少し、生々しい表現が含まれています。
ご覧の際は、ご注意ください。
side 提督
──第603鎮守府、提督私室──
休養2日目、10:00。
「…………」
えっと、このパーツはこれで、これは…あっ、間違えた、こっちだ。
うむ、ガ○プラはいい。何歳になっても楽しめる。日本に生まれて良かった。早くSガ○ダムを完成させて、ディー○ストライカーとEX-Sの隣に飾りたい。
「……提督、マジで大丈夫?」
「ん?何が?」
俺は至ってノーマルだ。いつも通りだぞ?なんだよ秋雲、そんな心配そうな顔して。というか、なんかごめんよ、無理矢理プラモ作るのを手伝わせちゃって。
何故秋雲とプラモを作っているか、って?「心配だから様子を見に来た」と言って俺の部屋に09:50頃、やって来たんだ。俺は大丈夫だ!って言ったんだけど、心配そうな顔してたから、本当に大丈夫だとアピールする為に昨日買ったSガ○ダムの箱を見せて、手伝ってくれと頼んだ。
「いや、その、昨日ぶっ倒れたのもそうだけど……」
「提督ってのは艦娘達を取り纏める存在だ。その提督が貧弱だと、運営なんて出来ない。俺は本当に大丈夫だから、心配すんな」
というか、秋雲の方こそ大丈夫か?先日、お仕置きと称して俺にKAR○SAWA-MK2でカァオ!カァオ!されまくってたけど、大丈夫?そっちの方が心配だよ。
「あー、そうですか……じゃなくて、えっと、その──」
鋼材を除いて一桁しか残っていない、って翔鶴達に言われた時は脳が情報を処理し切れなくて、思わずぶっ倒れちゃったけど、今は受け入れて冷静になっているから大丈夫だよ。
そうそう、ぶっ倒れた後のことを説明しよう。気が付けば俺は医務室のベッドの上に居た。幸い、倒れてから数分で目を覚ました。んで、腹が減ってたから、食堂に行って千歳さんが作ってくれた夕食を食べた。とても美味しかったです。腹が減る、メシを食えるってことは、元気である証拠。つまり、問題なし、って奴だ。
あっ、そうそう。夕食を摂っている時、なんか皆に滅茶苦茶心配されたけど、普段通り過ごして欲しかったから、「普段通りにしてくれ」ってお願いした。それでもなんか空気が重かったから、食後、一発芸かまして和まそうとしたんだ。何をやったかって?それは──
「ロケット花火数百本を背中に付けて、「土星エンジンが暴走したヅ○の真似!」って叫びながら海上を生身で走り出したけど……背中、火傷とかしてない?」
「してないぞ?大丈夫だ」
艦娘と人間のハーフだから、身体はそこそこ頑丈だ。火傷なんてしていないぞ?ああ、そうそう。発射されたロケット花火は、全部ちゃんと回収した。ゴミの不法投棄は絶対やっちゃダメだぞ。夏だから花火をすると思うけど、ゴミはきちんと回収しましょう。ポイ捨てはNO!なんだからネ?あれ、なんか変な口調になっちゃった。ま、いっか(←提督、錯乱気味)
「あー、うん。提督がそう言うなら、もう何も言わないよ」
ありがとう。本当に俺は大丈夫だから、いつも通りにしてくれ。変に気を遣われると、逆にこっちが申し訳なくなってくる。
………………。
「さて、一旦ここまでにして、昼飯食おう」
秋雲と2人で雑談しながら作ったけど、半分近くまで出来た。流石Sガ○ダム。EX-S程じゃないが、そこそこパーツが多い。時計を見ると、12:00だった。夢中になって作っていたから、時間の流れが早く感じる。
「んあ?もうそんな時間?」
「そんな時間だ」
今日の昼食担当は矢矧だったな。何だろう。食堂に行けば分かるか。
ニッパー等の道具を片し、俺と秋雲は食堂へ向かった。
…………。
「…………」
食堂なう。空気が重い。おーい皆、何でそんな暗いの?ほらほら、笑顔になって。
ちなみに、お昼は冷やし中華だ。暑いからピッタリだ。具材もタレも豊富。うん、美味しい。
周りを見る。皆、俯いて無言で食べている。
……だから、暗いよ!よし、また何か一発芸でもして笑わせてやるか。
「あ、あの、提督」
「どした、翔鶴」
どんな一発芸をするか悩んでいたら、俺の隣に座っている翔鶴に声を掛けられた。何でそんな悲しそうな顔してるの?ほら、笑顔笑顔。昨日の事は全く気にしてないから、普段通りにしてくれ。
「本当にごめんなさい」
「気にしてないから、謝らないでくれ」
マジで気にしてないよ。部下の不始末は上司である俺の不始末。俺と出掛けられなかった寂しさから暴走して資材を消費したんだ。つまり、俺のせい。誰がなんと言おうが、俺のせい。はい、この話は終わり。
「で、ですが……」
「普段通りに戻ってくれないと、俺、泣くよ?」
気にし過ぎだ。確かに、翔鶴達がした事は悪い事だ。でも、今はしっかり反省してる。昨夜、もう二度としないと謝ってきたんだ。それなら、許す。誰がなんと言おうが、許す。資材は俺が何とかするから、気にするな。
「それか、クレーンで首吊っちゃうよ?だから普段通りに振舞ってくれ」
「わ、分かりました…」
うん、聞き入れてくれた。素直な娘は大好きだ。
さて、まだ冷やし中華が残っているから食べよう。食べ終わったら、またSガ○ダムを作ろう。いや、皆とコミュニケーション取ろう。そうしよう。
………………。
少し自室で休憩しながら、俺はこの後誰からコミュニケーションを取るか考えていた。食後、秋雲がプラモ作ろう?と言ってくれたが、皆とコミュニケーション取りたいから自由にしてくれ、と断っておいた。
誰とコミュニケーション取ろうかな?あっ、なんかギャルゲーっぽい。セーブ・ロード無しの一発勝負仕様だけど。まずは翔鶴にするか。次に葛城、由良、扶桑さんの順に攻略していこう。
余談だけど、今日外出する娘は居ない。俺の事なんか気にせず、出掛けていいのに。
「おーい、翔鶴、居るか?」
翔鶴と瑞鶴の部屋のドアをノック。
『えっ!?』
『提督さん?』
『ち、ちょっと待って、今開けるわ』
ん?声が三人分聞こえた。瑞鶴と翔鶴以外にもう一人居るみたいだ。最初の声は誰だろう?
数秒後、ドアが開いた。開けたのは翔鶴だった。少し驚いた顔してる。タイミング悪かったか?
「お、お待たせしました」
「よう」
遊びに来ました。おっ、葛城が居る。珍しいな、葛城が瑞鶴達と一緒に居るのは。
「あ、あの、何か……」
「お喋りしたくなったから来た。邪魔だったか?」
翔鶴が少しだけ申し訳なさそうな顔をしながら聞いてきたから、ここに来た目的を言った。邪魔だ!って言われたら、大人しく去ります。
「い、いいえ、大丈夫よ?」
おっ、そうか。良かった。
翔鶴はドアから離れ、入室を許可してくれた。お邪魔しまーす。部屋の中をジロジロ見ないよう注意しよう。異性の部屋をジロジロ見るのはマナー違反です。昔、爺ちゃんに教わりました。……ん?ミニテーブルの上に何か置いてある。カタログ?
「あっ、それは……」
どうした、葛城。顔赤くして。
「提督さんが来るまで、翔鶴姉と葛城の3人で、水着のカタログを見てたの」
「そうだったのか」
瑞鶴にそう言われ、もう一度ミニテーブルに置かれたカタログを見る。それにしても、カタログに載っている写真。どれも肌の露出が多い。水着だから仕方ないけど、目に毒だ。あまりジロジロ見ないようにしよう。下手したら、瑞鶴達にスケベ野郎のレッテルを貼られちまう。
「翔鶴姉と葛城の水着をどれにするか、選んでいたの」
「そうだったのか。なんか、邪魔して悪い」
俺が居ると恥ずかしくて選べないかもしれない。部屋を出るか。そう思った時だった。
「あ、あの、良ければ、あなたが選んでくれない?」
「いいのか?俺、センス無いよ?それでもいいの?」
葛城に頼まれた。一応、注意しておく。まぁ、一緒に選ぶから、何とかなるだろう。センスが悪かったら、指摘してくれるだろう。
「お願い」
よし、分かった。頼まれたからには、全力で真剣に選んでやる。
ミニテーブルの近くに腰を下ろして、カタログを見る。昨日瑞鶴達のを選んだ時も思ったが、種類多いな。
えーと、ビキニ、タンキニ、etc…。うん、悩む。あっ、何となくだけど、葛城は競泳水着が似合いそう。物凄くどうでもいい、個人的な意見だけど。勿論口には出さない。うーん、どれがいいかなぁ。悩む。
「こ、これ、気になっているんだけど…」
「どれどれ?」
俺が悩んでいると、葛城は、とある水着を指さした。その水着は、ビキニタイプの水着だ。…ちょっと待って、あの、葛城さん?これ、上はともかく、下の水着が……
「ちょ、これ、下がTバックみたいじゃん!エロいの選んだわね?」
瑞鶴さん、大声で言わないで。恥じらい持って。やべっ、顔が熱い。今の俺の顔、真っ赤だと思う。決して気温のせいじゃない。
「だ、大丈夫よ。下にショートパンツ穿くから」
あっ、それなら大丈夫だね。…大丈夫じゃないよ、葛城さん。普通の、布面積の大きい水着を選びなさい。けど、ショートパンツ穿くなら許そう。似合いそうだ。葛城が着ている姿を想像してみる。
……。
「イイと思う」
やべっ、思わず口に出しちまった。
「本当!?」
「あ、ああ…」
葛城の奴、嬉しそうな顔してる。それにしても、この水着。活発的な葛城に良く似合いそうだ。けど、頼むからショートパンツは穿いてくれよ?じゃないと、痴女になっちまうぞ。それ程、下の水着の後ろが細い。下手したら、見えるんじゃ…アカン、ムラムラしてきた。煩悩退散、煩悩退散。俺は正気に戻った。
「よし、これにするわ!」
どうやら、これにするようだ。いいのか、そんな簡単に決めて。もっと良く考えた方がいいんじゃない?後悔しない?
「あなたが、これがいいって言ってくれたんだもの。だから、これにするわ」
「そ、そうか」
本人がこう言うんだ。なら、意思を尊重しよう。さて、葛城の水着が決まったから、次は翔鶴のを選んでやろう。どんなのがあるんだ?
「私、気になっている水着があるの」
へぇ、そうなんだ。どんなのだ?翔鶴はミニテーブルに置かれたカタログを捲り始めた。そして、とあるページの水着を指さした。
「これなんだけど……」
どれどれ?ふむ、ビキニタイプ──あの、翔鶴さん?ちょっと待って、これ、葛城の奴ほどじゃないけど、布面積が少なくありませんか?ブラジリアン水着じゃん。下だけじゃない、上も際どい。あ、分かった。葛城みたいにショートパンツ穿くんだね。もしくはパレオを付けるのかな?そうだよね?そうだと言ってよ?不安そうに翔鶴の顔を見ると……おい、何だよ、その笑顔は。
「ショートパンツやパレオなんて無いわ♪」
「無いんかい!」
ダメでしょ!?こんな卑猥なの着ちゃダメです!俺の理性が壊れちゃうよ!一部の艦娘達や、同期の提督達からホモ疑惑掛けられてるけど、俺は男。ちゃんと反応します。あと、ナチュラルに俺の思考を読まないで!
「ふふっ、こういうのが好きなんだ」
おぉう、色っぽい声出さないで。……落ち着け、俺。慌てれば
「じゃあ、これにするわ♪」
「そうですか」
よし、もう大丈夫だ。冷静になった。
流石にマズい気がするから、後でこっそりラッシュガードでも買っておこう。そんで翔鶴に着させよう。大きめのパーカータイプ辺りにしとくか。
こうして、翔鶴と葛城の水着選びは終わった。
………………。
「次は由良の所に行くか」
最近は以前のように元気になってくれた。まだまだ様子を見る必要があるが。
えっと、ここだな。ドアをノックして────
「……居ないのか?」
暫く待ったが、返事は無い。物音もしない。どうやら不在みたいだ。仕方ない、扶桑さんの所に行くか。
………………。
「扶桑さんも不在だったか」
由良の部屋を後にし、扶桑さんと山城の部屋に行ったが、こちらも不在だった。山城も居なかったから、2人揃って行動しているのかもしれん。
(外出届けは出されていないから、鎮守府内に居る筈)
無断で出掛けた可能性もあるが、それは無いと信じている。さて、何処に居るのやら。……ん?談話室から話し声が聞こえるぞ。こっそり忍び寄って、中を覗くと、
(扶桑さんと山城、それに足柄と由良、満潮が居る)
何か話しているみたいだ。盗み聞きなんて趣味が悪い。入るか。
「邪魔するぞ〜」
「お帰りはあちらよ、メル○ェェェェル!」
「よし、オー○ーブースト全開にして帰る!」
全力で帰る。足柄にお帰りを促されたから、回れ右をして──
「冗談よ」
足柄に呼び止められた。なんだよ、お帰り促してきたじゃん。まぁ、声が明らかにふざけた感じの物だったから、悪ノリしたんだけど。
「歓迎するわ、盛大に」
「いや、足柄が良くても、他の娘達は──」
「私は構わないわ」
歓迎しないかもしれないだろ、と言おうとしたら、満潮がそう言ってきた。いいのか?扶桑さんと山城、由良を見ると、
「私も、構いません」
「同じく」
「いいですよ」
歓迎してくれた。それでは、お言葉に甘えて。ん?テーブルに何か置いてある。……水着のカタログだ。君達も選んでたのね。俺の視線に気付いた足柄が、ニヤリと笑った。あっ、嫌な予感。
「ねぇ、提督」
「はい、なんでしょう?」
あ、俺、分かった。分かっちゃった。足柄の事だ。私達の水着を選んで、って言うんでしょ?間違いな──
「スクール水着と競泳水着、どっちが好き?」
「オメーは何を言っているんだ?」
予想と違った。そんなバカな、俺の未来予想が外れた、だと!?というか、
「何でスクール水着と競泳水着なんだよ」
カタログに写っている写真は、どれもビキニやタンキニといった水着ばかりだ。スクール水着と競泳水着は1つも写っていない。
「満潮と霞ちゃんに似合う水着はどっちか悩んでいたの。そしたら提督が来たから、聞いたのよ」
アホな事で悩むな。……スクール水着と競泳水着か。満潮と霞の体型は、言葉は悪いが小柄だ。個人的な意見。いいか、個人的な意見だぞ?満潮と霞はスクール水着が似合うと思う。勿論、口には出さない。出したら最後。確実に満潮と霞に嫌われるだろう。あと、他の娘達から軽蔑の視線が飛んでくるだろう。
「私は、どっちも似合うと思うわ!」
「興奮するな」
あっ、ダメな足柄だ。普段は出来る女だが、戦闘とアルコール、霞が絡むとダメな女になる。おーい、足柄。周りを見なさい?扶桑さんと山城、由良が苦笑いしてるよ?満潮はゴミを見るような目で足柄を睨んでるよ?
「ただね、スクール水着を着せると犯罪臭がすると思うの」
「語り出すな」
落ち着きなさい。つーか、犯罪臭がする、ってなんだよ。
「競泳水着は本気で泳ぐぞ!って感じがするから、合法な気がする」
「勝手に言ってなさい」
おーい、足柄、満潮の顔が凄まじい事になってるから、その辺にしときな?あっ、満潮がこっそりスマホ弄ってる。
「結論!スクール水着は犯罪臭がするけど、競泳水着なら合法ね」
勝手に納得してろ。というか、霞本人に直接聞けよ。きっと、良い
…おや、満潮がスマホのマイク部分を足柄に向けてる。録音してるのかな?
「想像してみなさい。霞ちゃんがスクール水着を着た姿を。最高だと思わない?」
「お黙りなさい」
足柄、君、変態なの?言葉は悪いが、オッサン臭いよ?
あ、満潮がニヤリと笑いながらスマホ弄ってる。どうした?
「ねぇ、足柄さん」
「なぁに、満潮ちゃん?」
「今の、録音して霞に送ったわ」
成程、その為にスマホを弄っていたのか。あーあー、足柄の奴、顔面蒼白になってらァ。良かったな、足柄。霞本人から意見を貰えるぞ?
数分後、満潮のスマホにメールが届いた。送り主は霞だ。罵倒満載の内容かな?と思いながら満潮に見せてもらったが、
『足柄さん、大変申し訳ありませんが、今後は他人として接します。今までありがとうございました。』
めっちゃ他人行儀な内容だった。うん、これはキツい。色んな意味でキツい。それを見た足柄は真っ白になって床にorz状態になった。自業自得だ、アホ。
………………。
「……はぁ」
由良と扶桑さんと話をしようと思ったが、なんだか精神的に疲れたせいで談話室を後にした。ごめんよ、自分を優先するクズで。
さて、どうすっかな。プラモ作ろうかな?けど、なんか気分じゃない。そうだ、泳ごう。沖まで出ると危険だから、桟橋の近くを泳ごう。……いやいや、待て。何考えてるんだ?海は危険なんだぞ?
「あっ、入道雲だ」
窓から外を見ると、立派な入道雲が見えた。雲の下を見ると、真っ暗だ。こりゃ、一雨来そうだ。一応、皆に知らせておくか。
side 提督 out
───────
────
─
side 瑞鶴
(普段通りにしてくれ、とは言われたけど…)
罪悪感で一杯。
昨日は涼月と榛名も居たけど、準とお出掛け出来て、洋服や水着と下着も選んでもらえたから、はしゃぎ過ぎてしまった。その結果、勢いであんな事をしてしまった。
(グロテスクなモノが苦手だ、って言っていたのに)
ホント、何やってるのよ。嫌われても仕方ないわよ?
準は「失望していないし、嫌いになんてなっていないから、安心してくれ」と言ってくれたけど、その言葉に甘えちゃダメ。最近、準に甘え過ぎよ。
(一度、逃げられた事を思い出しなさい)
このまま甘えていたら、また逃げられるかもしれない。しっかりしなきゃ。
(あっ、入道雲だ)
部屋の窓から外を見ると、非常に大きな入道雲が見えた。雷が鳴りそうね。停電するかもしれないから、一応懐中電灯を用意しておこう。
……入道雲、か。私、雷嫌いなんだよね。うるさいし、眩しいし。それに、
(あの時の事を思い出しちゃうし…)
小学生の時、クラスの女子に虐められて、体育館倉庫に閉じ込められた、嫌な思い出が蘇る。埃っぽい空気。真っ暗な倉庫。静寂。とても怖かったのを覚えている。閉じ込められてからどれ程時間が経ったか分からないけど、やがて雷と豪雨の音が──
(……思い出すの、やめよう)
身体が震えてきた。まぁ、準が助けに来てくれたから、何とかなったけど。それ以来かな、準のこと、意識するようになったのは。懐かしいなぁ。
「あれから、15年か……」
時間の流れって、早いわね。
「瑞鶴、何か言った?」
「ううん、独り言」
いけない、
(早く、泳ぎに行きたいな)
水泳なんて、かれこれ何年もしていないから、ちゃんと泳げるかな?それに、
……明日から本気でトレーニングして、絞ろう。あと、ムダ毛処理もしないと。幸い、私は比較的薄い。翔鶴姉は…ここだけの話、結構濃い。あ、この話は秘密よ?翔鶴姉に知られたら、私、殺されちゃう。
side 瑞鶴 out
───────
────
─
side 提督
「うわぁ、真っ暗だ」
現在時刻、15:40。夏だから、まだまだ明るい筈なのに、外は真っ暗になっている。原因は入道雲だ。さっき放送で注意しておいたが、大丈夫かな。毎年、この時期になると入道雲がよく発生して、激しい雷雨が降る。そして雷のせいでよく停電する。妖精さん達に頼んで避雷針を設置してもらっているが、限界がある。自然の力には、流石の妖精さん達でも勝てない。
(一応、皆には知らせてあるが、大丈夫だろうか?)
さっき放送で知らせたが、少し不安だ。特に早霜。あいつ、雷が苦手でよく布団に包まって震える。停電なんかしたら、パニック起こして俺の部屋に駆け込んで来る。少し様子を見に行くか。
………………。
「……あの、早霜さん?」
「なんでしょう、司令官」
「雷が怖いのは分かる。分かるが、その、あの──」
「うふふふ……うふふふふふふふふふ……」
「このロープを外して頂けないでしょうか?」
ありのまま今起こったことを話す。
俺は早霜の様子を見に、彼女の部屋に行きドアをノックした。
様子を見に来たと告げると、凄い勢いでドアが開き、部屋の中に連れ込まれた。そして、身体を恐怖で震わせながら俺にしがみつきて来た。それはいい。気が付けば、俺の胴体に極太のロープ──船を港に係留する為に使うロープを巻き付けられていた。手足まで縛られなかったのは幸いだ。
頭がどうにかなりそうだった。というか、なった。
催眠術とか、クロッ○アップとか、そんなチャチなモンじゃ、断じてねぇ。もっと恐ろしい──
「(<⚫>)(<⚫>)」
「」
早霜、お願いだから瞳孔を限界まで広げて涙零しながら見つめないで?部屋が少し薄暗いから、その、怖いです。
「雷、怖いです」
ごめんよ、早霜。言っちゃ悪いが、君の方が少しだけ怖いです。……こら、さり気なくズボンのベルトを掴まない。
「嗚呼、来る。
「よーし、落ち着け早霜。こういう時は落ち着いて素数を数え───」
「235711131719232931374143475359616771──」
「うん、落ち着いて?」
めっちゃ早口でよく聞き取れない。もっとゆっくり言いなさい?早口だと逆に落ち着…
「3643641145141919810」
「早霜、その数字の意味知ってる?あと、何処でその数字覚えたの?」
それ、素数じゃなくて、すんごく汚い数字だよ?とりあえず、何処で覚えたか提督に教えて?教えなさい?
「足柄さんと摩耶さん、夕張さんと秋雲さんから教わりました。意味は理解していません」
「ありがとう、ちょっとその4人と大事なお話してくるね?」
おう、馬鹿共。覚悟しとけよ?早霜に汚ったない数字を教えやがって。資材が勿体ないからKAR○SAWA-MK2は使わず、ノーザンライトボムをぶちかまそう。そうしよう。さて、4人を捜しに。
「嗚呼、待って、置いてかないで!」
「ぐおっ!?」
ロープ引っ張らないで!ロープが太くて頑丈だから、腹に食い込んで痛い。というか、解いて?あっ、これ、もやい結びだ。解けないや。仕方ない、切ってもらうか。けど、ハサミやカッターじゃ切れない。仕方ない、妖精さんに頼むか。工廠に行こう。だから早霜、ロープを掴む手を離して?えっちょ、何してんの?余った部分を自分の胴体にもやい結びで結び付けてる。あ、あの、早霜さん?
「うふふ……これで、司令官は私から離れない……ふふふふふっ……」
パッと見、拘束プレイしているみたいだ。物凄い犯罪臭がします。これ、何も知らない第三者が見たら、絶対勘違いされる。どうしよう?妖精さん達に頼みたいけど、それには工廠へ行かなきゃならない。行く為には、早霜と一緒じゃなきゃダメ。行く途中、誰かに見られたら確実に勘違いされる。助けを呼びたいが、俺のスマホは部屋に置いてきてしまった。どうしよう?
「助けを呼ぶ気ですね?ダメですよ。ふふふふっ……」
「」
くそっ、思考が読まれている!こら、迫るな!手をワキワキさせないで!こうなったら強行策だ!早霜をお姫様抱っこして、工廠に駆け込む!抱っこすれば、何もしてこない筈だ!(←錯乱気味)
誰かに見られても、構わず工廠に駆け込む!ロープを解いてもらった後、理由を話して誤解を解けばいい!行くぞ!
「司令官?えっ、キャッ!?」
すまん、早霜、許してくれ。素早く抱き抱え、部屋を出る。頼む、誰にも見つからないでくれ!工廠へ向かって走る!走る!!この角を曲がって真っ直ぐ進めば、工廠だ!勝ったぞぉ!
「あら、提督、どうかし…た……」
「あ、矢矧」
あと少しで工廠だったのに、矢矧と遭遇してしまった。
立ち止まる俺。矢矧、真顔。早霜、恍惚とした表情をしている。ここから導き出される答えは。
「……そういうのが趣味だったのね」
「違います」
誤解されました。えぇい、誤解を解くのは後だ。今は工廠に行って妖精さん達に何とかしてもらおう。
再び走り、工廠へ向かった。この後、無事ロープは妖精さん達の手で切ってもらった。流石、妖精さん達。あの太いロープを簡単に切断出来るとは。今度、お礼にお菓子を差し入れするね?さて、矢矧の誤解を解きに行きますか。……あの、早霜?その手に持ってるの、何?手錠?
「司令官、私を置いていかないで!雷怖い!」
「誰か、他の娘の所に行きなさい」
俺じゃなくても良いでしょ?あっ、こら、手錠かけようとしない。やめなさい。やめて、やめろォ!?
………………。
「ひでぇ目に遭った」
あの後、早霜に追い掛けられながら、矢矧の所に向かって誤解を解いた。最初は疑われたが、早霜の尋常ではない怯え方を見て納得してくれた。そして、早霜を預かってくれた。流石、矢矧。オカン系艦娘の名は伊達じゃない。アイツ、面倒見良いんだよな。
「……おっ、降ってきた」
雨戸から、雨の当たる音が聞こえてきた。激しい雨だ。それと同時に、雷鳴も聞こえてきた。まだ遠いな。さて、懐中電灯を用意しておくか。
side 提督 out
───────
────
─
次回予告
先日の雨と雷、激しかったわね。舞鶴よりも激しい。けど、嫌いじゃないわ。なんて言うの?夏の風物詩、って感じがする。
……えっ、提督、夕張さんと買物に出かけるの?以前約束したから?そうなの。ちなみに、何処に行くの?…秋○原?へぇ、面白そうじゃない。良ければ私も行っていい?くじ引きの結果次第?分かったわ。
第51話・休養その5
「なんだ、エ○ゲですか」