追跡鶴   作:EMS-10

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 コミケに参加された方々、お疲れ様でした。
 コミケは終わりましたが、まだまだ暑い日は続きます。体調を崩さぬよう、充分注意してください。

 コメント欄を見たら、コミケに参戦した方が多くて驚きました。戦士多過ぎィ!
 


※注意※


 この小説はフィクションです。
 実在の人物、団体、施設などとは関係ありません。
 一部、実際とは異なる描写が含まれています。
 予め、ご了承ください。



第65話・休養その19

 

side 提督

 

 

──休養状態14日目、某県某所──

 

 

11:40、気温40℃、室温46℃、湿度計測不能。

 

 

「何故、あなたの職場(鎮守府)に瑞稀さんが居るの?」

 

 

「───────ッッッ!!?」

 何故、知っているんだ?……いや、待て。落ち着け。

 

(鎮守府に所属している人間を知っている、ということは、鳳は──)

 

 

 

軍関係の仕事に就いている。

 

 

 

 そうでなきゃ、説明がつかない。

 もしそうじゃなかったら、情報が漏洩(ろうえい)していた、という事になる。

 

「なぜ知っているんだ?って顔をしているわよ?」 

 

「……」

 

「そんな怖い顔をしないで。私も、渡良瀬くんと同じ仕事をしているから、知っているのよ」

 

 くそっ、顔に出ていたか。

……今、鳳は俺と同じ仕事をしていると言った。陸軍や空軍は、提督や艦娘の存在は知っていても、誰が提督や艦娘をやっているか、までは知らない。つまり鳳は海軍に所属して──

 

「あの、すみません……」

 

「──あっ……」

 

「──ん?」

 考え事をしていたら、いつの間にかサークルの前に参加者さんが居た。どうやら、俺達(・ ・)のサークルの新刊を買いに来たようだ。

 

「ご、ごめんなさい、邪魔をしてしまって」

 

「い、いえ、こちらこそ、すみません」

 

 鳳は慌ててサークルから離れ、参加者さんに譲った。そういや俺は今、売り子をしていたんだ。

 聞きたい事が山ほどあるが、今は対応を優先しよう。

 

「こんにちは、新刊ですか?」

 参加者さんに声をかけると、新刊を2部購入してくれた。お金を受け取り、確認してから新刊を手渡す。参加者さんは購入すると去って行き、俺はそれを見送った。

 テーブルには新刊が3部、残っている。この3部は、鳳が購入すると言っていた。つまり、完売だ。

 完売のPOPを置かないと。予定では完売するのは午後までかかると思っていたが、かなり早く完売した。良かった。完売出来て。

……さて。

 

「鳳、この後時間はあるか?」

 

「えぇ、大丈夫よ」

 

「そうか……。悪いが、今、サークルを無人にするわけにはいかない。後で合流して、じっくり話したい。だから、連絡先を教えてくれないか?」

 話したいことは山ほどある。しかし、今俺は売り子をしている。長時間、ここで会話をしていると周りの人に鳳が「サークル前で長話をする、迷惑な参加者」だと誤解される恐れがある。だから、連絡先を交換して後で合流しないか提案した。

 

「えぇ、いいわ」

 

「ありがとう」

 スマホを取り出し、鳳と連絡先を交換。そういや、

 

「以前教えて貰った連絡先、何度もメールや電話、LIN○を送ったけど、繋がらなくなっていたんだが……」

 

「あぁ、それね?実は、昔使っていたスマホが、学校を卒業後に爆発(・ ・)してしまって……バックアップを取っていなかったから、連絡が取れなくなってしまったの」

 

「……そうだったのか」

 てっきり着信拒否されたのかと思っていたよ。それにしても君、よく物が壊れるねぇ。

 学生時代も、しょっちゅう買ったばかりの物が些細な事で壊れたりしていたな。細心の注意を払って取り扱っていても、直ぐに壊れたり……。不幸(・ ・)なんて言葉が生温く思える瞬間が何度もあった。もしかしたら、翔鶴──静流(しずる)といい勝負かもしれない。あいつは自称・不幸体質で──長くなりそうだから、この辺でやめておこう。

 

「……ん、ありがとう。試しにL○NE送るわ」

 

「おう。……届いた」

 スマホにLIN○の着信。確認すると、鳳の名前が書かれている。良し、ちゃんと交換出来た。俺からも送信。うん、届いた。

 そういや、さっきまで電波が届いていなかったけど、何で届くようになったんだ?……あっ、壁際にコ○ケスタッフ達が身体中にアンテナを装備して立っている。だから届くようになったのか。マジでお疲れ様です。

 

「それじゃ、また後で連絡して?」

 

「分かった。それじゃ、また後で」

 そう言って鳳はサークルの前から去って行った。

……久々に再会したが、元気そうで良かった。……あっ、テーブルに新刊が3部、置いてある。

 

「おーい、鳳!新刊!新刊買うの忘れてんぞ!」

……ダメだ、声が届いていない。しゃあねぇ、確保しておくか……あっ、鳳が慌てて戻ってきた。

 

「しっ、新刊買うの忘れていたわ!」

 

「は〜い、いらっしゃいませ〜」

 良かった、気付いてくれて。ちょっと、からかってやるか。

 

「さ、3部、ください!あと、スケブもお願い!」

 

「はい、一万五千円になりま〜す」

 

「高っ!?値段跳ね上がってるわよ!」

 

「確保料及びスケブ代です」

 

(ねじ)るわよ?」

 

「冗談だよ」

……ははっ。このやり取り、懐かしい。

 ふざけたやり取りをして、昔を思い出す。学生だった頃、よく俺が冗談を言って、その度、鳳に「捻るわよ?」って言われたっけ。思わず笑うと、鳳も笑ってくれた。

 笑いながら対応をし、新刊を3部渡した。お金とスケブを受け取ると、再び鳳は去って行った。

 

「……さて、完売POPを置くか」

 サークル主の秋雲──璃奈(あきな)が作った、可愛らしい絵と文字が描かれた完売POPをテーブルに設置。これで良し。パイプ椅子に座り、一息つく。あとは皆が戻ってくるのを待つだけ──

 

 

「さっきの女性、誰?」

 

 

「ぬおぉんっ!?」

 敵襲!?HQ、こちら渡良瀬!敵の襲撃を受けた!敵の位置は不明!……って、矢矧……じゃない、

 

香苗(かなえ)か……」

 背後に、コスプレ広場に行くと言っていた香苗(矢矧)が立っていた。いつの間に後ろに居たんだよ。びっくりして奇声出しちゃったじゃないか。

 

「驚かせてごめんなさい」

 

「い、いや、気にするな」

 まだ心臓がバクバクしているけど、大丈夫だ。それよりも。

 

(声が怖かった気がする)

 一瞬だけ、身体が底冷えするような。狂気に包まれたような声が聞こえたんだが。

 例えるなら、以前、初めて千歳さん──和佳奈(わかな)さんと会話した時のような声が……気のせいだな。だって、香苗だぜ?あの、オカン系艦娘(・ ・ ・ ・ ・ ・)の香苗だぜ?そんな声なんて出さないよ。きっと聞き間違いだ。

 

「あー、さっきの女性だったな。彼女は、俺の学生時代の友人だ」

 

「……そう」

 

……あの、香苗さん?どうしました?なんでそんな冷たい目をして俺を見下ろしてくるんですか?

 

「このタラシ」

 

「タラシじゃねーよ」

 真顔でなんてこと言うの、香苗ちゃん。俺はタラシじゃないよ?普通だよ?ちょっと生身で海上を土星エンジン全開のヅ○みたいな速度で全力疾走したり、道具を一切使わず垂直の崖を素手で登ったり、ゾンビ(涼月)発情鶴(瑞鶴)とかをノーザンライトボムで退治する、何処にでも居る、ごく普通の提督だよ?

 

「……やっぱり、タラシている自覚が無いのね」

 

「だから、俺はタラシじゃねーよ」

 

「どうだか」

 

 呆れた顔で溜息吐かないで……。

 

「そういや、香苗はどうしてここに来たんだ?」

 

「話題を変えたわね、タラシ」

 

「タラシちゃう」

 俺はタラシなんかじゃありません。誠実な男です。……誠実だよね?ちょっと不安になってきた。何故か関西弁になったけど、気にしないで。

 

「……様子を見に来たのよ。熱中症や脱水症状でダウンしていないか、心配だから」

 

「あっ、そうなの?」

 優しいなぁ。つーか、俺よりも香苗の方が心配だ。

 俺は薄手の長袖シャツに、夏用の生地が薄いGパン、同じく夏用の通気性が非常に良い靴下と靴を履いている。

 対して、香苗は厚手の布で出来た、熱の籠りやすいコスプレをしている。俺より香苗の方が熱中症や脱水症状になる可能性が高い。

 

「でも、その様子なら大丈夫そうね」

 

「お気遣いありがとう。俺よりも、香苗は大丈夫か?」

 顔を見たが、今のところ問題は無さそうだ。けれど、油断してはダメだ。いつ熱中症や脱水症状になるか分からない。えっと、荷物に塩飴があった筈。……あった。クーラーボックスに入れておいた塩飴の袋を取り出して───

 

「水分補給も大事だが、塩分も摂っておけ」

 香苗に差し出す。

 幾ら塩分や糖分が含まれているスポドリでも、そればかり飲むと身体の塩分濃度が低下する恐れがある。

 

「ありがとう。いい気配りね」

 

 俺から塩飴を受け取って舐めた。俺も舐めよう。

 

「……あら、完売したの?」

 

「ん?あぁ。ついさっきな。完売は午後までかかると思っていたんだが……」

 いつもは25部用意していたが、今回は思い切って倍の50部も用意した。それなのに、午前中に完売するとは思わなかった。

 

「あのぉ〜、オータムクラウド先生の新刊って、まだ残っていますか?」

 

「すみません、売り切れてしまいました」

 参加者さんに声をかけられた。ごめんなさい、完売しました。その事を参加者さんに伝えると、とても残念そうな顔をされた。なんか、すいません……。

 

 この後、正午になるまで、絶え間なく参加者さん達が俺達のサークルに訪れて新刊の有無を聞かれた。

 完売した事を伝えると、皆とても残念そうな顔をした。しかし、全員文句は言わなかった。それどころか、「完売おめでとうございます」と言ってくれた。

……もう少し多く刷っておけば良かったな。後で秋雲──璃奈(あきな)に伝えておこう。

 

 

………………。

 

 

 

12:10。

 

 

たで〜ま〜(ただいま〜)

 

「お帰───水飲め!塩飴舐めろ!」

 香苗とサークルで待機していると、璃奈(秋雲)が戻ってきた。しかし、目が虚ろだ。おまけに顔が茹でダコの様に赤く、汗を全く(・ ・ ・ ・)かいていない(・ ・ ・ ・ ・ ・)。こりゃ、熱中症と脱水症状を起こしかけているな。

 

「香苗、璃奈を座らせろ」

 

「了解よ」

 

 香苗は俺の指示に返事をし、素早くパイプ椅子を用意してくれた。その間に俺はクーラーボックスから飲み物と塩飴を取り出す。あと、テーブルに置いておいた小型扇風機(充電式)を璃奈に向ける。

 

「なはは〜……やられちまったぜ……」

 

「喋るな、じっとしていろ」

 パイプ椅子に璃奈を座らせ、冷えたスポドリを首に当てる。

 

「ひゃあっ!?冷たっ!?」

 

「我慢しろ」

 突然、首に冷えたスポドリを当てられたから、璃奈が悲鳴をあげた。我慢してくれ。

 

「扇風機は私が持つわ」

 

「頼む。あっ、風の強さは「中」にしてくれ」

 香苗に扇風機の風を「中」にするよう指示。香苗は俺の指示通り「中」にして、扇風機を璃奈の顔に向けた。

 本当は「強」にしたいが、そうしたら隣のサークルさんの薄い本が風で捲れる恐れがあるから、「中」にさせた。

 

「あ〜、香苗さん、スカートの中にも風送ってくんね〜?熱が篭もりすぎてヤッベ〜の」

 

「分かっ──ダメよ!」

 

 香苗さんや、今、危うく了承しかけたね?気を付けなさい?

 璃奈が履いているスカートは膝上までしかない、生地の薄そうなスカートだ。んなことしたら、地下鉄の通気口の上に立った、マ○リン・モンローのスカートみたいな事になる。

 

「だ〜いじょ〜ぶ、盗撮されてもいいように、アンスコ穿いてるから問題ないよ〜」

 

「いや、ダメだから」

 幾らアンスコ穿いていても、ダメです。

……そうそう、今、璃奈が言ったが、コミ○に限らず人が多い所を歩くと、スカートの中とかを盗撮される恐れがある。女性の皆さんは気を付けてください。

 もし盗撮しようとする輩を見つけたら、遠慮なくノーザンライトボムをぶちかましてやろう。

 

 ノーザンライトボムのやり方が分からない?よし、解説しよう。

 渡良瀬提督の、ノーザンライトボム講座〜。まず、相手と真正面に向き合います。そして、右利きの人は自分の左腕を相手の首に巻き付けます。左利きの人は右腕を首に巻き付けよう。

 次に、相手の腕を自分の首に巻き付けます。巻き付けなくても大丈夫だが、巻き付けた方が失敗しにくいぞ。

 そして、利き腕を相手の股下に差し入れ、相手の身体を垂直に持ち上げます。

 最後に、相手の頭を地面に向かって思い切り叩き付けます。

 これが、ノーザンライトボム。喰らった相手は死ぬ。

 

……以上だ。

 

「盗撮、か……私もさっき、コス広場(コスプレ広場)で盗撮されそうになったわ」

 

「誰にやられそうになった教えなさい香苗」

 

「お、落ち着いて、提……渡良瀬」

 

「大丈夫俺は落ち着いているよそれで誰にやられそうになったお兄さんに言ってみなさい」

 

「渡良瀬、顔が怖いわよ!?」

 

 ふっ……ふふふっ……いい度胸だ……香苗を。俺の大切な部下(・ ・ ・ ・ ・)を盗撮しようとは……。上等だ。見つけ次第、ノーザンライトボムをぶちかましてやる。

 

「だ、大丈夫よ、直ぐに気付いて逃げたから」

 

「……そうか」

 どうやら被害に遭わずに済んだみたいだ。

 それにしても、盗撮魔か。何時(いつ)になってもそういう輩は現れるんだな。……あっ、そういや夕張──佳代(かよ)もコス広場に居るんだっけ。被害に遭っていないといいんだが。

 

 

 

………………。 

 

 

 

16:00、気温38℃。

 

 

 

「暑過ぎる……」

 首からかけたタオルで汗を拭うが、次々に汗が吹き出てくる。

 

「えっと、確かここだったな」

 俺は今、ビッグサイト周辺を彷徨(うろつ)いている。

 サークルはどうした、って?大丈夫、既に撤収した。

 

 あの後。璃奈がふらつきながら戻り、看病した後どうなったか説明するぞ。

 12:30頃、コス広場から佳代(夕張)が戻ってきて、全員集まった。熱中症や脱水症状になっていないか心配だったが、佳代は小まめに水分補給したり、建物の影に入って身体を冷やしたりしたから、それらを発症しなかった。

 あと、盗撮の被害に遭わなかったか聞いたところ、大丈夫だったそうだ。

 余談になるが、コス広場で盗撮魔が捕まったと、後日知った。

 

 新刊が完売したから、売上を確認。幸い、お金を受け取る際、しっかり確認したから外国硬貨は混じっていなかった。

 

 確認後、どうするか話し合い、二組に分けて昼食休憩を取る事にした。最初はコス組の佳代と香苗。二人が休憩している間、俺と璃奈はサークルに残り荷物番。

 璃奈と雑談をしながら、今後の発行部数について相談したりした。もう少し多めに刷ろうかと思ったが、売れ残る可能性がある。なので、今後暫くは50部で売り、様子を見ることにした。

 

らっせー(渡良瀬)さんは、欲しいグッズとか本とか無いの?』

 

 発行部数について話し合ったあと、頼まれたスケブにキャラの絵を描きながら璃奈にそう言われたが、特に目当ての物が無いから行かなかった。まぁ、俺が欲しい物は委託されるから、それらは通販で買おう。

 そして、約一時間後。昼食休憩をしてきた二人が戻ってきた。

 

 余談だが、午前中にスケブを頼んだ人達が受け取りに来てくれた。僅か30分足らずで4冊のスケブに絵を描いた。早過ぎない?それに、上手い。

 

 二人に荷物番を頼み、俺と璃奈はビッ○サイト内にある軽食屋に立ち寄り、腹を満たした。

 

 んで、その後、サークルに戻り、明日から仕事が再開されるから早めに帰ろうと香苗が提案。なので、予定より早めに撤収作業をして、完了したのが15:30頃。

 周りのサークルさんに挨拶をして、全員で荷物を持ち、ビッグ○イトを後にした。

 

(抜け出すのに時間がかかっちまった)

 皆で駅に向かい、鎮守府に戻ろうとしたが、俺は用事があると言って、別行動を取る事にした。しかし、ここで問題発生。

 

(オカン(・ ・ ・)が中々納得してくれなかった……)

 そう。第603鎮守府のオカン(・ ・ ・)、矢矧──香苗に「明日から仕事だからダメ」と言われ、腕を掴まれて駅に連行されそうになった。

 しかし、俺は(おおとり)と会う約束をしている。なので、ガチ泣きしながら懇願。あっ、勿論演技です。そしたら、香苗に軽く引かれたが、20:00までに鎮守府に帰るなら良いと、渋々認めてもらえた。

 許可を貰った後、俺は夕張──佳代に車の鍵を渡してその場から離脱した。

 

(えっと、確かここ辺りだな)

 数分前に皆と別れ、鳳とLIN○でやり取りした集合場所に到着。確か、鳳は白い長袖シャツを着ていた。えっと、白い長袖シャツを着た女性は……あっ、居た。

 小柄な女性──鳳が建物の日陰になっている所で、スマホを弄っていた。

 

「鳳」

 

「あら、渡良瀬くん」

 

「待たせたな」

 

「ううん、私も今来た所よ」

 

 俺が声をかけると、鳳は微笑みながらそう言った。なんか、デートの待ち合わせをしているみたいだな。

……アホなこと考えるな。

 

「それじゃ、行きましょう?」

 

「おう」

 

 

 

───────

 

 

……やっぱり。あの時、サークルに来た女性と会っている。

 様子を見に来て正解だったわね。

……はぁ。頭痛くなってきた。

 養成所の時から見てきたけど、やっぱり彼、人気ね。

 

「……タラシ」

 

 私の気も知らないで。全く。

 もしこの事を瑞鶴さん達が知ったら、ただでさえバイオレンスな彼女達が更にバイオレンスになるわ。それに、

 

 

 

計画が狂いそう(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

 

(あの女性は──)

 最初、彼があの女性と会話している様子を見た時は思い出せなかったけど、彼と璃奈が席を外している間、彼女がスケブを受け取りに来た際、顔をしっかり見たから思い出せた。確か、呉鎮守府に所属(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)している艦娘(・ ・)だったわね。

 演習で何度か戦ったから覚えている。向こうも私を見知っている筈だけど、コスプレしていたから気付かれなかった。

 

(なんだか、嫌な予感がするわ)

 女の勘って言うのかしら?上手く言葉に出来ないけど、嫌な予感がする。

 なんとなくだけど、

 

(ウチに異動して来そうな予感がするわ……)

 もし異動してきたら、どうしよう?

……考え過ぎよ。

 

(……帰ろう)

 「もう一度だけ、彼に釘を刺しに行く」と言って、皆を待たせているから、これ以上此処に居たら怪しまれてしまう。

 

(……このキャラ、疲れるわね)

 今まで真面目系の口煩いキャラを演じてきたけど、そろそろ疲れてきた。それに、我慢が出来なくなってきてしまった。

 そのせいで先日、瑞鶴と彼にコミ○について語ってしまった。

 

(気を付けないと)

……色々思うことがあるけど、一先ず撤収しましょう。

 

 

 

 

───────  

 

 

 

 

………………。

 

 

 

「ふぅ。生き返るわ」

 

「クーラーは史上最高の発明だ」

 ファミレスに入って席に着くと、一息ついた。

 強過ぎず、弱過ぎず。絶妙な室温のお陰で、とても快適だ。

 

「何頼む?」

 

「あ〜……少し前に腹に詰めたから、ドリンクバーだけでいいや」

 

「分かったわ。私は未だ何も食べていないから、色々頼むわ」

 

「あいよ」

 ボタンを押して、店員さんを呼ぶ。あっ、その前にトイレ行こう。

 

「ちょっと御手洗に行ってくる」

 

「分かったわ。飲み物用意しておくわ。何がいい?」

 

「ん〜、ジンジャーエールで」

 

「了解」

 

 えっと、トイレは……あった。混んでいるな。

 

 

……。

 

 

 

「んじゃ、○ミケお疲れ様でした」

 

「お疲れ様」

 

 トイレに行ったあと、鳳の待つ席に戻る。既にグラスに氷と飲み物が入れて置かれていた。鳳とグラスを軽く当てて乾杯。うめぇ。

 

「おいしい。……あっ、おかわりしてくるわ」

 

「俺が持ってくるよ。俺はサークル参加で座っていたから、そこまで疲れていない。けど鳳は一般参加で立ち続けていたんだ。座ってろ」

 

「……ありがとう、お言葉に甘えるわ」

 

「そうしてくれ。ジンジャーエール?」

 

「えぇ、お願い」

 

 相変わらずジンジャーエール好きだな。一杯目も鳳はジンジャーエールを飲んでいた。

 

 

 

…………。

 

 

 

「──んで、こっちに来たのか」

 

「えぇ」

 

 クーラーの効いた店内で涼みながら、俺は鳳と会話をした。

 高校卒業後の事。

 今、何をしているのか。

 話すと長くなるから簡単に纏めると、

 

・学校の先生に俺の進路先を聞く

・提督になった事を知る

・俺に会う為に艦娘になる

・呉鎮守府に約5年間所属

・休暇を貰えたから、関東に来た

・俺達のサークルの新刊を買いにコミケに参戦(・ ・)

・偶然、俺と会う

 

……こんな所だ。ツッコミどころ満載だが、ツッコまん。ツッコんだら負けだと思っている。

 

「まさか、鳳がそっち関係の仕事(艦娘業)をしているとは思わなかった」

 ファミレスだから、「艦娘」とは言わず、別の表現をする。

 

「意外だった?」

 

「ああ」

 鳳は、本来なら進学する予定だったが、適性検査を受けたら適性持ちであることが判明し、艦娘になったそうだ。その理由が俺に会う為って……もっと自分を大切にしなさいよ。俺の後輩(阿武隈)とか、幼馴染(瑞鶴と翔鶴)とか。何で俺に会う為にそこまでするのだろう……。ちょっと。いや、かなり怖いです。

 

「だから、俺の職場(鎮守府)瑞稀(瑞鶴)が居るのを知っていたのか」

 

「そうよ。職場の上司(呉鎮守府の提督)に教えてもらったの」

 

「成程」

 納得した。

 

「お待たせしました、ミ○ノ風ドリアと小エビのサラダのお客様」

 

「あっ、はい」

 

 会話に夢中になっていたら、店員さんが注文した料理を運んできてくれた。……ちょっと待って、量多くない?まだあるんだけど。

 店員さんの持つトレイには、パ○チェッタのピザ、辛味チキン、やわらかチキンのサラダ、そして、

 

(リブステーキまであるよ……)

 すんげぇボリューム。まさか、一人で全部食べるのか?

 言い忘れていたが、鳳は小柄だ。身長は約150cmあるか無いか。しかし、侮るなかれ。彼女は俺を軽々と投げ飛ばせる(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 艦娘だから余裕だろって?いやいやいや、違うんだよ。鳳は艦娘になる前。高校生の時、俺を投げ飛ばしたんだ。

 投げ飛ばされた経緯は割愛するが、当時、身長約175cm、体重約60kgの俺が、投げ飛ばされたんだ。

 説明が前後するが、鳳は筋トレが趣味の脳筋系少女──

 

 

「(<⚫>)(<⚫>)」

 

 

 

……鳳さんが視線で俺を射殺せんばりに見つめてくるから、これ以上説明するのはやめるね?

 つまり、何が言いたいかって?鳳は運動を良くするから、良く食べる娘なんだ。所謂大食い。はい、説明終わり。

 

「キン○マもぎ取るわよ?」

 

「あのねぇ、女の娘がそういう単語を堂々と言っちゃダメでしょ!」

 何で堂々と言えるの!……ああ、それと、鳳は下ネタが大好きだ。学生時代、よく彼女はピー音が付くような単語をマシンガンの如く連発していた。その度に俺は叱って止めた。しかし効果は無かった。

 

「ふふっ。相変わらず、下ネタには弱いのね」

 

「君は相変わらず言うのね……」

 お兄さん、疲れたよ。もう、下ネタ言ってきても止めない。無視してやる。

 

 

 

 

………………。

 

 

 

「……あっ、そろそろ帰らないと」

 

「そう?じゃあ、お開きにしましょう?」

 

 鳳と会話をしていたら、結構時間が経っていた。

 店内の壁に掛けられた時計を見ると、18:00を指していた。やべっ、門限に間に合わないかもしれん。もし間に合わなかったら、スタイリッシュ土下座して謝ろう。

 

「今日はありがとう。機会があったら、また会いましょう?」

 

「おう。こっちこそ、ありがとう」

 そして、俺達はレジに向かい、お金を払って店を後にした。

 

「んじゃ、気を付けて帰れよ?」

 

「渡良瀬くんの方こそ。それじゃあね」

 

 互いに手を振り、俺は国○展示場駅に。鳳は、ゆ○かもめ駅へ向かった。

 久々に再開して色々会話したが、高校の時とあまり変わっていなかった。

……また、会いたいな。

 

「間もなく、駅に電車が到着します」

 

「やべっ!」

 駅員さんのアナウンスが聞こえた。次の電車は10分後だ。急がないと!

 走らず。早歩きで改札を通り、階段を降りてホームへ向かうと──

 

「……オワタ」

 人が沢山居た。あっ、これ、乗れないわ。確実に門限破るね。

 

「電話しておくか」

 絶対怒られる。正座させられてお説教コース確定だな。スマホを取り出して、香苗に電話を……電池無くなったクソァ!!充電器は……無い。ははっ。終わったな……。

 帰ったら、誠心誠意謝ろう。

 

 

 

side 提督 out

 

 

 

───────

────

 

 

 

side ??

 

 

「んじゃ、気を付けて帰れよ?」

 

「渡良瀬くんの方こそ。それじゃあね」

 ファミレスを出て、それぞれの駅に向かう前にそう言って、互いに手を振り、別れた。

 

(もっとお話したかったな……)

 けれど、彼は明日から仕事だと言っていた。少し、残念ね。けど、数日後には再び会える。我慢しましょう?

 

(私が着任する事を知ったら、どんな反応をするのかしら?)

 ファミレスで会話した時、一般人が周りに居るから(ぼか)して説明したけど、私は艦娘になったと伝えた。けれど、彼の鎮守府に異動する事は言っていない。

 明日辺り、私が異動する旨の書類が届くから、それを見た時どんな反応をするのか見たいなぁ。彼の事だから、椅子から転がり落ちるでしょうね。

 

(早く異動したいわ)

 けど、まだ異動することは出来ない。あと数日待たなければならない。待ちきれないわ!

 

(モヤモヤするわね。走って気を紛らわせましょう)

 ホテルに到着したら、戦利品を置いて、近くの24時間営業のジムに行って身体を動かしましょう。

 

 

 

 

side ?? out

 

 

 

 

───────

───

 

 

 

 

side 提督

 

 

 

──第603鎮守府、玄関──

 

 

 

21:30。

 

 

 

「……」

 

「……」

 鬼が居る。おまえは何を言っているんだ?と思ったそこのあなた。本当なんだ、嘘じゃない。俺の目の前に鬼が居るんだ。

 

「……提督、今、何時か、分かるかしら?」

 

「……現在時刻、21:30です」

 玄関で正座をしながら、目の前の鬼もとい、矢矧に言う。

 何があったか説明するとだな、電車が混んでいて乗れなかったり、第603鎮守府の最寄り駅に着いてタクシーを探したが、中々来なかったりした。その為、門限よりも遅く帰ってしまった。

 その結果、玄関を開けたら鬼が待機していて、荷物を置いてジャンピング土下座した。んで、お説教が始まり今に至る。

 

「私は、何時までに、帰ってきなさいと、言ったかしら?」

 

「20:00までに帰るよう、言っていました……」

 あの、矢矧さん、怖いです。真顔でハイライトの消えた目で凝視しないでください。

 

「……はぁ。いい?次にこんな事があったら、許さないわよ?」

 

「はい、気を付けます……」

 

「声が小さい!」

 

「はっ、はいっ!」

 

「言い淀まない!」

 

「はいっ!」

 

「よろしい。それじゃあ、荷物を置いてお風呂に入ってきなさい」

 

「はい」

 どうやらお説教が終わったようだ。矢矧に言われた通りにするか。

 荷物を持って、自室に向かい、戦利品を床に置く。そしてクーラーのスイッチをオン。

……疲れた。そういや、明日から仕事だ。さっさと風呂に入って休もう。布団は……風呂から出てから敷こう。

 

 

 

…………。

 

 

「ふぅ」

 身体を洗ってお湯に浸かった後、水をかけて冷却。お陰で風呂上がりだけど、あまり汗をかいていない。

 この気温だ。涼しくなるまで、風呂から上がる前に水を身体にかけよう。

 さーて、風呂に入った。明日から仕事だから寝よう。 押し入れから布団を出して、敷いて……よし、準備完了。寝る──前に、テレビをつけて、天気予報を確認。えーと、何何……うわぁ。明日も35℃超えるのかよ。勘弁してくれ。

 

(熱中症や脱水症状にならないよう、皆に注意しておくか)

 朝イチ──起床時間が06:00。06:30〜07:00まで朝食。

 食器を片したりするから、07:30に会議室に集合するよう、朝食を摂る前に伝えるか。

 頭の中で、明日の予定を立てる。

 

 確か、資材が届くのは10:00頃だったな。それまで出撃や演習は出来ないから、待機状態にさせるか。……よし、寝るぞ。

 考え事をやめ、無心になって横になる。

 コミ○で結構体力を消耗したから、すぐに睡魔が襲ってきて、深い眠りに就いた。

 

 

 

 

 

side 提督 out

 

 

 

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次回予告


 提督、休養状態が終わりましたね。本日からまた、お仕事頑張りましょう!初霜が、全力でお支えます!
……えっ?どうしてそんなに元気なのか、ですか?実は、注文したスピーカーが昨日、届いたんです!
 ふふふ。これで毎日、私のお部屋がライブハウスになります!
 はい。勿論、皆さんのご迷惑にならないよう気を付けます!
……あら、提督、どうかされましたか?書類を見て、硬直していますよ?
……えっ、大本営から、資材だけでなく、榛名さんの第二次改装の設計図とパーツが届いた?えーじーぴー……あーまー、がーるず、ぷろじぇくと……何ですか、それ?あっ、提督が倒れました……。



第66話・再始動



「ガチの殴り合いが出来る改装にしろと、誰が言った!大本営ァ!!!」



【補足的なナニか】

・LINE…スマホまたはiPhoneのアプリ「LINE」。メールや通話が無料で出来る優れたアプリ。
 仕事やプライベートで使用する人は多いと思う。

・敵の襲撃を受けた~…元ネタは「メタルギアシリーズ」に登場する無能兵士の台詞。
 兵士の視界外から攻撃すると、「HQ、こちらパトロール。敵の攻撃を受けた。敵の位置は不明」と言う(場合によっては、内容が変わります)

・真顔でなんてこと言うの…元ネタはアニメ「月刊少女野崎くん」に登場する台詞の一つ、「真顔でなんてこと言うの、千代ちゃん」。
 
・マリリン・モンロー…1926年生まれの、アメリカ合衆国の女優・モデル。

・汗を全くかいていない…非常に危険な状態。暑いのにこの状態の人が居たら、水分補給をさせよう。あと、塩飴も舐めさせてあげよう。そのままだと倒れ、最悪死に至ります。

・アンスコ…アンダースコートの略。所謂、見せパンパンツじゃないから恥ずかしくないもん!

・コス広場…コスプレ広場の略。毎年、面白いコスプレイヤーさんが出現する、腹筋に悪い場所。腹筋を鍛えたい人は、一度足を運んでみては如何?

・オカン…母親の事。ここでは第603鎮守府に所属している、阿賀野型軽巡洋艦三番艦、矢矧のことを指す。
 しっかり者。厳しい。だらしない返事をすると叱ってくる。オカン要素が満載。別名、「ダメ提督更娘」(秋雲命名)
 尚、矢矧本人にオカンと言うとキレる模様。

・ミラノ風ドリア…安いが、とっても美味しいドリア。サイゼリアの目玉料理の一つ。
 いつも思うけど、パンチェッタのピザとか、あの値段で大丈夫なの?もっと値段上げてもいいのよ?

・国際展示場駅、ゆりかもめ駅…コミケに行く時は、オタク達に夢と希望を与え、帰宅する時は現実へと帰らせる場所。2次元に暮らしたい

・えーじーぴーぷろじぇくと…次話で明らかにされます。


以上、補足終了。
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