追跡鶴   作:EMS-10

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想像してたよりキツかったなぁ。
座学もそうだし、訓練も。
毎日あんなに走らされるとは思わなかったよ…。



ムードメーカー

 

─5年数ヶ月前─

 

 

「それじゃあ、これより航行訓練を行います」

 

私が艦娘─正確には艦娘候補生だけど─になって何日かが過ぎた。

養成所はレンガ造りの風情ある建物で、案内役の艦娘連れられて部屋に入れさせられて、厳つい顔した人、えーと、藤原准将だったっけ?と面接みたいな事したんだよねぇ。

 

『今なら辞められるぞ』

 

そう言われた時、辞める気なんて全くなかったから思わず「やめるわけないじゃん!」ってタメ口で言っちゃったんだよねぇ。今思えばヤバいことしたと後悔してる。軍って、とっても厳しいらしいから、上官にタメ口で会話したら殴られるんじゃない?そう思ってた。

けど、藤原准将は一瞬ポカンとしたあと、吹き出してた。何でだろう?

 

(ま、いっか)

あんまり、細かいこと気にするとハゲるって言うし。それより、艤装を付けて海上を航行するんだ。楽しみぃ!

座学で色々教えられたけど、早く航行してみたくてうずうずしてたんだ。

 

(それにしても、私の…ううん、鈴谷って言おう)

鈴谷の艦娘の装束って、高校の制服みたいなんだよねぇ。周りの娘達のと比べて、結構オシャレだと思う。

 

「そこ!話を聞いているの?」

 

いっけない、考え事してたから聞いてなかった。

 

「へぇ、いい度胸してるわね」

 

っべー、マジやっべー。やっちゃったよ。目を付けられたね、こりゃ。

案の定、教官役の艦娘に最初に航行するよう言われちゃった。結果はお察しください。

 

 

………………。

 

 

「あー、マジ恥ずかった」

何度も転び、ずぶ濡れになって最悪。しかも、周りから変な目で見られたし。

 

「おいおい、大丈夫か?」

 

「んぁ?だいじょぶ、だいじょーぶ」

少し落ち込んでると、1人の艦娘候補生に声をかけられた。えっと、

 

「自己紹介まだだったな。アタシ、摩耶ってんだ」

 

「ご丁寧にどうも、私は鈴谷」

此処(養成所)じゃ本名ではなく、自分の適性艦名を名乗るよう言われたから、恐らく艦名なんでしょう。それにしても、

 

(目付き怖いなぁ)

言い方は悪いけど、摩耶って娘、雰囲気というか目付きというか、ちょっと怖い。まるでヤンキーみたい。

 

「災難だったな」

 

「あぁ、うん、まぁね…」

でも、こうして声をかけたくれたんだから、根はいい娘なのかもしんない。

 

「アタシも派手にすっ転んで恥ずい思いしたんだ。難しすぎだろ」

 

「鈴谷もそう思う」

 

「そこの2人!まだ訓練中よ!お喋りしない!」

 

「やべっ!」

 

「っべー!」

いけない、まだ訓練中だったんだ。

 

「随分余裕ね。なら、もっと厳しくしても良さそうね」

 

その日、鈴谷と摩耶だけ特別メニューを受けるハメになりました。今後気を付けよう。

 

 

──────────────

 

 

─5年数ヶ月前─

 

 

「次!鈴谷!」

 

「はい!」

あれから数ヶ月前が過ぎた。座学や訓練ばっかで辛いけど、私は元気です!

鈴谷の成績は座学・実技共に中くらいの成績で、可もなく不可もなく、って感じ。摩耶も同じくらい。

 

(航行しながら、的との距離や波をよく計算して…)

頭の中で色々考えながら艤装を構える。実技はサバゲーみたいで楽しいから、苦じゃない。

 

「うりゃっ!」

 

 

………………。

 

 

「相変わらずの狙撃力だな」

 

「まあね♪」

 

「サバゲー経験者だからか?」

 

「かもしんない」

訓練を終え、談話室で休憩しながら摩耶と鈴谷の2人でお喋りしていた。決して他の娘と仲が悪い、ってわけじゃないんだけど、気が付けば鈴谷は摩耶と一緒に居る事が多い。

 

「アタシもサバゲーやっとけば良かった」

 

「おっ、ならやっちゃう?」

女子でサバゲーやってら人少ないし、興味を持ってくれる娘が居ないから寂しかったんだよねぇ。

 

「やるやる!今度、教えてくれよ!」

 

「オッケー!んじゃ、今度の完全休養日に、街に出かけよう?」

いっひっひつ、サバゲー沼へ1名様、ご案内♪

 

 

──────────────

 

 

─5年5ヵ月前─

 

 

「……」

見ちゃった。虐めの現場を。

 

「……はぁ」

今まで同じ重巡洋艦の娘達だけと訓練をしていたけど、今日から他の艦種─駆逐艦娘、軽巡艦娘、戦艦娘、空母艦娘─と組んで訓練する事になった。そこで、見てしまった。

 

(防空駆逐艦って珍しい艦種適性を持った娘、だっけ?)

噂だと、実技で毎回必ずミスをするらしく、それが原因で虐められているみたい。

 

(助け合い精神は無いんですかねぇ…)

学校の先生や親から教わらなかったのかな?まぁいいや。

 

「おーい、大丈夫?」

とりあえず声をかけよう。

 

「……」

 

(うわぁ、目が死んでる)

それもそうだ。毎日あんな目に遭っているなら、こうなる。

 

「…ほっといてください」

 

「いや、でも…」

 

「涼月に構わないで!」

 

「あっ…」

行っちゃった。追いかけたかったけど、そうしたら余計に怒らせちゃうかもしれない。暫く様子見よう。

 

 

──────────────

 

 

─5年4ヵ月前─

 

 

「うりうり、元気ないぞぉ~?」

 

「やっ、やめろっ!やめなさいっ!」

 

「おっ、元気になってきた?」

 

「なった!なったからやめてくれ!」

 

あれから、更に数ヶ月が過ぎた。基礎的な事を全て覚えた頃、提督候補生達と組んで訓練するよう、藤原准将に言われた。そんで誰か一人選んで1ヶ月間共に過ごせって言われたから、気に入ったこの男、渡良瀬っていう提督候補生と組む事にした。

組んだメンバーの中に摩耶が居て笑っちゃったなぁ。「男になんて興味ねぇ!」って言ってたのに、らっせー─渡良瀬だから、らっせーって呼んでる─を見る目が完全に乙女のソレなの、鈴谷知ってるよ?言わないけど。

あと、いつだったか虐められて荒んでいた駆逐艦娘、涼月って娘も居た。前と違って今はトップクラスの成績を叩き出して自信を持ったのか、明るい顔になってる。良かった良かった。

 

「股間の方も元気になった?」

 

「お黙り!」

 

らっせー、教官役の提督に怒られて落ち込んでたから、背中に抱き着いて胸を押し当ててあげたら物凄く慌てて顔真っ赤にしてる。あははは!ウブだねぇ。もっとからかいたくなってきた!

 

「脱ぎたてニーソいる?」

 

「いらん!」

 

おーおー、お顔がトマトみたいに真っ赤だ。可愛いねぇ。他の提督候補生達は鼻の下伸ばすだけでつまんない反応しかしなかったけど、らっせーは違う。からかい甲斐があって楽しい。

 

「おやおや、お兄さん、そんなウブじゃ彼女、出来たこと無いでしょ?」

抱き着いただけで、こんな反応するから、きっと彼女居ない歴=年齢でしょ!

 

「……」

 

…あれ、何で目を逸らすの?まさか、

 

「…居るの?彼女」

 

「…昔、居た」

 

「マジで!?」

うっそだー!こんなウブな兄ちゃんに、彼女が居るなんて…って居た?過去形?

 

「居たって、過去形…つまり、」

 

「…振った」

 

「マジで!?詳しく!!!」

鈴谷、気になります!

それから、らっせーにしつこく聞いて教えて貰った。彼女から逃げる為、提督になったと。

 

「ぶっ、あっははははは!何それ!」

 

「わ、笑うなよ…」

 

いやいやいや、笑うっしょ。それにしても、随分バイオレンスな彼女さんだねぇ。

 

 

──────────────

 

 

─5年前、江ノ島鎮守府─

 

 

「本日付で江ノ島鎮守府に着任しました、最上型重巡洋艦三番艦、鈴谷です!」

養成所を無事卒業して、私は正式に艦娘になった。そして、江ノ島鎮守府へ着任した。

本当はらっせーの居る第603鎮守府に着任したかったけど、抽選の結果、此処に着任する事になっちゃった。

 

(まぁ、二度と会えないわけじゃないし)

会おうと思えば会える。だから、落ち込まず元気に前を向いて生きていきましょー!

それにしても驚いた。此処に新たに着任したのは鈴谷と養成所で一緒に過ごした木曾に、

 

「最上型重巡洋艦四番艦、熊野と申します。よろしくお願い致します」

 

別の養成所に行った妹、(ひかる)─艦名は熊野─が居る。

 

「うむ、ようこそ、江ノ島鎮守府へ。私は此処の提督、藤原剛准将だ。よろしく頼むぞ」

 

更に、養成所で色々お世話になった藤原准将が運営する鎮守府に着任。この人、厳しいけど決して理不尽な怒り方しないから気に入ってたんだ。

 

「さて、早速だが此処(江ノ島鎮守府)を旅行してもらう。千歳、頼んだ」

 

「はい、畏まりました」

 

旅行。つまり、建物内の何処に何があるか把握しろ、という意味だ。養成所で教わった。

案内してくれるのは、銀色の髪を後ろに一つに束ね、紺色のジャケットを羽織った艦娘だった。

 

 

………………。

 

 

「最後に、ここが医務室よ。あまり、お世話にならないことを祈っているわ」

 

「「「ありがとうございます!」」」

鈴谷と熊野、木曾の3人は案内してくれた千歳さんにお礼を言った。結構広いから迷子になりそう。

 

「今日は、部屋に戻って休んで?明日から厳しく行くから、覚悟しておいてね?」

 

「「「はい!」」」

千歳さんは微笑みながら私達を見つめていた。旅行中、千歳さんが教えてくれたけど、結構長く此処に所属しているみたい。何歳なんだろう?見た目、20代前半位なんだけど…。

 

(ま、いっか)

歳の詮索は女性にとって禁忌の一つだし。

それから鈴谷達は部屋に向かった。

 

「また一緒になれたね、木曾 」

 

「だな。今後もよろしく頼む」

 

「燈…鈴谷、木曾さんとはどういった関係ですの?」

 

「ん?あぁ、木曾とは同じ養成所で一緒に過ごしたんだ」

 

「えっと、鈴谷、熊野さんとはどういった関係なんだ?」

 

「熊野は私の実妹なんだ」

 

「そ、そうなのか」

 

あ、キソーが驚いてる。それもそうか。お嬢様な彩…じゃなかった、熊野と私が姉妹だなんて思わないよね。

それから、色々お話をした。

養成所での出来事や、艦娘になる前の話とか。気が付けば夕方になっていた。

 

「そろそろ夕食の時間だな」

 

「そうですわね」

 

「んじゃ、食堂に行こっか!」

養成所のご飯は美味しかった。此処も美味しいといいなぁ。

 

(さてさて、どんな日常が待っているのやら)

結構規模の大きい鎮守府だから、忙しいだろうなぁ。

そんな事を考えながら、私達は食堂へ向かった。

 

この時の私達は知らなかった。

執務や出撃・遠征・訓練以上に恐ろしい物があるなんて、思いもしなかった。

 

 

───────

────

 





Last Page「鈴谷」

千歳さん怖い…。


※アンケートを実施しています。よろしければご協力お願いします。

次は魔王もとい千歳さんのヤバさが分かる話になります。お楽しみに←


Q:養成所の出来事の描写少なくない?
A:一部の艦娘を除いて、過去編はこうなります。ご了承ください。

Q:鈴谷は、やっべぇ奴なの?
A:次話で平和か、やっべぇ奴なのか判明します

その他、疑問に思ったことがありましたら、コメントしてやってください。答えられる内容でしたら、お答えします。
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