追跡鶴   作:EMS-10

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気が付けば投稿から丁度3ヵ月が経過。時間の流れって早いね…。
この作品がここまで続けられているのは、皆様のお陰です。本当にありがとうございます。



第55話・休養その9

 

side 提督

 

 

現在時刻、14:30。気温38℃。

 

 

 

雲一つない空。これでもか!って位に激しく自己主張する太陽。直射日光がヤバい。日焼け止め塗らないで太陽の光を浴び続けたら、あっという間に小麦色の肌に焼けるな。あと、気温が高過ぎる。時々身体を冷やしたり、水分補給をしないと倒れそうだ。

約1時間前、紗奈(時雨)を介抱しようとしたら何度も裏拳を喰らわされて、顔がアン○ンマンみたいに真ん丸に腫れたが、経○秘孔を突いて腫れを治したから、今は何時もの顔に戻った。紗奈の顔が耳まで真っ赤だったから熱中症になったかと思ったが、(鈴谷)が言うにはハプニングが起きて赤面していたとの事。何が起きたんだ?と聞こうと思ったが、全員が視線で「聞くな」と睨んできたからそれ以上聞かなかった。

いい時間だったから昼食を買って皆で食べた。この後も泳ぐから、軽めにしておいた。そして食べ終わって休憩した後、再び泳ぎに行くことにした。

 

「さて、また泳ぎに行ってもいいが、水分補給はしっかりしろよ?いいな?」

 

「「「「「「「「はーい」」」」」」」」

 

全員返事をしてくれた。そういや今更だけど、日焼け対策とか大丈夫?聞くと、どうやら更衣室で着替えた際、塗ってきたそうだ。皆が使った日焼け止めは、妖精さん達の素敵技術が込められた特殊な物らしい。なんでも、身体に塗って水に入っても落ちない、成分が水に溶けない、凄いものらしい。落とすには、市販のボディーソープを使えば良いらしい。

 

「んじゃ、俺は引き続き荷物を見張ってるから、行ってきな」

祀利(葛城)も、行ってきな。俺は1人でも大丈夫だ。思い切り楽しんできな。

……何で行かないの?ほら、行った行った!

 

「あ、あの、僕が荷物番をするよ」

「ちょっと疲れたから、璃奈(秋雲)さんも荷物番ついでに休むわぁ〜。だから、らっせー(渡良瀬)さんは泳いできて?」

 

「そ、そうか」

紗奈と璃奈が荷物番をすると言ってくれた。少し申し訳ない気がしたが、甘えよう。

 

「それじゃ、頼む」

 

「任せて」

「しっかり見張ってるから安心して〜?」

 

2人に荷物を任せて、俺は皆とプールへ向かった。次は何処で泳ごう?

 

 

…………。

 

 

「……凄いな」

目の前のプールから激しい波の音。そして利用しているお客さん達の楽しそうな声。時々悲鳴が聞こえる。

俺達は今、激流プールの前に居る。ちょっと待って、激流過ぎない?大丈夫か、これ。少しだけ不安になる。いや、俺は泳げるよ?泳げるけど、皆は大丈夫なのか?視線で問うと、全員大丈夫だと頷いた。

 

「ほら、行きましょう?」

 

「お、おう」

祀利に手を引かれ、激流プールの出入口──ハシゴの前に向かった。入る前に軽く準備体操をして、水を身体にかけてから入ろう。

屈伸したりアキレス腱を伸ばして、よし。次は水を身体にかけて……冷てぇ!?けど気持ちいい。準備は出来た。

 

「渡良瀬さん、行きましょう!」

「溺れないでよ?」

 

「あいよ」

陽菜(陽菜)と祀利の方こそ、溺れるなよ?ハシゴを降りて、プールの中に入って──ぬおおおっ!?流れが強い!しかも結構深い!俺の腰より上までの深さがある。こりゃ、お子さんにはキツいだろうな。

 

「あははは!楽しい!!」

「な、流れが結構強いですね?」

「流れに逆らって泳げば、いいトレーニングになりそうね」

 

流れに身を任せていると、楽しそうに笑う佳代(夕張)と、浮き輪に乗って少しだけ不安そうにしている善子(初霜)の声が聞こえた。そして香苗(矢矧)、君は真面目だから逆走なんてしないと信じているが、変なこと言うなよ。

 

「とっても楽しいです♪」

「最高〜♪」

 

陽菜と(鈴谷)は気持ちよさそうな顔して流されている。おーい燈、頼むから水着を流されるなよ?お前の水着、この中で一番流されやすそうな形をしているから、本当に気を付けてくれ。

それにしても気持ちいい。力を抜いて仰向けになって漂っているだけなのに、何でこうも気持ちがいいのだろう?それにしても太陽の光強いな。目を閉じているのに眩しい。

 

「えいっ♪」

 

「ごぼっ!?」

ぐわああああ〜!?気持ち良く漂っていたのに、顔に水かけられたあああああ〜!!?誰だ、俺の顔に水をかけた奴は!鼻に水が入ったぞ?慌てて起き上がり周りを見ると、いたずらっぽい笑みを浮かべた祀利の顔が視界に入ってきた。お前かぁ…。

 

「顔が暑そうだから、水をかけてあげたの」

 

「だからって、いきなり顔に水をかけないでくれ……」

下手したらパニックになって溺れる所だったぞ?

 

 

 

………………。

 

 

 

「次はあそこに行きませんか?」

「いいよ〜?」

「行きましょう!」

「結構波が高いわね」

「サーフボードを借りる事が出来るみたいですね」

「面白そう!」

 

激流プールを1周した俺達はプールから出て、陽菜が波のプールに行かないかと提案した。それに燈と佳代が賛同し、香苗が波を見て感想を言った。そして善子がサーフボード貸出所を見付け、祀利が目をキラキラさせながら面白そうだと言った。

波のプールは波が弱め、普通、強め。そしてサーフィンが体験出来るプールの4つがある。まずはどれから行こう?慣らす為に波が弱めの所からにしようかな?皆は……あっ、それぞれの所に行っちゃった。

香苗と佳代は波の強さが普通の所。陽菜と燈は強めの所。善子と祀利はサーフィンが出来る所へ行ってしまった。俺はどうしよう?

……。

よし、強めの所にしよう。あの2人(陽菜と燈)は何かやらかしそうな気がする。他の4人は俺の中では比較的まともだし、何かやらかそうとすれば、香苗や善子が止めてくれる。今日のメンツは本当に平和だ。2日目のメンツは麻耶(摩耶)(木曾)のストッパー役が居る。しかし3日目。香織(海風)以外、全員ヤベー奴なんだよなぁ。最近涼子(涼月)はまともになってきているが、完全じゃない。ふとした拍子で暴走するかもしれん。……少しだけ胃が痛くなってきた。

 

「おーい、らっせー(渡良瀬)、しけた顔してないで、楽しもうよ!」

「早く行きましょう!」

 

「お、おう」

おっと、イカンイカン。考え事をするな。燈と陽菜に急かされ、波が強めのプールに向かって歩いて行った。

 

「おー、高いねぇ〜」

「水着が流されないよう、気を付けましょう」

 

「これは……凄いな」

さっきから凄いしか言っていないな。誰か語彙力ください。

俺達の目の前には、一定周期で人工的に作られた高い波が行ったり来たりしている。この波のプールだけ出入口が緩やかに傾斜していて、奥に行けば行くほど深くなっている。まるで海のようだ。さて、行くとしますか。

2人が俺の前に居て、その後に俺が続いて少しずつ奥に向かって歩いて行くが、

 

「わぷっ!?」

「きゃっ!?」

 

「大丈夫か?」

波に足を取られたのか、2人は転倒してしまった。幸い、ここのプールの底は少し柔らかいゴム製?みたいな素材で出来ているから、例え転んでもダメージは比較的少なくて済む。ほら、掴まりな?

 

「あ、ありがと……」

「すみません、お手数お掛けしてしまって……」

 

気にしなくていい。ほら、しっかり掴まれ。少しだけ屈んで、右手で燈を、左手で陽菜の手を掴み立たせようとした──直後、再び波が襲ってきた。しまった!

 

「うわぁ!?」

「ひゃああ!?」

 

「うおっ!?」

波に押されて、燈と陽菜が俺に覆い被さってきた。……あれ、なんか、柔らかい物が腹に当たってる?当たってるね。なんだろ、とっても柔らかい。

 

「……あ」

波が引いて2人の姿が見えた。2人とも、俺の胸の上に居る。

さて、冷静になろう。傍から見たら、美女2人に押し倒されているように見えるね。うん。これはマズいね。近くにお子さんも居るから、教育上大変よろしくないですね。早く離れましょう。

 

「「……あっ」」

 

2人も今の状況に気付いたみたいです。ほら、早く離れて?離れなさい?

 

「ご、ごめん!」

「すみません!」

 

謝罪はいいから、早く離れてください。あっ、プールサイドから小学生位の男の子がこっちみてる。おーい、君にはまだ早いよ?あと十数年経ってからにしなさい。ほら、燈と陽菜、早く起き上がって?急がないとまた波が来──すぐそこまで来てるゥ!?あっ、あっ、あっ、間に合いませんね。再び俺達は波に呑まれる。ウボァー!?仰向けだから、鼻に大量の水が侵入して来やがった!痛い痛い!昔、プールの授業の時のことを思い出すなぁ……思い出してる場合じゃないよ!早く起き上がらないと!ああっ、柔らかい……じゃねぇよ!起きろ!起きるんだ!

 

「オラァ!!」

気合を入れ、2人を抱えて起き上がる!ほら、波が来る前に体制を整えるぞ。……あ、あれ?あ、あのぉ、燈さん?水着が、その、あの……大変なことになっていますよ?上の水着の俺から見て左側の肩紐が解けてるよ?右側の肩紐も、今にも解けそうだ。このままだとポロリして、運営さんと憲兵さんがドーモして来る。それはマズい。非常にマズい。どうする?そうだ、陽菜のパレオで隠せばいい!──ヤバい、波がまた来てる!

 

「パレオ!パレオで前隠して!早くっ!」

 

「ッ!燈さん、これを!」

 

「へっ?あっ、あああああ!!」

 

俺の指示を聞き、陽菜は察してくれたのか、自分が着ているパレオを脱いで燈の上半身に掛け、燈は自分の水着が脱げそうになっていることに気付いたのか、顔を真っ赤にして悲鳴をあげた。

 

「ちょっ、見ないで!マジ恥ずかしい!!」

 

すまん、見ちまった。こりゃ後でビンタか瑞雲ラリアット(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)の一つや二つされるな。

燈は陽菜に掛けられたパレオで上半身を隠したまま急いで波のプールから離脱した。幸い、波が来る前に逃げられたから、惨劇(ポロリ)は避けられた。

 

 

 

………………。

 

 

 

「マジ、テンション下がるぅ…」

 

「だ、大丈夫ですか?燈さん」

 

「う〜…見られた……」

 

「……すまん」

燈の奴、物凄い落ち込んでる。事故とはいえ、不快な思いをさせちまった。本当にすまん。

あの後、燈は一旦更衣室に戻り、水着を結び直して戻ってきた。そして陽菜から借りたパレオを返し、近くの日陰が出来ているプールサイドで休憩をしていた。

香苗や佳代、善子と祀利は夢中になって遊んでいるからか、俺達にトラブルが起きたことを知らない。

 

「……はぁ、脱げなかっただけ良かったけど、もし脱げてたら…」

 

「ぬ、脱げてたら?」

 

らっせー(渡良瀬)を含めて、GAX-ダイ○ソアで周りの男性達を蜂の巣にしてたよ」

 

「やめてください」

あっぶねぇ。プールサイド、血に染めて。になる所だったよ。つーか、そんな物騒なモン(ガトリング砲なんて)使おうとするな。瑞雲ラリアットにしておきなさい。

 

「はぁ〜……なんか泳ぐ気が無くなったから、荷物番してくるよ」

 

「お、おう……」

燈の落ち込み具合が半端じゃない。何やってんだよ、楽しんでもらう為にここ(プール)に連れて来たのに、落ち込ませてどうする。

 

「あー、らっせーのせいじゃないから、そんな顔しないで?」

 

気を遣ってくれたのか、そう言ってくれた。ありがとう。お詫びってわけじゃないが、今度一緒にサバゲー用品見に行こう。

 

「んじゃ、楽しんできて?あっそうそう。さっき起きた事は誰にも言わないで?」

 

「分かりました」

 

「分かった」

絶対言わない。そして忘れる。だから安心してくれ。ゆっくりと俺達の荷物がある休憩スペースへ向かって歩く燈を、俺と陽菜は見送った。

……この後はどうしよう?波のプールで遊んでる4人の様子でも見ようかな?

 

「あの、渡良瀬さん」

 

「どうした?」

 

「その、祀利さんと善子さんが……」

 

「祀利と善子がどうした?」

サーフィンが出来るプールを見て苦笑いしてる。なんか人が多いな。嫌な予感がする。

 

「大技決めて注目されています」

 

「何やってんの、あいつら……」

大技ってなんだよ。サーフィン詳しくないから、どんな技があるか分からんが、見れば分かるか。サーフィンが出来るプールに視線を向けると───

 

 

「あはははは!楽しい!!」

「最高にロックです!!」

 

 

「何やってんのォ!?」

祀利が善子を肩車してサーフィンしてた。君達ホントに何やってんの?バカなの?(バカ)なの?あっ、良い子も悪い子も決して真似しないでください。身体能力が高い彼女達(祀利と善子)だから出来る芸当です。

……周りのお客さん達、スマホ構えて写真撮ってるよ。関わりたくねぇ。他人のフリしよ。あと善子がなんかとんでもないことを口走った気がするが、モ○ダー的疲れにより幻聴を聞いたんだろう。準、あなた、疲れてるのよ。

 

 

「「イイィィィィヤッフウウウウゥゥゥ!!!」」

 

 

知らない。ぼく、奇声を上げながらサーフィンする祀利さんという名前の女性と、善子さんという名前の少女なんて知らない。

 

「楽しそうです!渡良瀬さん、陽菜もやりたいです!」

 

「やめてくださいお願いします」

君まで暴走しないでください。しかし、俺の願いも虚しく、陽菜はサーフィンをしに行ってしまった。もう嫌や。おうち帰る。

 

 

 

………………。

 

 

 

現在時刻16:50。

 

 

おバカ達(祀利と善子と陽菜)のせいで、サーフィンが出来るプールはギャラリーが沢山集まっていた。それもそうだ。見目麗しい美女・美少女が大技を決めているのだから。俺?勿論見学しないで逃げた。そして香苗と佳代の所に行って一緒に遊んだ。嗚呼、この2人は平和だ。普通に泳いで波に流されたり、常識的な会話をしたり。癒しだ。癒し枠だ。今日からこの2人を癒し枠に入れよう。残念ながら善子、君はブラックリスト入りだ。本当に残念だよ。祀利もブラックリスト入りだ。陽菜?元からブラックリスト入りしています。

あの後、おバカ達(祀利と善子と陽菜)に軽く注意しておいた。はしゃぎたい気持ちは分かるが、ハメを外し過ぎだ。

俺に注意された3人は素直に反省し、今後はしゃぎ過ぎないよう気を付けると言ってくれた。反省してくれて良かった。反省しているのなら、これ以上は何も言わん。

説教をしたあと、何度か泳ぎ、休憩を挟んだり、荷物番を交代したり、再び泳いだりした。そして気が付けば夕方になっていた。電光掲示板に表示されている気温を見ると、30℃近くある。しかし雲が出てきて太陽を覆ってくれているから、そこまで暑く感じない。

……えっ?俺は今、何をしているかって?バカ一号(祀利)と一緒に行動している。何故かって?皆疲れて休んでいるんだ。けど、自称体力お化けの祀利は「もっと泳ぎたい!」と駄々をこねた為、付き合っている。君、水泳やっていたから持久力なら誰にも負けない!って言ってたね。あの香苗よりもタフとは、驚いたよ。それに、自慢じゃないが俺もそこそこ持久力があると自負しているが、疲れた。祀利、お前凄いんだな。

 

「最後にアレやらない?」

 

「おう、いいぞ」

25mプールで一緒にひたすら泳ぎ、飽きたのかプールから出て一休みしていたら、祀利がこのプールの目玉であるウォータースライダーを指さしてそう言ってきた。

ウォータースライダーか。さっきまで混んでいたが、今は全く並んでいない。どうやら県外から来たお客さんが多かったらしく、16:00頃から空き始めた。ちなみに、ここの施設は18:00までの運営となっている。着替える時間を考えたら、ここ辺りで終わりにした方がいいな。

 

 

…………。

 

 

「へぇ、高いわね」

 

「高所恐怖症の人間には無理だな」

柵から少しだけ顔を出し、下を見る。意外と高い。仁美(阿武隈)がこれを見たら、確実に泣くな。あいつ、高所恐怖症だし。

 

「あっちのウォータースライダーもやりたかったけど、仕方ないわね」

 

どうやらウォータースライダーが利用出来るのは17:00までらしい。祀利は両方を利用したかったが、片方を利用したら利用時間を過ぎる為、どちらか片方しか遊べない。少し悩んだ末、祀利は滑り台状のウォータースライダーを選んだ。

 

「ねぇ、競走しない?」

 

「競走?」

 

「うん。どっちが先に滑り終えるか勝負よ」

 

「いいぜ」

滑り台は体重がある人のほうが、軽い人より最高速が出るから有利だ、って聞いたことがある。見たところ、祀利はかなり軽そうだ。勝ったな。

2つある滑り口の片方に座り、祀利の方を見る。準備出来たみたいだ。

 

「それじゃ、スリーカウントで行きましょう?」

 

「分かった。3、2、1──」

0。

俺がカウントをし、ゼロと言ったのと同時に俺と祀利は勢いを付けて滑った。は、速い!かなり速度が出てる!少し怖い。ブレーキかけたいけど、手摺に手を当てたら確実に摩擦で火傷しちまう!どうする?足でブレーキかけてみるか?水が流れているから、そこまで摩擦で熱くならない筈。上手く足を使って減速。よし、速度が落ちてきた。隣を見ると、祀利は減速せず、かなりの速度を出して滑っている。怖くないのかよ。

俺が驚いている間に祀利は一切減速せず、そのまま勢いよく滑って行き着水した。おいおい、大丈夫か?かなり強く着水したぞ?身体を強打していないよな?

祀利が着水して数秒後、俺も着水。

 

「──ぶはぁ!」

水中から顔を出し、呼吸。いやー、少し怖かった。さて、水から上がって皆の所に帰ろう。祀利、何処だ?居た。……おーい祀利さん、君、ショートパンツ穿いてないよ?脱げたの?

 

「……脱げちゃった♪」

 

脱げちゃった♪じゃないよ。恥じらいなさい!嬉しそうな顔しながらこっちに来ないでください!ああもう、色々ヤベーよ!君の水着、上は普通の布面積だけど下はヤベーんだよ!かなり細いんだよ!アレ(Tバック)なんだよ!

……。

……。

あっ、イカン、思わず見ちまった。

 

「そ、そんなに見たいの?いい……よ?」

 

上気した頬。潤んだ瞳。明らかに発情している雌の顔をしている。……いい。

……いやいや、ダメだろ。しっかりしろ、俺。

 

「あなたになら…ナニされても、構わないわ?」

 

「お、おい」

近寄るな!上は大丈夫だが、下が着水の衝撃でかなりズレてるんだ。えぇい、何処だ!ショートパンツは何処に流された!早く探さないと!もし見付からなかったら、祀利の下はアレ(Tバック)のまま。ドスケベ下半身を露出したまま皆の所に戻るハメになる。そうなったら、周りのお客さん達や(艦娘達)に確実に誤解される。

 

「ねぇ、私を見てよ?」

 

見ません。君もショートパンツを探しなさい!俺以外にもお客さんが居るんだよ?……あっ、何故か周りに誰も居ない。何で都合良く人が居ないんだよ!

 

「んふふっ♪」

 

祀利さん、妖艶な笑みを浮かべてる暇があるならショートパンツを探しなさい。あっ、こら、撓垂(しなだ)れ掛かるな!……柔らかい。

………………。

…………。

…。

いいぜ。そっちがその気なら、付き合ってやるよ。

俺はゆっくりと左手を祀利の首に巻き付け、抱き寄せる。

 

「んっ……」

 

甘い吐息を吐く祀利。俺はゆっくりと、右手を祀利の股に伸ばして─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶるあああああぁぁぁああああっっっ!!!」(CV:杉○智和)

 

 

「ぐえっ!?」

 

 

風見瑞稀(瑞鶴)直伝、ノーザンライトボオオオォォォォムッッッ!!!

渡良瀬選手、決めたあああああああああああぁぁぁぁッッッ!!!

見事なノーザンライトボムだああああああああああああっっっ!!!

祀利選手、ダウウウウウウウウウウウウウウウウンンンッッッ!!!

おおっ、渡良瀬選手、どうやら絶妙な力加減で祀利選手を水面に叩き付けたようです!!!プールの底には叩き付けていません!!!

その為、祀利選手の頭部に、たんこぶ等の傷は出来ていません!!!

さて、ノーザンライトボムを喰らった祀利選手は、水面に上半身を埋め、2本の足を天に向かって高々と突き上げているうううううぅぅぅ!!!

犬○家の一族状態だあああぁぁぁぁ!!!

……正気に戻れ、俺。プロレス風の解説を脳内でしている場合じゃない。さっさとショートパンツを探そう。……あった、プールサイドの近くに漂ってた。急いで拾おう。…よし、拾えた。あとはこれを祀利に穿いてもらって──

 

 

「あ〜な〜た〜!!!」

 

 

なんか、すっごく怒った祀利の声が聞こえた。気のせい気のせい。

 

「何でノーザンライトボムかましたのよ!あそこは私を【自主規制】して【自主規制】する所でしょ!」

 

「お黙り!」

大声で卑猥な単語を叫ぶんじゃありません!慎み持ちなさい!いいから、さっさとショートパンツ穿いて?ほら、君のショートパンツだよ?……早く受け取ってよ。

 

「あっそうだ、あなたが穿かせて?」

 

「お断りします」

いいから自分で穿きなさい。

 

「なんでよ!せっかくのチャンスよ!あなたの大好きなくびれや下半身に()れられるのよ?」

 

「黙らっしゃい!」

触りたいよ!けど、そういったことは安易にしちゃダメなんです!いいから自分で穿きなさい!

しかし、祀利はショートパンツを受け取ろうとせず、穿かせてくれと頼んできた。ああもう、いい加減にしなさい!

結局、時間が迫っていたから必死に説得(ノーザンライトボム)をして、自分で穿いてもらった。お陰で、鎮守府に帰るまで物凄い不機嫌そうな顔をされた。

……俺とそういうことをしたい、って言ってくれるのは嬉しいけど、今は(・ ・)ダメだ。我慢してくれ。

 

 

 

 

………………。

 

 

 

ウォータースライダーを滑り終え、祀利にショートパンツを穿いてもらったあと、俺達は皆が待つ休憩スペースへ向かった。そして帰宅することにした。

パラソルとブルーシートを片し、荷物を幾つかに分けて運んだ。そして、それぞれの更衣室に向かった。

 

(……ムラムラしっぱなしだ)

真水のシャワーを浴びてプールの塩素を落とし、男性更衣室で着替えながら、アホなことを考えていた。

かれこれ数ヶ月、発散していないから変な気分になりやすい。どうしよう?鎮守府に帰ったら自室でこっそり発散するか?けど、誰か──特に瑞稀辺りに見付かったら、エラいことになる。あいつ、未だ盗聴器を設置しているみたいだし。

……いかん、早く着替えないと皆に迷惑をかけちまう。それに、このあと車を運転するんだ。頭を切り替えろ。考え事をするな。

 

 

 

──────────────

 

 

 

──第603鎮守府、提督私室──

 

 

現在時刻、20:00。

 

 

「これで良し」

プールから鎮守府に戻り荷物を運び、夕食を摂ったあと、外に出てパラソルを広げ、壊れてる箇所が無いか点検をした。あれだけの直射日光を受けたんだ、太陽光で何処か溶けたり歪んだりしていないか不安だった。しかし、流石妖精さん達が作ってくれたパラソル。特殊コーティングが施されているから、どこも破損していなかった。点検を終え、折り畳み、ケースに入れる。さて、部屋に戻るか。

 

……。

 

「これで良し」

着替えとかタオルを用意して、カバンに入れる。水着だが、既に洗って乾いている。最近の水着は濡れてもすぐ乾く素材で出来ているから、便利だ。あと、夜でもこの気温──28℃以上ある──だから、外で干せば1時間もかからず乾いてしまう。

 

「明日は今日以上に騒がしくなりそうだ」

明日のメンツは、瑞鶴、山城、摩耶、足柄、木曾、満潮、早霜、夕立の8名。一番の要注意人物は足柄だな。何故かって?あいつ、普通の状態なら常識的な言動を取ってくれるが、アルコールが入ると途端にダメになる。下ネタ連発するわ、逆セクハラしてくるわ、キス魔になるわ。とにかくアグレッシブになる。例えるならモ○ハンフロンティアに登場する、キレたエ○ピナス。分からない人は「モン○ン エ○ピナス」で検索。動画を見てくれ。いや、もしかしたらラー○ャンかもしれん。いやいやいや、間をとってティ○レックス……いやいやいや、更に間をとって─────

 

……アホなことを考えるのをやめよう。とにかく、

 

「アルコールを摂取しないよう、しっかり監視しておくか」

売店にビール売ってたから、買わせないようにしよう。あと、クーラーボックスや足柄のバッグに缶ビールや日本酒とか、アルコールを入れていないかしっかり確認しよう。もし入れていたら、鎮守府に置いていく。お留守番させる。

 

「ノンアルコールビールなら、許そう」

これは売店に売っていた。飲みたいと騒いだら、買って飲ませてやろう。……ん?メール?充電器に繋いでいたスマホが振動した。誰からだ?時雨からだ。何だろう。写真付きだ。メールの内容は、「自由に使って」と書かれている。自由に使って?何をだ?疑問に思ったが、とりあえず添付された写真を開いてみるか。

……。

……。

 

「俺は何も見ていない」

背景にウォータースライダーがあり、滑り終えた直後なのか全身ずぶ濡れになっていて、下の水着が脱げていて雑草一本生えていない時雨の肌なんて見ていない。俺は何も見ていない。……だから凝視するな。

 

「……そうだ、忘れよう」

確か、翔鶴から没収したスタンガン(ス○ナーK)があったな。フルチャージで頭に電流を流せば、忘れるだろう。チャージ開始。めっちゃバチバチ言ってる。これなら記憶を飛ばせそうだ。なんか廊下から足音が聞こえてきた。

 

「てっ、提督!?」

 

おや、時雨。慌ててどうした?というか、ノックしましょう。最低限のマナーですよ?おっ、フルチャージ出来たみたいだ。顔面にスタンガンを向けて、スイッチを押そう。

 

「えっ?ちょ、提督!?」

 

「そぉい」

スイッチON。直後、俺の顔面に向かって凄まじい電流が放出された。

 

 

「ぶるああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああっあっっっああああ!!!!」

 

 

「提督〜〜〜〜ッッッ!!?」

 

 

うへぇ、凄い電流だ。痛い。なんか、視界が暗くなってきた。それに、さっき時雨の悲鳴が聞こえた気がした。

……あ…………なに……も……見…………。

 

…………。

……。

…。

 

 

sside 提督 out

 

 

───────

────

 

 

 

side 時雨

 

 

──第603鎮守府、時雨・夕立私室──

 

 

「…………」

僕のスマホに、例の写真が映されている。

ウォータースライダーを滑ったあと、水着が脱げてしまい、その瞬間を鈴谷さんに写真で撮られてしまった。鈴谷さんが言うには、故意ではないとのこと。滑り終えて水から上がった瞬間を撮ろうとしたら、こうなってしまったらしい。

鈴谷さんに自分で削除すると言ってカメラを受け取ったけど、何故か勿体無い気がした。これを提督に見せれば、もしかしたら意識してもらえるかもしれない。そんな欲が湧き、削除しないでこっそりカメラのSDカードからデータを自分のスマホに送った。そして今、この写真をメールに添付して「自由に使って」と文字を打ち、提督に送ろうとしていた。

だけど。

 

(冷静に考えてみたら、悪手かもしれない)

提督はあまり下ネタが得意じゃない。決して興味が無いわけじゃないみたいだけど、強引に迫られるのが苦手だ。だから、これを送ったら意識してもらえるどころか、逆に距離を取られてしまう恐れがある。

 

(……やめておこう)

焦る必要は無い。ゆっくり、時間をかけてアピールして意識してもらえばいい。そうしよう。メールを削除しようと、削除ボタンに指を伸ばし──

 

「うっわ、エロ」

 

「でゅるわぁあああああぶるわっひゃあひゃひゃひゃひゃどぅるわっはあああああああああぎゃあああああうわああああああああ!!!!??」

誰ッ!?ここには今、僕しか居ないのに!?

慌てて声の聞こえた方──背後を振り返ると、真顔の夕奈(夕立)が僕のスマホを覗いていた。夕奈!?いつの間に!!?まだお風呂に入っていたんじゃないの!!!??

 

紗奈(時雨)って、露出狂だったんだ……」

 

「ちっ、違うッッッ!!!」

僕はノーマルだよ!露出狂なんかじゃないよ!そんな趣味無いよ!!!ドン引きしないで!!!

 

「あれ?メール送信してるよ?」

 

「……へっ?」

はははははは、そんなバカなことがあるわけ──

 

 

【メールを送信しました】

 

 

「」

僕のスマホの画面に、「メールを送信しました」の10文字が表示されていた。送信先は提督。

あはははは。あははははははははは!!!

 

「紗奈、どんまいっぽい」

 

「ふざけるなあああああああああぁぁぁッッッ!!!」

やっちゃった!やっちゃったよ!削除しようとしたのに、夕奈に声をかけられて驚いた拍子に、間違って送信しちゃったよ!!君のせいだ!夕奈、君が僕に声をかけたせいで!!!

 

「送っちゃったのは仕方ないっぽい。諦めるっぽい」

 

「諦められるかァ!」

提督に痴女認定されちゃうよ!そ、そうだ、急いで提督の所に行ってメールを見ないようお願いすればいい!

 

「ぽいっ!?」

 

夕奈を押し退け、急いで提督の部屋に向かう。お願い神様、仏様!間に合って!

廊下を走る。

走る。

走る!

──見えた!提督の部屋だ!!

 

「てっ、提督!?」

慌ててドアを開けて入室。本当はノックをするべきなんだけど、緊急事態だから許して?……あっ、提督、スマホを持ってる。画面には、僕の下半身が露出している画像が映されている。

……間に合わなかった。

ううっ。確実に痴女認定されちゃったよ。神様、仏様。覚えておいて。絶対に許さない。絶対に。

……あれ?提督、それ、翔鶴さんから没収したスタンガンじゃない?そんな物騒な物を持ってどうしたの?えっ?チャージし始めた。それを自分の顔に向けている。

 

「えっ?ちょ、提督!?」

ま、まさか、それ、自分の頭に当てる気じゃ無いよね?ダメだよ!そんなの浴びたら、死んじゃうよ!急いで止めないと!

 

「そぉい」

 

……あっ、提督がスイッチを入れて自分の頭に電流を流しちゃった。

 

 

「ぶるああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああっあっっっああああ!!!!」

 

 

「提督〜〜〜〜ッッッ!!?」

モ○ルスーツじゃなくて、右足が万能な方のバ○バトスみたいな断末魔を上げてるうううう!!?

……あっ、倒れちゃった。て、提督!しっかりして!提督〜〜〜ッッッ!!?

 

 

side 時雨 out

 

 

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────

 





次回予告


……時雨さんの雑草一本生えていないお肌を見れて、嬉しかった?
……へぇ、そう。
……私のも見てみる?えっ、いい?分かったわ、今脱ぐわ。
肯定の「いい」ではなく、否定の「いい」だって?遠慮しなくていいのよ?ほら、翔鶴お姉ちゃんのを見て!
あっ、こら、逃げないで!!


第56話・休養その10


「日焼け止め塗って?あっ、前もお願い♪」




※皆様、熱中症や脱水症状には充分注意してください。
油断すると死にます。
夜はクーラーをつけて寝てください。電気代はかかりますが、命と比べれば安いです。

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