追跡鶴   作:EMS-10

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※注意※
少し、生々しい表現が含まれています。
ご覧の際は、ご注意ください。



第50話・休養その4

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、提督私室──

 

 

休養2日目、10:00。

 

 

 

「…………」

えっと、このパーツはこれで、これは…あっ、間違えた、こっちだ。

うむ、ガ○プラはいい。何歳になっても楽しめる。日本に生まれて良かった。早くSガ○ダムを完成させて、ディー○ストライカーとEX-Sの隣に飾りたい。

 

「……提督、マジで大丈夫?」

 

「ん?何が?」

俺は至ってノーマルだ。いつも通りだぞ?なんだよ秋雲、そんな心配そうな顔して。というか、なんかごめんよ、無理矢理プラモ作るのを手伝わせちゃって。

何故秋雲とプラモを作っているか、って?「心配だから様子を見に来た」と言って俺の部屋に09:50頃、やって来たんだ。俺は大丈夫だ!って言ったんだけど、心配そうな顔してたから、本当に大丈夫だとアピールする為に昨日買ったSガ○ダムの箱を見せて、手伝ってくれと頼んだ。

 

「いや、その、昨日ぶっ倒れたのもそうだけど……」

 

「提督ってのは艦娘達を取り纏める存在だ。その提督が貧弱だと、運営なんて出来ない。俺は本当に大丈夫だから、心配すんな」

というか、秋雲の方こそ大丈夫か?先日、お仕置きと称して俺にKAR○SAWA-MK2でカァオ!カァオ!されまくってたけど、大丈夫?そっちの方が心配だよ。

 

「あー、そうですか……じゃなくて、えっと、その──」

 

鋼材を除いて一桁しか残っていない、って翔鶴達に言われた時は脳が情報を処理し切れなくて、思わずぶっ倒れちゃったけど、今は受け入れて冷静になっているから大丈夫だよ。

そうそう、ぶっ倒れた後のことを説明しよう。気が付けば俺は医務室のベッドの上に居た。幸い、倒れてから数分で目を覚ました。んで、腹が減ってたから、食堂に行って千歳さんが作ってくれた夕食を食べた。とても美味しかったです。腹が減る、メシを食えるってことは、元気である証拠。つまり、問題なし、って奴だ。

あっ、そうそう。夕食を摂っている時、なんか皆に滅茶苦茶心配されたけど、普段通り過ごして欲しかったから、「普段通りにしてくれ」ってお願いした。それでもなんか空気が重かったから、食後、一発芸かまして和まそうとしたんだ。何をやったかって?それは──

 

「ロケット花火数百本を背中に付けて、「土星エンジンが暴走したヅ○の真似!」って叫びながら海上を生身で走り出したけど……背中、火傷とかしてない?」

 

「してないぞ?大丈夫だ」

艦娘と人間のハーフだから、身体はそこそこ頑丈だ。火傷なんてしていないぞ?ああ、そうそう。発射されたロケット花火は、全部ちゃんと回収した。ゴミの不法投棄は絶対やっちゃダメだぞ。夏だから花火をすると思うけど、ゴミはきちんと回収しましょう。ポイ捨てはNO!なんだからネ?あれ、なんか変な口調になっちゃった。ま、いっか(←提督、錯乱気味)

 

「あー、うん。提督がそう言うなら、もう何も言わないよ」

 

ありがとう。本当に俺は大丈夫だから、いつも通りにしてくれ。変に気を遣われると、逆にこっちが申し訳なくなってくる。

 

 

 

………………。

 

 

 

「さて、一旦ここまでにして、昼飯食おう」

秋雲と2人で雑談しながら作ったけど、半分近くまで出来た。流石Sガ○ダム。EX-S程じゃないが、そこそこパーツが多い。時計を見ると、12:00だった。夢中になって作っていたから、時間の流れが早く感じる。

 

「んあ?もうそんな時間?」

 

「そんな時間だ」

今日の昼食担当は矢矧だったな。何だろう。食堂に行けば分かるか。

ニッパー等の道具を片し、俺と秋雲は食堂へ向かった。

 

 

…………。

 

 

「…………」

食堂なう。空気が重い。おーい皆、何でそんな暗いの?ほらほら、笑顔になって。

ちなみに、お昼は冷やし中華だ。暑いからピッタリだ。具材もタレも豊富。うん、美味しい。

周りを見る。皆、俯いて無言で食べている。

……だから、暗いよ!よし、また何か一発芸でもして笑わせてやるか。昨日の一発芸(土星エンジンが暴走したヅ○の真似)は不評だったから、何をしよう?

 

「あ、あの、提督」

 

「どした、翔鶴」

どんな一発芸をするか悩んでいたら、俺の隣に座っている翔鶴に声を掛けられた。何でそんな悲しそうな顔してるの?ほら、笑顔笑顔。昨日の事は全く気にしてないから、普段通りにしてくれ。

 

「本当にごめんなさい」

 

「気にしてないから、謝らないでくれ」

マジで気にしてないよ。部下の不始末は上司である俺の不始末。俺と出掛けられなかった寂しさから暴走して資材を消費したんだ。つまり、俺のせい。誰がなんと言おうが、俺のせい。はい、この話は終わり。

 

「で、ですが……」

 

「普段通りに戻ってくれないと、俺、泣くよ?」

気にし過ぎだ。確かに、翔鶴達がした事は悪い事だ。でも、今はしっかり反省してる。昨夜、もう二度としないと謝ってきたんだ。それなら、許す。誰がなんと言おうが、許す。資材は俺が何とかするから、気にするな。

 

「それか、クレーンで首吊っちゃうよ?だから普段通りに振舞ってくれ」

 

「わ、分かりました…」

 

うん、聞き入れてくれた。素直な娘は大好きだ。

さて、まだ冷やし中華が残っているから食べよう。食べ終わったら、またSガ○ダムを作ろう。いや、皆とコミュニケーション取ろう。そうしよう。

 

 

………………。

 

 

少し自室で休憩しながら、俺はこの後誰からコミュニケーションを取るか考えていた。食後、秋雲がプラモ作ろう?と言ってくれたが、皆とコミュニケーション取りたいから自由にしてくれ、と断っておいた。

誰とコミュニケーション取ろうかな?あっ、なんかギャルゲーっぽい。セーブ・ロード無しの一発勝負仕様だけど。まずは翔鶴にするか。次に葛城、由良、扶桑さんの順に攻略していこう。

余談だけど、今日外出する娘は居ない。俺の事なんか気にせず、出掛けていいのに。

 

「おーい、翔鶴、居るか?」

翔鶴と瑞鶴の部屋のドアをノック。

 

『えっ!?』

 

『提督さん?』

 

『ち、ちょっと待って、今開けるわ』

 

ん?声が三人分聞こえた。瑞鶴と翔鶴以外にもう一人居るみたいだ。最初の声は誰だろう?

数秒後、ドアが開いた。開けたのは翔鶴だった。少し驚いた顔してる。タイミング悪かったか?

 

「お、お待たせしました」

 

「よう」

遊びに来ました。おっ、葛城が居る。珍しいな、葛城が瑞鶴達と一緒に居るのは。

 

「あ、あの、何か……」

 

「お喋りしたくなったから来た。邪魔だったか?」

翔鶴が少しだけ申し訳なさそうな顔をしながら聞いてきたから、ここに来た目的を言った。邪魔だ!って言われたら、大人しく去ります。

 

「い、いいえ、大丈夫よ?」

 

おっ、そうか。良かった。

翔鶴はドアから離れ、入室を許可してくれた。お邪魔しまーす。部屋の中をジロジロ見ないよう注意しよう。異性の部屋をジロジロ見るのはマナー違反です。昔、爺ちゃんに教わりました。……ん?ミニテーブルの上に何か置いてある。カタログ?

 

「あっ、それは……」

 

どうした、葛城。顔赤くして。

 

「提督さんが来るまで、翔鶴姉と葛城の3人で、水着のカタログを見てたの」

 

「そうだったのか」

瑞鶴にそう言われ、もう一度ミニテーブルに置かれたカタログを見る。それにしても、カタログに載っている写真。どれも肌の露出が多い。水着だから仕方ないけど、目に毒だ。あまりジロジロ見ないようにしよう。下手したら、瑞鶴達にスケベ野郎のレッテルを貼られちまう。

 

「翔鶴姉と葛城の水着をどれにするか、選んでいたの」

 

「そうだったのか。なんか、邪魔して悪い」

俺が居ると恥ずかしくて選べないかもしれない。部屋を出るか。そう思った時だった。

 

「あ、あの、良ければ、あなたが選んでくれない?」

 

「いいのか?俺、センス無いよ?それでもいいの?」

葛城に頼まれた。一応、注意しておく。まぁ、一緒に選ぶから、何とかなるだろう。センスが悪かったら、指摘してくれるだろう。

 

「お願い」

 

よし、分かった。頼まれたからには、全力で真剣に選んでやる。

ミニテーブルの近くに腰を下ろして、カタログを見る。昨日瑞鶴達のを選んだ時も思ったが、種類多いな。

えーと、ビキニ、タンキニ、etc…。うん、悩む。あっ、何となくだけど、葛城は競泳水着が似合いそう。物凄くどうでもいい、個人的な意見だけど。勿論口には出さない。うーん、どれがいいかなぁ。悩む。

 

「こ、これ、気になっているんだけど…」

 

「どれどれ?」

俺が悩んでいると、葛城は、とある水着を指さした。その水着は、ビキニタイプの水着だ。…ちょっと待って、あの、葛城さん?これ、上はともかく、下の水着が……

 

「ちょ、これ、下がTバックみたいじゃん!エロいの選んだわね?」

 

瑞鶴さん、大声で言わないで。恥じらい持って。やべっ、顔が熱い。今の俺の顔、真っ赤だと思う。決して気温のせいじゃない。

 

「だ、大丈夫よ。下にショートパンツ穿くから」

 

あっ、それなら大丈夫だね。…大丈夫じゃないよ、葛城さん。普通の、布面積の大きい水着を選びなさい。けど、ショートパンツ穿くなら許そう。似合いそうだ。葛城が着ている姿を想像してみる。

……。

 

「イイと思う」

やべっ、思わず口に出しちまった。

 

「本当!?」

 

「あ、ああ…」

葛城の奴、嬉しそうな顔してる。それにしても、この水着。活発的な葛城に良く似合いそうだ。けど、頼むからショートパンツは穿いてくれよ?じゃないと、痴女になっちまうぞ。それ程、下の水着の後ろが細い。下手したら、見えるんじゃ…アカン、ムラムラしてきた。煩悩退散、煩悩退散。俺は正気に戻った。

 

「よし、これにするわ!」

 

どうやら、これにするようだ。いいのか、そんな簡単に決めて。もっと良く考えた方がいいんじゃない?後悔しない?

 

「あなたが、これがいいって言ってくれたんだもの。だから、これにするわ」

 

「そ、そうか」

本人がこう言うんだ。なら、意思を尊重しよう。さて、葛城の水着が決まったから、次は翔鶴のを選んでやろう。どんなのがあるんだ?

 

「私、気になっている水着があるの」

 

へぇ、そうなんだ。どんなのだ?翔鶴はミニテーブルに置かれたカタログを捲り始めた。そして、とあるページの水着を指さした。

 

「これなんだけど……」

 

どれどれ?ふむ、ビキニタイプ──あの、翔鶴さん?ちょっと待って、これ、葛城の奴ほどじゃないけど、布面積が少なくありませんか?ブラジリアン水着じゃん。下だけじゃない、上も際どい。あ、分かった。葛城みたいにショートパンツ穿くんだね。もしくはパレオを付けるのかな?そうだよね?そうだと言ってよ?不安そうに翔鶴の顔を見ると……おい、何だよ、その笑顔は。

 

「ショートパンツやパレオなんて無いわ♪」

 

「無いんかい!」

ダメでしょ!?こんな卑猥なの着ちゃダメです!俺の理性が壊れちゃうよ!一部の艦娘達や、同期の提督達からホモ疑惑掛けられてるけど、俺は男。ちゃんと反応します。あと、ナチュラルに俺の思考を読まないで!

 

「ふふっ、こういうのが好きなんだ」

 

おぉう、色っぽい声出さないで。……落ち着け、俺。慌てればコイツ(翔鶴)の思う壷だ。冷静になれ。そうだ、布だと思えばいい。これは布だ。布だ。布。

 

「じゃあ、これにするわ♪」

 

「そうですか」

よし、もう大丈夫だ。冷静になった。

流石にマズい気がするから、後でこっそりラッシュガードでも買っておこう。そんで翔鶴に着させよう。大きめのパーカータイプ辺りにしとくか。

こうして、翔鶴と葛城の水着選びは終わった。

 

 

 

………………。

 

 

 

「次は由良の所に行くか」

最近は以前のように元気になってくれた。まだまだ様子を見る必要があるが。

えっと、ここだな。ドアをノックして────

 

「……居ないのか?」

暫く待ったが、返事は無い。物音もしない。どうやら不在みたいだ。仕方ない、扶桑さんの所に行くか。

 

 

………………。

 

 

「扶桑さんも不在だったか」

由良の部屋を後にし、扶桑さんと山城の部屋に行ったが、こちらも不在だった。山城も居なかったから、2人揃って行動しているのかもしれん。

 

(外出届けは出されていないから、鎮守府内に居る筈)

無断で出掛けた可能性もあるが、それは無いと信じている。さて、何処に居るのやら。……ん?談話室から話し声が聞こえるぞ。こっそり忍び寄って、中を覗くと、

 

(扶桑さんと山城、それに足柄と由良、満潮が居る)

何か話しているみたいだ。盗み聞きなんて趣味が悪い。入るか。

 

「邪魔するぞ〜」

 

「お帰りはあちらよ、メル○ェェェェル!」

 

「よし、オー○ーブースト全開にして帰る!」

全力で帰る。足柄にお帰りを促されたから、回れ右をして──

 

「冗談よ」

 

足柄に呼び止められた。なんだよ、お帰り促してきたじゃん。まぁ、声が明らかにふざけた感じの物だったから、悪ノリしたんだけど。

 

「歓迎するわ、盛大に」

 

「いや、足柄が良くても、他の娘達は──」

 

「私は構わないわ」

 

歓迎しないかもしれないだろ、と言おうとしたら、満潮がそう言ってきた。いいのか?扶桑さんと山城、由良を見ると、

 

「私も、構いません」

「同じく」

「いいですよ」

 

歓迎してくれた。それでは、お言葉に甘えて。ん?テーブルに何か置いてある。……水着のカタログだ。君達も選んでたのね。俺の視線に気付いた足柄が、ニヤリと笑った。あっ、嫌な予感。

 

「ねぇ、提督」

 

「はい、なんでしょう?」

あ、俺、分かった。分かっちゃった。足柄の事だ。私達の水着を選んで、って言うんでしょ?間違いな──

 

「スクール水着と競泳水着、どっちが好き?」

 

「オメーは何を言っているんだ?」

予想と違った。そんなバカな、俺の未来予想が外れた、だと!?というか、

 

「何でスクール水着と競泳水着なんだよ」

カタログに写っている写真は、どれもビキニやタンキニといった水着ばかりだ。スクール水着と競泳水着は1つも写っていない。

 

「満潮と霞ちゃんに似合う水着はどっちか悩んでいたの。そしたら提督が来たから、聞いたのよ」

 

アホな事で悩むな。……スクール水着と競泳水着か。満潮と霞の体型は、言葉は悪いが小柄だ。個人的な意見。いいか、個人的な意見だぞ?満潮と霞はスクール水着が似合うと思う。勿論、口には出さない。出したら最後。確実に満潮と霞に嫌われるだろう。あと、他の娘達から軽蔑の視線が飛んでくるだろう。

 

「私は、どっちも似合うと思うわ!」

 

「興奮するな」

あっ、ダメな足柄だ。普段は出来る女だが、戦闘とアルコール、霞が絡むとダメな女になる。おーい、足柄。周りを見なさい?扶桑さんと山城、由良が苦笑いしてるよ?満潮はゴミを見るような目で足柄を睨んでるよ?

 

「ただね、スクール水着を着せると犯罪臭がすると思うの」

 

「語り出すな」

落ち着きなさい。つーか、犯罪臭がする、ってなんだよ。

 

「競泳水着は本気で泳ぐぞ!って感じがするから、合法な気がする」

 

「勝手に言ってなさい」

おーい、足柄、満潮の顔が凄まじい事になってるから、その辺にしときな?あっ、満潮がこっそりスマホ弄ってる。

 

「結論!スクール水着は犯罪臭がするけど、競泳水着なら合法ね」

 

勝手に納得してろ。というか、霞本人に直接聞けよ。きっと、良い意見(罵倒)を貰える筈だから。

…おや、満潮がスマホのマイク部分を足柄に向けてる。録音してるのかな?

 

「想像してみなさい。霞ちゃんがスクール水着を着た姿を。最高だと思わない?」

 

「お黙りなさい」

足柄、君、変態なの?言葉は悪いが、オッサン臭いよ?

あ、満潮がニヤリと笑いながらスマホ弄ってる。どうした?

 

「ねぇ、足柄さん」

 

「なぁに、満潮ちゃん?」

 

「今の、録音して霞に送ったわ」

 

成程、その為にスマホを弄っていたのか。あーあー、足柄の奴、顔面蒼白になってらァ。良かったな、足柄。霞本人から意見を貰えるぞ?

数分後、満潮のスマホにメールが届いた。送り主は霞だ。罵倒満載の内容かな?と思いながら満潮に見せてもらったが、

 

 

『足柄さん、大変申し訳ありませんが、今後は他人として接します。今までありがとうございました。』

 

 

めっちゃ他人行儀な内容だった。うん、これはキツい。色んな意味でキツい。それを見た足柄は真っ白になって床にorz状態になった。自業自得だ、アホ。

 

 

 

………………。

 

 

 

「……はぁ」

由良と扶桑さんと話をしようと思ったが、なんだか精神的に疲れたせいで談話室を後にした。ごめんよ、自分を優先するクズで。

さて、どうすっかな。プラモ作ろうかな?けど、なんか気分じゃない。そうだ、泳ごう。沖まで出ると危険だから、桟橋の近くを泳ごう。……いやいや、待て。何考えてるんだ?海は危険なんだぞ?此処(第603鎮守府)周辺は潮の流れが複雑で激しい。下手したら沖に流される。流されたら、サメや深海棲艦に襲われる恐れがある。やめよう。そうだ、確か、小さいけどビニールプールがあったっけ?待て待て、あれは妖精さん達の避暑用に購入した奴だ。俺が使ってどうする?

 

「あっ、入道雲だ」

窓から外を見ると、立派な入道雲が見えた。雲の下を見ると、真っ暗だ。こりゃ、一雨来そうだ。一応、皆に知らせておくか。

 

 

 

side 提督 out

 

 

 

 

───────

────

 

 

 

side 瑞鶴

 

 

 

(普段通りにしてくれ、とは言われたけど…)

罪悪感で一杯。

昨日は涼月と榛名も居たけど、準とお出掛け出来て、洋服や水着と下着も選んでもらえたから、はしゃぎ過ぎてしまった。その結果、勢いであんな事をしてしまった。

 

(グロテスクなモノが苦手だ、って言っていたのに)

ホント、何やってるのよ。嫌われても仕方ないわよ?

準は「失望していないし、嫌いになんてなっていないから、安心してくれ」と言ってくれたけど、その言葉に甘えちゃダメ。最近、準に甘え過ぎよ。

 

(一度、逃げられた事を思い出しなさい)

このまま甘えていたら、また逃げられるかもしれない。しっかりしなきゃ。

 

(あっ、入道雲だ)

部屋の窓から外を見ると、非常に大きな入道雲が見えた。雷が鳴りそうね。停電するかもしれないから、一応懐中電灯を用意しておこう。

……入道雲、か。私、雷嫌いなんだよね。うるさいし、眩しいし。それに、

 

(あの時の事を思い出しちゃうし…)

小学生の時、クラスの女子に虐められて、体育館倉庫に閉じ込められた、嫌な思い出が蘇る。埃っぽい空気。真っ暗な倉庫。静寂。とても怖かったのを覚えている。閉じ込められてからどれ程時間が経ったか分からないけど、やがて雷と豪雨の音が──

 

(……思い出すの、やめよう)

身体が震えてきた。まぁ、準が助けに来てくれたから、何とかなったけど。それ以来かな、準のこと、意識するようになったのは。懐かしいなぁ。

 

「あれから、15年か……」

時間の流れって、早いわね。

 

「瑞鶴、何か言った?」

 

「ううん、独り言」

いけない、翔鶴姉(静流姉)と葛城が居るんだった。今、水着をいつ準に見せるか話し合ってた。海は危険だからプールに行こうと思っているんだけど、私のせいで精神的に疲れさせてしまった準を振り回すのは良くない。うーん。休養状態の期間中は我慢して、大人しくしよう。

 

(早く、泳ぎに行きたいな)

水泳なんて、かれこれ何年もしていないから、ちゃんと泳げるかな?それに、向こう(第8492離島鎮守府)に居た時より訓練する量が減ったから、お腹の肉が少し増えたかもしれない。

……明日から本気でトレーニングして、絞ろう。あと、ムダ毛処理もしないと。幸い、私は比較的薄い。翔鶴姉は…ここだけの話、結構濃い。あ、この話は秘密よ?翔鶴姉に知られたら、私、殺されちゃう。

 

 

 

side 瑞鶴 out

 

 

 

───────

────

 

 

 

side 提督

 

 

「うわぁ、真っ暗だ」

現在時刻、15:40。夏だから、まだまだ明るい筈なのに、外は真っ暗になっている。原因は入道雲だ。さっき放送で注意しておいたが、大丈夫かな。毎年、この時期になると入道雲がよく発生して、激しい雷雨が降る。そして雷のせいでよく停電する。妖精さん達に頼んで避雷針を設置してもらっているが、限界がある。自然の力には、流石の妖精さん達でも勝てない。

 

(一応、皆には知らせてあるが、大丈夫だろうか?)

さっき放送で知らせたが、少し不安だ。特に早霜。あいつ、雷が苦手でよく布団に包まって震える。停電なんかしたら、パニック起こして俺の部屋に駆け込んで来る。少し様子を見に行くか。

 

 

………………。

 

 

「……あの、早霜さん?」

 

「なんでしょう、司令官」

 

「雷が怖いのは分かる。分かるが、その、あの──」

 

「うふふふ……うふふふふふふふふふ……」

 

「このロープを外して頂けないでしょうか?」

ありのまま今起こったことを話す。

俺は早霜の様子を見に、彼女の部屋に行きドアをノックした。

様子を見に来たと告げると、凄い勢いでドアが開き、部屋の中に連れ込まれた。そして、身体を恐怖で震わせながら俺にしがみつきて来た。それはいい。気が付けば、俺の胴体に極太のロープ──船を港に係留する為に使うロープを巻き付けられていた。手足まで縛られなかったのは幸いだ。

頭がどうにかなりそうだった。というか、なった。

催眠術とか、クロッ○アップとか、そんなチャチなモンじゃ、断じてねぇ。もっと恐ろしい──

 

「(<⚫>)(<⚫>)」

 

「」

早霜、お願いだから瞳孔を限界まで広げて涙零しながら見つめないで?部屋が少し薄暗いから、その、怖いです。

 

「雷、怖いです」

 

ごめんよ、早霜。言っちゃ悪いが、君の方が少しだけ怖いです。……こら、さり気なくズボンのベルトを掴まない。

 

「嗚呼、来る。()が、来る!」

 

「よーし、落ち着け早霜。こういう時は落ち着いて素数を数え───」

 

「235711131719232931374143475359616771──」

 

「うん、落ち着いて?」

めっちゃ早口でよく聞き取れない。もっとゆっくり言いなさい?早口だと逆に落ち着…

 

「3643641145141919810」

 

「早霜、その数字の意味知ってる?あと、何処でその数字覚えたの?」

それ、素数じゃなくて、すんごく汚い数字だよ?とりあえず、何処で覚えたか提督に教えて?教えなさい?

 

「足柄さんと摩耶さん、夕張さんと秋雲さんから教わりました。意味は理解していません」

 

「ありがとう、ちょっとその4人と大事なお話してくるね?」

おう、馬鹿共。覚悟しとけよ?早霜に汚ったない数字を教えやがって。資材が勿体ないからKAR○SAWA-MK2は使わず、ノーザンライトボムをぶちかまそう。そうしよう。さて、4人を捜しに。

 

「嗚呼、待って、置いてかないで!」

 

「ぐおっ!?」

ロープ引っ張らないで!ロープが太くて頑丈だから、腹に食い込んで痛い。というか、解いて?あっ、これ、もやい結びだ。解けないや。仕方ない、切ってもらうか。けど、ハサミやカッターじゃ切れない。仕方ない、妖精さんに頼むか。工廠に行こう。だから早霜、ロープを掴む手を離して?えっちょ、何してんの?余った部分を自分の胴体にもやい結びで結び付けてる。あ、あの、早霜さん?

 

「うふふ……これで、司令官は私から離れない……ふふふふふっ……」

 

パッと見、拘束プレイしているみたいだ。物凄い犯罪臭がします。これ、何も知らない第三者が見たら、絶対勘違いされる。どうしよう?妖精さん達に頼みたいけど、それには工廠へ行かなきゃならない。行く為には、早霜と一緒じゃなきゃダメ。行く途中、誰かに見られたら確実に勘違いされる。助けを呼びたいが、俺のスマホは部屋に置いてきてしまった。どうしよう?

 

「助けを呼ぶ気ですね?ダメですよ。ふふふふっ……」

 

「」

くそっ、思考が読まれている!こら、迫るな!手をワキワキさせないで!こうなったら強行策だ!早霜をお姫様抱っこして、工廠に駆け込む!抱っこすれば、何もしてこない筈だ!(←錯乱気味)

誰かに見られても、構わず工廠に駆け込む!ロープを解いてもらった後、理由を話して誤解を解けばいい!行くぞ!

 

「司令官?えっ、キャッ!?」

 

すまん、早霜、許してくれ。素早く抱き抱え、部屋を出る。頼む、誰にも見つからないでくれ!工廠へ向かって走る!走る!!この角を曲がって真っ直ぐ進めば、工廠だ!勝ったぞぉ!

 

「あら、提督、どうかし…た……」

 

「あ、矢矧」

あと少しで工廠だったのに、矢矧と遭遇してしまった。

立ち止まる俺。矢矧、真顔。早霜、恍惚とした表情をしている。ここから導き出される答えは。

 

「……そういうのが趣味だったのね」

 

「違います」

誤解されました。えぇい、誤解を解くのは後だ。今は工廠に行って妖精さん達に何とかしてもらおう。

再び走り、工廠へ向かった。この後、無事ロープは妖精さん達の手で切ってもらった。流石、妖精さん達。あの太いロープを簡単に切断出来るとは。今度、お礼にお菓子を差し入れするね?さて、矢矧の誤解を解きに行きますか。……あの、早霜?その手に持ってるの、何?手錠?

 

「司令官、私を置いていかないで!雷怖い!」

 

「誰か、他の娘の所に行きなさい」

俺じゃなくても良いでしょ?あっ、こら、手錠かけようとしない。やめなさい。やめて、やめろォ!?

 

 

………………。

 

 

 

「ひでぇ目に遭った」

あの後、早霜に追い掛けられながら、矢矧の所に向かって誤解を解いた。最初は疑われたが、早霜の尋常ではない怯え方を見て納得してくれた。そして、早霜を預かってくれた。流石、矢矧。オカン系艦娘の名は伊達じゃない。アイツ、面倒見良いんだよな。

 

「……おっ、降ってきた」

雨戸から、雨の当たる音が聞こえてきた。激しい雨だ。それと同時に、雷鳴も聞こえてきた。まだ遠いな。さて、懐中電灯を用意しておくか。

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


先日の雨と雷、激しかったわね。舞鶴よりも激しい。けど、嫌いじゃないわ。なんて言うの?夏の風物詩、って感じがする。
……えっ、提督、夕張さんと買物に出かけるの?以前約束したから?そうなの。ちなみに、何処に行くの?…秋○原?へぇ、面白そうじゃない。良ければ私も行っていい?くじ引きの結果次第?分かったわ。


第51話・休養その5


「なんだ、エ○ゲですか」
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