追跡鶴   作:EMS-10

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※注意※
いつも通り、頭の悪い内容となっております。
頭を空っぽにして、ご覧ください。







※ゾンビ……じゃなかった。涼月の水着mode、いいね。最高だよ。
 所で運営さん、瑞鶴の水着modeは?
 ねぇ、運営さん、


瑞鶴の水着modeはまだですか?




第66話・再始動

 

side 提督

 

 

 

──第603鎮守府、会議室──

 

 

 

07:50。

 

 

 

 

「えー、本日から鎮守府の運営を再開する。気持ちを切り替えて、仕事をしてくれ。

 資材が届くのは、10:00を予定している。搬入が終わり次第、出撃をしてもらう。

 本日出撃してもらうメンバーは、旗艦・千歳さん、扶桑さん、摩耶、阿武隈、海風、早霜。以上、6名だ。

何か質問はあるか?

……無いみたいだな。それじゃ、資材が届くまで、各自待機してくれ。以上、解散」

 2週間という長期休暇を満喫したから、休みボケしていないか不安だったが、様子を見るに、皆しっかり仕事モードになっていた。

 よーし、今日からお仕事頑張るぞい、っと。

 

 

……。

 

 

08:00。

 

 

──第603鎮守府、執務室──

 

 

「働きたくないでござる」

 

「し、しっかりしてください、提督」

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 執務室の扉を開けるのと同時に、俺は逃げたくなった。

 何これ?艦○れ!2期、おめでとうございます!

……ふざけている場合じゃない。

 何があったか説明しよう。

 

 会議室で皆に鎮守府の運営再開を伝えたあと、本日の秘書艦、初霜と一緒に執務室に入ったら、俺の執務机と秘書艦の机の上に、今まで見たことのない量の書類が鎮座していた。なんだよ、コレ。全部重ねたら、床から天井まで余裕で届くぞ?ヤベぇよ、ヤベぇよ。

 

 恐る恐る書類を確認すると、第603鎮守府が休養状態の間、他所の鎮守府──第8492離島鎮守府と、近隣の鎮守府(・ ・ ・ ・ ・ ・)が深海棲艦の対応や、漁船・タンカーなどの警護を受け持ってくれた。

 今度、高い菓子折り持ってお礼を言いに行こう。

 話を戻す。出撃や警護をする際、書類に色々書く必要があるんだが、それが2週間分ある。

 

「見たところ、承認したサインを書き込むだけみたいです」

 

「どれどれ……あっ、これなら何とかなりそう」

 どうやら受け持ってくれた鎮守府の提督達がある程度書いてくれたから、俺が記載する箇所は少ない。

 出撃した日時・天候・気温。何をしたか。艦娘の損害。燃料・弾薬などの消費資材。他にも色々あるが、それらは全て記載されていた。

 

(ただでさえ忙しい筈なのに……)

 自分の鎮守府の書類があるのに、処理をしてくれた。マジで頑張ろう。泣き言なんか言ってる場合じゃねぇぞ。資材が届いたら、出撃させて深海棲艦を絶滅させる勢いで狩ってやる。そんで、対応してくれた鎮守府の仕事を減らして楽させてあげよう。

 

「ッシャオラ!やってやる!」

 

「私も、全力でお手伝いしますね!」 

 

 初霜も気合い入っている。負けてらんねぇ。やるぞ。

 

 

 

………………。

 

 

 

10:30。

 

 

「……あっ、今何時だ?」

 夢中で書類を捌いていたから、時計を見ていない。えっと……今、10:30か。あっ。

 

「資材搬入の時間が30分過ぎているな」

 予定では、本日の10:00に搬入されるのだが、30分が過ぎても未だ届いていない。

 

「09:50頃から時々外を見ましたが、まだ来ていないみたいです」

 

「そうか」

 初霜が、窓から外を見ながらそう言った。仕事に夢中になっていた俺に代わって、確認をしてくれたみたいだ。有難い。

 

「しかし、30分経っても来ないのか……」

 あまり言いたくないが、しっかりしてくれ、大本営。いつも「時間内に行動しろ」と言ってくるのに、言った本人が守らないんじゃ、意味無いぞ?

 

「もしかしたら、細い道に苦戦しているのかもしれません」

 

「あー……有り得る」

 言葉は悪いが、第603鎮守府周辺は田舎だ。道が細く、おまけに舗装されていない所ばかり。

 大本営があるのは、都会だ。都会の道路は道幅が広く、舗装されているから走りやすい。それだから、慣れない田舎道に苦戦して予定より遅れているのかもしれん。……おっ?エンジン音が聞こえる。来たのか?

 

 そう思ったのと同時に、鎮守府の正面入口に待機してもらっている妖精さんから、来客を知らせる連絡を受けた。

 

「来たか。ちょっと行ってくる。初霜、悪いがその間、書類を頼む。あと、夕張に資材の搬入準備をするよう伝えてくれ」

 

「了解しました!お任せ下さい!」

 

 

………………。

 

 

 

──第603鎮守府、工廠──

 

 

11:30。

 

 

 

「では、自分はこれで失礼します!」

 

「ありがとうございました!」

 

「暑い中、本当にありがとうございます」

 燃料・弾薬・鋼材・ボーキサイトをそれぞれのコンテナに搬入し、それが終わると、搬送が完了したと証明書にサイン。

 大本営から資材の搬送をしてくれたお姉さんに書類を手渡し、飲み物を差し入れした。暑いから、熱中症や脱水症状には充分注意してくださいね。

 

 書類と飲み物を手渡すと、お姉さんは再び大本営へ向かって大型トラックを走らせた。

 それを俺と夕張は見送った。

 

「やっと届きましたね」

 

「あぁ。それにしても、予想通りだったとは」

 

「まぁ、仕方ありませんよ」

 

 到着が遅れた理由は、初霜が予想した通り、慣れない田舎道に苦戦したから、だそうだ。

 

「私も最初は、買い出しに行くのに苦労しましたし」

 

「俺もそうだったなぁ」

 かくいう俺も、最初は苦戦した。何度かコースアウトして、レッカー車の世話になったなぁ。今は慣れたからコースアウトしなくなったが。……懐かしんでいる場合じゃない。

 

「それにしても、多いな」

 普段、搬送してくれるトラックより大きいトラックだったから、疑問に思っていたんだが。

 

「コンテナに入りきってないですよ?」

 

「こんなに頼んでいないんだが……」

 頼んだ量より、明らかに多い。何処かの鎮守府に搬送する資材と間違えたんじゃないの?そう思い、搬送してくれたお姉さんに何度も確認したんだが、大本営のサインが入った書類を見せられた。

 そこには、「第603鎮守府の資材」と書かれていた。

 もしかしたら、この書類を作成した人が、ミスって「第603鎮守府」と記載したのかもしれん。大本営に確認しよう。

 

「俺は執務室に戻って大本営に確認してくる。確認が終わるまで、資材には触れないでくれ」

 

「了解しました!」

 

 急いで工廠を後にして執務室に向かう。初っ端からグダグダだなぁ。早く皆に出撃してもらって、深海棲艦を狩って他所の鎮守府の仕事を減らしたいのに。

 

 

 

……。

 

 

 

「あっ、提督、お帰りなさ──そんなに慌てて、どうかされました?」

 

「すまん、初霜。大本営に確認したい事があるから、暫く席を外してくれ 」

 

「了解しました!初霜、退室します」

 

 初霜が退室したのを確認し、急いで大本営の事務課へ電話。

 ワンコール。出た。

 

『はい、こちら、大本営事務課です』

 

「突然のお電話、失礼します。自分は第603鎮守府所属、渡良瀬準少佐であります」

 あれ?電話相手の声、何処かで聞いたことがあるぞ?

 

『あら、渡良瀬少佐。お久しぶりです』

 

「えっ?その声……」

 川○綾子さんに似た声の女性。間違いない。この声の主は──

 

笹川(ささかわ)さん?」

 

『はい、そうです』

 

 うぇ〜い、マジかよ。大淀型軽巡洋艦一番艦、大淀の適性を持つ女性。

 エク○カリバーを持つ英霊や、テンションが上がると「す〜ぱ〜あかりんだよっ♪」などとはっちゃける女子高生に似た声の持ち主、笹川さんだ。22話ぶりの登場ですよ。22話って何?謎電波受信しちゃった。

 

『どうかされました?』

 

「……あっ、その、確認したい事がありまして……」

 いかん、笹川さんの声が川○綾子さんボイスに似ているから、変なこと考えちまった。しっかりしろ。

 

『確認したい事、ですか?』

 

「えぇ。実は──」

 

 

……。

 

 

「──というわけなんです」

 

『成程。それで、ここ(事務課)に電話をしてきた、と』

 

「はい」

 笹川さん──大淀さんに事情を説明した。これで良し。

 

『渡良瀬少佐、ご安心ください。ミスなどではありません』

 

「えっ!?」

 

『正真正銘、第603鎮守府の資材ですよ。ですので、安心して使用してください』

 

「えっ?はぁ!?」

 ミスじゃない?嘘だろ!?

 

『お気持ちは分かります。ですが、先程申した通り、搬入された資材は正真正銘、第603鎮守府の物です。大事なことなので2回言います。第603鎮守府の物です』

 

「は、はぁ……」

 いや、でも、もしかしたら、「実は間違いでした」なんて可能性もある。それに、大本営の一部のお偉いさん方は俺のことを嫌っている。

 理由?俺が提督候補生の時、養成所で艦娘候補生の娘達と結構仲良くしていたから、それを見て「艦娘を誑かすクズ」と認識されて、嫌われてしまった。だから、俺を陥れる為にわざと資材を多く送り、大丈夫だと嘘を言い、消費させて、あとから「やっぱり他所の鎮守府の資材だった」とか言って、資材を不正使用した!と罪を作り処罰する気なのかもしれん。

 

『──とか考えていませんか?』

 

「」

 

『無言は肯定とみなします』

 

 何で俺の考えたことが分かるの?怖いよ。

 

『私は怖くなんかありませんよ?』

 

「だから何で分かるの!?」

 言葉に出していないのに何故分かった!?

 

『昔、心理学を専攻していましたから、簡単に分かります。ふふっ』

 

「───ッッ!」

……あっ、思わず電話を受話器に叩き付けてしまった。

 いかん、通話中だったのに。急いでかけ直さないと。……電話が鳴った。大淀さんかな?いや、他の所からの電話かもしれん。気持ちを切り替えろ。

 

「はい、こちら第603鎮守府──」

 

『問おう。あなたが私のマスター(提督)か?』

 

「召喚した覚えがないので英霊の座にお帰りください」

 大淀さん(笹川さん)でした。やっぱり声が似ている。一瞬、セ○バーかと思ったよ。

 

『もう。いきなり電話を切るなんて、酷いですよ?』

 

「怖いから思わず切ってしまいました」

 正直に言おう。怖いです。

 

『ふふっ、ちょっとしたジョークですよ?怖がらないでください』

 

「無理です」

 

『オホン。おふざけがすぎましたね。ここから真面目にお話します。渡良瀬少佐が申請された資材が多く届いた理由ですが、決して大本営の陰謀などではありません。本当に安心してください』

 

「……分かりました」

 そこまで言うのなら、信じよう。

 

『もし、大本営がごねたら、私が潰しておくのでご安心ください♪』

 

「」

 

『……冗談ですよ』

 

「冗談に聞こえなかったです」

 

 

 

………………。

 

 

 

──第603鎮守府、埠頭──

 

 

 

13:00。

 

 

「2週間ぶりの出撃だから、感覚が鈍っている恐れがある。まずは近海を警邏して感覚を取り戻してくれ。決して無理、無茶はするな。分かったな?」

 大本営に確認の電話をして一時間後。大淀さんを信じて資材を使用することを決意。もし何か言われたら、大淀さんに連絡すればいい。

 

「あいよ!」

「任せて、提督!」

 

 艤装を纏った摩耶と阿武隈が返事をしてくれた。

 

「では、千歳さん。よろしくお願いします」

 

「任せて」

 

 旗艦の千歳さんに声をかける。千歳さんなら、間違った判断をしない。だから、旗艦を任せた。

 

「敵の潜水艦が居ないか、しっかり確認をしてくれ」

 

「はいっ!了解しました!」

「ふふっ……しっかり足元を……見ます。ふふふ……」

 

 海風と早霜に、敵潜水艦を警戒するよう伝えた。

 これで良し。さぁ、執務室に戻ってお仕事だ。

 

「提督、まだ扶桑さんに声掛けてねーぞ?」

 

「……」

 

「声掛けてやってくれ。いや、掛けてやってくださいお願いします。声掛けずに執務室に戻ったら、絶対不機嫌になる」

 

「……分かったよ」

 摩耶に言われた通り、扶桑さんに声を掛けるか。けど、本音を言えば掛けたくない。何故かって?それは──

 

 

 

 

 

 

 

 

「首置いて逝け(素振り) 首置いて逝け(素振り)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 狂気に満ちた笑みを浮かべ、同じく狂気に包まれたような声で「首置いて逝け」と言いながら、日本刀を素振り──正確には、居合切りをしていて怖いから、声を掛けたくない。

 けど、声を掛けなかったら、摩耶が言った通り、不機嫌になる恐れがある。そうなったら、腹いせに首をお持ち帰りしてくるかもしれん。声を掛けよう。

 

「扶桑さん」

 

「首置いて──あら、渡良瀬少佐?如何されましたか?」

 

 声を掛けたら、普段の優しい顔と声に戻った。多重人格(・ ・ ・ ・)なんじゃね?と言いたくなる程の変わり様だ。

 

「久々の出撃ですから、決して無理、無茶をしないでください。約束してください」

 

「はい。決して無理や無茶はしません」

 

「首を持ち帰らないでください。いいですね?」

 

「」

 

「この世の終わりみたいな顔をしないでください」

 

「わ、分かりました……持ち帰りません」

 

「耳や目ん玉を持ち帰るのも無しですよ?」

 

「」

 

「……持ち帰る気だったんですね?」

 

「……」

 

「目 を 逸 ら さ な い で 下 さ い」

 持ち帰る気満々だったんかい!あっっっっぶねぇ、釘を刺しておいて良かった。

 

「……そ、そろそろ出撃してくれ。千歳さん、後は頼みます」

 ただでさえゴタゴタがあって出撃の予定時刻が遅れているんだ。これ以上此処で時間を食うわけにはいかない。

 

「了解よ。それじゃあ皆、私に付いて来て?」

 

 旗艦の千歳さんに任せて、そろそろ執務室に戻ろう。

 出撃する皆を見送り、埠頭から執務室に向かった。

 

 

 

……。

 

 

13:10。

 

 

「ただいま」

 

「お帰りなさい。あっ、今冷たい麦茶とタオルを用意しますね」

 

「ありがとう」

 暑い外に居たから、汗だくだ。それを見た初霜は、飲み物とタオルを用意してくれた。気配りが出来る、善い子(・ ・ ・)だよ。ただし、休養状態の時。プールに行った際、葛城と二人でやらかしたのは忘れていない。少し、警戒しておこう。

 初霜からタオルを受け取り、汗を拭いたあと、差し出された麦茶を飲む。冷た過ぎず、温過ぎず、絶妙な温度だ。とても美味しい。それだけじゃない、これは──

 

「麦茶にお砂糖とお塩を少しだけ入れました。お口に合いましたでしょうか?」

 

「とても美味しいよ。ありがとう」

 やっぱり、砂糖と塩が入っていたか。水分だけ摂取すると、水中毒になる恐れがある。それを防ぐ為、砂糖と塩を入れてくれたみたいだ。気配りが上手な娘だ。

 

「……よし、仕事するか」

 水分補給をして、喉の乾きを癒した。ここからは集中して書類を捌こう。

 

 

……。

 

 

「……あら、ノック?」

 

「誰だ?」

 書類を捌いていたら、執務室の扉がノックされた。

 

『榛名です。先程、大本営から封筒が届きました』

 

「大本営から?入ってくれ」

 封筒?何の書類だ?まぁ、見れば分かるか。

 持ってきてくれた榛名を入室させる。扉が開くと、艦娘の装束を纏った榛名が入室してきた。

 

「こちらが、先程届いた封筒です」

 

「ありがとう」

 榛名が封筒を差し出してきた。二つある。片方は結構分厚い。もう片方は薄い。まずは、薄い方の封筒から見よう。

 ペーパーナイフで封を開け、中から書類を取り出して見ると──

 

 

「……はぁっ!?」

 

「キャッ!?」

 

「ふえっ!?」

 

「……すまん」

 思わず大声を出してしまった。そのせいで、初霜と榛名が驚いてしまった。大声出してすまない。

 

「あ、あの、何が書かれていたのですか?」

 

 初霜が恐る恐る聞いてきた。いや、うん。ちょっと。いや。かなり驚く事が書かれていてね……。

 

「何か、悪いお知らせでしょうか?」

 

「いや、悪い知らせじゃない。(むし)ろ、良い知らせ……なのかな?」

 

「「?」」

 

「……三日後、此処に艦娘が異動してくる」

 

「……えっ?」

 

「ど、どのような方が、異動してくるのですか?」

 

 初霜は硬直し、榛名は誰が異動してくるか聞いてきた。異動してくる、という文字だけしか見ていないから、誰が来るのかまでは見ていない。確認しよう。

 

 

 

【_月_日を以て、呉鎮守府より第603鎮守府に、大鳳型装甲空母一番艦、大鳳を異動させる】

 

 

 

「大鳳型装甲空母一番艦、大鳳。マジかよ……」

 

「たっ、大鳳型装甲空母!?」

 

「翔鶴さんや瑞鶴さんと同じ、装甲空母の方が異動してくるのですね?」

 

「そうだ」

 初霜は驚き、榛名は冷静に艦種を言ってきた。

 

 

大鳳型装甲空母一番艦、大鳳

 

 

 第二次特殊改装(・ ・ ・ ・)を施した翔鶴型航空母艦と同じ、装甲空母。しかし、翔鶴型航空母艦と違い、大鳳型装甲空母は改装を施す前から(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)装甲空母という、かなり特殊な艦種だ。

 

 そうそう、史実では、大鳳は当時最新鋭の技術を使用して建造されたが、敵の魚雷を「一発(・ ・)」受けて、沈んでしまった艦だ。その為、「不幸(・ ・)艦」なんて言われている。

 

 話が脱線したな。とにかく、此処に艦娘が異動してくる。俺、要請した覚えは無いんだけど、何故異動してくるの?

 色々疑問に思ったが、今は書類を確認しよう。どんな人なんだろう?プロフィールが書かれている書類──履歴書を見る。

 えっと、まず本名から見よう。本名は……。

…………。

……。

…。

 

 

「て、提督!?お顔が真っ青ですよ!? 」

 

「どうかされたんですか!?」

 

 初霜と榛名の声が遠くから聞こえる……気がする……。あははは。あははははははは。

 

 

「ウソダドンドコドーン!」

 

 

「( ÒwÓ )<ナズェミテルンディス!」

 

「( ÒwÓ )<オンドゥルルラギッタンディスカー!」

 

「……ネタ返し、ありがとう」

 お陰で冷静になれたよ。というか、変顔やめなさい。似過ぎて笑いそうになるわ。

 

「突然オ○ドゥル語を叫び出しましたが、どうしたんです?」

 

「……言いたくない。頼む、何も聞かないでくれ」

 マジで聞かないで?俺がそう言うと、質問してきた初霜は何も言ってこなかった。榛名も、俺の様子を見て質問してこなかった。

 

「……はぁ」

 夢なら覚めて。本当にお願いします。

 

((おおとり)ェ……)

 アイツ、自分が此処に異動するのを知っていたが、わざと言わなかったな?

……待て待て、もしかしたら、同姓同名なだけかもしれん。希望を捨てるな。

 もう一度、履歴書を見る。そこには──

 

 

【本名…鳳綾(おおとりあや)

 出身…_県_市

 年齢…××歳

 性別…女】

 

 

(見間違えなんかじゃない……)

 学生時代の友人の名前と出身地、年齢が書かれている。それだけじゃない。証明写真もある。うん、俺の知っている人だ。昨日ビッ○サイトで再開した人と全く同じです。

 あはははは。なんだか、瑞鶴が着任してきた日のことを思い出すよ。はははは。

 

……笑っている場合じゃない。冗談抜きでヤベぇぞ。鳳は、瑞鶴──瑞稀(みずき)のことを物凄く嫌っている。学生時代、しょっちゅう取っ組み合いをしていた。瑞稀(瑞鶴)だけじゃない。翔鶴──静流(しずる)の事も嫌っている。

 

 理由を話すと長くなるから割愛させてもらうが、とにかく二人(瑞稀と静流)と鳳は非常に仲が悪い。あの頃は学生だったから、取っ組み合いで済んだが、今は三人とも艦娘だ。

 

(鎮守府が更地になりかねん……)

 艦娘の力を使ってドンパチ始める恐れがある。

 しかし、現在はあの頃と違い、瑞稀と静流は俺に暴力を振るわなくなった。代わりに、性的な意味の暴力を振るってくるようになったけど。

 と、とにかく、鳳が異動してきたら、真っ先にその事を話そう。

 

 それと、裏瑞鶴(仮名)の事も説明しないと。

 やる事が増えた。頑張ろう。

 

「……あっ、もう一つあったんだ」

 鳳もとい、大鳳が異動してくる衝撃が大き過ぎて忘れかけていた。

 分厚く重い封筒をペーパーナイフで開けて、書類を取り出──さずに封筒に戻す。

 

「提督?どうされまし──」

 

「なんでもないよ?初霜」

 

「えっ……ですが、書類を3分の1ほど取り出して、すぐ封筒に戻しましたよ?何が書かれ──」

 

「なんでもないよ?」

 

「で、ですが──」

 

「なんでもないです(迫真」

 

「は、はぁ……」

 

 なんでもない。俺がなんでもないと言ったら、なんでもないんです。

 俺は見ていません。デカデカと、榛なんとかさんの第二次改装設計図と書かれた文字なんて、見ていません。

 

「(<⚫>)(<⚫>)」

 

「どうしたの?榛名?」

 八尺様みたいなお目目で俺を見つめて。……あっ、榛なんとかさんの立っている位置からだと、見られたかもしれない。

 

「榛名、見ちゃいました!」

 

 アッハッハッハ!見られちゃったZE☆

……うん。キモい。

 

「提督、早く書類を出してください♪」

 

「……分かったよ」

 渋々、封筒から書類を取り出す。一番上の書類には、

 

【第二次改装設計図】

【金剛型高速戦艦三番艦、榛名専用】

 

 と書かれている。うわぁい、榛名に第二次改装が施されるぅ。鎮守府のパワーバランスが崩れちゃうぅ。

……ふざけていないで、確認しよう

 

「んーと、何何……」

 書類を見る。かなり長いから、要約すると、

 

 

 

 

【Armor Girls Project】

・略称「AGP」

・近年、近接格闘を多用する艦娘が増えた

・従来は近接武器(日本刀やメイス)を装備し、近接戦闘を行っていた

・しかし、艤装の形状が動きを阻害し、満足に近接武器を振るえない

・その問題を解消する為、艤装に近接武器を。ギミックを搭載する

・第603鎮守府所属の榛名は近接戦闘を多用する

・金剛型高速戦艦の近接戦闘データは、三番艦、榛名だけ少ない

・金剛、比叡、霧島のデータは充分ある

・榛名のデータが欲しいから、資材を多めに送り、第二次改装の設計図とパーツを送った

・しっかりデータを取ってくれ

・余った資材は【好きに使っていい】

 

 

 

「……」

 成程、だから資材が多く届いたのね。

 

「殴り合いが出来るの?腕が鳴るわね!」

 

「榛名、まだ読んでいるから静かにしろ」

 大事なことが書かれているから、集中して読む為に、低い声で榛名に注意。

 

「す、すみません!」

 

 よし、大人しくなってくれた。気を取り直して、続きを読もう。どれどれ?

 

 

 

・近接戦闘を可能にするギミックを、艤装に搭載

・ギミックは、シールドを模した形状をしている

・シールドは、敵の攻撃を防ぐ事が可能

・尚、シールドは使用者(艦娘)の精神状態に応じて、強度が変わる

・第8492離島鎮守府所属の、金剛型高速戦艦一番艦、金剛で実証済

・シールドは、アームモードに移行可能

・アームモードのアームは、殴打、掴み等が可能

・これにより、「物理的な殴り合いが可能」となる

 

 

 

 

「……」

 一通り書類を読んで、一息つく。

 とりあえず一言。

 

 

 

「ガチの殴り合いが出来る改装にしろと、誰が言った!大本営ァ!!!」

 バッッッッカじゃねーの?いや、バカか。そうでなきゃ、こんな改装案なんて出さない。

 良く見ると、この改装案を出したの、大本営の技術課じゃん。変態技術者の巣窟じゃん。外国の艦娘達が、日本を「クレイジージャパン」と認識する原因を作った場所じゃん。

 あそこの技術者達は毎度、豪速球で暴投するレベルの発明しかしない事で有名だ。

……これ以上あそこを思い出すと精神崩壊するから、この辺でやめておこう。

 

 

「(( °ω° ))」

 

 

 書類を見た榛なんとかさんが、すっげぇキラキラしていらっしゃる。プルプル震えているよ?どうしたの?

 

 

「\(゚∀゚ )/三 三\( ゚∀゚)/」

 

 

 榛なんとかさんはテンションが上がったのか、無言で荒ぶっています。落ち着きなさい。女性がしちゃいけない顔しているよ?あと、両手を上げたまま高速でサイドステップしない。埃が舞う。ビジュアル的にマズいと思います。それに、スカートがヤバいです。君のスカート、短いから捲れそう──ピンクか……。

 

「ヴォイッ!」

 執務机にヘッドバンド!何見てんだよボケ。最低なことしてんじゃねぇよ。

 

「榛名さん、第二次改装を受けられるのですか!?これは、お祝いしなきゃ!輪形陣でお祝いしましょう!!」

 

 初霜、気持ちは分かるが飛び跳ねない。スカートが捲れちゃう──黒の紐パン(両サイドを紐で結ぶタイプ)か。相変わらずエグいの穿いているんだね。

 

「チェストォ!」

 執務室にヘッドバンド!TAKE2。机が凹んじゃった。

 

ヘドバン(ヘッドバンド)ですか!?ノリノリになりたいんですか!?デスメタルかけましょうか!?昨日、注文したスピーカーがやっと届いたんです!爆音でかけましょうか!?」

 

「かけなくていいです」

 

「……分かりました」

 

 初霜、ションボリしないで。そんなにデスメタルかけたかったの?今度、一緒に聴いてあげるから、我慢して。

 

「シールドアーム!これで、深海棲艦を沢山屠れます!榛名、感激です!!」

 

「榛名、落ち着──」

 

「この改装を受ければ、榛名はゴッ○・ハンド・クラッシャーが出来るようになるんですね!」

 

「榛名さん、落ち着いてくださ──」

 

「今のうちに、決め台詞を考えておきましょう!」

 

「『○ッド・ハンド・クラッシャー!』でいいんじゃない?」

 ダメだ、俺の話を聞いていない。大丈夫じゃない榛名になっているね。もう止めるのやめる。俺もノッてやる。その方が精神衛生上、よろしいと思う(←錯乱気味)

 

 

「粉砕!玉砕!大喝采!(CV:津○健次郎)

 

 

───イマイチしっくり来ませんね……」

 

「かっこいいと思うよ?」

 

 

「今死ね!直ぐ死ね!骨まで砕けろォい!(CV:若○規夫)

 

 

 

───長いですね」

 

「骨くらい簡単に砕ける出力があるから、良いと思うよ?」

 

「う〜ん……どれもパッとしませんね。じっくり考えないと」

 

「仕事に支障をきたさないようにね」

 もうツッコミ入れない。入れたら俺の精神が持たない。右から来たら左に受け流す気持ちで彼女達の奇行を流そう。

 

「消費資材は……マジかよ」

 こんなに喰うの?けど、支給された資材の量を見ると、まだまだ余裕がある。

 書類に、【余った資材は好きに使っていい】と書かれている。

 

(鈴谷の第二次改装に使うか)

 結構前に、江ノ島鎮守府から鈴谷の第二次改装設計図とパーツが届いたけど、資材が足りなかったから見送っていた。ついでにやっちゃおう。

 

「初霜、書類を片すぞ」

 

「了解しました!」

 

「榛名もお手伝いします!」

 

「あいよ。榛名はこっちの書類を頼む」

 この後、めちゃくちゃ書類を捌いた。

 二人が手伝ってくれたから、予定より早く片せた。

 殆どが、休養状態の間に他所の鎮守府が受け持ってくれた出撃や警護に関する書類だったが、一部だけ重要な物が混じっていた。

 

 その内容は──

 

 

 

 

【第8492離島鎮守府が受け持つ海域に、戦艦レ級が大量に出現(・ ・ ・ ・ ・)

 

 

 

(ヤバいだろ)

 戦艦レ級。別名、超弩級重雷装航空巡洋戦艦。

 戦艦の主砲並の砲撃。

 重雷装巡洋艦並の雷撃。

 正規空母並の艦載機を搭載。

 巡洋艦並か、それ以上の機動力を持つ。

 各艦種の良い所を取った、隙の無い深海棲艦。

 

 戦艦レ級は、通常種──駆逐イ級や軽巡ホ級等を指す──に分類されているが、あまりの強さに鬼・姫級に匹敵すると言われている。

 現在、ノーマルクラスとエリートクラスが確認されている。

 

 ノーマルクラス。所謂「オーラ無し」と呼称される存在でも、実戦経験豊富な高練度の艦娘でなければ、あっという間に轟沈──死亡する程の戦闘力を持っている。

 そんな存在が、大量に出現した。これは……

 

(急いで知らせた方がいいな)

 そうと決まれば、出撃させた千歳さん達を帰還させよう。

 無線を手に取り、通信。すぐに繋がった。

 千歳さんは俺からの通信に驚いたが、理由を話すと納得してくれたのか、すぐに帰還すると言ってくれた。

 幸い、千歳さん達の現在地は比較的安全な海域だ。索敵機を出して周囲を警戒しているが、今の所、敵影は無いそうだ。

 

「油断せず、周囲を警戒して帰還してくれ」

 

『了解よ。それじゃ、またあとでね』

 

 通信が切れた。後は戻って来るのを待つだけ。

……装備開発もしておくか。やる事が多いな。忘れないよう、メモしておくか。

 

 

 

said 提督 out

 

 

───────

────

 





次回予告


 ワーオ!榛名に第二次改装実装!?
 Congratulation!!榛名!!!これで、渡良瀬少佐にAppeal出来るネ!
 いいデスカ?押して押して押しまくって、押し倒す勢いで攻めれば──えっ?私のAdviceは役に立たないから聞かない?酷いネー!お姉ちゃん、そんな娘に育てた覚えは無いデース!
 


第67話・殴殺戦艦サキュバス、爆誕!



「なんでしょう……護りたい気持が、溢れてしまいます。……提督……貴方を……



抱きしめたいなぁ!提督ぅ!!!」



※次話は過去最大級に頭の悪い内容になりそうです。




【補足的なナニか】

・大淀…大淀型軽巡洋艦一番艦、大淀の適性を持つ女性。本名、笹川亜由美(ささかわあゆみ)。外見は黒髪ロングヘアーで、眼鏡をかけている。
 昔、とある鎮守府に所属していたが、現在は事務能力の高さを生かし、大本営の事務課に勤務。
 第603鎮守府所属の、妙高型重巡洋艦三番艦、足柄とは旧知の仲らしい。
 第8492離島鎮守府に所属している、朝潮型駆逐艦十番艦、霞を溺愛している。
 普段は真面目な女性だが、霞の事になると……。※1
 ※1…本編44話参照

・エクスカリバーを持つ英霊…「Fate」シリーズに登場する「セイバー」というキャラが元ネタ。CV:川澄綾子。
 大淀とセイバーの中の人が同じだから、このネタを使った。反省している。後悔は一切していない。

・す〜ぱ〜あかりんだよっ♪…「To Heart」に登場する「神岸あかり」の迷台詞。CV:川澄綾子。

・問おう。あなたが私のマスターか?…元ネタは上記の「Fate」に登場する「セイバー」の台詞。
 詳細は各自で調べてください。

・鳳綾…新キャラ。今度、呉鎮守府から第603鎮守府に異動してくる、大鳳型装甲空母一番艦、大鳳の適性を持つ女性。
 名前の元ネタは、
 鳳…大鳳の鳳から。
 綾…中の人(能登麻美子さん)が演じたキャラからパク…お借りしました(いちご100%の東城綾が元ネタ)。
 筋トレ大好きな脳筋系少女──おや、レシプロ機のエンジン音が聞\大破/

・ウソダドンドコドーン!…「仮面ライダー剣」の俳優が言い放った「オンドゥル語」が元ネタ。
 俳優の滑舌の悪さから、「嘘だそんなこと!」が「ウソダドンドコドーン!」に聞こえる。

 ちなみに、初霜が言った「ナズェミテルンディス!!」は「何故見ているんです!」
 榛名が言った「オンドゥルルラギッタンディスカー!」は「本当に裏切ったんですか!」

・オンドゥル語…上記参照。

・Armor Girls Project…「アーマーガールズプロジェクト」。略称、「AGP」。元ネタは、「とあるフィギュア」。
 この小説内では、大本営の技術課が命名した、という設定。

 近年、艦娘が近接戦闘を多用するというデータがあり、変態技術者達が、

「艤装を纏った状態で近接武器を使用すると、艤装の形状が邪魔して満足に近接武器を振るえない」

 という声を聞き、

「なら、艤装にギミックを搭載して、それで近接戦闘をさせよう!」

 という変態的発想が出て、この計画が生まれた。
 現在、金剛型高速戦艦の艤装にこのギミックを搭載し、データを取っている。

・ゴッドハンドクラッシャー…元ネタは「遊戯王」に登場する「オベリスクの巨神兵」の技。
 フィールド上のモンスター全滅(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)、相手のライフに4000のダメージを与える、ぶったまげた技(アニメ版)。

・金剛…第8492離島鎮守府所属の金剛型高速戦艦一番艦、金剛を指す。本名、山井加蓮(やまいカレン)
 外見はブラウン色のロングヘアーで、両サイドにフレンチクルーラーお団子状に結っている。決して金髪ではない。ガーターベルトもしていない。
 第603鎮守府所属の金剛型高速戦艦三番艦、榛名の実姉。
 紅茶が大好き。コーヒーを出されるとガチギレするので要注意。
 第8492離島鎮守府を運営する、小嶋英雄准将に毎日元気に「Burning Love(物理」している、「私と貴方以外必要無い」タイプの病んだ女性。

・裏瑞鶴(仮名)…第603鎮守府所属の、翔鶴型航空母艦二番艦、瑞鶴を助けた存在。
 詳細については、現在語る事は出来ません。ご了承ください。



 以上、補足終了。

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