コミケ三日目に緊急参戦したので、投稿が遅れました(挨拶)
汗をかいた衣服は、約60℃のお湯に30分ほど漬けてから洗濯すると、嫌な臭いが消えます。衣服の嫌な臭いにお困りの方は、是非お試しください。
詳しいやり方は「衣服 汗 熱湯 漬ける」で、検索。
この小説はフィクションです。
実在の人物、団体、施設などとは関係ありません。
一部、実際とは異なる描写が含まれています。
予め、ご了承ください。
side ??
──某県某所、一般参加待機列──
07:00。
(相変わらず、凄い人ね)
テレビやネットの画像などで見た事があるけど、実際に見ると迫力がある。
始発で行こうと思っていたけど、寝坊してしまったから、かなり後ろの方から並ぶみたい。
駅からビッ○サイトに向かうと、既に行列が出来ていた。
「コ○ケの一般参加の方は、こちらにお並びくださ〜い!」
(えっと、私は一般参加だから、こっちね)
スタッフの案内を聞き、一般参加列に並ぶ。
コ○ケ開始は10:00。約3時間、待つ事になるわね。
(今は涼しいけど、これからもっと暑くなる。熱中症や脱水症状には充分注意しましょう)
今年の気温は例年より異常に高いとテレビでやっていた。幾ら鍛えていても、倒れる恐れがある。
凍らせた飲み物やタオル、扇子を持ってきたけど、少し不安。
(もしマズくなったら、迷わず撤退しましょう)
撤退したら、お目当てのモノ──
(引き際を見誤る、なんて事は決して、してはならない)
冷静になり、的確に判断し、素早く行動し、確実に結果を出す。
……よし、これを忘れずに挑みましょう。
今まで何度もコミ○に
呉から関東に向かうのに時間がかかるし、参加出来たとしても、疲労が溜まって仕事に支障をきたしてしまう恐れがあった。
だから、今まで参戦せず、委託されたモノをネットで購入していた。
(けど、今回は違う)
呉鎮守府から、関東地方にある第603鎮守府へ異動する事になった。
本当は来週あたりに関東地方へ向かい、第603鎮守府へ異動する予定だったのだけど、
(一週間の有給休暇を頂けるとは思わなかったわ)
どうやら、今年に入って私の休暇取得日数があまりにも少なかったらしく、呉の提督が「気分転換も兼ねて、ゆっくり休め」と、一週間も有給休暇を与えてくださった。
これにより、事前に纏めておいた荷物を持って、予定より早く関東へ向かい、ホテルを予約。ホテルを仮の拠点にして観光。そして、思い切ってコミケに参戦した。
コミケに参戦したあとは、有給休暇を満喫し、休暇明けに第603鎮守府へ向かい着任する予定を組んでいる。
(まさか、半年間で1回しか休んでなかったなんて……)
呉の提督に休暇取得日数を見せられて初めて知った。
昔からの悪い癖ね。何かに夢中になると、疲れを感じなくなるの。
あのまま
(第603鎮守府で思い出したけど、彼だけじゃなく、
先日、呉の提督に渡された、第603鎮守府に所属している艦娘リストを見た時、ショックを受けたのを覚えている。
(何故、彼女達が居るのかしら?)
疑問は尽きない。
もしかしたら、彼はあの時みたいに、彼女達から暴力を受けているかもしれない。そう思い、呉の提督に第603鎮守府の提督と艦娘の様子について聞いてみたんだけど、
『非常に良好な関係を築いている』
と、言われた。信じられない。
きっと彼の事だ。日常的に暴力を受けているけど、彼女達に脅されて、報告していないだけでしょう。可哀想に。
(着任したら、証拠を集めて大本営に提出してやる!)
口だけでは、信じてもらえない可能際がある。映像と音声を録って提出すれば、動かぬ証拠になり、彼女達は処罰される筈。
(昔、私を助けてくれた。その恩を、返すわ)
だから、もう少しだけ頑張って。必ず、助けるから。
「皆さん、おはようございま〜す!」
……あら、スタッフさんが挨拶をしてきたわ。
考え事をしていたら、私の耳にスタッフさんの挨拶が聞こえてきた。
色々思う事があるけど、行動を起こすのは異動してから。今はコミ○を楽しみましょう。
挨拶をされたから、挨拶を返さなきゃ。
「おはようございます!」
大きな声で、ハッキリと返事。
しかし、周りの人達は挨拶をしなかった。正確には、小声で挨拶をした、だけど。
大きな声でハッキリと挨拶したのは、私一人だけだった。
は、恥ずかしい……。
「皆さん、一名を除いて元気が無いですねぇ。生きてますかァ!?」
スタッフさんの発言に、周りの人は苦笑。
ネットで見たけど、○ミケスタッフは面白い。今年はどんな名言。いいえ、迷言が生まれるのかしら?
…………。
09:00。
待機列に並んで2時間が経過。気温は既に35℃を超えている。
タオルを頭に乗せて直射日光を防いでいるけど、暑い。
事前に日焼け止めを塗り、長袖Tシャツを着て来たけど、辛い。
何度か同人イベントに参加した事はあるけど、ここまで辛くなかった。少し、甘く見ていたわね。
幸い、飲み物は多めに持ってきたから、まだ余裕はある。小まめに水分補給をしましょう。
「皆さん、生きてますか〜?
鞄から飲み物を取り出して飲んでいると、スタッフさんがそう言ってきた。お陰で、飲み物が変な所に入りかけて噎せてしまった。もう……飲んでる最中に面白いこと言わないで。
周りの人達も、スタッフさんの言葉を聞き、笑っている。本当、面白いわ。
…………。
10:00。
「コミ○開催です!」
「押さない、駆けない!夢を諦めない!これらを守って楽しんでこいやぁ!」
「走った人はサ○ディエゴしか出なくなる呪いにかかりま〜す!ゆっくり歩いてね〜!」
「ゆっくり、前に進め!止まるな!ゆっくり進めば、嫁に会えるぞ!だから、お前ら、止まるんじゃねぇぞ!」
待機列に並んで3時間後、コミ○が開催。それと同時に、全員が拍手をした。私も釣られて拍手。いよいよ始まるのね。
開催に伴い、列が少しずつ動き出した。それに伴い、スタッフさん達が叫びながら参加者達に声をかけてきた。どれも秀逸な言葉ばかりで笑ってしまった。
…………。
11:00。
「や、やっと入れた……」
コミケ開催から一時間後、ようやく建物の中に入れた。
建物の中に入れば、日差しが無いから楽になる筈。そう思っていたんだけど──
(室内の方が暑い!)
それもその筈。建物内に凄まじい数の人間が集まっているのだから。
その為、壁に設置されている電光掲示板には、
とんでもない数字が表示されていた。
何よ!室温46℃、湿度80%って!バカじゃないの!?クーラーあるでしょ?つけないの?そう思っていると、
「只今、クーラーが故障しました!それにより、此処は亜熱帯のジャングルになっております!
クーラーが壊れた。……そんな……嘘でしょ!?
「倒れる人が続出しています!倒れる前にマズいと思ったら、戦略的撤退してください!これ以上、三次元の人を抱えたくありません!」
「帰ろう。帰れば、また来れる。倒れたら、場合によってはもう二度と○ミケに参戦出来なくなるかもしれません!命を大事に!」
こんなに暑いのに、スタッフさん達は大声で参加者達に声をかけ続けている。ただ声をかけるだけでなく、面白いことを言ってくれる。スタッフさん達も辛い筈なのに、頑張っている。本当にお疲れ様です。
(私は……未だ大丈夫そうね)
自分の体調を確認。水分補給をしたし、凍らせた飲み物を身体に当てて冷やしたから、異常は無い。よし、突撃よ!
数年前からお気に入りの絵師さんが描く薄い本──同人誌を買う為に、事前に確認したサークルへ突撃。
人が多いから、思うように進めない。こういう時、最短距離を進むのではなく、比較的人が少ない所を進んだ方が早く到着する。ネットで調べた内容を思い出して実行。
……。
11:30。
(や、やっと到着した)
人混みを避けながら進み、ようやく目当てのサークルに到着。時計を見ると、30分近くかかってしまった。売り切れていないかしら?
(……あ、良かった。まだ残っている)
テーブルを見ると、残りは少ないけど、新刊は残っていた。急がないと売り切れてしまう。慌てず、ゆっくりとサークルの前まで進み──
「新刊3冊くださ───えっ?」
サークルスペースで何やら作業をしている男性に声をかると、声をかけられた男性は作業を止め、こちらを見てきた。
その男性の顔を見た瞬間、私は衝撃を受けた。
その男性は、私が高校生の時、三年間同じクラスになった人で。
他の女性より小柄だった私を。外見をバカにせず。
変わった趣味を持っていても、それを笑ったりしなかった人で。
当時。いいえ。今も淡い想いを抱いている男性で。
今度、その男性が運営する鎮守府のお世話になる。
再会するのは、未だ先だと思っていた。
その男性が、目の前に居る。
見間違いなんかじゃない。本人だ。
「渡良瀬……くん?」
気が付けば、私は彼の名前を口にしていた。
side ?? out
───────
────
─
side 提督
──休養状態14日目、某県某所──
09:00。
「……まだかな」
設営を終え、両隣のサークルさんの設営を手伝い、秋雲──知り合いのサークルへ挨拶に向かった
コスプレをする為に着替えに行った夕張──
あれから一時間近く経つが、未だ戻って来ていない。
「ただいま〜」
「おう、お帰り」
璃奈が戻って来た。
「ごめんね、ちょっと話に夢中になっちゃって……」
「大丈夫だ、気にするな」
「ありがと。……あれ、二人は未だ戻ってないの?」
「あぁ。更衣室が混んでいるのかな?」
スマホで連絡を入れようと思ったが、人が多過ぎるからか、電波が届いていない。
「私が様子を見に行ってこようか?」
「ん〜……あと30分待って来なかったら、様子を見に行ってくれ」
「おっけ〜!」
…………。
09:30。
「お、お待たせしました!」
「待たせてしまって、ごめんなさい。更衣室が混んでて遅くなったわ」
「お帰り〜」
「お帰り。混んでいたなら仕方ない」
コミ○開始30分前に、二人は戻って来た。
「体調は崩していないか?」
ただでさえ暑いのに、コスプレをしている。二人はそこそこ厚手の布を纏っているから、熱が篭もりやすい。
薄いシャツを着ている俺や
「今の所、大丈夫ですよ!」
「私もよ」
「そうか。もし辛いと思ったら、遠慮なく言ってくれ」
今年は例年より暑い。しっかり様子を見よう。少しでも辛そうなら、すぐに休ませよう。
そうだ、コスプレしてくれた二人の格好を解説するのを忘れる所だった。
まず、佳代。彼女の格好は、深夜アニメ「デストロイヤー・ウィンド=クラウド」の主人公が通う学校の制服を模したコスプレをしている。
ぶっちゃけると、夕雲型駆逐艦の装束を模した物を纏っている。秋雲や早霜と似た、白いカッターシャツの上から
本物の装束ではないが、本物と見間違えるほどクオリティが高い。
次に香苗。彼女の格好は、「デストロイヤー・ウィンド=クラウド」の主人公の親友が通う学校の制服を模したコスプレをしている。
言い忘れていたが、この深夜アニメの主人公と、主人公の親友は通う学校が異なる。なので、香苗が纏っているモノは、佳代が纏っているモノとは外見が全く異なる。
話を戻そう。香苗が纏っているのは、緑の襟のついたブラウスの白セーラー服の上に、
これは、3話目で主人公に
「クオリティ高いな」
二人のコスプレした姿を見て、素直に思った事を口にした。
「えへへっ、頑張って作った甲斐があります!」
とても嬉しそうに佳代は笑った。本当、良く出来ている。
「褒めてくれてありがとう。自分で言うのもなんだけど、自信作なの」
「ほぅ……」
自信作か。どうりでクオリティが高いわけだ。これなら、二人を見てくれた
「本当は血糊を付けたかったのだけど、それをしたらマズいからやめたの」
「英断だな」
血糊を付ければ、原作再現になるが、運営のルールに違反する恐れがある。
もし付けていたら、スタッフさんに声をかけられ、
………………。
09:50。室温40℃、湿度60%。
「あ"っ"ち"ぃ"〜」
「ほれ、扇風機とスポドリ」
ダミ声出さない。クーラーボックスから冷たいスポドリを取り出し、璃奈に手渡す。ついでに妖精さん達が作ってくれた。充電式の小型扇風機(掌サイズ)を向けて風を送ってやる。
「サンキュ〜」
「あっ、提……渡良瀬さん、私にも飲み物お願いします」
「あいよ」
佳代、今、提督って言いそうになったな?気を付けてくれよ?えっと、スポドリは……あった。ほれ。
「ありがとうございます」
「香苗も飲んでおけ」
パイプ椅子に座って微動だにしていない香苗に、スポドリを差し出す。
「あら、ありがとう」
微笑みながら受け取ってくれた。しかし、どこかぎこちない。それもそうだ。売り子をするのは初めてだ、って言っていたから。
「そう緊張しなくていい。俺達がサポートする」
「あ、ありがとう……」
「困った事があったら、璃奈さんや佳代さん、らっせーさんに遠慮せず言って?全力でサポートするから」
「ぶっちゃけ、立って薄い本を手渡せば良いだけだから、そこまで緊張しなくても大丈夫ですよ?」
「う、うん……」
俺達が香苗の緊張を解す為にそう言ったが、あまり効果は無さそうだ。ギャグでもかまして、緊張を解してやろうかな?
「参加者達が押し寄せてきたら、「歓迎しよう。盛大にな!」って言って対応すりゃいい」
「……ふふっ」
おっ、少しだけ笑ってくれた。
「ここはコミ○だ。楽しもう」
「……そうね、そうするわ」
少しだけ緊張が解れたみたいだ。さっきより表情が柔らかくなっている。
「さぁて、そろそろ始まるよ〜」
「おっ、もうか」
時計を見ると、09:58だった。あと2分で開始だ。
「んじゃ、飲み物仕舞って〜。地響きで倒れるから、しっかり蓋閉めておいてね〜」
璃奈がそう言い、皆、飲み物の蓋を閉めて地面に置いた。
そして。
『コミッ○マーケット、開催です!』
スピーカーから、スタッフさんの開催宣言のアナウンスがされた。その直後、参加者達が一斉に拍手。俺達も拍手をした。
拍手が終わると、会場のシャッターがゆっくりと開いていく。
コミケにサークル参加する度に見るんだが、シャッターが開ききる前に匍匐前進して侵入する一般参加者が必ず居る。今年は何人匍匐前進して侵入するのかな?
「──あっ、匍匐前進侵入した」
「今年もか……」
璃奈がそう言ったので、シャッター付近を見る。
最前列で待機していた人達が、人が通れるかギリギリの狭さのシャッターを匍匐前進して侵入しているのが見えた。気合い入ってんなぁ……。あっ、スタッフに止められた。
シャッターが開ききると、待機していた
……あっ、走っている人発見。スタッフさん達が止めようとしたけど、逃げられた。
「カタログに走るのは禁止、って記されているのに、何で走るのかしら?」
「転売する為じゃない?」
香苗の疑問に、璃奈が答えた。
璃奈が言ってくれたが、壁サークルや企業ブースに行って会場限定の品を購入し、ネットで定価より高く売って小遣い稼ぎをする為、走る人が居る。
いいか、コミ○に限らず、イベント関連では走るな。周りの人達の迷惑になる。あと、転売は許すな。見つけ次第、通報だ。転売ヤーは○せ。慈悲はない。
「すみません、新刊1部ください」
「おっと……新刊1部ですね?500円になります」
走っている人達を見ていたら、
慌てて対応。
「500円で」
「ありがとうございます」
500円玉を受け取り、しっかり確認。うん、500円玉だ。確認をしてから、新刊を手渡す。
あまり言いたくないが、時々、外国の硬貨を出してくる輩が居る。
500円玉だと思ったら、500ウォン硬貨だったり、100円玉だと思ったら、100ウォン硬貨だったり。
貨幣価値は10分の1くらいなので、やられると赤字になる。以前、やられた事があるから、しっかり確認してから新刊を手渡すようにしている。
いいか、コミケに限らず、外国硬貨を手渡して誤魔化そうとするのはやめろよ?立派な犯罪だからな?
「すみません、新刊3部、お願いします」
「はーい……あっ」
また声を掛けられた。声の主を見ると、見た事のある顔が視界に入った。
確か、
500円玉を3枚受け取り、日本円である事を確認してから、新刊を手渡した。
「いつも素敵な絵をありがとうございます。応援してます!」
「ありがとうございます!」
ファンらしく、絵師の璃奈にそう言うと、お兄さんはその場から去って行った。
「……嬉しいねぇ、ああ言ってもらえると」
おうおう、璃奈の奴。嬉しそうに笑っているよ。それもそうだ。自分が頑張った物を褒めてくれた。肯定してくれたのだから。
「すみませーん」
「あっ、はーい!」
おっと、また参加者さんが来てくれた。ちょい待て、列が出来ている。整理した方が良さそうだ。
「佳代」
「任せてください!」
俺の考えている事が分かったのか、サークルスペースから出て、列の整理を行ってくれた。
「……慣れているわね」
「かれこれ数年やっているからな」
初めて参加した時は、勝手が分からなかったから、めっちゃ戸惑ったなぁ。慣れって凄い。
「すみません、新刊を1部。あと、その……スケブお願い出来ないでしょうか?」
「新刊1部ですね?500円になります。おーい、先生ェ!スケブ依頼入りましたー!」
「あ〜い、受け付けてるよ〜!任せて〜!13時頃再び来るよう伝えて〜」
「あいよ!……お待たせしました、新刊1部です。スケブは13時頃、取りに来てください」
「あ、ありがとうございます」
よーし、次!おっ、女性の参加者さんか。ようこそ。歓迎しよう。盛大にな!
………………。
11:00。
「大分落ち着いてきたわね」
「だな」
コミ○開催から1時間後。開幕ラッシュで少しだけ体力を持って行かれたが。まだ余裕はある。
「新刊は、あと5部か。予定より早く無くなりそうだ」
この調子なら、完売出来るだろう。
「おっ!」
「どうした?」
スマホを弄っていた璃奈が声を出した。Tw○tterを見ているようだ。
「知り合いの絵師さんが到着したみたい。ちょっと挨拶してきていい?」
「勿論、いいぞ」
「ありがと!あっ、スケブは、あと3つまで受けるから、希望者が居たら受け取って?」
「了解」
少しだけ慌てて、璃奈はサークルスペースを出て行った。
「あの、渡良瀬さん、私、そろそろコス広場に行っても良いでしょうか?」
「わ、私も……」
「ん?いいぞ」
大分落ち着いてきたから、俺一人でも対応出来る。行ってきな。
「ありがとうございます!それじゃ、行ってきますね?」
「ごめんなさい、あとはお願い」
「任せろ。熱中症と、脱水症状には充分注意しろよ?」
佳代と香苗をサークルスペースから出て行くのを見送り、俺一人だけになった。
……それにしても暑い。例年なら、クーラー。正確には除湿が効いてて快適なんだけど、さっきスタッフさんが「クーラーが壊れた」って言ってた。それだからか、室温が46℃、湿度が80%という、とんでもない状態になっている。サウナじゃん。
(
嘆いても、キレてもクーラーが治るわけじゃない。我慢しよう。
……そうだ、周りを見て気を紛らわせるか。
(……あっ、サー○ルちゃんが居る)
け○のフレンズに登場する、サーバルキャットのコスをした女性が視界に入ってきた。結構クオリティが高い。おっ、ア○イさんも居る。ははは、面白ぇ。
「……」
「ッ!?」
おいおいおい、アレは……か○んちゃん!?男性がコスプレしている。それはいい。いいが、
(筋肉モリモリの、マッチョマンじゃねーか!?)
ボディービルダー並の筋肉してるよ!かば○ちゃんじゃなくて、
しかも、右手にボス──ラッ○ービーストを持っている。おーい、ボスが握り潰されそうですよ〜?
(くそっ、腹筋に悪い)
笑いが止まらん。周りの人達も、やばんちゃんを見て笑っているよ。
(これこれ。これだからコ○ケは最高だ)
この非日常がたまらない。
あっ、向こうからブ○リーが来た。筋肉すげぇな。この日の為に鍛えたんだろうな。本当、お疲れ様です。
「すみません、新刊1部ください」
「おっと……いらっしゃ〜せ〜」
コスプレした人達を見ていたら、参加者さんに声をかけられた。イカン。周りを見るのに夢中になっていた。気を付けよう。慌てて返事したから、舌が回っていない。
「500円になります。……500円丁度ですね、ありがとうございます」
お金を受け取り、500円玉なのを確認してから、新刊を手渡す。
(そろそろ完売POPを用意しておくか)
確か、段ボールの中に璃奈が入れていたな。取り出しておこう。えっと、こっちじゃなくて……これだな。あった。よし、これを隣の椅子に置いて──
「新刊3冊くださ───」
おうっ!?参加者さんに声かけられた。対応しなきゃ。
慌てて振り返り、参加者さんを見る。……あ、あれ?どっかで見た事のある顔だな。
小柄な体型。
栗色みががった、黒のショートボブヘアー。
そして、混濁の一切無い、特徴的な声。
(嘘……だろ?)
俺の中で、上記の3つに該当する人は、一人しかいない。
「──えっ?渡良瀬……くん?」
──────────────
……そして、前話の冒頭に至る。前話ってなんだよ。暑さで頭がイカれたのか?イカれているのは元からだったな。
「まさか、こんな所で再会出来るとは思っていなかったわ」
「そ、そうだな」
俺もそう思う。再会出来たのは嬉しいけど、時と場所が少し。いや、かなりマズい。
確か、
「もしかして、これ、渡良瀬くんが描いたの?」
「いや、俺じゃない」
「えっ?じゃあ、誰が描いたの?」
やっぱり勘違いされた。うーん、璃奈の事、何て説明すればいいんだ?とりあえず、
「あー……俺の職場の部下が描いたんだ」
こう答えておこう。嘘は言っていない。
「職場の部下……それって───」
お、おい、鳳、そんなに顔を近付けてどうした?戸惑っていると、
「─────ッッッ!!?」
俺にだけ聞こえるような小声で、そう言ってきた。
こいつ、今、艦娘って言ったぞ。何故そう思ったんだ?
俺が「提督になる」と話したのは、当時通っていた高校の、進路相談に乗ってくれた先生と、俺の爺ちゃん。それから、
「……」
「沈黙は肯定とみなすわ」
「……い、いや、違う──」
「事実を言われると、挙動不審になったり、無言になる。あなたの昔からの癖よ。変わってないのね」
あー、これ、ダメだわ。誤魔化せない。
あまり、
「……そうだ」
そもそも、何故一般人に提督。もしくは艦娘だとバレるのがマズいのか、説明していなかったな。
大本営によると、昔、一般人に提督もしくは艦娘だとバレた人が居た。
提督、または艦娘だとバレた人を、Aさんとする。
自分で言うのもなんだが、提督業や艦娘業は命を失う恐れがあるから、他の職業よりお金が多く貰える。更に、福利厚生もしっかりしている。
深海棲艦出現時と比べて、今はある程度平和になってきているが、まだまだ経済は安定していない。
場所によっては、某漫画──モヒカン頭がヒャッハー!している世紀末な世界──のような状態の所もある。幸い、俺が住んでいる所は
それだからか、一般人に提督もしくは艦娘だとバレると集団で襲われる恐れがある。だから、あまり一般人に知られたくない。
他にも、【反艦娘団体】という厄介な組織に目を付けられる恐れが──これは説明すると長くなるから割愛する。
「安心して。誰にも言わないわ」
「そ、そうか」
慈愛に満ちた、優しい目をしながらそう言ってきた。
この笑み。あの時と全く変わっていない。
当時、瑞稀に色々されて心身共にボロボロだった俺に向けてくれた、優しい笑み。鳳が居てくれたから、俺は壊れずに済んだ。もし、鳳が居なかったら、精神崩壊していたかもしれない。
「あの……一つだけ、どうしても聞きたい事があるのだけど、良いかしら?」
「なんだ?」
「単刀直入に聞くわ」
さっきまで優しい笑みを浮かべていた鳳の顔は、真剣な物になっていた。この顔。大切な話をする時の顔だな。何を話す気なんだ?思わず身体が強ばる。
「何故、あなたの
「───────ッッッ!!?」
何で知っているんだ!?
side 提督 out
───────
────
─
Another side
──某所某所──
「────では、よろしくお願いします」
……ったく。ようやく通ったか。固定電話をぶん投げたい衝動に駆られたが。堪える。くそっ。相変わらずムカつく声だ。
「……どうでした?」
「通ったよ」
「それは良かったです」
これで第603鎮守府に、申請された量より多目に資材を送る事が出来る。
確か、以前、江ノ島鎮守府から最上型重巡洋艦三番艦、鈴谷の第二次改装の設計図とパーツが送られていた。
鈴谷だけなら、申請された量の資材で改装しても余裕があるが、金剛型高速戦艦三番艦、榛名の第二次改装まで施したら、カツカツになる。
(そうなったら、まともに運営出来なくなる)
そうならないよう、大本営を説得し、申請された量より多目に資材を送るよう頼んだ。
最初は渋っていたが、誠心誠意頼み続け、ようやく通った。
「俺は疲れたから、少し休む。15分したら起こしてくれ、
「畏まりました、提督」
「……俺が仮眠をとっている間、仮眠室に入ってくるなよ?」
「……了解しました」
「その間は何だ?言ってみろ」
「了解しました」
「言い直すな」
絶対何かやろうとしていたな。頼むから休ませてくれ。三徹していて辛いんだ。
……休暇が欲しい。○ミケに参加したい。三日目に那珂ちゃんがコミケに参加するから、限定グッズ買いたい。転売ヤーからは絶対買わん。俺は那珂ちゃんのファンの一人。決して転売ヤーからは買わんぞ。転売ヤーは見つけ次第、ぶち○せ。一人残らず駆逐しろ。
誰かに休暇と金を与えて頼んで買ってきてもらうか?いや、無理だ。嫌われ役をやっているから、そんな事頼めない。くそっ、何であの時、嫌われ役をすると決めたんだ!ちくしょう!泣けるぜ。
……那珂ちゃん本人に頼んで確保してもらえばいい、だと?そんなのはダメだ。買うなら自分で直接現地に向かい、購入したい。というか、俺が那珂ちゃんのファンだということは、赤城以外知らない。よって、却下。
……赤城に頼めって?「私以外の女性に夢中になるなんて、許しません」とか言って、監禁されるから却下。
「那珂ちゃんの限定グッズが欲しいのですか?」
「そうだ。─────あっ」
思わず心に思ったことを口にしてしまった。というか赤城、ナチュラルに俺の思考を読むな。それよりもマズいぞ。赤城がキレる。
「私以外の女性に夢中になるなんて。酷いです、提督」
「落ち着け赤城。書類の入った棚を持ち上げるな。大事な書類とかが入っているんだ。落ち着──そうだ、それでいい。ゆっくりと棚を置───ッ!?手錠を投げるなバカ野郎!!」
危なかった。咄嗟に身を引かなかったら、両手に嵌っていた。
「どうやら提督には、私の魅力が伝わっていないようですね。じっくり、確実に伝えてあげますから、寝室に参りましょう?」
「大丈夫だ、もう充分伝わっている。今、寝室に参ったら、俺の精神が参りそうだから却下───」
「夜戦(意味深)に突入します!第二次攻撃隊、全機発艦!」
「人の話を聞け。発艦しなくていい。あと、空母は夜戦出来んぞ。だから大人しく──手錠を投げるな!」
畜生!投げられた手錠が手足に嵌ってしまった!というか、妙に生暖かい。おまけに、
「私の体温を感じていただけるよう、
「だから、心を読むな」
ああもう!やめてくれ!どうしてこんな女になっちまったんだ!昔は天然が入った、お淑やかで穏やかな女だったのに!くそっ!くそっ!クソッタレぇ〜!!!
Another side out
───────
────
─
次回予告
何故、渡良瀬くんの
第65話・休養その19
「ふふっ。相変わらず、下ネタには弱いのね」
【補足的なナニか】
・オータムクラウド先生…第603鎮守府に所属する、陽炎型駆逐艦十九番艦、秋雲の適性を持つ少女、
オータムクラウドの由来は、秋雲から取ってつけた。
オータム=秋。
クラウド=雲。
同人歴5年。彼女が描く薄い本はストーリー、画力共にクオリティが高く、意外と人気がある。
最近、R18モノを出すようになり、更に人気が高まっている(という設定)。
・サンディエゴしか出なくなる呪い…元ネタは「アズールレーン」に登場する艦船少女「サンディエゴ」。とっても可愛い。但し、アホの子。
艦これで例えるなら、「那珂ちゃん」のような扱いを受けている。
レア度がアズールレーン内最高のSSRだが、ガチャを回すと何故か良く彼女が建造される。
ちなみに、SSRのガチャ出現率は約7%。
ネタ要因扱いされる彼女だが、対空性能が異常に高い。
スキルが発動した彼女は「艦載機絶対墜とすウーマン」となり、艦これで例えるなら「防空棲姫」並。……いや、それ以上に敵艦載機を撃ち墜とす悪魔と化す。
育成して損は無い。
・コミケ開始直後…一言で言い表すなら、地獄。
毎年、走ったりする人が居る。やめましょう。
・転売ヤー…見つけ次第、○せ(真顔)。
・けものフレンズ…わ〜い、た〜のしぃ〜。そんなアニメ(個人差有)。
気になった方は、BluRayもしくはDVDを購入だ!(ダイマ)。
・サーバルちゃん…元ネタは上記の「けものフレンズ」に登場する、サーバルキャットを擬人化したキャラクター。アホの子。けど可愛い。
・アライさん…「けものフレンズ」に登場する、アライグマを擬人化したキャラクター。
・ラッキービースト…「けものフレンズ」に登場する機械(?)
・ブロリー…まずお前から血祭りにあげてやる「ドラゴンボール」に登場する化け物悪魔。
説明すると長くなる為、割愛します。気になった方は、各自で調べてください。
・某漫画のような状態の所…「北斗の拳」の世界をイメージして頂ければと思います。
・夕張と矢矧のコスプレ…夕張のは、夕雲型駆逐艦三番艦、風雲の制服を。矢矧は睦月型駆逐艦二番艦、如月改二の制服を着ています(勿論、手作り)。
・ガッデムホット!…元ネタは「Fate/GrandOrder」に登場する「アナスタシア」が言い放った魂の叫び。
「ガッデムホット!」と書いて「めっさ暑いわ!」と読む。真顔でなんてこと言うの、アナスタシアちゃん。
・Twitter…ツイッター。SNS。情報の宝庫。
・赤城…横須賀鎮守府所属の、赤城型航空母艦一番艦、赤城の適性を持つ女性。二つ名持ちで、「殺戮マシーン」と呼ばれている。狐耳と尻尾は生えていない。
横須賀鎮守府を運営している提督とケッコンカッコカリをしているらしい。
以上、補足終了。