追跡鶴   作:EMS-10

96 / 214

※注意※
お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ
急展開?いいえ、仕様です
R17.9有り




第76話・鉄面被

 

「私の体温と、艤装の排熱で焼いていきますか?」

 

「焼きません!」

 

「もう抑えられないの。ヤらせて?いいえ、ヤらせろ(・ ・ ・ ・)

 

「お断りします!」

 

 何故?何故!?何故こうなった!?

 俺の知るあの人(・ ・ ・)は、こんな事言うような人じゃなかった。

……あっ、もしかしなくても、艤装の影響なのか?くそっ、艤装ァ!俺の知っているあの人(・ ・ ・)を。貞淑で、母親のような安心感を与える微笑みを見せてくれたあの人(・ ・ ・)を返せェ!!!

 

(こんな事なら、見学するんじゃ無かった!)

 いや、でも、見学しなかったら、久々に再会を果たせなかった。

 くそっ!くそっ!くそぉ!!

 

「絶対に逃しません。私の。乙女の純情を弄んだ罪。絶対に償って頂きます」

 

「来るなッ!来るなァ!!」

 さて、何があったか話をしよう。あれは、今から約20分程前の事だ。

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

side 提督

 

 

──大本営、某所──

 

 

10:10。

 

 

 

 レシプロ機のエンジン音が聞こえた方に行くと、黒い髪を左側にサイドポニー……だっけ?左側に纏め、艦娘の装束──白い道着に、青いスカートのような袴、黒いニーソックスを穿いた女性が、艤装を纏い、海上で弓を構え、矢を放った。

 

(美しいな)

 弓を構える所作がとても美しく、プロの弓道家のようだ。

 後ろ姿だから表情を伺えないが、きっと物凄く集中した顔をしているのだろう。

 

(所作が美しいだけじゃない。艦載機の操作も抜群に上手い)

 放たれた矢が艦載機へと姿を変え、海上に設置された、不規則に動く的へ、素早く。そして的確に機銃で射抜いていった。

 的の数は、20以上。それだけあった的──空母艦娘用の的は、ピンポイントで撃ち抜かなければ、壊れない仕様になっている──を、僅か5機の艦載機──形状からして、戦闘機。恐らく烈風だろう──で、数秒足らずで全て撃ち抜いた。

 

(動きに一切無駄がない)

 艦載機を操る妖精さん達の練度もそうだが、その艦載機に指示を出す艦娘の判断力も、物凄く良い。

 

(流石、大本営所属の艦娘だ)

 的を破壊した艦載機に帰還指示を出したのか、艦娘の元へ向かって艦載機が飛んでいく。それを見た艦娘は飛行甲板を構え、5機の艦載機を着艦。素早く矢に変え、矢筒に仕舞った。その動作にも、一切の無駄がない。

 

「……で?何時まで私を視姦(・ ・)しているのかしら?」

 

「……へ?」

 思わず見とれていたら、俺に背を向けたまま、感情を感じられない低い声で、訓練をしていた艦娘がそう言ってきた。え?今、「視姦」って言った?

 今更だが、俺と訓練をしている艦娘との距離は約10m程離れている。それなのに、目の前の艦娘の声がハッキリと聞こえた。

 

「聞こえなかったのかしら?私を視姦して、薄い本みたいに脳内でイヤらしいことを妄想しているんでしょ?」

 

「していませんって……」

 いきなり何言い出すの、この人。……待て待て。もしかしたら、こっそり見ていたから勘違いされたのかもしれない。誤解を解こう。

 

「自分は──」

 

「うなじ?腰?それとも絶対領域でも視姦していたのかしら?」

 

「だから、違いますって」

 なんか、マズいぞ?俺はただ、レシプロ機のエンジン音が聞こえたから見に来た。そして、訓練している艦娘が居て、見学していただけ。しかし、未だ背を向けている艦娘は視姦された、と思っているみたいだ。

 

「……ふふっ。冗談よ」

 

「……へ?」

 誤解を解こうとしたら、目の前の艦娘は楽しそうな声でそう言ってきた。

 

「ちょっとからかっただけよ」

 

「は、はぁ……」

 あの、からかうにしても、別のやり方にしていただけませんかね?下手したら俺、セクハラ容疑をかけられて、憲兵さんのお世話になっていたかもしれないんですよ?

 内心でそう思っていると、艦娘はこちらに振り向き、海上をゆっくり歩いて俺の方へ向かって歩いてきた。

 少しずつ近付くにつれ、顔が見えてきた。……あれ?

 

(この顔、あの人(・ ・ ・)に似ている……)

 昔、俺が幼い頃から中学2年の時まで、瑞鶴──瑞稀や、翔鶴──静流、そして俺の世話を焼いてくれた、あの人に似ている気がする。けど、

 

(あの人は、こんな無表情じゃなかった)

 あの人は表情豊かで。何時も笑顔で。俺達の世話を焼いてくれた。それに、声も違う。こんな、感情の無い、淡々とした喋り方はしなかった。

 

「……」

 

「……」

 気が付けば、艦娘は海上から陸に上がり、俺の目の前──約1m先に無言・無表情で立っていた。

 似ている。あの人に、とても似ている。だが、似ているだけだ。よく言うだろ?世界には自分と似た人が三人居る、って。

 

「……」

 

「!?」

 突然、目の前の艦娘が悲しそうな顔をした。い、一体どうしたんだ?内心で戸惑っていると、

 

「……やっぱり、分からないよね(・ ・)

 

 感情のこもっていない、淡々とした声でそう言った。

 分からない?一体何が?

 

「……私は、加賀型航空母艦一番艦、加賀と申します」

 

「えっ?あ、じ、自分は、第603鎮守府の提督、渡良瀬準少佐であります!」

 目の前の艦娘が名乗ってきたので、俺は慌てて自己紹介をした。

 加賀型航空母艦一番艦、加賀。第二次世界大戦中、世界最強と言われた航空母艦の一隻。通称一航戦と呼ばれる空母の適性者。

 

「……あの」

 

「は、はい、何でしょうか?」

 考え事をしていたら、目の前の艦娘──加賀さん(・ ・ ・ ・)が声をかけてきた。その声は先程の感情を感じさせない物ではなく、戸惑った声だった。おまけに、表情も戸惑ったような顔をしている。

 あの、何故、そんな顔と声をするのですか?俺、マジで何かやらかしました?

 

「……」

 

 めっちゃ見てる。俺の顔を、無言で穴が開くほど見てる。あっ、艤装を格納した。一瞬で光の粒子になって消えちゃった。何度見ても凄いなぁ、艤装格納の瞬間って。

 

「(<⚫>)(<⚫>)」

 

 無言・無表情で、瞳孔をかっ広げて見てる。怖!

 

「あ、あの、何でしょうか?」

 

「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」

 

「」

 

「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」

 

 目ェ!加賀さん!お目目!!血走ってますよ!!!

 加賀さん、あの、(わたくし)、何か粗相をしてしまったのでしょうか……。

 

「……はぁ」

 

 突然、加賀さんはため息を吐き、目を閉じた。えっ?マジで俺、何かしました?

 

「艤装のせいで、性格と顔つきが変わってしまったから、気付いていない……」

 

 小声で何やら呟いたが、波の音で掻き消され、聞き取れなかった。

 

「……渡良瀬少佐」

 

「は、はい」

 加賀さんは閉じていた目を開けると、真剣な顔で再び俺の目を見つめてきた。

 俺の身長は約180cm。対して加賀さんは160cmあるか無いか。それだから、俺を見上げている。

 

「背、伸びたわね」

 

「……は?」

 背が伸びた?どゆこと?え?何?もしかして加賀さん、俺の事を知っているの?

 

最後に会った時(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)は、私と同じ位の身長だったね(・ ・ ・ ・)

 

「!?」

 最後に会った時?俺と同じ身長?

 頭の中で、加賀さんの言葉を繰り返す。

 俺の身長が加賀さんと同じ位。身長160cm前後の頃に、俺と加賀さんは会った事がある……のか?

 

(俺の身長が160cmの頃って……)

 確か、中学2年の時、それ位の身長だったな。……えっ?まさか!?

 

「顔立ちも、昔は女の子っぽかった。でも、今は男の子らしくなったね(・ ・ ・ ・)

 

 あまり思い出したくないが、中学の頃まで女っぽい顔をしていて、周りによくからかわれたんだよなぁ。

 この事を知るのは、瑞稀(瑞鶴)静流(翔鶴)、瑞稀達のご両親と俺の爺ちゃん。そして、あの人(・ ・ ・)位しか居ない。あと、地元の人達。

 

「貴方はよく、瑞稀ちゃん(・ ・ ・ ・ ・)と一緒に遊んで、それを見た静流ちゃん(・ ・ ・ ・ ・)にプロレス技をかけられて、泣き叫んでいた」

 

 おいおいおいおい。まさか?

 

「それを、私がよく止めて仲裁したわ」

 

 あっ、もしかしなくても、この人。

 

「色々あったけど、貴方や瑞稀ちゃん(・ ・ ・ ・ ・)達と過ごした日々は、とても楽しかった。ずっと、一緒に居たかった。けれど、10年前。父の仕事の都合で引越しをして、それっきりになってしまった」

 

 加賀さんはそこまで話すと、再び無言になり、微笑みながら(・ ・ ・ ・ ・ ・)俺を見つめてきた。

 

「色々あって艦娘になったけど、貴方達の事を(・ ・ ・ ・ ・ ・)忘れた日は(・ ・ ・ ・ ・)一日たりとも無い(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)わ」

 

 この安心感を与えてくれる微笑み。見覚えがある。

 

「風の便りで、貴方達が提督と艦娘になったと聞いたけど、まさか、今日。しかも、此処(大本営)で逢えるとは思っていなかったわ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準にゃん(・ ・ ・ ・)

 

「準にゃん言わないでください。麻子さん(・ ・ ・ ・)

 はい、この加賀さんは、あの人(・ ・ ・)だ。確定。

 あの頃(・ ・ ・)と違い、顔つきや声が変わってしまったが、俺の事を「準にゃん」と呼ぶのは、俺が知る限り、あの人(・ ・ ・)しか居ない。

 

「ようやく気付いてくれました?」

 

「えぇ。さっきの……あー……俺を渾名で呼んできたので確信しました」

 

「準にゃん」

 

「だから準にゃん言わないでください」

 

「準にゃん」

 

「やめてください」

 

「準にゃん♪」

 

「可愛らしい声で言ってもダメです。言わないでください」

 しかも真顔で言わないで?

 

「ダメですか?」

 

「ダメです」

 やめてください。

 

「準にゃん」

 

「勘弁してください」

 やっぱり麻子さん(・ ・ ・ ・)は呼んできた。嫌がると益々嬉しそうな顔をして、渾名を呼んで来るんだよなぁ。

 

「ねぇ、準にゃん」

 

「だから、準にゃんって呼ばないで……もういいです」

 こりゃ、幾ら頼んでもやめてくれそうにないな。

 久々の再会だから、嬉しくて連呼しているのかもしれない。今回は我慢しよう。

 

「貴方は何故、此処に居るの?余程の理由が無い限り、此処には入れない筈よ?」

 

「あー……実は、カウンセリング課に用がありまして……」

 加賀さん──麻子さんが言ったが、大本営は重要拠点の一つだ。それだから防犯の為に、大本営に勤務する職員や艦娘以外は、余程の理由が無い限り、立ち入れない決まりになっている。

 

「カウンセリング課?」

 

「はい。部下がメンタルをやられてしまいまして、現在診察を受けているんです。先生に、時間がかかると言われたので、不審に思われない程度に彷徨いていたら、レシプロ機のエンジン音が聞こえたので、気になって見に行ったら、麻子さんが訓練をしているのを見かけ、そして声を掛けられて今に至ります」

 技術課に寄って艤装について色々教わった事は黙っておこう。

 

 技術課で思い出したけど、麻子さんの顔つきや声が変わったの、艤装のせいなのかな?聞きたい。けど、これはデリケートなことだ。俺から聞くのはやめておこう。

 

「そう。それは大変ね。貴方の部下が無事回復することを祈るわ」

 

「ありがとうございます」

 

「ところで()

 

「はい、なんでしょう?」

 準にゃん呼びしていない。これは、真面目な話をする気だな。

 

「靴紐、解けているわよ?」

 

「えっ?」

 真面目な話をすると思っていたら、靴紐が解けていると言われた。慌てて足元を見る為、前屈みになるが──

 

(──俺、二種軍装じゃん)

 靴は白の革靴を穿いている。紐なぞ付いていない。

 

「麻子さん、俺、革靴なんで、紐なんて──」

 解けていないですよ?前屈みのまま顔を上げ、そう言おうとしたが、言えなかった。

 何故なら──

 

「……」

 

──麻子さんは俺の頬を手で包み、目を閉じ、無言で顔を近付けていたから。

 

……え?何?何??戸惑っている間にも、麻子さんの顔がどんどん接近してくる。あっ、あのっ!このままだと、唇と唇が接触しちゃいますよ!?

 慌てて離れようとしたが、麻子さんの手に力が込められ、逆に引き寄せられてしまった。その結果──

 

「……んっ」

 

「~~~ッッッ!!?」

──キスしてしまった。いや、されてしまった(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 甘い吐息が、俺の口内に流れ込んできた。

 それだけじゃない。()も入り込んで来た。

 

「~~!?~~~~~!!1!!???!!」

 何!?何で!?キス!?キスされてる!?キス島撤退作戦──じゃない!!キスされているよ!?Who?間違えた。Why?パニクり過ぎてビックリマークに数字が混じっちゃったよ!!意味分からんことを考えている場合じゃない!胸ポケットに入れたスマホが(・ ・ ・ ・)震えている(・ ・ ・ ・ ・)気がするけど、それどころじゃない!あああああ!!舌が!舌がァ!絡み合ってるゥ!?混乱して呼吸出来ない!

 

「──ぷはぁ」

 

「~~~ッッッ!!?」

 どれ程そうしていたのだろう。数秒。もしくは十数秒間だったのかもしれないが、俺には何分もキスをしていたかのように思えた。

 ともかく、麻子さんが離れてくれた。お陰で冷静になれて呼吸が出来た。しかし、手は俺の頬に添えられたままだ。

 

「や り ま し た」

 

 真顔で。しかし、とても嬉しそうな声で麻子さんはそう言い、頬を上気させ、潤んだ瞳で見つめてきた。そして、再び目を閉じて顔を近付けて──

 

「ま、待ってくださいッ!!」

──来たので、慌てて麻子さんの肩を手で押さえ、接近を阻止。くそっ、力が強い!もしかして、艦娘の力を使っているな?

 必死に押さえているが、顔が徐々に接近している。このままじゃ、二回目のズキュゥゥゥン!!!をされちまう!つーか、今更だけど此処、大本営!人が居るんだよ!?目立っちゃう!

 

「何故拒むのですか?」

 

「何故いきなりキスしてきたんですか!?」

 本音を言えば、嬉しいです!今だから言えるけど、俺の初恋はこの人だったんだ。けど、直ぐに諦めた。理由?話すと長くなるから割愛する!

 

「質問を質問で返さないで。罰としてズキュゥゥゥン!!!します」

 

「お断りします!」

 うおおおおおお!!?強い!強過ぎ!結構本気で押さえているのに、どんどん顔の距離が近くなってるゥ!?

 

「──おい、貴様!何をしている!?」

 

「──えっ?」

 

「……チッ」

 

 麻子さんと俺の顔が再び数cmまで近付いた時、何処からか怒鳴り声が聞こえた。俺は間抜けな声を出し、麻子さんは舌打ちをした。

 慌てて声のした方を見ると──

 

(アイエエエエエエエエッッッ!!?憲兵=サン!憲兵=サンッッッ!!!?)

 カーキ色の軍服を纏った、今朝俺に声をかけてきた憲兵さんが、鋭い目付きでこちらを睨みながら走って来た。

 それを見た加賀さん(・ ・ ・ ・)は、俺の頬に添えていた手を離してくれた。

 

(あっ、終わった)

 俺はさっきまで、麻子さん──艦娘(加賀さん)の両肩を掴み、顔を近付けて、強引にキスを阻止しようとしていたが、第三者からは艦娘に乱暴を働こうとしている様に見えただろう。

 

 この場合、艦娘暴行罪──所謂セクハラ──で身柄を拘束されるな。その後取調べを受けて、提督の資格を剥奪。刑罰を受けて、その後は……どうなるんだろう?打首?絞首刑?それとも、島流しされるのかな?

 

(打首なら、扶桑さんにされたいなぁ……)

 いや、扶桑さんの事だ。絶対にしてくれない。それどころか、俺に打首の指示を出した人の首を狩りに行くだろう。

 あっ、その前に瑞鶴達に殺されるかもしれない。

「私に手を出さず、他の女性──艦娘に手を出したわね!?」って言いながら、彗星一二型甲で爆撃。もしくは彗星ラリアットぶちかまされて挽肉にされるな。

 それか、デンジャラス・ラブ・ゾンビ化した涼月に、カニバリズム的な意味で喰われる(・ ・ ・ ・)か。

 もしくは、サキュバスと化した榛名にギミックアームで「抱き締めたいなァ!提督ゥ!」されて、全身の骨と内臓を破壊される。

 はたまた、由良に──長くなるから、この辺にしとこう。

 

 憲兵さん、お世話になります。覚悟を決め、加賀さん(・ ・ ・ ・)から離れ、両手を憲兵さんに差し出そうとしたら──

 

「──ん?えっ?か、加賀さん!?」

 

──あれ?憲兵さんの様子がおかしいぞ?

 さっきまで俺の事を射殺さんばりに睨み付けていたのに、加賀さん(麻子さん)を見た途端、驚愕に目を見開き、その後、困惑したような顔になった。

 

 

「何かしら、憲兵さん」

 

 

 加賀さん(・ ・ ・ ・)、声。声が怖いです。ただでさえ低い声が、更に低くなっています。それに、ドスが効いています。それだけじゃない。ゴゴゴゴ……って擬音が聞こえるような迫力がある。怖いです。

 

「あっ、いえ、その……警邏中に、艦娘に対し不埒な真似を働こうとする提督が居ると、通報を受けまして……」

 

 憲兵さん、めっちゃ冷や汗流して、しどろもどろになっている。マジでどうしたんだ?

 

「今、私は彼と久々の再会を果たし、情熱的なキスをしていた所なのだけど?」

 

「そ、そうでしたか。大変失礼致しました!」

 

 あの、加賀さん(・ ・ ・ ・)、何を言い出すの?それと憲兵さん、帰ろうとしないで?

 

「自分は、何も見ておりません!聞いておりません!」

 

「えっ?ちょ、憲兵さん!?」

 行かないで!身柄拘束して!?本音を言えば拘束されたくないけど、ここに居たらなんかマズいことが起きそうなんです!R18な展開に突入しそうなんです!

 

「渡良瀬少佐、自分は何も見ておりません。聞いておりません。……助けてやりたいが、相手はあの(・ ・)加賀さんだ。助けられん。許してくれ

 

 小声で耳打ちしてきた。えっ?もしかして、見捨てられるの?やめて?見捨てないで?

 

「では、自分は再び、警邏に戻ります!失礼します!」

 

 敬礼をすると、憲兵さんは俺達に背を向け、早歩きで去って行ってしまった。

 

「……さて、続きをしましょうか?」

 

「」

 

此処(大本営)は隠れて【ヒャッハー!】するのに適した所が多いです。行きましょう」

 

「行きません」

 見捨てられた。ははは……何故……憲兵さんのお仕事って、不埒な真似を働こうとする提督を捕まえるのが、主なお仕事でしょ?ダメじゃないか、職務放棄しちゃあ、ダメじゃないかァ!

 

「というか、何故こんな事をするんですか?」

 俺の知っている麻子さん(・ ・ ・ ・)は、貞淑な人で、決してこんなことを言わないし、行動に起こさない。

 

「何故って、貴方の事を犯したいうぉっほん。好きだからよ?」

 

「今、"犯したい”って言おうとしませんでした?」

 わざとらしく咳をして誤魔化そうとしたみたいだけど、聞こえましたよ?あと、俺の事が好き?嘘でしょ?ご冗談を~。

 

「言っていないわ。聞き間違えたのでは?ちゃんと耳掃除してるの?ダメよ、ちゃんと小まめに耳掃除しなきゃ。耳垢栓塞(じこうせんそく)になるわよ?さぁ、私の部屋に行きましょう」

 

「耳掃除は小まめにしています。なので大丈夫です。部屋に連行しなくていいです」

 耳掃除は毎日すると、耳の中を痛める恐れがあるから、月に2、3回程度にした方がいいぞ。あと、風呂上がりにすると、湿気で耳の中の皮膚がふやけて、余計に傷付きやすくなるから、やるなら入浴前にしておけ。

……俺は何を言っているんだ?

 

「だが断る」

 

「なん……だと……」

 どうでもいい事を考えていたら、右手を掴まれてしまった。くそっ、解けそうにない。

 

「いいから、行きますよ」

 

 抵抗するも、引き摺られる。今の俺はまるで、散歩から家に帰るのを拒む犬のようだ。

 このままじゃ、マズい。

 

(仕方ねぇ、アレ(・ ・)やるか)

 それしかない。

 今まで俺の窮地を救ってくれたアレ(・ ・)なら、きっと何とかなる。

 

 約10年振りに再会出来た、俺の初恋の人(・ ・ ・ ・)

 いつも、俺や瑞鶴達──瑞稀達の世話を焼いてくれた、恩人。

 その人に、アレ(・ ・)をするのは非常に心苦しい。下手したら、嫌われるかもしれない。嫌われるのは、恐い。それでも、やるしかない。

……覚悟を決めろ、俺。

 誰かが言ってた。

 

 

【いかなる窮地に有っても、人の覚悟とは、恐怖と言う本能さえ乗り越える事が出来るのである! 】と。

 

 

(……決めたぞ)

 俺は、加賀さん(・ ・ ・ ・)アレ(・ ・)をする。

 

 

 

(覚 悟 完 了!)

 抵抗をやめ、大人しく加賀さん(・ ・ ・ ・)に手を引かれる。

 突然抵抗しなくなった事を不審に思った加賀さん(・ ・ ・ ・)は、俺の顔を見てきた。その顔は、少しだけ戸惑ったような顔をしている。

 俺は構わず、加賀さん(・ ・ ・ ・)に歩み寄り、

 

「──えっ?」

 

 掴まれていない左腕を、加賀さん(・ ・ ・ ・)の首に回した。

 戸惑ったような声を出し、俺の目を見てくる。俺も見つめ返し、左腕をしっかり固定する。第一段階、完了。

 

「あら、ようやくその気になってくれたのかしら?」

 

 嬉しそうな声だ。えぇ、その気になりました。させられました。

 左手を首に回され、抱き着くような状態になったことで、加賀さん(・ ・ ・ ・)は俺が逃げないと判断したのか、掴んでいた右手を離してくれた。

 すかさず、右手を加賀さん(・ ・ ・ ・)の股間部に伸ばす。

 

「あら?ここでスる(・ ・)気なの?」

 

 えぇ、します。殺ります(・ ・ ・ ・)

 右腕を加賀さん(・ ・ ・ ・)の股間部に伸ばし、固定。第二段階、完了。

 

「ふふっ。流石に気分が高揚します」

 

「加賀さん。いいえ、麻子さん(・ ・ ・ ・)。聞いてください」

 艦娘として、ではなく、一人の女性として聞いて欲しい。だから、敢えて艦名ではなく、名前で呼んだ。

 

「何かしら?」 

 

「一つ、俺は麻子さんの想いを裏切ります。

 二つ、そのせいで、麻子さんを悲しませます。

 三つ、女性に暴力を振るうという、最低なことをします」

 

「……えっ?ま、まさか!?」

 

 俺が罪を数えると、麻子さんは戸惑った。そして、自分が何をされるのか察したのか、暴れ出した。しかし、俺はしっかり麻子さんをホールドしているから、逃げられない。

 

「その台詞。そして、この体制。まさか、貴方、瑞稀ちゃんの得意技(・ ・ ・)をする気!?」

 

 そうです。しかし、口には出さない。

 右腕に力を込め、麻子さんを持ち上げる。

 

「や、やめなさい!やめて!」

 

「麻子さん。俺は、自分の罪を数えました」

 麻子さんがやめるよう、懇願してくるが、無視。ゆっくりと、麻子さんの頭を地面に向ける。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ」

 

「お前の罪を、数えろだと?貴方を犯げふん愛することが…罪だとでも……」

 

 一箇所だけ違うけど、ユー○ピア・ドー○ントの台詞で返してくれた。あの回、瑞稀と麻子さん、俺の三人で見たんだっけ。懐かしいなぁ……懐かしんでる場合じゃない。

 さっきから、ハンターに乗られたティ○レックス並に暴れているから、さっさとノーザンライトボムぶちかまして、大人しくさせよう。

 

 

「そおおおぉぉぉぉいっっっっ!!!」

 

「そげぶっ!?」

 

 

 

 渡良瀬選手!一切の慈悲も容赦も無く!全力で!加賀選手の頭を!コンクリートの地面に叩き付けたああああああ!!!

 鈍い音!それと同時に、コンクリートにクレーターが出来上がったァ!!

 加賀選手、ダウウウウウンッッッ!!!

 勝者!渡良瀬選手!!!見事なノーザンライトボムです!

 

……今更だけど、これ、完全に暴力罪が適用されるね。まぁ、覚悟の上でやったんだけど。

……加賀さん(・ ・ ・ ・)、ぶちかましておいて何ですけど、大丈夫ですか?大丈夫なら起きてください。青い袴のようなスカートが派手に捲れて、レースの付いた白い布と、カモシカのような足が。女性らしいムチッとした太腿やら足の付け根が丸見えですよ?

……あ、起き上がった。大丈夫みたいですね。

 

「………………」

 

 うっわぁ。背を向けて立ち上がったけど、分かる。めっちゃ怒ってる。

 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……って擬音が聞こえる気がします。これ、ヤバいね。

 

「………………」

 

 ユラユラと揺れながら、ゆっくりと振り返ってきた。絶対怒った顔をしてい……る……

 

 

「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」

 

 

 瞳孔を限界までかっ広げ、真っ赤なお目目(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)で見つめてきています。あと、さっき格納した艤装を展開しています。ヤバいね。

 

 

「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」

 

 

「」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブチ犯す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あっ、終わった。

 

 

 

 

 

side 提督 out

 

 

───────

────

 

 





次回予告


 10年前。引っ越す前に、貴方に想いを伝えたかった。
 でも、出来なかった。
 けれど、今は違います。今なら、言えます。
 貴方を犯したいと。
……違うでしょ。何を言っているのよ。
……はぁ。艤装のせいで、私の思考や言動が色々変わってしまった。それだけじゃない。彼を見た途端、その……襲いたい衝動に駆られて、変な言動を取ってしまった。
 準、違うのよ。私はただ、貴方に私の想いを伝えたいだけで、こんな破廉恥な事なぞする気は全く無いの。
 だから、行かないで。……くっ、ダメね。彼の思考と感情から、怯えを感じる。どうすればいいの?



第77話・い加賀わしい如何わしい女ではありません



「着衣プレイ。流石に気分が高揚します」



【補足的なナニか】

・準にゃん…元ネタは「はぴねす!」に登場する男の娘、「渡良瀬準」の愛称。
 この小説に登場する主人公と、「はぴねす!」に登場する彼女(・ ・)は同名なだけで【別人です】。

・ズキュゥゥゥン…元ネタは「ジョジョの奇妙な冒険」で使用された、「キスをする(される)」時の擬音。

・ユートピア・ドーパント…元ネタは「仮面ライダーW」に登場する「加頭順」が変身した姿。
 仮面ライダーWに「お前の罪を数えろ」と言われた際、
「お前の罪を、数えろ……だと?人を愛することが……罪だとでも……」と返答。

・ティガレックス…元ネタは「モンスターハンター」に登場するモンスター。
 「乗り」というアクションをすると、ハンターを振り落とさんと暴れ回る。その暴れっぷりは凄まじく、他のモンスターはその場でジタバタする程度なのに、ティガレックスは地面を転げ回る。とにかく派手に暴れる。

・加賀…大本営本部所属、加賀型航空母艦一番艦、加賀の適性者を指す。本名、黒咲麻子(くろさきあさこ)
 艦娘になる前は感情表現豊かで、よく喋る女性だったが、艤装の影響で人格が変わってしまい、無表情で感情を感じさせない、淡々とした話し方になってしまった。
 主人公達とは幼馴染の関係だったが、10年前に引越して別れてしまう。
 主人公に好意を抱いていたらしく……。

 名前の元ネタは、「ToLOVEるダークネス」に登場する「黒咲芽亜」と、「ガールズ&パンツァー」の「冷泉麻子」の苗字と名前からパク……お借りしました。
 どちらも「井口裕香」さんが演じている。


以上、補足終了。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。