追跡鶴   作:EMS-10

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※注意※
非常に頭の悪い内容
頭を空っぽにしてご覧下さい
こまけぇこたぁいいんだよ!
お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ




第72話・これは駆逐艦ですか?いいえ、ゾンビです

 

side 提督

 

 

──第603鎮守府、執務室──

 

 

大鳳着任の翌日。08:05。

 

 

 

「~~♪」

 

「おっ、W○LD FANGか」

 鼻歌を歌いながら書類を捌く、本日の秘書艦・夕立に声をかける

 

「正解っぽい!」

 

 やっぱり。養成所で夕立に聴かせたら、毎日一回は必ず聴くほど気に入ったそうだ。

 

「この曲を聴くと、とっても元気になれるの!」

 

「ほぅ、そうか」

 

「好きな曲は沢山あるけど、一番好きなのは、この曲っぽい♪」

 

 とても嬉しそうに、満面の笑みを浮かべている。

 勿論、狂犬モードの時のようなイイ笑顔(・ ・)ではない。

 

「それにしても、昨日は凄かったっぽい」

 

「思い出させないでくれ……」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「あ、いや、夕立は悪くない。だから、落ち込まないでくれ」

 犬耳のように跳ねた髪が、しょんぽりと垂れ下がった。

 髪の毛なのに、まるで本当の耳のように垂れ下がったり、ピコピコ動いたりするのを何度も見かけるんだけど、一体どんな原理で動いているんだ?

 

(夕立だけでなく、時雨の髪も動くんだよなぁ……)

 一度、気になって仕方なかったから、許可を得て髪に触れてみたんだけど、普通の髪の毛だった。

 

……おっと、そうだ。昨日、何があったか話をしよう。

 あれは、今から約12時間前の事だ。

 仕事を終え、明日の予定を確認し、食堂に行って、18:00頃に大鳳着任の祝いをした。

 

 話が前後するが、瑞稀(瑞鶴)(大鳳)は、談話室で色々話をして、一応和解──猶予付き──したらしく、言い争う事は無くなった。お陰で、ギスギスした空気にはならなかった。

 しかし、まだ静流(翔鶴)()と話し合っていないから、静流は申し訳なさそうな顔をし、鳳は少しだけ険しい顔をしていた。なるべく早く、話し合いの場を設けて、誤解を解こう。

 あと、阿武隈──仁美(ひとみ)を見た()は、仁美の外見の変わり様に大変驚いていた。

 

 話を戻そう。着任祝いをして、此処(第603鎮守府)娘達(艦娘達)大鳳(・ ・)は会話をし、すぐに打ち解けた。

 

 余談だが、鳳が、自分の好きな絵師、オータムクラウド先生が秋雲──璃奈(あきな)だと知り、ハイテンションになった、と言っておく。

 

 そして、着任祝い開始から約2時間後の20:00頃。用意した料理があらかた無くなり、落ち着いてきた頃だった。

 

『二次会の始まりじゃ~!』

『つまみもあるぞ~!』

 

 冷蔵庫から瓶ビールやら、日本酒やら、ワインやらを両手一杯に抱えた足柄と、つまみを持った摩耶が、二次会の宣言をした。

 

『宜しければ、私も参加しても良いでしょうか?』

 

 それを聞いた大鳳は、二次会に参加。

 一部のアルコールに弱い娘や、未成年組は食堂から出て行き、飲める娘、弱いけど飲みたい娘だけ残った。

 

 残ったメンバーは、足柄、摩耶、由良、扶桑さん、山城、瑞鶴、翔鶴、葛城、大鳳、千歳さん。そして俺の11人だった。

 本音を言えば、俺はアルコールに弱いから参加したくなかったが、大鳳の様子が気になるから残る事にした。

 

 そこから、地獄が始まった。

 

 最初は平和だった。まぁ、平和と言っても下ネタ飛びまくっていたけど、比較的ソフトな下ネタだった。

 しかし、アルコールが回り始めた頃、足柄が、

 

『そういえば、大鳳さんって、翔鶴や瑞鶴、阿武隈、提督と同じ学校に通っていたのよね?』

 

 大鳳にそう質問した。それに対し、大鳳は肯定し、当時の事を話し出した。

 まぁ、プライバシーとか色々あるから、ある程度(ぼか)してくれたが、それでも強烈な内容だった。

 んで、学生時代に色々やらかした事──主に暴力行為──を、瑞鶴と翔鶴は号泣しながら大鳳に謝罪。

 

……あっ、言い忘れていたが、瑞鶴と翔鶴はアルコールに滅茶苦茶弱い。

 なら、何故参加したのかって?後で二人から聞いたんだが、酒の力を借りて大鳳と色々話したかったから、参加したらしい。

 

『そこまで言うのなら、猶予を与えるから証明してください』

 

 謝罪された大鳳は、真面目な顔で二人にそう言い、チャンスを与えてくれた。どうやら大鳳はアルコールに強いらしく、ビール瓶を3本空けても酔っていなかった。

 

 とにかく、アルコールのお陰で、一応和解出来た。

 ここまでは良かった。千歳さんの、あの一言が出るまでは。

 

『ねぇ、大鳳さん。貴女、提督の事好きなの?』

 

 グラスに入ったワインの香りを楽しみながら、いたずらっぽい笑みを浮かべながら、爆弾を投入しやがった。

 これにより大鳳は、ショットガンの弾のように、飲んでいたビールを噴き出した。噴き出されたビールは、正面に居た俺に全部ぶっかかった。

 おいおい、提督服が汚れちゃったじゃないか。クリーニングに出さないといけないね。

 

……なんて、冷静に考えている場合じゃない。

 恐る恐る大鳳を見ると、あれだけ飲んだのに、赤くなかった顔が、林檎のように真っ赤になっていました。

 それだけじゃない。堂々としていたのに、物凄く目が泳いで「あうあう……」って言ってる。

 

……えっ、何その顔。何その慌てっぷり。嘘だよね?

 その後、大鳳は捲し立てるように言い訳をしたが、その様子を見た酔っ払い共が、面白がってからかい出した。

 

……マジで?いやいやいや、あの鳳だよ?性別問わず、誰に対しても友好的で、世話焼きな鳳だよ?ソンナワケナイジャナイカ~。HAHAHA。

 現実逃避したが、酔っ払い共の追求に、とうとう鳳は折れて、認めた。「好意を寄せている」と。

 

 それを聞いた、一部の酔っ払い──誰とは言わないけど、妖怪首置いてけ、とか。戦闘狂さんとか。目からハイライト消えてた。

 

 話のネタが入り、大盛り上がりする食堂。そして、その後、何故か俺のフェチ──女性の、好きな身体の部位の話になり……。

 

 

「て、提督さん、目!お目目!何処ぞの天然パーマの入った、万屋(よろずや)の侍みたいな、死んだ魚の目をしてるっぽい!」

 

「てめーらァァァ!それでも銀○ついてんのかァァァ!」

 

「凄い似てるっぽい!」

 

「……ありがとう、夕立」

 ガキの頃から、声が杉○智和さんっぽいって言われたから、よく小・中学校の友達とかに頼まれて真似したなぁ。

 そういや、俺が中学二年の時まで、瑞稀(瑞鶴)と一緒に遊んでくれたあの人(・ ・ ・)に、よくせがまれて銀さんの台詞言いまくったなぁ。今、何処で何をしているんだろう。

 

「提督さん、大丈夫?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「目が死んでるから、説得力無いっぽい……」

 

 イカン、夕立が不安そうに俺を見ている。本当に大丈夫だとアピールせねば。

 

「俺なら本当に大丈夫だよ。心配かけてすまん」

 気持ちを切り替えろ。危うく俺が「尻フェチ」だとバレそうになって、何となく察した扶桑さんが、ドスケベ下半身の代表格、山城と葛城の尻の肉を包丁で削ぎ落とそうとした事なんて忘れろ。騒ぎを聞き付け、様子を見に来た夕立に泣き付いて助けを求めた事は、忘れるんだ。

……よし、忘れた。

 

「あっ、お目目が元に戻った」

 

「お仕事しよう」

 

「分かったっぽい」

 

 

 

………………。

 

 

 

15:30。

 

 

「燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイト……どれも余裕があるな」

 昼食を摂り、小休止した後、仕事を再開。

 現在、資材の残量を確認している。

 鈴谷と榛名の艤装を改装し、山城によって榛名の艤装が破壊されて修理(大破)したから、資材が結構ぶっ飛んだけど、確認したら、まだまだ余裕がある。

 

「提督さん、工廠の妖精さん達から、「10cm連装高角砲と、20.3cm連装砲(2号)の砲身のストックが少なくなっている」って報告が入ってるっぽい」

 

「そうか、ありがとう」

 10cm連装高角砲は涼月に。20.3cm連装砲(2号)は重巡洋艦の適性を持つ娘に頼んで開発をしてもらおう。

 

 何故だか知らんが、開発をする時、目当ての武装──例えるなら、10cm連装高角砲の場合、対空性能が高い艦の適性者。ウチの場合は涼月に開発を頼むと、他の娘が開発するより、砲身の強度や性能が高くなる。

 

 さっき開発を頼むと言ったが、正確には艦娘が、ではなく、艦娘となった娘の艤装に宿る妖精さん達が、工廠の妖精さん達と協力して開発をしてくれる。

 

 とにかく、10cm連装高角砲を作る時は、涼月に。

 20.3cm連装砲(無印or2号)を作る時は、重巡洋艦の適性者に頼むと良い物が作れる。そう理解してくれ。

 

「今日は千歳さん、葛城、山城、足柄、時雨、初霜が出撃しているから……」

 それ以外の娘達に頼もう。

 今日は、タンカーや漁船の警護が無いから、人数に余裕があるな。

 涼月は居る。重巡洋艦の適性者は、摩耶と鈴谷の二人だ。二人とも、居る。

 

(まず、10cm連装高角砲は涼月に頼むとして。20.3cm連装砲(2号)は、どっちに頼もう?……ん?足音?)

 摩耶と鈴谷。どちらに開発を頼むか悩んでいると、執務室の外から足音が聞こえてきた。音を聞くに、走っているようだ。

 普段から、緊急時を除いて鎮守府内は走るな、と言っているから、何かあったのか?

 

「て、提督!」

 

「どうした?」

 摩耶が息を切らせながら、執務室の扉を勢いよく開けて入室してきた。

 普段なら、「ノックをしろ」と注意するが、摩耶の焦った顔を見て、注意するのをやめ、何があったか聞くことにした。

 

「た、大鳳が!大鳳が!!!」

 

「大鳳がどうした?」

 何かトラブルが起きたのか?

 

「大鳳が、精神崩壊を起こした!!」

 

「はぁ!?」

 精神崩壊を起こしただと!?マジで何があった!?

 気になるが、それよりも、

 

「た、大鳳は、どうしてる!?」

 原因よりも、大鳳の様子が気になる。

 

「い、今、埠頭(ふとう)で膝抱えて黄昏(たそがれ)てる」

 

「」

 

「声をかけても、反応が無いんだ!」

 

「……すぐ行く。夕立──」

 

「お仕事は私に任せるっぽい!」

 

「頼んだ」

 夕立に、席を外すと言おうとしたら、先にそう言われた。

 

 

………………。

 

 

──第603鎮守府、埠頭──

 

 

「あそこだ!」

 

 執務室を出て埠頭に向かうと、摩耶が指を差した。

 指を差された先を見ると──

 

「かんさいき……れっぷう……すいせい……りゅうせい……みんな……ゆうしゅうな……こたち……だった……」

 

 大鳳が、膝を抱えて体育座りをしながら、何やら呟いている。

 

「あははっ♪あはははははっ♪」

 

「た、大鳳さん、しっかりして!」

「だ、大丈夫よ!私も、最初はボコボコにされたわ!これからよ、これから!」

 

 想像以上にマズい事になってます。

 大鳳に、翔鶴と瑞鶴が声をかけているが、乾いた笑い声を出し続けている。

 その様子を、涼月が申し訳なさそうな顔をして見ていた。 

 

「な、何があった?」

 あの大鳳が、あんなになるとは。只事じゃ無いぞ?

 俺は摩耶に聞いた。

 

「大鳳が、涼月と演習をしたんだ……」

 

「あ・・・(察し」

 分かった。分かっちゃった。

 俺の予想は、こうだ。

 

・大鳳が、対空性能の高い、防空駆逐艦の適性を持つ涼月に、「腕試しがしたい」と演習を申し込む

・次々に艦載機を撃ち墜とされる

・大鳳、ゾンビ化した涼月を見る

・精神崩壊

 

 こうでしょ?

 

「大鳳の奴、対空性能の高い深海棲艦との戦闘を想定した訓練がしたい、って、涼月に演習を申し込んだんだ」

 

 一つ目の予想、的中。

 

「んで、アタシと翔鶴さんで審判をする事になったんだけど、大鳳の艦載機が……その……全部撃ち墜とされちまったんだ」

 

 二つ目の予想も的中。

 

「艦載機が全滅したのを見た大鳳は、呆然としてた。その時までは、精神崩壊していなかったんだけど、涼月が……」

 

「涼月が、何をしたんだ?」

 

「……吼えた(・ ・ ・)

 

「」

 

「……咆哮(・ ・)を聞いた大鳳は、硬直してた。真顔で、身じろぎ一つ、していなかった」

 

「」

 

「……その後、大鳳は涼月に喰われた(・ ・ ・ ・)

 

「大鳳ォォォォォォ!!!」

 気が付けば、大鳳の所へ駆けていた。

 おまっ、涼月!お前、お前!お前~~ッッッ!!!

 昨日着任したばかりの大鳳に、アレ(・ ・)やりやがったのかあああああァァァァ~ッッッ!!!

 

 さて、読者の皆様に、涼月が何をしたのか説明しよう。

 摩耶が言った、「吼えた(・ ・ ・)」。

 これは、涼月がゾンビ化した際によく発する「W゙o゙o゙o゙o゙o゙o゙o゙o゙o゙!゙!゙!゙」だ。

 俺や瑞鶴達は、ゾンビの咆哮を聞いても「いつもの事か」と思うだけで済むが、何度聞いても慣れない、一部の娘達──摩耶と早霜、矢矧、海風が言うには、

 

『聞いた瞬間、本能的恐怖に襲われ、身動きが取れなくなる』

 

 らしい。つまり、大鳳は「本能的恐怖に襲われ、身動きが取れなくなった」。

 それだけじゃない。「喰われた(・ ・ ・ ・)」。

 カニバリズム的な意味じゃないから、安心してくれ。

 

 涼月は、あまり近接戦闘をしない。決して出来ないわけじゃないが、

 

 確実に(・ ・ ・)

 一切の慈悲(・ ・ ・ ・ ・)容赦も無く(・ ・ ・ ・ ・)

 心と身体(・ ・ ・ ・)破壊し尽くす(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 そう決めた時だけ、涼月は近接戦闘を行う。

 その近接戦闘は、傍から見ると、対象が喰われている様に見える。だから、俺達は涼月の近接戦闘を「喰う」と表現している。

 つまり、大鳳は、

 

 

ゾンビに襲われた(長10cm砲ちゃんで殴打された)

 

 

「大鳳!大鳳ッ!」

 

「あっ、提督!」

「提督さん!」

「提督……」

 

 未だ乾いた笑い声を出し続けている大鳳に駆け寄ると、翔鶴と瑞鶴、涼月が俺に声をかけてきた。

 

「大鳳、良く頑張った。良く頑張ったぞ!」

 まず、「良く頑張った」と声をかける。

 こういう時、「大丈夫か?」とか、「気にするな」、もしくは「しっかりしろ!」と声をかけると、余計に自分を責め、悪化する恐れがある。だから、肯定する言葉をかけてやった。

 しかし、

 

「かんさいきの……ようせいさんたち……ごめんね……ヘボな……かんむすで……」

 

 ありゃ~。こりゃダメだわ。なら、

 

「よしよし、良く頑張った」

 優しく抱きしめ、頭を撫でてやろう。しかし、反応は無い。

 恐る恐る大鳳の目を見ると──

 

 

(うっわぁ。目が死んでる)

 ハイライトさんがログアウトしています。

 諦めるな、声をかけ続けるんだ!

 

「大鳳。いや、()、俺を見ろ」

 両手で彼女の頬を包み、目をしっかり見て声をかける。すると、

 

「……わた……ら……せ……くん?」

 

 微かだが、反応してくれた。

 あっ、ハイライトが少しずつ戻ってきた。

 

 

「渡良瀬……くん……」

 

「そうだ、渡良瀬くんだぞ~?」

 軽くおちゃらけて返事。よーし、ハイライトが戻り始めている。

 

渡良瀬くん(・ ・ ・ ・ ・)……」

 

()、お前は良く頑張った」

 再び、肯定の言葉をかける。ハイライトがどんどん戻ってきた。

 

「渡良瀬くん、異動してもいいかしら?」

 

 真顔でなんてこと言うの、鳳ちゃん。

 

此処(第603鎮守府)に居たら、ゾンビに(・ ・ ・ ・)食べられちゃう(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)……」

 

 泣き出しちゃった。しかも、真顔で。

 おいゾンビ(涼月)。オメーなんてことしてくれちゃったの?……こら、目を逸らすな。

 

「私、ここで三ヶ月間、生き残れる自身は無いわ……」

 

()……」

 その気持ち、分かる。痛い程に分かる。けどね、異動した直後の艦娘は、特別な理由──例えば、異動先の提督にセクハラされたり、出撃・警護等が過密スケジュールな、ブラック鎮守府だったり──が無い限り、三ヶ月間は別の鎮守府に異動出来ない決まりなんだ。

 何故三ヶ月間なのかって?手続きとか、色々あるからだ。

 

向こう(呉鎮守府)では、猛者(・ ・)は沢山居たけど、涼月さんみたいにぶっ飛んでる(イカれた)駆逐艦娘(・ ・ ・ ・)は居ないわ……」

 

「……」

 なんか、ごめん。ぶっ飛んでる艦娘を育成して、ごめんなさい。涼月がゾンビ化したの、俺のせいです。本当にごめんなさい。

 

「……けど、流石に、涼月さんみたいな艦娘は、他にも居ないわよね?」

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

「……」

 翔鶴、瑞鶴、涼月、摩耶。そして、俺は沈黙。

 俺達の様子を見た大鳳(・ ・)は、何かを察したのか、震えだした。

 

「……まさか、とは思うけど……

 

 

 

 

 

他にも居るの?」

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

「……嘘、だよね?」

 

 全身をガタガタ震わせ、(すが)るような顔をしながら大鳳は笑った。恐怖のせいで、笑ってしまったようだ。

……ごめん、大鳳。他にも居るんだ。

 

 深海棲艦を見ると、首狩りマシーンに豹変する艦娘(扶桑さん)とか。

 強敵と相見(あいまみ)えたり、恐慌状態に(おちい)ると、北○神拳伝承者になる艦娘(山城)とか。

 高速で深海棲艦に突っ込んで轢き殺す艦娘(榛名)とか。

 普段はお淑やかだけど、戦闘になるとヤバくなる艦娘(由良)とか。

 普段は愛玩犬みたいに、癒しと可愛さを振りまくけど、戦闘時は狂犬になる艦娘(夕立)とか。

 

……うん。ヤベーのが多いね。

……あっ、忘れてた。俺の真横にいる2羽鶴(翔鶴と瑞鶴)も、アウトレンジが基本の空母なのに、飛行甲板を。正確には、装甲甲板だけど、深海棲艦に叩き付けたりする脳筋空母──

 

 

(<⚫>)(<⚫>)(<⚫>)(<⚫>)

 

 

──なんでもありません。

 と、とにかく、ゾンビ(涼月)以外にもヤベーのが沢山居る。

 

「あ……はは……あはっ……あはははははは!!!」

 

 真顔で、涙を零しながら笑い出しちゃった。

 

「嫌よ!武蔵さん(・ ・ ・ ・)みたいなのが、此処(第603鎮守府)にも居るなんて!」

 

「武蔵?武蔵って、大和型戦艦二番艦の?」

 

「そうよ!」

 

 大和型戦艦二番艦、武蔵。第二次世界大戦中に造られた、最大最強の戦艦の二番艦。その適性者か。

 

(呉鎮守府所属の武蔵。様々な伝説を持つ艦娘だ)

 

 曰く、最強の肉体を持つ。

 曰く、武器・弾薬を一切使用せず、肉弾戦のみで深海棲艦を次々に屠る。

 曰く、ノーガード(・ ・ ・ ・ ・)で戦艦棲姫の斉射を受けても、無傷。

 曰く、リアルブ○リー。

 

 まだまだあるが、長くなるから割愛。

 流石に、呉の武蔵ほどヤベーのは、ウチには居ない。

……いや、一人だけ、武蔵に匹敵するヤベーのが居たね。(千歳さん)とは言わないけど。

 

「もう嫌ァ……おうち帰るぅ……」

 

 大鳳の奴、頭抱えて、か細い声出してる。ちょっと可愛く見えた。

 

「……提督、大本営のカウンセリング課に連絡した方がいいんじゃないか?」

 

「そうしよう」

 摩耶に提案された。急いで連絡して予約入れよう。

 

 

 

side 提督 out

 

 

 

───────

────

 

 

 

Another sideという名のオマケ

 

 

 

──呉鎮守府──

 

 

 

「ここが貴様の死に場所だァ!」

 

「いい加減、くたばりなさい!」

 

 

 

「提督~、止めてくんね?ドンパチ賑やかで、昼寝出来ねぇや」

 

加古(・ ・)、君が止めてくれ」

 

「やだよ、まだ死にたくないし」

 

 武蔵(・ ・)に、赤城(・ ・)の相手をしてくれと頼み、十数分ほど経った。現在、俺の目の前で、武蔵と赤城がプロの格闘家も真っ青な殴打の応酬を繰り広げている。

 暫く様子を見ていると、騒がしくて昼寝が出来ないと、加古が苦情を言いに来て、今に至る。

 

「くっ、こんのぉ!ちょっとは手加減しなさい!」

 

 武蔵の右ストレートを、両腕をクロスさせて受け止めた赤城が叫ぶ。それに対し、武蔵は、

 

「手加減って、なんだァ?」

 

 再び右ストレートで赤城に殴りかかった。それに対し、赤城はガードして受け止めるが──

 

「ぎゃああああああ!う、腕の骨が折れたァ!?」

 

 乾いた音が鳴り響き、赤城が絶叫。

 

「人間には215本も骨がある。骨が1本2本折れた位で騒ぐな!」

 

 それに対し、武蔵はニヤニヤと笑いながら、そう言い放った。

 

「ふざ……けるなっ!この、脳筋戦艦!」

 

「脳筋で結構!褒め言葉だ!筋肉こそ、最強の武器だ!」

 

「……提督、マジで止めなくていいの?」

 

「止めない。赤城には、お灸を据える必要があるからな。流石にマズくなったら止めるが」

 それまでは、傍観する。……加古、ジト目で見るな。

 

「ナニかされたのか?」

 

「仮眠していたら、赤城にズボンとパンツを(・ ・ ・ ・)脱がされた(・ ・ ・ ・ ・)

 

「あ・・・(察し」

 

 危うく、喰われる(・ ・ ・ ・)所だった。

 幸い、武蔵が演習の報告に来てくれたから、事なきを得たが。

 

「ウボァァァァ!!!」

 

 赤城の鳩尾に、武蔵の拳が刺さった。しかし、赤城は倒れなかった。

 

「ま、まだよ……まだ、終わらんよ!」

 

 ふらついているが、倒れず、鳩尾に折れていない左手を当てて、武蔵を睨みつけている。

 

「大人しく倒れていれば、痛い思いをせずに済むものを。流石一航戦赤城の適性者と褒めてやりたい所だ」

 

 武蔵が、赤城の頭を掴んだ。決める気だな。

 

「ふんっ!」

 

「ああああああああッッッ!!!」

 

 轟音。鍛錬場の床に、赤城は叩き付けられた。それと同時に、床にクレーターが出来上がった。

 

「もう終わりかァ?」

 

「~~ッ!~~~……~…………」

 

 決まったな。赤城は意識を手放したのか、脱力した。

 

「武蔵、ご苦労」

 

「おぉ、相棒(・ ・)。すまんな。少し、時間がかかってしまった」

 

「構わん。しかし、床を壊したのはいただけない」

 

「む……すまん」

 

「次からはもう少し、穏便に頼むぞ」

 

「承知した」

 

「……さて、武蔵。赤城を入渠させてくれ」

 

「あいわかった」

 

 気絶した赤城の首根っこを掴み、武蔵は鍛錬場を去って行った。

……さて。

 

「妖精さん達に修繕を頼むとしよう」

 

 

Another side out

 

 

───────

────





次回予告


 あらあら。大鳳さん、ゾンビに襲われて精神崩壊しちゃった。可哀想。
 そうだ!慣れてもらう為に、由良と一緒に演習しましょう?大丈夫、ちゃんと加減しますから♪
……あっ、扶桑さん、夕立ちゃん、丁度良かった。由良と一緒に、大鳳さんに此処の艦娘達の戦い方を教えませんか?……いいの?やったぁ♪
 それじゃ、大鳳さん。始めましょう?
……あっ、逃げた。ふふっ。追撃戦ね?由良、負けないから♪

クハハハハハッ♪




第73話・ここは鎮守府ですか?いいえ、魔境です



「助けて!渡良瀬くん!殺されちゃう!!!」



※第4章では、ストーリーの都合上、説明及び、他所の鎮守府の様子を描写する回数が他の章より多くなります。
 つまり、話が進みにくいです。
 予め、ご了承下さい。



【補足的なナニか】

・WILD FANG…「ロックマンX8」の主題歌。カプコンさん、あと何年待てば、X9が出るの…。

・夕立…第603鎮守府所属、白露型駆逐艦四番艦、夕立の適性者を指す。
 養成所時代から、教官達に一目置かれる程の成績を叩き出し、横須賀鎮守府に配属された。
 そこで様々な伝説を作ったが、色々な事情で第603鎮守府に異動。

・大鳳…第603鎮守府所属、大鳳型装甲空母一番艦、大鳳の適性者を指す。
 呉鎮守府に所属していたが、第603鎮守府に異動。
 しかし、第603鎮守府の艦娘達のぶっ飛び具合に精神崩壊。

・提督…第603鎮守府を運営する、渡良瀬準少佐を指す。声が「杉田智和」さんに激似らしい。
 ぶっ飛んだ艦娘を取り纏めているからか、気苦労が耐えない。
 艦娘と人間のハーフらしい。

・武蔵…呉鎮守府所属、大和型戦艦二番艦、武蔵の適性者。
 数え切れない程の伝説を持つ。脳筋。
 口癖は「筋肉はいいぞ。」
 毎日笑顔で深海棲艦や、赤城を拳でシバいている。
 その様は、さながら「ブロリー」のようだと、呉鎮守府の全員から認識されている。

・赤城…呉鎮守府所属、赤城型航空母艦一番艦、赤城の適性者を指す。
 横須賀鎮守府所属の赤城と違い、芋っぽさは無い。
 呉鎮守府の提督とケッコンカッコカリをしている。
 今日も笑顔で提督を襲い、武蔵にシバかれている変態淑女。

・加古…呉鎮守府所属、古鷹型重巡洋艦二番艦、加古の適性者を指す。
 数年前まで最前線に居たらしく、戦闘力が非常に高い。
 何やら病を患っているようで、常に睡魔に襲われている。

・呉鎮守府提督…苦労人。


以上、補足終了。
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