤーにも入れてるけど、あまり聴かないな。食わず嫌いは良くない。TSUT○YAでCD借りてみよう。

……色々ツッコミどころ満載だけど、ツッコまん。精神状態がアレだから、難しく考えない。受け入れよう。初霜はデスメタルが好き。意外だけど、悪い事じゃない。受け入れよう。

 

「分かって頂けるのですか!?」

 

「うん」

今の俺は何でも受け入れちゃうよ?だから、安心して?

 

「本当ですか!?嬉しいです周りにデスメタルを聴く人が居なくて話せる相手が居なくて退屈だったんですそうだ提督はどのバンドの曲を聴きます私は所謂雑食でデスメタルならなんでも聴きますあの力強いシャウト最高です魂を揺さぶられるような声を聴くだけで達しそうになりますあらやだ達するなんてはしたないでも本当に達しそうになるんです最高なんです提督なら理解してくれますよね!?」

 

「勿論だ」

めっちゃ早口で話しかけられたから、殆ど聞き取れなかったけど、肯定しておこう。今の俺は何でも受け入れちゃうよ。だから安心して語ってくれ。

 

「先程ようやくスピーカーのカタログが届いたんです今から部屋に戻って見る予定ですよろしければ提督も一緒に見ませんかようやくお金が溜まったので思い切って奮発して新しいスピーカーを買う予定です今まで使ってきたスピーカーでは重低音がイマイチだったのでこれで改善されますああ今から選ぶのが楽しみです!」

 

「おっ、そうか。けど、今日は疲れてるから、明日一緒に見よう」

ごめんよ、初霜。今日は休ませてくれ。こんな精神状態じゃ、しっかり選んでやれない。

 

「そ、そうですか……明日、一緒に選んでください。約束ですよ?」

 

「ああ、約束だ」

明日はプラモを作らず初霜に付き合おう。プラモは何時でも作れる。

 

「ありがとうございます!嗚呼、どのスピーカーを選びましょう!どんな重低音が聴けるのでしょう!?想像しただけでギュイーンとソウルがシャウトします!!!」

 

 

【ギュイーンとソウルがシャウトします!!!】

 

 

……今、背景が黒地でモノクロに描かれた、ギターを持った初霜の姿。それと、太いゴシック体で「ギュイーンとソウルがシャウトします!!!」の文字が書かれた一枚絵が脳内再生された。準、あなた、疲れてるのよ。

この後、初霜にスピーカーについて熱く語られたが、内容は覚えていない。気が付けば初霜は居なくなってた。

 

「……さて、荷物を食堂に運ぶか」

早く冷蔵庫に入れないと、お土産が痛む。食堂へ向かい、扉を開けて入る。あっ、千歳さんが夕食作ってる。そういや今日の夕食担当は千歳さんだったな。

 

「あら、お帰りなさい」

 

「ただいま」

おっ、いい匂い。何だろう?

 

「今夜はビーフシチューとサラダよ」

 

「おっ、そいつは楽しみだ」

千歳さんの料理、美味いんだよな。あの翔鶴ですら、負けを認める程だ。

余談だが、我が第603鎮守府の料理の腕は、

千歳さん>翔鶴>瑞鶴>涼月≒足柄

となっている。他の娘達?同じ位の腕前だから割愛。

さて、お土産を仕舞うか。冷蔵庫にシュークリームとプリンを。アイスを冷凍庫に入れて……よし。夕食が出来るまでまだ時間がかかるみたいだから、部屋に戻ってSガ○ダムの箱を眺めよう。どれくらいパーツがあるんだろう?楽しみだ。すっげぇワクワクしてきた。

自室のドアを開け、中に入り電気を付けて───

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

「」

ドアを閉める。俺は何も見ていない。翔鶴と葛城、扶桑さんと由良が土下座している光景なんて見ていない。アレだ、ホラーVRを体験したせいで脳と精神が疲れ過ぎて幻覚を見ただけだ。うん。きっとそうだ。よし、部屋に入ろう。再びドアを開けて───

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

「」

見間違いではありませんでした。えっ、何。この、何?はい?何があったの?

 

「……提督」

 

「なんでしょう?」

涙声出してどうしたの、翔鶴?何かあったの?

……ちょっと待て。土下座してるの、翔鶴と葛城、扶桑さん、由良の4人だ。葛城はどうしたんだ?とりあえず、葛城を除くとベルセルクになる。あっ、ベルセルクってのは、本編47で説明したから、それを見てくれ。メタいな。謎電波受信し過ぎ。

おっと、脱線したな。ベルセルクが居る、って事は……あ・・・(察し

 

 

「実は───」

 

 

──説明中──

 

 

「」

資材が鋼材を除いて一桁しか残っていない。あはははは。

 

「本当に申し訳ございません!」

「如何なる罰も、甘んじて受けます!」

「何なら自沈します!」

「同じく!」

 

ごめん。ただでさえVRのせいで色々アレな事になってるから、脳が情報を処理し切れない。

……あ、あれ?視界がぼやけてきた。

 

 

………………。

 

 

「提督?」

 

「あ、あなた?」

 

「た、倒れた!」

 

「提督さん!?」

 

「い、医務室に!」

 

「わ、分かりました!」

 

「私が運びます!」

 

「提督さん、しっかりして!?」

 

 

………………。

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


なんか、仕事している時より疲れた。
……はぁ。どうしてこうなった。
……ああ、失望とかしてないから、安心してくれ。
気分転換に、軽く泳ぐか。…おい、瑞鶴、何をしている。やめろ。やめなさい。やめろォ!?


第50話・休養その4


「スクール水着は犯罪臭がするけど、競泳水着なら合法ね」
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