お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ
決して真似をしないでください
若干のシリアス及び発狂有り
ご都合主義が含まれています。
予め、ご了承ください。
side 提督
──第603鎮守府、グラウンド──
18:20。
「鈴谷!チェーンソーは!?」
「ん〜と……刃は欠けていないし、歪んでいない。まだ大丈夫!ただ、放熱が終わってないから、暫く使えない!」
「そうか!」
チェーンソーの刀身と刃を確認しながら鈴谷がそう言った。どうやらこのチェーンソーは連続稼働をすると熱が溜まり、ある程度使用したら放熱しないと使えないらしい。
さっき
何故か暴走し始めたサキュバスもとい榛名に追われて、かれこれ10分位が経つ。
最初は鎮守府──執務室や皆が寝泊まりする建物付近でドンパチやっていたが、建物に被害が出る恐れがあると判断し、グラウンドへ逃げ込んだ。
ここなら、サキュバスがギミックアームを。鈴谷がチェーンソーを振り回しても大丈夫だ。
「それにしても、
「俺としては、元気過ぎて困るんだがな」
「こりゃあ、提督がハルハルに捕まったら、一睡もせず朝までコースかもしれないねっ!」
「……一応聞くが、その「朝までコース」って何なんだ?」
何となく予想出来るが聞いてみた。
「何って、勿論ナニ──」
「それ以上言わんでいい」
聞いた俺がバカだった。
そういや忘れていた。鈴谷は足柄に匹敵する下ネタ大好き娘だったんだ。
「ね〜ね〜提督〜、この際諦めて、大人しくハルハルに捕まって【バキューン】したら?」
「女性がそういうこと言うんじゃありません!」
「んじゃ、ベッドウェー海戦しちゃったら?」
「言い直してもだめ!」
ベッドウェー海戦って、あんたねぇ……。
「提督ゥゥゥゥゥ!!!」
「うわぁ!来るな!来るなぁ!」
いかん、鈴谷とアホなやり取りをしていたから、走る速度が落ちて、榛名との距離が縮まってきている。
「何故榛名から逃げるのですか!?榛名はただ、提督、貴方をお護りしたいだけなのに!」
「お護りするんじゃなくて、襲おうとしていると思うんですが」
「榛名の傍から離れたら、お護りすることが出来ません!なので、榛名の傍に居てください!具体的には、榛名の1cm以内に居てください!」
「それ、ほぼ密着状態じゃん!」
風呂とかトイレとか、他にも色々あるがどうしろと?行動しづらいよ!あと恥ずかしい。
やべっ、また榛名が加速した!速い!このままだと捕まる!
「提督、行って!」
「鈴谷!?」
俺と一緒に逃げていた鈴谷が、チェーンソーを起動させて榛名の方へ向かって駆けて行った。どうやら放熱が終わったみたいだ。
「うりゃっ!」
「無駄ァ!」
鈴谷のチェーンソーと、榛名の左側のギミックアームが激突。そして、金属同士が擦れる独特の甲高い音が俺の鼓膜に響き、火花が激しく散る。
鈴谷は全身の体重をかけて、両手で持ったチェーンソーをギミックアームに押し付けるが、徐々に押し返され始めた。
このままだとマズい。そう判断し、鈴谷は慌てて榛名から離れようとしたが、榛名がチェーンソーを受け止めていない、右側のギミックアームで鈴谷を掴んだ。
「うわあああああ!」
悲鳴をあげる鈴谷。驚いた拍子に、チェーンソーを手放してしまった。
「……鈴谷さん」
「な、何!?」
榛名さん、鈴谷の目をしっかり見て、アルカイックスマイル!但し目は全く笑っていない!
「お疲れ様でした♪」
わぁい、榛名さんの声がとっても甘い!普段の3割増の甘い声だ!普段なら「可愛い声だなぁ」と思うけど、今は鈴谷をギミックアームで掴み上げ、目だけは全く笑っていないアルカイックスマイルを浮かべているから、とっても怖いです!
「て、提督?鈴谷、頑張ったよ?頑張ったから、入渠して復活したら、パフェをご馳走して──」
「ぬうぅぅんっ!」
「き゛ぃ゛え゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛っ゛っ゛!゛!゛?゛」
「鈴谷ぁぁぁぁぁぁぁ〜〜ッッッ!!?」
断末魔ァ!ガチの断末魔ァ!演技でもなんでもない、マジモンの断末魔だよ!濁点付きまくりの断末魔だ!思わず鳥肌立っちゃったよ!ヤベぇよヤベぇよ!?鈴谷、大丈夫か!?……あっ、悲鳴が途絶えた。
ギミックアームで鈴谷を締め上げ、静かになったのを確認した榛名は、鈴谷を解放。
ドサリ、と音を立てて鈴谷はグラウンドに倒れた。
由良のように、白目を剥いて口から泡を吐き出している。
(うわぁ……骨や内臓にダメージを与えず締め上げたよ)
少し前にも思ったけど、榛名さんや。その艤装、数時間しか稼働させていないのに、扱うのが上手過ぎない?
「……提督」
「はい、なんでしょう?」
鈴谷をダウンさせた
俺とサキュバスとの距離は約5m。サキュバスが本気を出したら、一瞬で間合いを詰められる距離だ。
考え事をするのはあとにしよう。今は目の前のサキュバスを落ち着かせることを考えろ。どうすりゃいい?
……って、あれ?泣いている?
「…………」
「……えっ?」
さっきまでおっかないアルカイックスマイルを浮かべていた榛名が突然、悲痛な表情を浮かべ、
突然どうした?
「ぐっ……うぅぅ……」
「榛名?」
「うぅ……また……流れ……て……きた……」
「流れてきた?」
掠れた声だったが、確かに聞こえた。一体何が──
「うぅ……ぐぅぅぅ……」
「榛名ッ!?」
突然、頭を抱えて苦しそうに呻きだした。
慌てて榛名に駆け寄ろうとした。しかし、突然ギミックアームが俺目がけて、一切の加減なく振り下ろされた。
「ッ!?」
咄嗟にバク転で回避。あ、危ねぇ!あっ、ポケットからスマホ落としちまった。……あーあ、粉々に砕かれてる。けど、命の方が大事だ。スマホは買い直せばいい。
もし、あのまま進んでいたら、叩き潰され、挽肉にされていた。その証拠に、ギミックアームが叩き付けた箇所は、クレーターが出来ていた。
幸いにも、気絶した鈴谷から数m離れた所で振り回されたから、
なんとか榛名を落ち着かせなければ。しかし、急にどうしたんだ?
……そういえば、さっき「流れてきた」と言っていた。
流れてきた──まさか!?
「艦の記憶や感情が流れ込んでいるのか!?」
以前、瑞鶴が
色々あって、小嶋提督に教えて貰ったんだが、
(艤装のもとになった艦の記憶。世界大戦の記憶が艦娘になった娘に流れ込み、人格等に影響を与える場合がある)
もしかしたら、これが原因で
(特に、第二次改装を施された艦娘はその影響を受けやすい)
第二次改装を受けると、艤装との同調率が更に増し、
【未改装もしくは第一次改装を施された艤装と接続した艦娘よりも、影響を受けやすくなる】
勿論、例外はある。
「ぁ……今、わた……し……な……に……を……」
「ッ!?」
「ぁぁ……ぁぁぁぁ……ぁ…ぁ…ぁ……」
「榛名?」
「わたし、いま、ていとくを、ぎそうで……」
「榛名!」
呆然とした顔で、全身を震わせながらクレーターを見、次に己が装着している艤装──ギミックアームを見ながら、消え入りそうな声で榛名は呟いた。
力なく顔を俯かせる。
静寂。
榛名、大丈夫か?
俺は恐る恐る声をかけようとした。
次の瞬間。
「ぁぁぁ……
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ"ッ"ッ"!"!"!"」
「榛名!?」
突然叫び、ギミックアームをグラウンドに叩き付けだした。
いかん、止めないと!
しかし、ギミックアームが滅茶苦茶に振り回されていて、近寄れない。
「
暫くギミックアームを叩き付けると、今度は
その顔は恐慌状態に陥っていた。それだけじゃない。
(瞳の色が、
榛名──いや、
(間違いない。艤装の影響を受けている!)
以前発狂した瑞鶴と同じ目の色をしている。
あの時、瑞鶴はすぐに気絶してその場は何とかなったが、
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ"ッ"ッ"!"!"!"」
「
何度も彼女の
こうなったら、鎮守府に居る誰か──艦娘に助けを求めよう。
急いで鎮守府に向かおうと──
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛行゛か゛な゛い゛て゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!゛!゛!゛!゛」
「──────ッッッ!!?」
──した瞬間、俺の鼓膜が破けそうになるほどの大声で叫び、呼び止めてきた。
「【あ゛の゛時゛】は゛、見゛て゛い゛る゛だ゛け゛て゛!"何゛も゛!"出゛来゛な゛か゛っ゛た゛!゛」
「あの時?」
「そ゛の゛せ゛い゛で゛!゛街゛が゛!゛人゛々゛が゛!゛一゛瞬゛で゛!゛消゛し゛飛゛ん゛た゛!゛」
「消し飛んだ……まさか!」
ギミックアームがグラウンドを叩く音のせいで、所々聞き取れなかったが、理解出来た。
【見ているだけで、何も出来なかった】
【街と人々が、一瞬で消し飛んだ】
(この二つのワード)
【金剛型高速戦艦三番艦、
ここから導き出される答え。それは──
「広島の……原爆投下……」
第二次世界大戦末期の、1945年8月6日午前8時15分。
アメリカ軍が日本の広島市に対して、世界で初めて核兵器「リトルボーイ」を実戦使用した出来事。
(戦況の悪化で、戦艦を運用するだけの燃料が無くなり、呉の江田島で係留され、浮き砲台と化した)
日本を
(それらの
原因は分かった。分かったが、
「も゛う゛、嫌゛ァ゛!゛居゛な゛く゛な゛っ゛ち゛ゃ゛う゛の゛は゛嫌゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛喪゛う゛の゛は゛、嫌゛な゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!゛!゛!゛」
止める方法が分からない。
誰かに助けを求めるにも、離れようとすれば発狂したかのように暴れながら、追いかけてくる恐れがある。
スマホで誰かを呼ぼうと思ったが、壊れてしまった。
唯一の可能性は、この騒ぎを聞き付けて誰かが助けに──
「随分騒がしいわね」
「───えっ?」
「突然揺れたから、地震かと思ったけど、直後に
「やま……しろ?」
──来てくれた。
何時の間にか、俺の後ろに山城だけでなく、秋雲、早霜、初霜、海風も居た。夕張は……居ない。恐らく、データの解析に夢中になっていて気付いていないな?
「様子を見るに、艤装から艦だった頃の記憶が流れ込んで来て、錯乱しているみたいね」
「な、なんで分かるんだ?」
山城が俺に耳打ちしてきた。
「姉様も、一時期ああなりかけた事があるの。だから、知っているのよ」
「そ、そうか……なりかけた、って言ったが、どうやって大人しくさせたんだ?」
「佐世保の提督や艦娘達は何もしていないわ。姉様はそれを抑える為、
「マジで?」
新事実発覚。
「何時も姉様は言っていたわ。「人形を愛でている間は、艤装から記憶や感情が流れ込んできても気にならない」って」
「」
「ちなみにだけど、出撃中は首を狩る事で、流れ込んできても気にならなかったみたいよ。あと、此処に着任した直後は「流れ込んでこなくなった」らしいけど、最近また「流れ込んでくる」ようになった、って言っているわ」
「そうなのか?」
「……お話はこの辺にした方が良さそうね」
「え?──あっ」
山城達が来るまで、ギミックアームを叩き付けたり、叫んでいた
何故静かになったんだ?疑問に思うと、強烈な視線を感じた。
恐る恐る視線を感じた方を見ると──
「」
「ふふふ……幼い頃、御父様に見せられた、呪○の伽○子みたいな目をしているわ。ふふ……怖いわ……」
山城さん、早く目の前の伽○子を退治してください。
ちなみに、さっきまで荒ぶっていたギミックアームは元の形に戻り、艤装に格納されている。
「提督?」
「はい、なんでしょうか、
おぉっとぉ!声がとっても低い!地獄から響いてくるような声です!
「提督ゥゥゥゥゥ……ダメじゃないですかぁぁぁぁ……提督ゥゥゥゥゥ……貴方は
「見るよ。見るから、落ち着いて?俺、何時もの可愛いお目目をした
さっきまでシリアスだった空気がぶっ壊れ始めています。コミカルな空気になりつつあります。
「すっ!好きっ!?はいっ!
あっれぇ?なんか会話が噛み合っていないぞぉ?
……まぁいいか。さっきまで発狂していたけど、今は普段の
「ち、ちょっと待ってください!今、元のお目目に戻します!
( つд⊂)」
「おいおい、そんなゴシゴシすんな」
眼球を痛めるぞ?
「はい!元のお目目に戻りました!
( つω⊂)
見てください!
(<((⚫))><((⚫))>)」
「戻っていねぇ!?」
戻るどころか、悪化しているんですが!空気が完全にコミカルになっているよ!さっきまでのシリアスな空気は何だったの!?
……あっ、
……と、ともかく、普段の
「
「はい!聞こえます!……あら?」
「どうした?」
「さっきまで、その……様々な
「……マジで?」
「は、はい」
「……そうか」
様子を見るに、本当に元に戻ったみたいだ。
但し、
お目目は元に戻っていません。おーい、早く元に戻して?
「ぶるるっるるrrrるるrrあああああああああああああああああああああaaaaaaああああッッッ!!!」(CV:若○規夫)
「ウボァァァァ!?」
「
何!?何が起きたの!?突然山城の声が、巻舌全開の○本規夫ボイスになって、
慌てて様子を見に来てくれた娘達──秋雲、早霜、初霜、海風を見る。全員、呆然としている。
「山城さんが、榛名さんの鳩尾に拳を叩き込んだのが見えたよ。恐ろしく早い鳩尾殴り。秋雲さんでなきゃ、見逃していたね」
「あ、やっぱり?」
何が起きたのか、しっかり見ていたらしい秋雲が、俺の疑問に答えてくれた。
「やま……し……ろ……さん……何故、殴ったのですか?」
おっと、榛名がふらつきながら立ち上がり、山城に問い掛けた。榛名が言ったが、山城は何故殴ったんだ?
「アンタの目が怖いからよ!やめて!私、ホラーは苦手なのよ!」
そうなの?初耳。……いいこと思い付いた。TSU○AYAでホラー映画を借りて、談話室で鑑賞会しよう。夏だし、丁度いい──
「TS○TAYAでホラー映画を借りて談話室で鑑賞会しようぜ!とか提案したら今ここでアンタのチ○コとキン○マもぎ取って女にすんぞ?」
「しません決してしません誓いますなのでもぎ取らないでくださいお願いします」
山城さん落ち着いてください。絶対やりません。やりませんから、真顔でドスの効いた声を出して迫りながら、俺の股間に手を伸ばさないで?
「山城さん、突然殴るなんて……酷いですよ」
「仕方ないじゃない!あんたの目が怖いんだもん!」
もん!って……。山城、口調が壊れているよ?あと、半べそかいてる。可愛い。
「だったら、口で言ってください!」
「言っても元に戻ってないから物理的に説得したのよ!」
「榛名のお目目は普段通りのお目目ですよ?
(<((⚫))><((⚫))>)」
普段通りじゃない。絶対、普段通りじゃないと思います。
というか、そんな目をしたら、また山城に殴られ──
「ぶるるっるるrrrるるrrあああああああああああああああああああああaaaaaaああああッッッ!!!」
「ウボァァァァ!?」
「
言わんこっちゃねぇ!山城が目にも止まらぬ速さで榛名に肉薄!再び、鳩尾を殴られたような声を出して、榛名は吹っ飛んだ!
「……山城さん……二度も殴りましたね?」
装束に付いた砂を払いながら、榛名は立ち上がった。
おぉう……お目目が怖いから、迫力がある。
「そんな目を見れば、殴りたくもなるわよ!」
「殴る前に口で言ってください!元に戻しますから!
(<((⚫))><((⚫))>)」
だから、榛名さん。その目を山城に向けたら、また殴──
「キイイイイィィィィエエエエアアアアアアアアァァァァァッッッ!!!」
「なんとおおおおおおぉぉぉぉぉ〜〜!!!」
あっ、ギミックアーム作動させて受け止めた。三度目の正直って奴かな?
「また殴ろうとしましたね?
(<((⚫))><((⚫))>)」
「こっち見んなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「……皆、気絶している鈴谷を回収して、撤収だ」
ここに居たら、巻き込まれかねん。
「えっ!?で、ですが──」
「海風、気持ちは分かるが、君は、あいつらの拳を止められる自信はあるか?」
「撤収しましょう!」
よし、いい娘だ。俺の言うことを素直に聞いてくれた。
急いで鈴谷を回収して撤収しよう。
「どうしても、やるのですか?山城さん?
(<((⚫))><((⚫))>)」
「言葉は不要。さぁ、殴り合おうや」
「早霜、秋雲。鈴谷の艤装と武器を頼む。海風と初霜は鈴谷を頼む」
俺が鈴谷を担いでもいいが、気絶した女性に触れるのはマズいと思い、同性の海風と初霜に頼んだ。
撤収準備完了。さっさと逃げよう。
えっと……気絶した由良と鈴谷を入渠させて、稼働データを纏めて。暴走した事を報告しなければならないな。それに、ボコボコにされたグラウンド。これは妖精さん達に頼んで直してもらおう。
あと、明日10:00に
やる事が多いな。……あっ、そういやスマホ壊れたんだ。正確には壊された、だが。まぁ、近日中に買いに行けばいいや。
「目ん玉元に戻せ言うとるやろがああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「榛名のお目目にケチつけないでください!!
(<((⚫))><((⚫))>)」
聞こえない。俺は何も聞こえない。背後から殴打し合う音なんか。山城と榛名の言い争う声なんか、聞こえない。聞こえないったら聞こえない。
この後、撤収して鎮守府に向かう途中、埠頭に寄って由良を回収。鈴谷と由良を入渠させて、執務室に戻り、報告書を作成しようとしたら、買い出しに行っていた矢矧と夕立が帰ってきた。
その数分後。出撃と警護に行っていた娘達が戻ってきた。全員、無事だ。それに、両方とも大成功したそうだ。良くやった。報告に来た瑞鶴が教えてくれた。
「提督さん、さっきグラウンドが騒がしかったから様子を見に行ったんだけど、山城と榛名が──」
「何も無いよ?」
「えっ!?で、でも!山城と榛名が殴り合いを──」
「殴り合いなんて、やって無いよ?瑞鶴」
「け、けど──」
「やって無いよ?」
「……何も無かったわ」
俺の言うことを聞いてくれた。よーし、いい娘だ。頭を撫でてあげよう。
余談だが、約10分後。妖精さんから榛名と、榛名の艤装本体と、ギミックアームがボロボロになったと報告を受けた。
ちなみに、山城は「ほぼ無傷」だったそうだ。
俺は考えるのをやめた。ツッコミも入れん。絶対入れない。
更に余談だが、艤装の修理に、とんでもない量の資材が消費された、と言っておく。まぁ、それでも余裕があるから、問題なく鎮守府を運営出来るが。
………………。
「……記憶や感情が流れ込んで来る、か」
ボロボロになった榛名の艤装を眺め、ふと呟いた。
養成所では、そんなこと教わらなかった。小嶋提督に教えてもらって、初めて知った。
現在、榛名は入渠中だ。妖精さん達が言うには、メンタル・フィジカル共に問題は無いと報告を受けている。
「詳しい話を聞こう」
入渠が終わったら、執務室に榛名を呼んで、何故ああなったのか聞こう。
side 提督 out
───────
────
─
Another side
──某県某所──
「……」
タバコ吸いてぇ。
「タバコを吸ったら、ボディスラムしますよ?」
「……ナチュラルに心を読むな」
禁煙してからはガムを噛んで喫煙欲を抑えてきたが、最近は抑えられなくなってきている。
隠れて吸っても、煙や臭いでバレる。あと、携帯灰皿を使っても、灰と吸殻という証拠も残る。そもそも、携帯灰皿と灰皿は、整備兵達及び憲兵達の分を除いて全部、コイツが処分してしまった。
(……吸いたい)
……そういえば先日、大本営のお偉いさんが「火を使わず、煙と臭いの無いタバコがある」と言っていたな。
噛みタバコのように、タバコポーションという物を口に含み、唾液で湿らせる事でタバコの風味を楽しめる。
お偉いさん曰く、煙は全く出ず、タバコ特有の臭いもしない。嫌煙家の前で吸って──いや、口に含んでいてもタバコの臭いに気付かれない、こっそり楽しめる素晴らしい物だ!だそうだ。
(確か、大本営
丁度明日、本部に用があって行く。その時にこっそり購入しよう!
「タバコポーションを買う気ですね?ダメですよ♪」
「」
「貴方の事なら、文字通り、何でも分かります♪」
「」
「購入したら、お仕置き部屋に連行ですよ♪」
「」
…………。
「……はぁ」
(
数年前まで、
それが、今ではハッキリと感じ取れるようになった、と言っている。
「……心が壊れなければいいんだが」
本人は、俺が居るから大丈夫と言っているが、心配だ。
(最初は信じられなかったな)
しかし、俺の考えている事が本当に分かるらしく、何度も的確に言い当ててくるようになった。
現に、俺がそろそろ夕食を摂ろうと考えていたら、夕食を用意する為、食堂に行くと言って執務室を出て行ってしまった。
(奇行が多いのは、艤装から、適性艦──赤城型航空母艦一番艦、赤城の記憶や感情が流れ込んでくるが、艤装からの影響を抑える為、俺を求めようとした結果だと言っていた)
赤城が言うには、俺の傍に居る時──会話をしたり、
しかし、代わりに俺という存在を強く求めたい衝動に駆られ、歯止めが利かなくなり、奇行に走るそうだ。
「全く。とんでもないモノだよ」
艤装がこんなにも危ない物だとは。
この事を知るのは、俺を含め、ごく一部の提督と艦娘だけ。勿論、箝口令が敷かれている。理由?長くなるから割愛。
原因を調べようにも、そんな状態に陥る艦娘が少ないから、調べるのに一苦労している。
(現在、
内、一箇所は、あまりデータが取れていない。
確か……第08鎮守府だったな。
二箇所目は、駆逐艦娘が大好きで、一度憲兵さんのお世話になった、あの鎮守府。
(
川内型軽巡洋艦一番艦、川内及び、同じく二番艦、神通の2名が所属している第8492離島鎮守府。
最近、データの量が増え、解析した結果──
(
データを見る限り、
ちなみに、赤城は第5段階まで行っている。
話を戻す。
そして、もう一箇所。
(秋月型防空駆逐艦三番艦、涼月が所属している、第603鎮守府)
こちらは、艤装と初接続した際、同調率が440%に到達した。極めて稀なケースだったから、大本営が大騒ぎしていたのを覚えている。
(大規模の鎮守府を運営する提督達が、涼月を欲していたな)
しかし、魂胆は「珍しいから」とか、そんなくだらん理由だったから、涼月を第603鎮守府に着任出来るよう、裏で色々手を回した。
(この時ばかりは、軍人の家系に産まれた事を神に感謝したよ)
お陰で色々嫌がらせを受けたが、全部親父と
(若いくせに、口出しするとは生意気だ!とか。意味が分からん)
年功序列がなんだ。結果を出し続けられないくせに、アホなこと抜かすな。
「お待たせしました」
「……何処から出てきた?」
「何度もノックしましたが、反応が無かったので勝手に入室しました」
「……そうか」
考え事は終わりだ。さっさと食事を摂って、執務を再開せねば。
……待てよ?考え事をしていて、赤城が入室してきた事に気付かなかった。もしかしたら、思考を読まれたかもしれん。マズいな。
「ハフ!ムグッ!ングッ!ハフハフッ!!!」
「……」
凄い勢いでカレーを頬張っている。しかし、決して行儀は悪くない。食べるスピードが早いだけで、非常に行儀よく食べている。
……相変わらず良く食べる。別に、汚く食べたり、残さなければ幾らでも食べて構わないが──
「ちょっと足りないので、お代わりしてきます!」
「行ってこい」
本人が、「食べ物を前にした時と、食べている間は思考や感情を読み取れなくなる」と言っていた。
……あの様子なら、読まれていないな。
(
……だから、考え事をするのはやめろ。さっさと食べて執務を再開せねば。睡眠時間が余計に少なくなるぞ。ただでさえ寝不足で辛いんだ。……美味い。
───────
「……ごめんなさい」
貴方に心配をかけたくないから、嘘をつきました。
食べ物を目にしていても。食べている間も。ずっと、頭の中に流れ込んで来ていました。
最近、益々読み取れる範囲が広くなってきて、正直、心が壊れそう。
以前は1m以内に居ないと、相手の思考や感情を読み取れなかったのに、今では範囲が広がり、壁越しからでも読み取れるようになってしまった。
そのせいで、不特定多数の人間の、知りたくもない思考や感情が流れ込んで来て、何度も心が壊れそうになった。
(でも、提督が。貴方が居るから、壊れずに済んでいます)
本当は普通に接したい。けれど、普通に接したくても、強く求める衝動に駆られ、その結果、奇行に走ってしまう。
「……抑えられるように、頑張らないといけませんね」
後者は第603鎮守府に所属している。
以前は江ノ島鎮守府に所属していたけど、何か目的があって異動したみたい。思考を読もうとしたけど、全く読めなかった。
前者は、今も尚、最前線に残り、戦い続けている。最近、最前線の敵が落ち着いてきたから、こっちに戻ってくると提督が仰っていましたね。
「……いけない、食堂に急がないと」
考え事をするのは後にしましょう。急いで食べて、彼の執務を手伝わないといけません。最近、彼は睡眠不足で辛そうだから、楽をさせてあげないと。
先程15kg食べましたが、全然足りません!次からは20kgで頼みましょう!
「すみません、間宮さん。お代わりお願いします!」
……あら?間宮さんが申し訳なさそうな顔をしていますね。
……えっ、嘘……。
頭の中に、間宮さんの思考と感情が流れ込んできました。嫌!そんなの、嫌!
「赤城さん、ごめんなさい。ついさっき、ご飯とカレーが無くなってしまいました」
「ウソダドンドコドーン!」
そ、そんな……そんなぁ……。
───────
Another side out
───────
────
─
次回予告
あらあら、榛名さん。こっぴどくやられちゃったのね。
山城さんに、じゃなくて、艤装に、よ。
……それにしても、この鎮守府。艤装の影響を強く受けて、かなり危ない娘が「12人」も居るわ。
瑞鶴さんに涼月ちゃん。翔鶴さん、扶桑さん、榛名さん、由良さん、阿武隈さん、時雨ちゃん。それに……おっといけない、本日着任してくる娘が居たんだ。案内してあげなきゃ♪
……へぇ、あなた、準くんの……ううん、何でもないわ。第603鎮守府へようこそ♪
第70話・鳳凰と鶴
「ノックをするべきだったかしら?」
【補足的なナニか】
・ベッドウェー海戦…ベッドの上で、提督と艦娘が繰り広げる海戦のこと。似たような言葉に、アンアンキシムサウンドが存在する。
・呪怨…ホラー映画。暑い夏は、部屋を真っ暗にしてこれを見れば、涼しくなれる……かもしれない。
・提督ゥ……ダメじゃないですかぁぁ(ry…元ネタは漫画、「機動戦士クロスボーン・ガンダム」に登場する「ラリーネザビーネ・シャル」の台詞、
「キンケドゥ?どうしてここにいる?キンケドゥゥ!おまえは死んだんだぞ?だめじゃないか!死んだ奴が出てきちゃ!死んでなきゃあああ!!」
台詞でも分かる通り、ラリっている。理由は各自で調べてください。
・若本規夫…ぶるるるああああ!!!
・艤装が艦娘に与える影響…現時点ではノーコメント。
以上、補足終了。