昔から、アグレッシブだった。
お母さんに「性別間違えているんじゃないの?」って、よく言われたなぁ。
別にいいじゃん。法や倫理に反してるわけじゃないんだし。
アグレッシブな少女
─第603鎮守府、執務室─
「ね~ぇ~、提督ぅ、退屈なんだけどぉ?」
「んな事言われてもなぁ…」
「此処周辺、なんにも無いじゃん!」
あるのは海と山。自然しか無い。近くにカラオケやゲーセンといった娯楽施設は無い。江ノ島鎮守府から異動する前、藤原提督に田舎だから娯楽が少ないぞ、って言われたけど、まさかここまでとは思わなかったよ。都会派の私にゃキツい。虫も多いし、時々スマホの電波が届かなかったり。まぁ、
「分かった。今度の休み、隣県のショッピングモールに連れて行ってやるから、大人しくしてくれ」
「おっ、マジ?」
「マジ、だ」
「やっりぃ♪」
隣県のショッピングモールって、日本最大級のあそこじゃん!しかも、
「ほら、仕事するぞ」
「へ~い」
彼、渡良瀬提督に仕事するよう言われ、書類に目を通す。
(顔は普通なんだけど、性格が今時珍しい紳士なんだよねぇ)
色んな男の人と接してきたけど、彼程の紳士は居ないと思う。
「…ん?どうした?」
いっけない、見てるのバレちゃった。
「何でもない」
他人の評価を殆どアテにせず、自分の目と耳で見聞きしてから決める。ホント、珍しい人だなぁ。あと、カラダをジロジロ見てこない。最初、同性愛者なのかな?って思ったっけ。試しに一度からかって胸を押し付けたら、めっちゃ慌ててたなぁ。
(ウブ過ぎでしょ)
だから、彼女なんて居ないと思っていたんだけど。
(
提督になった理由を、養成所で聞かされた時は思わず声出して笑ったなぁ。
【Page:SUZUYA】
─7年前、某所─
「へぇ、また新作出たんだ」
学校の部室で友達から教えられた。また新作出たんだ。
「そうそう。ベ○ッタから、緋弾のア○ア・キ○ジモデルが出たんだって」
「しかも、色と形まで全く同じときた」
「でも、お高いんでしょう?」
バイトしてるけど、こればかりは入手出来ないかもしんないや。諦めようかな?
「諭吉さんが十数人以上犠牲になる事は確実だな」
「うわぁ、無理だ…」
値段を知って皆絶望してる。
あ、そうそう、私が所属している部活─正確には同好会だけど─は、武器研究会。表向きは古代から現代までに作られた武器等を研究する物なんだけど、実際はただのサバゲー同好会。
私、昔テレビで見た洋画の影響で、銃が大好きになって、それ以来サバゲーをするようになったんだ。
でも、お母さんに「危ない」「女の子がする趣味じゃない」とか言われてやめるよう何度も注意された。
『別に、女がサバゲーやっちゃダメって、法律で決まってないじゃん。それに、充分注意して遊ぶから、危険じゃないし』
私がそう言い返したけど、お母さんは納得してくれなかった。お父さんは理解してくれたんだけどなぁ。
『そんなにやりたいなら、今度の期末テストでいい成績取りなさい』
ヤケになったお母さんは、怒りながらそう言ってきた。だから猛勉強して期末テストで学年2位を取ってやった。結果を見せたらお母さん、苦虫を噛み潰したような顔して認めてくれたのを今でも覚えてる。ちなみに、1位は双子の妹だった。昔から頭いいんだよねぇ。それに、
(従姉妹の影響で、お嬢様キャラ作ってるし)
従姉妹のお姉さん─2人居て、次女の─影響で、お嬢様キャラ作っている。最初はバカにしてたけど、段々振舞いが本当のお嬢様みたいになって、今じゃ「お前は何処の社長令嬢だよ!」と言いたくなる様なものになっている。
「そうそう、今度の日曜、いつもの所でやるから準備よろしく」
「あいよ」
「はーい」
ふっふっふ。また戦争が出来る。私のP90が火を吹くぜェ!
…あ、今更だけど、私の所属する同好会は、女の私1人と小学校からの腐れ縁の男2人、合計3人だよ。野郎に囲まれてて嫌じゃないかって?別に。時々、胸や太股をチラ見されるけど、男の子らしくていいや、って感じで気にしてない。
………………。
「ただいま~」
学校から帰宅しましたぁ。今日はバイト無いから真っ直ぐ帰ってきました!
「…おかえり」
「ただいま、お父さん」
お、今日はお早いお帰りだねぇ。いつもなら私が寝る頃に帰って来るのに、珍しいじゃん?
…あれ、お父さんの顔、元気無い。疲れてるのかな?
「元気無いじゃん。肩叩きでもしてあげようか?」
昔からお父さんや、お母さんの元気が無い時は肩叩きしてあげたり、マッサージしてあげた。今でも時々してあげてる。
「…いや、大丈夫だ。その気持ちだけで充分だよ」
「…そう」
お父さんはそう言って自分の部屋に戻ってしまった。どうしたんだろう?いつも明るく元気で、言葉は悪いけど年甲斐もなくはしゃぐ、ちょっとウザいお父さんが、あんな暗い顔してるなんて。
(何かあったのかな?)
…ま、いっか。お父さんが大丈夫って言ったんだから。さて、着替えて宿題やっちゃお。
──────────────
─6年数ヶ月前─
「…はぁ」
あれから数カ月が過ぎた。あの日、お父さんの元気が無い理由が分かった。
(会社が倒産したなんて…)
夜中、ふと催してお手洗いに行った時に、お父さんとお母さんが話しているのを聞いちゃった。だから元気が無かったんだ。
『あ、
『…僕達の会話を聞いたのかい?』
動揺して物音立てちゃったから、2人に気付かれちゃったんだよねぇ。
それから、「これは大人の問題だから、燈は気にしなくていい」って言ってくれたけど、
(気にするよ…)
今までお父さんとお母さんに沢山迷惑をかけた。だから、今度は私が2人に迷惑かけた分、恩を返さなきゃ。
(でも、どうすればいいんだろう…)
働くにしても、高校生の私じゃ、雇ってくれる所なんて無い。昔と比べて景気は良くなっているらしいけど、それでも厳しい。資格も持ってないし、高校中退じゃお給料そんなに貰えないだろうし…。
「燈、どうした?」
「いつもの元気オーラが出てないぞ?」
「…えっ?」
…いけない、今部室に居るんだった。誤魔化さないと。
「あー、あの日が近くて…」
咄嗟に嘘を吐いた。
「あの日って、あー…」
「…はよ家に帰って休め」
「なははは…そうするよ」
ごめん、嘘言って。気まずそうな顔をする2人に謝って、帰る事にしよう。
鞄を持って部室を出た。
「…どうしよう?」
お父さん曰く、「貯金は充分あるから、心配しなくていい」らしいけど、無限にあるわけじゃない。いつか尽きる時が来る。
(しゅーしょくかつどー?してるらしいけど、未だお仕事見つかっていないみたい)
お母さんも働いているけど、それだけじゃ足りないかもしれない。
(空からお金降ってこないかなぁ…)
──────────────
─6年前─
「艦娘適性検査?」
ある日、バイトから帰宅すると、郵便受けに1つの封筒が入っていた。封を開け書類を見ると、そこには艦娘適性検査を行うと書かれてあった。
艦娘。今から約70年前、海から現れた深海棲艦と呼ばれる怪物に唯一対抗する事が出来る存在。学校で習った事を思い出す。
(艦娘…お金が貰える)
しかも、前科が無ければなれる。年齢制限は問題ない。
これだ!
………………。
「そんな危険な事、させられないわ!」
「大人の都合で、子どもに危険な事をさせるわけにはいかない」
案の定、お母さんに怒られた。それに、お父さんにも。
それもそうだ。艦娘になると、戦わなくちゃならない。死ぬかもしれない。でも、そんなの、覚悟の上だよ。
私は必死に説得した。何度も説得した。
「今までお父さんとお母さんに沢山迷惑をかけた。だから、恩返しがしたいの!」
そして、最終的に2人は折れてくれた。
「2つ、条件がある。1つ目は、検査を受けるのは構わないが、艦娘になるのは高校を卒業してからだ。2つ目は、艦娘になったら3日に1度、必ず連絡する事。これを守るなら、艦娘になっていい」
「うん、分かった」
お父さんから条件を言われ、私はそれを了承した。
これで、恩返しが出来る。お父さんとお母さん、そして、妹を救える。
(妹には、幸せになって欲しいなぁ)
ヤンチャな私と違って、妹は女性らしい女性だ。将来いい男を捕まえ、結ばれ、幸せな家庭を持って生きてもらいたい。だから、私が艦娘になる事は黙っておこう。お父さんとお母さんにそうお願いした。
これでよし。
──────────────
「燈…」
双子の姉と、お父さんとお母さんの会話を聞いてしまいました。まさか、お父さんの会社が倒産したなんて。
「…私も、なりましょう」
でも、燈に知られたら、物理的に止められそうですわ。なら、するべき事は1つ!
「検査当日まで内緒にして受けましょう!」
──────────────
─5年数カ月前、某所─
「……」
ここが、検査する場所かぁ。いつも通学する時通り過ぎていた、あまり目立たない建物─公共施設の一つ─を見てそう思った。これから検査を受ける。適性が無かったらどうしよう?めっちゃ不安に
「さぁ、行きましょう?」
「何で
お嬢様キャラ、品行方正で非の打ち所のないパーフェクトガール、自慢の妹、彩が隣に居るから、緊張が吹っ飛んじゃった。
「私も適性検査を受けに来たのですわ」
「いやいやいや…」
これから受けるのは艦娘適性検査だよ?ピアノのコンクールじゃないんだよ?
「艦娘って、実弾飛び交う戦場に出て、命懸けで戦うんだよ?分かってる?」
彩は天然入っているから、何か勘違いしているのかもしれない。だから注意する。
「あら、存じていますわ」
絶対分かっていない。
「常に死と隣合わせなんだよ?」
「覚悟の上ですわ」
「いやいやいや…」
私と違って、彩は頑固な所がある。こりゃ、聞き入れてくれそうにないや。
「戦場で死神とダンスを踊る覚悟は出来ていますわ」
「何処でそんな言葉覚えたの?」
おかしい。彩はそういった、言葉は悪いけど下品な言い回しを嫌っていた筈。
「燈の持っているDVDやゲームを見たり遊んだりして覚えましたわ」
アカン、妹に悪影響与えてた。…っていうか、よく遊んだり見る気になったね。疑問に思うと、私の考えが分かったのか、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、
「昔から、
「」
「お父さんの会社が倒産した原因を作った深海棲艦達を、蜂の巣にして【ピー】して【ピー】してやらなければ、気が収まりません」
「お嬢様がそんな下品な事言わない」
あっれぇ、思った以上に下品だよ、この妹。
「ほら、行きましょう?」
「あぁ…うん、もういいや…」
物理的に止めようと思ったけど、人が多い。ここで暴力沙汰を起こしたら、検査を受けられなくなるかもしれない。だから、諦める事にした。
そして、検査を受けた結果、私は最上型重巡洋艦三番艦、鈴谷という艦の適性を持っている事が判明した。
妹はどうなんだろう?神様なんて信じていないけど、今回ばかりはお願いするね。妹に適性がありませんように。
「あ、私にも適性がありましたわ。最上型重巡洋艦四番艦の、熊野という艦の適性でしたわ」
「(*・∀・)凸ファ○キュー!!フ○ッキュフ○ッキュー!!フ○ッキュー!!!!」
神は死んだ。
「キ○ナアイみたいな事を言うんじゃありません。下品ですわ」
「…何で知ってるのさ」
「燈のパソコンの履歴から見ました♪」
「」
パスワード設定してたのに、何で突破されたの?
「ハッキングやプロテクト解除はレディの嗜みですわ♪」
「おまえはなにをいっているんだ?」
生まれて初めて、妹が怖いと思った。というか、絶対レディの嗜みじゃないと思うんですが…。
それから、適性を持っている事が分かった私達は、軍の人から色々説明を受けた。そして、艦娘になるのは高校を卒業してからにすると説明した。軍の人は快く了承してくれて、私達は家に帰った。
──────────────
─5年10ヵ月前─
「それじゃ、行ってくるね」
「行ってきますわ」
検査を受けて数ヶ月後。学校を卒業し、いよいよ艦娘になる時が来た。荷物を持って、艦娘養成所へ向かう私達に、両親は心配そうに見送ってくれた。
残念なことに、私と彩は別々の養成所へ行く事になって、一緒になれなかった。
「…それじゃ、またね」
「えぇ、また」
駅に着き、別々の電車に乗る前に別れの言葉を口にした。
「向こうに着いて一段落したら、メールするね」
「えぇ、お待ちしておりますわ」
そして、互いに背を向けて歩いて行った。さぁて、どんな世界が待っているのでしょう?私のサバゲーで培った技術や知識は役に立つかなぁ?
(あ、なんか映画やゲームの主人公になった気分)
これから戦場へ行く主人公になったみたい。あはは、なんか、ワクワクしてきた!
「あ、燈、○番線ホームはどちらでしたっけ!?」
「西!西に向かうの!」
「分からないので、案内して頂けないかしら!?」
「しっかりしろ、お嬢様…」
映画やゲームの主人公になった気分だったのに、色々台無しだよ!!!
結局、彩の乗る電車のホームまで案内するハメになりました。大丈夫かな、この妹。先が思いやられる…。
───────
────
─
Next Page「ムードメーカー」
イカれた世界なんだ。なら、楽しんじゃおうよ!イエーイ!
※作者はサバゲーをやった事が無い為、色々間違っているかもしれません。ご了承ください。
もし、表現や用語等が間違っていましたら、コメントでご指摘して頂ければと思います。
※もし需要があれば、熊野sideも投稿しようかなと思っています。一応、書き終わっています(但し、完全にキャラ崩壊&ギャグ満載な内容になっている…あと、短い←)
活動報告にて、アンケートを実施します。よろしければ、ご協力お願いします。
Q:何で熊野は父親の会社が倒産した原因を知っているの?
A:父親を脅…聞き出したからです。鈴谷も、深海棲艦が原因で父親の会社が倒産した事を知っています。