追跡鶴   作:EMS-10

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※警告※
あなたの嫁がいつも以上に暴走しています
心臓の弱い方は、ご注意ください
(<⚫>)(<⚫>)
R17.9有り




第61話・休養その15

 

side 提督

 

 

──休養12日目、プール、休憩スペース──

 

 

 

現在時刻11:40、気温38℃。

 

 

 

 

「襲われると思ったら、助けられたでござる」

 

「襲うなんて。あたし、そんな酷いことしません!」

 

ウチに来た日(第603鎮守府に着任した日)に、自分が何をしたか覚えていないのか?」

 

「あ、あれは、若気の至りという物でして……」

 

「ちなみに、今も何か仕掛けようと、虎視眈々と狙っている。と俺は思っています」

 

「んんっ!?しませんッ!」

 

「本当かぁ?」

 

「本当ですッ!」

 

 怪しい。……おっと、ナニが起きたか説明しよう。

 涼月──涼子に日焼け止めを塗っていたら、デンジャラス・ラブ・ゾンビ化。プロレス技で何とかしようとしたが、相手はレベルXのゾンビ(涼月)。艦娘の力を使わずに俺を組み伏せて来やがった。

 絶体絶命の危機に陥り、喰われるかと思ったその時。ニュータ○プ的直感が発動した阿武隈──仁美が様子を見に来て、俺が襲われているのを発見。すかさずクラウチングスタートの構えをしてゾンビへ猛ダッシュ。ドロップキックをぶちかまし、ゾンビは沈黙。そして──

 

「私はッ!私はただッ!準さんとッ!キャッキャウフフしていただけなのにッ!」

 

「んんっ!抜け駆けはッ!あたしがッ!許しませんッ!」

 

 ゾンビをアームロックしてお説教している。

 

「離してください!このままでは……このままでは!準さんと!キャッキャウフフ出来ません!離してッ!」

 

「否!断じて、否ッ!」

 

「オノオオォォォォレエエエェェェェ〜〜!!!」

 

「暴れないで!暴れないで!大人しくしてッ!あたしの指示に従ってください。んぅぅ、従ってくださぁいぃ!」

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!?」

 

「仁美、それ以上いけない」

 関節外れちゃう。あと涼子、落ち着け。凄ェ声出てんぞ。

 

「涼子、これ以上暴れるなら、ウチに帰るぞ」

 少し心苦しいが、警告しよう。

 

「わ、分かりました、大人しくします!約束します!」

 

「よし。仁美、アームロックを解除しろ」

 

「えっ、でも……分かりました」

 

 仁美は不服そうだったが、軽く睨んでやったら渋々解除してくれた。聞き分けの良い娘は大好きだぞ。口には出さんが。

 

「あら、仁美ちゃんも加わったんだ」

 

「和佳奈さん……」

 散歩に出掛けた(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)千歳さん──和佳奈さんが戻ってきた。おい、何故そんなにニヤニヤしながら見ているんですか。

 

「3Pとは。なかなかレベル高いわね♪」

 

「違いますから」

 もう、この人には何を言っても無駄だからツッコミ入れるのはやめよう。

 この後、俺達は水分補給しながら荷物番をした。

 泳ぎに行きたかったが、そろそろお昼になるから、皆が戻って来るまで荷物番をする事にした。案の定、数十分したら皆が戻って来た。

 見た所、熱中症や脱水症状にはなっていない。良かった。倒れたりしないか不安だったが、大丈夫そうだ。

 

 

 

…………。

 

 

 

 

現在時刻13:30、気温41℃。

 

 

 

「気温が40℃を超えているわね。熱中症や脱水症状には充分注意しましょう?」

 

「そうだな。あと、地面の温度にも気を付けろ。火傷する恐れがある」

 昼食を摂り、休憩したあと。俺は翔鶴──静流と二人で(・ ・ ・)流れるプール(ファミリー向け)に来ていた。

 気温の上昇は留まることを知らず、40℃を超えた。電光掲示板に表示されている気温は41℃だ。……あっ、今42℃になった。

 余談になるが、此処のプールサイド──地面には特殊な加工が施されていて、直射日光を浴びてもそこまで熱くならない。しかし、全く熱くないわけじゃないから、気を付けよう。

 

(うっわぁ、めっちゃ見てるよ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(<⚫>)(<⚫>)

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら、うふふ♪」

 

 静流さんや、笑顔で彼女達に手を振って挑発しない。

 さて、何が起きているか説明しよう。薩人大和撫子様(扶桑さん)戦闘狂様(由良)が、八尺様みたいに俺と静流を無言で、ハイライトの消えた目で見つめてきています。とっても怖いです。以上、説明終わり。

 そんな顔→(<⚫>)(<⚫>)しないで?周りの人がビビっているよ?ああもう、近くを通りかかった女の子が、二人の(<⚫>)(<⚫>)を見て泣き出しちゃったよ。

……あっ、元の顔に戻った。

 

「早く準備体操して泳ぎましょう?」

 

「お、おう」

 そもそも、何故俺は静流と二人きりで泳ぎに来たか説明していなかったな。あれは今から一時間ほど前まで遡る。

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

「午後からはどうするの?」

 

「引き続き荷物番を──泳ぎに行こうと思っています」

 売店で購入した昼食を摂っていると、静流がそう言ってきた。

 引き続き荷物番をすると言おうとしたら、静流と扶桑さん──桔梗(ききょう)さんと由良──雪乃とゾンビ(涼月)、仁美から無言の圧力をかけられた。これは泳ぎに行かないと、鎮守府に戻った時に何かされるな。

 だから、泳ぎに行くと答えた。あっ、無言の圧力が消えた。

 

「そう、良かったわ♪所で準。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰と、一緒に、二人きりで、泳ぎに、行きたい?」

 

「」

 

「無言にならないで?」

 

 無言になるわ。ドスを効かせて言葉を区切りながら言うな。怖いわ!

 誰かと二人きりで泳ぎに行けば、確実に不満が貯まる。

 ここは皆と一緒に泳ぎに行きたいと答──

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 あっ、ダメみたいですね。桔梗さんと雪乃さん、仁美さんとゾンビ(涼月)がプレッシャーかけてくる。ちくしょう、なんてプレッシャーだ。

 俺はオールドタイプの人間だと思っていたが、どうやらニュー○イプの素養があったらしい。

 普段、部下達(艦娘達)に襲われているから、危機察知能力が鍛えられ、ニュータイ○の力が覚醒したのかな?全然嬉しくねぇ。

 

「分かった、誰か一人選ぶよ。……と言いたいが、ここは公平にクジで決めよう」

 スマホのアプリ──大本営がリリースした「那珂ちゃん危機一髪」を起動。この「那珂ちゃん危機一髪」は、横須賀鎮守府に所属している艦隊のアイドル、那珂ちゃんを救出するゲームだ。

 

 ルールは簡単。檻に閉じ込められた那珂ちゃんを、設置されているボタンを一つずつ押して(スマホ画面に表示されているボタンをタッチして)助ける物だ。

 ボタンは全部で6つ。どれか一つがアタリで、アタリのボタンを押すと檻の中の巨大バルーンが膨らみ、破裂し、那珂ちゃんが檻ごと宇宙まで吹っ飛ばされる。

 

 アイドルなのに扱い酷くね?と思ったそこのあなた。うん、正しいと思う。俺もそう思うよ。

 ただね、那珂ちゃんはアイドル活動の他にもバラエティにも積極的に出ていて──この話は長くなりそうだから割愛する。

 

「一番手は翔鶴さんに譲ります」

 

「脅威のアタリ(・ ・ ・)率を、見せてくださいね?ねっ?」

 

「( メº皿º)」

 

 桔梗さん、雪乃さん、煽らないで。静流の顔が凄い事になっています。

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

(結果は、静流のストレート勝ち)

 自称・不幸体質の静流は最後までアタリを引かず、俺と二人きりで泳ぐ権利を得た。

 ちなみに、二番目に引いた桔梗さんがアタリだった。

 アタリを引いた時の桔梗さんの顔、忘れられない。今夜辺り、夢に出てきそうだ。あと、雪乃とゾンビもアタリを真っ先に引いた。その時の顔も凄かった。

 顔文字で例えるなら、

 

(<⚫>)(<⚫>)

 

 と、

 

( º言º)

 

 だ。

 そうそう、荷物番だが、今は和佳奈さんと海風──香織がしてくれている。

 和佳奈さんが引き続き荷物番をする、と言ってくれた時は、流石に悪いと思ったが、本人が「気にしなくていい」と言いってくれた。

 皆は申し訳なさそうにしていたが、お言葉に甘えて泳ぎに行く事にした。

 

 いかん、説明するのを忘れる所だった。流石にプールが閉館するまで一緒だと、他の娘達の不満が凄まじいことになりそうだから、時間を決めて順番に二人きりで泳ぐことにした。

 クジの結果、静流→仁美→桔梗さん→ゾンビ→雪乃の順になった。

 香織も参加するのかな?と思ったが、「ご負担をお掛けするわけにはいかないので、私は荷物番をします」と言ってくれた。

 天使だ。天使が居る。我が第603鎮守府最後の天使様のご降臨だ。

……初霜もとい、善子(よしこ)?彼女は一度やらかして堕天したから除外。

 

「えいっ♪」

 

「イ゛ェ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛!!?」

 冷てぇ!?

 静流に水をかけられてしまった。

 考え事をしていたから、思わず叫んじまった。

 

「いきなり水をかけないでくれ」

 

「あら、ごめんなさい♪」

 

 全然反省していねーな。

……おっと、今更だが静流の水着を解説しておこう。

 彼女が着ているのは、以前選んだブラジリアンビキニ……ではなく、上は白いフリルの付いたホルター・ビキニ。下は黒のレイヤードという水着だ。布面積は、上の方は普通。しかし下は、Tバックみたいな水着……というより紐を穿き、更にその上に普通の布面積の水着を重ねて穿いている。

 とにかくエロい。何処がとは言わんが、かなり大きい。

 どうやらブラジリアンビキニを注文する直前、「流石に露出が多い」と思い、ホルター・ビキニに変更したらしい。

 もしブラジリアンビキニを着て来たら、問答無用でこっそり注文して持って来た、パーカータイプのラッシュガードを着せて泳がせなかった。

 

(さっさと水を身体にかけて泳ごう)

 また水をかけられたら変な声出しそうだ。

 腕、肩、足、腹にかけて……よし、入ろう。

 プールサイドに設置されているハシゴからゆっくり入る。おおっ、気持ちいい。さて、ハシゴ付近に居ると邪魔になるから離れよう。

 

「お待たせ」

 

 ハシゴから離れ、周りのお客さん達の邪魔にならないようゆっくり泳いでいると、静流がやって来た。

 彼女のトレードマークである白い長髪は、ポニーテールに纏めてある。普段は髪を下ろしている姿しか見ていないから、新鮮だ。

 

「そんなに見て、どうしたの?」

 

「普段、髪を下ろしている姿しか見ていないから、新鮮だと思ってな」

 

「ふふっ、そう♪」

 

 嬉しそうに微笑んでる。俺はその笑顔に思わず見とれてしまった。

 瑞鶴──瑞稀の笑顔を太陽に例えるなら、静流のは月明かりのような物だ。……何を言っているんだ、俺は。

 

「さぁ、泳ぎましょう?」

 

「あ、ああ……」

 アホなことを考えていないで、泳ごう。人が多いから、ぶつからないように気を付けて──

 

「こうして準とプールで泳ぐの、何年ぶりかしら?あの時は瑞稀(瑞鶴)も居たわね」

 

「何年ぶりだろう?少なくとも9年より前だな」

 学生の頃、瑞稀と付き合い始めて数ヶ月経ってから、二人でプールに行こうとしたら、監視する為に静流も一緒に来たんだっけ。

 

「確か、泳いでいる最中に、瑞稀が足を釣って溺れかけたんだよなぁ……」

 んで、慌てて俺が助けて、瑞稀を抱えてプールサイドに出たら、不埒な事をしようとしたと勘違いした静流に……静流に……。

 

「あの時。瑞稀を助けたら、静流に腹パンされて、ジャイアントスイングされてプールに叩き込まれたっけ……」

 

「あ、あははは……」

 

「未だにハッキリと覚えている。投げ込まれて、プールの底に頭を強打した事も。プールの監視員さんに、めっちゃ怒られた事も……」

 

「本当にごめんなさい……」

 

「もう、しないでくれよ?」

 

「はい、しません」

 

 なら、いいんだけど。

 

「あっ、その傷……」

 

「傷?」

 静流が俺の左肩を見ながらそう言ってきた。あぁ、これか。昔、静流に彫刻刀で切られた痕だ。

 彼女は俺に近寄り、そっと左肩の傷跡を撫でてきた。少し、くすぐったい。

 

「……今更だけど、本当にごめんなさい」

 

「気にすんな、昔のことだ。それに、反省しているんだろ?なら、許すよ」

 

「……」

 

 しかし、納得していないのか、静流は悲しい顔をしたままだ。本当に気にしていないのに。話は変わるけど、近いです。密着しちゃっています。

 

「……」

 俺の胸に、静流の胸が当たっている。大きい。柔らかい。それに、彼女の心臓の鼓動が伝わってきている。

 暖かい。柔らかい。

 ……いかん、変な気分になってきた。

 

「……あっ」

 

 静流が顔を上げると、思ったより俺と密着していた事に気付いたようだ。この距離、キスが出来そうな位、近い。

 

「……」

 

 静流さん、目を閉じてどうしたの?えっ?まさか?ここで?いやいや、マズいですよ。周囲に人が沢山いらっしゃるんですよ?いや、決してしたくないわけではないんですがせめて人の居ない所でしましょう?

 あっ、あっ、あっ、静流さんが顔近づけてくる。

……受け入れよう。そういや、静流とキスするのは初めてだな。

 覚悟を決めよう。俺は静流の頬に手を添えて、彼女の唇にキスを───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「」

 しようとしたら、俺の視界に恐ろしい物が映り込んできた。

 

「……どうしたの?」

 

 いつまで経ってもキスしてこない事を不審に思った静流が、そう言ってきた。

 どうした、って?八尺様達が追いかけて来ています。

 怖いよ!なんだよそれ!水から半分だけ顔出して、瞳孔おっ広げて、頭を全く揺らさずに泳がないでくれ!ホラーだよ!ガッツリホラーだよ!つーか、シュールだよ!!何の集団だよ!?

 あと、人数増えてるし!薩人大和撫子様と戦闘狂様だけだったのが、何時の間にかゾンビが加わっているし!恐怖で涼しくなっちゃったよ!

 

 余談になるが、仁美は順番が来るまで、近くの日陰で休憩している。いい娘だ。おい八尺様達、俺の後輩(仁美)を見習え。

 あと、頼むから鎮守府では絶対に八尺様ごっこしないでね?もしやったら、俺、泣き叫ぶよ?全力で泣き叫ぶぞ?フリじゃねぇからな!

 

「……チッ、邪魔しやがって」

 

 あの〜、静流さん、聞こえていますよ?口調が崩れていますよ?お淑やかなキャラが壊れていますよ?

 俺達の背後。約5mの距離を付かず離れず、泳いでいる人達を避けながら、しっかり追跡して来る八尺様たちに気付いた静流が舌打ちをしながらそう言った。

 

「少し、ペースを上げましょう?」

 

「えっ?お、おいっ?」

 手を引かれ、さっきより少しだけ速度を上げて泳ぎ出した。俺はされるがまま、静流に引っ張られた。

 

(君達も速度上げないで)

 頭を全く揺らさず、視線は俺と静流に向けたまま泳いで来ないで。とっても怖いです。今夜辺り、夢に見そうです。

 この後、静流に手を引かれながら流れるプール(ファミリー向け)を一周したが、八尺様達は最後までしっかり付いて来た。周りのお客さん達にドン引きされたのは、言うまでもない。

 

 

 

………………。

 

 

 

 

「本当に大丈夫か?」

 

「だっ、だいじょーぶ!あたし的にはOKです!問題ありません!」

 

「生まれたての小鹿みたいに震えながら言われても、全然説得力無いぞ?」

 

「だ、大丈夫ですから、行きましょう!」

 

「分かったよ」

 こいつ、意外と頑固なんだよなぁ。

 静流と流れるプール(ファミリー向け)を八尺様達──桔梗さんと雪乃とゾンビの三体(・ ・)──に視姦及び追跡されながら一周したあと、仁美に連れられ、二人でウォータースライダー──戸愚呂を巻いている方──に来た。

 

 あっ、八尺様三体(・ ・)は俺が厳重注意(アイアンクロー)したから、今は大人しく休憩スペースで待機しています。

 

 話を戻そう。ここでトラブル発生。

 仁美は高所恐怖症の持ち主。階段を降りるのにも一苦労する程の高所恐怖症の持ち主が、ウォータースライダーをしたいと言い出した。

 最初は聞き間違いかと思ったが、本人は本気みたいだ。

 

「うへぇ〜、高いよぉ〜。他界しそう……」

 

「やめるか?」

 

「いいえ、行きます!着水したら、こっそり水着を脱いでアピールしてやるんだから!

 

 何も聞いていない。ガッツリ聞こえたけど、俺は何も聞いていない。

 おっと、危うく仁美の髪型と、着ている水着の解説を忘れる所だった。

 髪は普段のセーラー戦士の様な物ではなく、お団子状にして頭頂部に一つに纏めている。

 水着は、上下共に橙色の三角ビキニだ。遠目からだと素肌に見える(・ ・ ・ ・ ・ ・)。最初見た時ビビった。

 布面積は普通。下は両サイドが紐所で、蝶々結びで固定されている。何処がとは言わんが、やや小ぶりだ。そして。

 

(身体のあちこちに、肉割れの痕がある)

 高校生の頃、仁美はふくよかな体型だった。しかし、今、俺の目の前にいる彼女は標準より少しだけ痩せ型の体型をしている。

 ボサボサだった黒髪は、綺麗に整えられ、金色に染められている。

 何時(いつ)だったか、艦娘になってから頑張ってダイエットして、お洒落して自分を磨いた、って言ってたっけ。

 それらは全て、俺と再開した時、魅力的になって振り向かせる為。

 

(一途な奴だよ。俺なんかには勿体無い娘だ)

 

「せんぱい、どうかしました?」

 

「……喉は乾いていないか?」

 

「あたしは大丈夫ですっ!」

 

「……そうか」

 見つめていたから、不審に思われちまった。気を付けよう。

 

……。

 

 数十分後、ようやく俺達の順番が来た。

 階段を登っている間、仁美は真顔になってハイライトが消えていたが、滑る順番が来たら元に戻り、笑顔になった。

 

「んじゃ、仁美が先に一人で滑ってくれ」

 

「せんぱい?」

 

「冗談です」

 冗談だから、ハイライト消して能面みたいな顔しながらドスの効いた声を出さないでください。ほら、係の人がビビってる。

 慌てて滑り口に座り──

 

「ほれ、乗りな」

 

「はいっ!」

 

 仁美を俺の足の上に座るよう促した。とても嬉しそうな顔をしている。良かった、元に戻ってくれた。

 

「では、行ってらっしゃい」

 

 準備が整い、係の人に背中を押してもらって、俺達はパイプ状のウォータースライダーの中へ滑って行った。

 昨日、夕立──夕奈と滑ったから、形状は覚えている。

 

「意外と緩いんですね」

 

 そう思うだろ。俺もそう思った。

 ゆっくりと下り、緩やかな右カーブを曲がると、そこから急な下りになる。

 ゆっくりと右カーブに差し掛かり、曲がり終えると、

 

「──へっ?」

 

 俺達の目の前に、急な下りが見えてきた。さて、仁美はどんな反応をするのだろう?

 

「……準せんぱい」

 

「なんだ、仁美」

 

「私は今から赤ちゃんになります」

 

「落ち着きなさい」

 君、いきなり何を言い出すの?

 

「今からみっともなく泣き喚くから、あやしてくださいぃぃ〜!」

 

「でっけぇ赤ちゃんだなぁオイ!」

 

「おぎゃああああ〜!」

 

「本当に泣きやがったよコイツ……」

 

「ぉっ……ゃっ……おぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

「うるせぇ!」

 ガチ泣きするな!ああもう、仕方ねぇ。

 

「──ふぇっ?」

 

「俺がついている。心配するな」

 仁美の腹部に腕を回した。細いな。それに、筋肉が結構ある。かなり鍛えているみたいだ。俺も負けてられないな。鍛え直そう。

 

「……せんぱい、手を離さないでくださいね?ぎゅっ、としてくださいね?」

 

「あいよ」

 腹部に手を回すと、大分落ち着いてくれた。

 やがて、俺達は急な下りに差し掛かり、猛スピードでウォータースライダーを滑り落ちて行った。

 

「あははははっ!」

 

 仁美は笑いながら楽しんでいる。どうやら大丈夫そうだ。

 暫く滑り続けると、出口が見えてきた。そろそろ着水に備えて、手を離すか。

 そっと、仁美の腹部に回していた腕を解こうと──

 

「ダメですっ!」

 

 したら、腕を掴まれ、解けなくなってしまった。おい、離せ。離しなさい。このままだと君を抱きしめたまま着水しちゃうよ?くそっ、解けない。

 そうこうしている間に、俺達は出口に到着。結局、抱きしめたまま着水した。

 着水後、衝撃で俺を掴んでいた腕が離れた。

 良かった。もし掴まれたままだったら、抱きしめたまま浮上する事になっていた。とりあえず、浮上しよう。

 両手で水を掻き、浮上。途中、左手の指に何か引っかかった気がした。なんだろう?

 

「──ぶはぁ」

 水中から顔を出して呼吸。あー、楽しかった。さて、仁美は何処だ?

 周りを見渡して探そうとしたが、俺の指に何かが引っかかったままだ。一体、何だろう?気になるので左手を見ると、

 

(……橙色の布だ)

 そう。俺の左手の指に、橙色の布の、紐の部分が引っかかっていた。ちなみに、形は三角形をしている。

 もしかして。いや、もしかしなくても、この布……

 

「せ、せんぱいぃ〜……返してくださいぃ〜……」

 

 水面に顔だけ出した仁美の、恥ずかしそうな声が聞こえてきた。あっ、やっぱり?

 どうやら、俺の指に引っかかっていたいた布は、仁美の下の方の布(・ ・ ・ ・ ・)だったようだ。

 アカン、これはアカンよ。慌てて仁美に布を投げ渡し、彼女から背を向ける。

……とんでもねぇハプニングが起きちまったよ。

 

 

 

………………。

 

 

 

「では、よろしくお願いします」

 

「あっ、はい、こちらこそ……」

 俺は今、桔梗さんと流れるプール(激流)に来ている。頼むから、これ以上トラブルが起きないでほしい……。

 そうそう、ウォータースライダーをしたあとの事を話そう。

 仁美が俺のせいで脱衣した後、ショックを受けてしまったのか、休憩スペースに戻って荷物番をしている。

 本当に申し訳ない事をしてしまった。何度も謝ったが、彼女は気にしていないと言ってくれた。

 

『次は扶……桔梗さんの番だから、行ってあげてください。あたしは大丈夫です!』

 

 お詫びと言ってはなんだが、俺も一緒に傍に居てあげようと、荷物番をすると言ったが、本人がそう言ってきた。しかしなぁ。俺が渋っていると、

 

『あたしが原因で、せんぱいが他の人達と泳げないと知られたら処されるので行ってください』

 

 真顔でそう言われてしまった。すまん、仁美。近日中に必ずお詫びするから、許してくれ。

 そういうわけで、予定より早く桔梗さんと泳ぐことにした。

 桔梗さんには、仁美は体調が優れない為、予定より早くなった、と伝えておいた。

 

「結構流れが早いですね。流れに逆らって泳げば、良い鍛錬になりそうです」

 

 微笑みながら桔梗さんはそう言った。確かに、良い鍛錬になるだろうけど、本当にやらないでくださいよ?

 おっと、桔梗さんの髪型と水着の解説を忘れる所だった。

 濡れ羽色の髪は、泳いでいる最中に広がらないよう、髪の先端部分に髪留め用のゴムを付けている。

 ちなみに、以前俺が買ってあげた髪留めを前髪に付けている。まだ使ってくれているんだ。

 水着は、白地に黒と赤のラインが入ったモノキニを着ている。てっきり露出が激しい水着を来てくると身構えていたんだが、違った。

 

 桔梗さん曰く、「嫁入り前の女が、みだりに肌を晒してはならない」そうだ。それだからか、露出が少ないモノキニを選んだらしい。

 以前説明したと思うが、モノキニとは、前からはワンピース。後ろからはビキニに見える水着だ。

 前はともかく、後ろの露出が多い。けど大丈夫、そこは桔梗さんが言うには「髪でカバーしている」との事。

 もし、後ろから邪な視線を向ける輩がいたら、古武術で仕留めるそうだ。お願いしますからやめてくださいね?

 おっと、脱線しちまった。モノキニだけでなく、桔梗の花柄(・ ・ ・ ・ ・)が入った白色の薄いパレオも纏っている。どうやら下半身をあまり露出しないようにする為、纏っているらしい。

 何処がとは言わんが、めちゃくちゃ大きい。静流より大きい(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

(水着の布面積は平和なんだが……)

 えーと、その、水着が身体にピッタリとフィットしているから、お(へそ)がクッキリ見えちゃっています。

 あと、股間部の角度が攻撃的過ぎると思います、はい。

 しかし、言わない。言ったらナニ……もとい、何かされそうで怖い。

 

「あらあら♪何処を見ているのですか?」

 

 イカン、思わず凝視してしまった。そして気付かれちまった。

 怒られる。そう思っていたが、桔梗さんは怒るどころか、嬉しそうに。そしてイタズラっぽく微笑んでいた。すっげぇ妖艶だ。あの、近寄ってこないでください。少し怖いです。あっ、耳元に顔を近付けて何を──

 

 

「私の心とカラダは全部、渡良瀬さん。貴方だけのモノです。何時(いつ)でも好きにして下さって構わないんですよ?」

 

 

 ウィスパーヴォオオオイスッ!エロいッ!エロいよッ!やめてッ!?反応しそう!

 

 

「つまみ食いしてくれても、いいんですよ?」

 

 

 ぬわあぁん。ヤメロォ!(建前)ヤメロォ!(本音)

 変な気分にさせないで!?ただでさえ数ヶ月発散していないから、ダメージ入り易いんだよ!?

 くっ、煩悩退散。煩悩退散。落ち着け、落ち着くんだ。まだ襲う時じゃない。俺のハジメテは瑞稀に捧げると決めているんだ。あっ、こら、撓垂(しなだ)れ掛からないで!?うっは、柔けぇのが当たってる。ヤベぇ(ヤベぇ)。

 このままだとアカン。流れるプール(激流)に身を任せて同化して邪な考えを流そう。よし、一旦離れるよう桔梗さんにお願──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(<⚫>)(<⚫>)

( メº言º)q

(メ º皿º)凸

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(<⚫>)(<⚫>)

( メº言º)q

(メ º皿º)凸

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「」

 

「……渡良瀬さん?どうかされまし──あんの【ピー】共が……

 

 俺の視線の先。

 八尺様も真っ青な位に見つめてくるゾンビ。

 眉間に皺を寄せながら、目ん玉かっ(ぴろ)げてお見せすることはできません、な指の形を桔梗さんに向ける戦闘狂様。

 そして、歯を剥き出しにしながら目ん玉おっ(ぴろ)げ、こちらもお見せできません、な指の形を桔梗さんに見せてくる腹黒鶴様が居た。

 それらを見た桔梗さんが、妖艶な笑みから一瞬で真顔になり、放送禁止コードに引っかかる発言をしやがりました。

 あのぉ、そんな下品なこと言っちゃダメですよ?それに、ドスが物凄く効いてて怖いです。チビりそうです。

 

 

「10分くらい水中に沈めておけば、大人しくなってくれますよね?」

 

 

「やめてください」

 小声で物騒な事言わないでください。

 

「──ッ!?き、聞こえていましたか?」

 

 はい、ガッツリ聞こえました。無言で頷いておいた。

 

「あ、あら、やだ……おほほほほ……」

 

 笑って誤魔化しても、もう遅いです。

……はぁ。どうして俺の鎮守府の娘達は、こうもバイオレンスなのだろう。大本営のメンタルケア課に頼んで、調べてもらおうかな。

 

 

 

side 提督 out

 

 

 

───────

────

 





次回予告


桔梗さん、準さんに密着していますね。羨ましいです。
うふふっ♪涼月……私の番が来たら、私も密着しましょう♪
どこからか、今の私は「生温い(・ ・ ・)」という電波を受信ました。
ならば、お見せしてあげますよ。本当の私(・ ・ ・ ・)を。
うふふふっ♪うふふふふふふっ♪



第62話・ハザードは止まらない休養その16



「ゾンビ狩りのお時間です♪首置いて逝けやゴルアァァァァッ!」




【補足的なナニか】

・デンジャラス・ラブ・ゾンビ化…元ネタは「仮面ライダーエグゼイド」より、「デンジャラス・ゾンビ」。
 第603鎮守府所属の秋月型防空駆逐艦三番艦、涼月の暴走状態を指す。主人公が名付けた。
 暴走すると脅威のタフネスさと機動力・戦闘力を得て、主人公を(性的な意味で)襲う。深海棲艦や演習相手には一切の慈悲も情けも無く、ぶっ潰しにかかる恐ろしいモード。
 実は【強化形態が存在する(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)】らしい。

・レベルXのゾンビ…こちらも、元ネタは「仮面ライダーエグゼイド」。
 ネ申(檀黎斗)の強化形態。詳細は「レベルX エグゼイド」で検索してください。

・アームロック…元ネタは「孤独のグルメ」より、主人公、ゴローさんの必殺技。
 この小説に登場する人物達は特殊な訓練を受けている為、アームロック等の技を喰らっても、大怪我を負うことはありません。
 大変危険な技なので、良い子も悪い子も決して真似しないでください。

・八尺様…元ネタは、2chオカルト板にて紹介された「怖い話」または、「その話に登場する怪異のこと」。
 説明すると長くなる為、割愛します。調べる時は自己責任でお願いします
(<⚫>)(<⚫>)(<⚫>)(<⚫>)(<⚫>)(<⚫>)

・ニュータイプ…元ネタは「機動戦士ガンダム」シリーズに登場する設定(概念)。
 説明すると、とんでもなく長くなるので割愛します。各自で調べてください(土下座)

・翔鶴の水着…エロい。某絵師様が描かれた水着翔鶴を元に描写しています。著作権的問題がありましたら、書き直します。
 艦これ運営さん、そろそろ鶴姉妹の水着グラを追加してくれてもいいのよ?追加してください。瑞鶴の、おニューの水着姿を見せてください(迫真)

・セーラー戦士の様な髪型…元ネタは「美少女戦士セーラームーン」。
 阿武隈の髪型って、セーラームーンの「月野うさぎ」の髪型とに似ている、という理由で描写しました。
 この小説に登場する阿武隈は、元は違う外見をしていた、という設定があります。それについては、彼女の過去編で描写します(いつになるかは不明ですが…)。

・扶桑の水着…元ネタは「艦これ」の夏限定グラ。形状から競泳水着だと思いますが、この小説ではモノキニにしました。水着の股間部の角度が攻撃的過ぎて素晴らしいです。

・ウィスパーヴォオオオイス!…「ウィスパーボイス」。
 囁くような声、という意味。どんな声かって?「艦これ」の「大鯨」もしくは「龍鳳」のボイスを聴けば分かる。
……自分の鎮守府には、未だ着任していない?
 2-4、2-5、3-4、4-4、5-2へ行け!行くんだ!掘れ!掘るんだ!

・ハザードは止まらない…
『ハザードオン!』
『アンコントロールスイッチ ブラックハザード!』
『ヤベーイ!』


 元ネタは、「仮面ライダービルド」のサブタイトル、「ハザードは止まらない」より。

ゾンビパンプキンでベストマッチじゃあ生温い?安心しろ。ゾンビは未だ本気を出していない。本気を出していないんだ。大事なことなので2回言いました

以上、補足を終了します。

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