追跡鶴   作:EMS-10

97 / 214

※注意※
お前らの嫁だろ、早くなんとかしろよ
生々しい表現が含まれています
R17.9有り




第77話・如何わしい女ではありません

 

Another side

 

 

 

 私は、幼い頃から常に、仮面(・ ・)を被っていた。

 仮面といっても、実際に被っていたわけではない。

 己を偽る、という比喩表現よ。

 私は、仮面を被り。

 両親の期待に応える為。

 皆から、好かれるように。

 皆から、頼られるように。

 そして、自分が傷付かないように。

 常に、模範的な言動を取っていた。

 その結果、気が付けば私は、私の思った通りに行動する事が出来なくなっていた。

 日に日に心がすり減り、生きる事が嫌になった。

 死にたい。

 何度もそう思った。

 でも、自ら命を絶つ事は無かった。

 何故なら。

 

 

 私という存在を、全て肯定してくれる存在()と出会えたから。

 

 

 最初は疑った。

 けれど、共に過ごしていくうちに間に、信頼出来る存在だと分かった。

 彼に依存する(・ ・ ・ ・)のに時間はかからなかった。

 本当は、甘えたかった。

 でも、私と彼は歳が離れていた。

 歳上の私が、歳下の彼に甘えるなど、言語道断。

 だから、我慢した。

 けれど、ある日。

 彼と二人きりの時に、少しだけ甘えた。

 後ろから彼を抱きしめた。

 彼は驚き、照れたような、焦ったような顔をした。

 その顔を見た瞬間、私の中で何かが壊れた。

 

 

この顔を、もっと見たい。

 

 

 その日以来、彼が見せてくれた、あの顔(・ ・ ・)を見たくて、沢山悪戯した。

 優しく微笑んであげたり。

 頭を撫でてあげたり。

 抱きしめてあげたり。

 抱きしめてあげた際、胸を押し付けた事もあったわね。

 当時の私は、他の同い歳の娘達よりも、発育が良かった。

 それだから、胸の柔らかさに驚き、パニックになっていたわ。

 あの時の顔。とても可愛かったのを覚えている。

 嗚呼、満たされる。

 

 

 しかし、至福の時は長く続かなかった。

 

 

 父の仕事の都合で、引越す事になった。

 私は反対したかった。

 けれど、出来なかった。

 結果、私と彼は離れ離れになってしまった。

 あの時。別れる直前、私の想いを伝えれば良かった。

 しかし、臆病な私には、出来なかった。

 そして、空っぽな自分に戻ってしまった。

 

 

 自分でも、どうやって生きてきたのか、よく覚えていない。

 ただ、一つだけハッキリと覚えているのは、私が大学生になり、通っていた学校で艦娘の適性検査を受け、加賀型航空母艦一番艦、加賀の適性があることが判明。

 艦娘になれば、何かが変わる。それに、間接的になるけど、彼を──彼の日常を護る事が出来る。そう思い、両親の反対を押し切り、大学を中退し、艦娘になった。

 一応、両親には今まで育ててくれたお礼と、勝手に艦娘になったお詫びに、稼いだお金──お給金の半分を、艦娘になった日から、毎月振り込んでいる。

 

「……彼に逢いたい(・ ・ ・ ・)

 艦娘になった直後は満たされていたけど、日に日に心がすり減り、何も感じなくなってしまった。

 しかし、彼の事を思い出すと、心が満たされ、笑顔になれた。

 彼は今、何処で何をしているのかしら?

 

 

………………。

 

 

 艦娘になって一年と少しが経ったある日。

 艤装に改装──強化──を施し、接続を行ったら、トラブルが起きてしまった。

 後で聞かされたのだけど、私は気絶してしまったらしい。

 原因は、艤装──加賀(・ ・)から、第二次世界大戦の記憶と感情が流れ込み、想像を絶する凄惨な光景を目の当たりにした為。

 その結果、私は昔の私ではなくなった。

 表情は殆ど動かなくなり。

 声が、感情を感じさせない、淡々とした喋り方になってしまった。

 

 

 

──────────────

 

 

現在。

 

 

「……」

 艤装を纏い、海上に立つ。

 今日も訓練をしましょう。

 艤装の影響で、人格が変わってしまったけど、今はもう気にならない。寧ろ、この方が色々都合がいい。

 

(……誰か見ているわね)

 最近、他人の思考や感情を感じ取れるようになった。

 しかし、完全ではない。

 時々、全く感じ取れなくなったりする。

 

(誰なのかしら?)

 不安定なこの力を使いつつ、弓を構え、そこに矢を番えながら、私を見ている人物の思考と感情を読み取ると、

 

(精神崩壊……幼児化……カウンセリング……)

 断片的に思考が流れ込んできた。

 纏めると、カウンセリング課に用があって此処に来たみたい。つまり、外来者。

 

(まぁいいわ。気にせず訓練をしましょう)

 他人の思考と感情を読み取れるようになった直後は戸惑ったけれど、今では慣れた。慣れてしまった。

……訓練に集中しなさい。

 風と波を読み、矢を放つ。

 艦娘になってから数え切れない程やってきた動作。

 自分で言うのもなんだけど、綺麗な姿勢で放てた。

 

『美しいな』

 

(……)

 思考が流れ込み、次に感情──感嘆──が伝わってきた。

 どうやらこの人物は、私のカラダ(・ ・ ・)ではなく、私自身──艦載機を発艦させる姿──を見てくれた。

 大抵は、私のカラダ──腰や尻、脚を見てくる。

 しかし、この人物は違った。

 

(まるで、()みたいね)

 彼も、外見ではなく、中身を見てくれた。

……懐かしんでいる場合じゃないわ。今は訓練中よ。集中しなさい。

 艦載機を操る妖精さん達に指示を出す。

 今日は何時もより風が強いから、それを上手く利用しましょう。

 経験と勘を頼りに、妖精さん達に指示を出し、不規則に動く的へ攻撃指示を出す。

 どれも、指示通りに動いて破壊してくれた。流石、優秀な子達ね。

 

『所作が美しいだけじゃない。艦載機の操作も抜群に上手い』

 

(……ありがとうございます)

 再び、私を見ている人物の、思考と感情が流れ込んできた。どちら(思考と感情)も、艦載機の操作技術についての感想だ。

 

(さて、着艦させましょう。ついでに、誰が私を見ているのか、確認しましょう。)

 妖精さん達に着艦指示を出し、飛行甲板を構える。

 5機の内、1機だけを高高度に飛ばし、私の背後を見てもらう。

 そして、視界を共有すると───

 

(────ッッ!?)

 一人の男性──白い提督服を纏った人物が、視界に入った。

 それだけなら驚かない。

 何故驚いたのか。それは──

 

(渡良瀬……準……)

 私の想い人(・ ・ ・)で、私が依存している(・ ・ ・ ・ ・ ・)彼に、良く似た顔の男性が立っていたから。

 

(おおおおおっおおっっっちつつっきなさい。素数を数えるのよ。10、9、8、7……ヒャア!我慢出来ねぇ、0だ!)

……違うでしょ。今のは素数じゃなくて、ガ○ハザードに登場するビ○ョップの台詞じゃない。全然落ち着けていないわ。しっかりしなさい。

 

(それに、似ているだけで本人ではない可能性もあるわ)

 風の便りで、彼が提督になったと聞いた。あと、オマケ達(・ ・ ・ ・)が艦娘になった事も。

……落ち着いて。まずは、私を見ている人物が彼なのか、確認しましょう。

 

「……で?何時まで私を視姦(・ ・)しているのかしら?」

……バカなの?死ぬの?何よ視姦って。そこは「何時まで私を覗き見しているのかしら」でしょ!?

 何で視姦って言ったのよ!?私のおバカ!

 

「……へ?」

 

 ほら、見学者(・ ・ ・)が戸惑って──あら?杉○智和さんっぽい声をしているわね。これは、もしかしたら、本当に彼なのかもしれない。もう少し声を聞きましょう

 

 

…………。

 

 

「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」

 艦載機を着艦、矢に戻し、矢筒に仕舞った後、何度か声をかけて陸に上がり、彼の顔を凝視。

……間違いない。あの頃(・ ・ ・)と違って男らしい顔付きになっているけと、間違いない。

 

(渡良瀬準……彼ね)

 奥二重に、赤茶色の瞳(・ ・ ・ ・ ・)。そして、左瞼に付いたホクロ。それに、声を聞いたけど、杉○智和さんに似た声だった。間違いない。彼だ。

 

(よし、犯しましょう)

……何を考えているの。違うでしょ。

 まずは会話をして──

 

『加賀さん、あの、(わたくし)、何か粗相をしてしまったのでしょうか……』

 

「……はぁ」

 再び彼の思考が流れ込んできた。何処か怯えている。

 

「艤装のせいで、性格と顔つきが変わってしまったから、気付いていない……」

 おのれ、艤装……よくも私から感情と表情を奪ったわね?許さん。ぜったい、ぜーったい許さんぞ!!艦娘を引退したら、バールのような物でぶっ叩いてぶっ壊してやる!覚悟しておきなさい!

 

 

…………。

 

 

(あっ排○してる分かる今私めっちゃ○卵してる一昨日○卵したばかりだから安全な日だったけど艤装のお陰で今めっちゃ排○してる危険な日になってるこれで彼と【自主規制】すれば(はら)めます艤装様ありがとうございます艤装様様です本当にありがとうございます引退したらバールのような物でぶっ叩いてぶっ壊してやるなんて愚かな事を考えて申し訳ございません今後毎日拝ませて頂きます)

 彼と再会出来た嬉しさから、思わず「靴紐が解けている」と嘘を言い、屈んた瞬間を見計らってキスをしたら、極度の興奮状態に陥った私に、艤装が子孫を残せとカラダ──子○に干渉。○卵を促した。

 今は○宮の奥に卵○が在るけど、もう一度キスをすれば手前まで○子が降りてきそうね。

……何故分かるのかって?言葉では説明出来ないわ。とにかく、確実に私のナカ(・ ・)で卵○が動いているのが分かるわ!

 

……さっきから何故、変態みたいなことを考えているのかしら。落ち着きなさい、私。

 しかし、抑えられなかった。

 彼の、あの顔(・ ・ ・)──戸惑ったような顔を見た瞬間、私の理性は再び暴走を始めてしまった。

 

「何故いきなりキスしてきたんですか!?」

 

「質問を質問で返さないで。罰としてズキュゥゥゥン!!!します」

 もう嫌ぁ……。何を言っているのよ……。

……あっ、またあの顔(・ ・ ・)をしている。

 犯さなきゃ(・ ・ ・ ・ ・)

 

「お断りします!」

 

 うるさい。黙って襲われなさい。

 もう一度キスをしようとしたら、それを憲兵さんに見られて誤解されそうになったけど、此処(大本営)に所属してからほぼ毎日、憲兵さんに想い人()の事を愚痴っていたから、準に迫る私を見て察し、二人きりにしてくれた。

 

「」

 

 あらあら、準。そんな魂が抜けたような顔をしないで?

 残念ながら思考と感情が流れ込んで来ないから、準が何を考えているのか分からないけど、構わない。

 

 

………………。

 

 

「…………」

 やりやがった(・ ・ ・ ・ ・ ・)わね。

 彼に抱きしめられ、更に興奮したことで、卵○がすぐそこまで降りてきた。何時でも(はら)めます。

 そう思っていたら、彼はノーザーライトボムをぶちかましてきた。

 

 幸い、艦娘の力が働いてくれたお陰で、コンクリートの地面にクレーターが出来上がる程の勢いで頭を叩き付けられたけど、タンコブどころか掠り傷一つ負っていない。

 

「…………」

 絶対に許さない。絶対に、だ。絶対、ぶち犯す。

……だから、何を考えているの!

 

『ヤバいね』

 

 さっきまで読み取れなかった思考と感情──怯え──が、再び感じ取れるようになった。

 違うの。違うのよ、準。私はただ、貴方と普通にお話をして犯したいだけ。……いい加減にしなさい。さっきから暴走しているわ。

 私はただ、普通にお話がしたいだけなの。信じて!

 

『青い袴のようなスカートが派手に捲れて、レースの付いた白い布と、カモシカのような足が。女性らしいムチッとした太腿やら足の付け根が丸見えですよ?』

 

「─────ッッッ!!?」

 み、見られた!?見られてしまった!?恥ずかしい!!

 そう思った直後。彼の感情が流れ込んできた。これは……これは……!?

 

 

欲情

 

 

「………………」

……ふふっ。興奮してくれたみたい。

 気が付けば、私は立ち上がり、艤装を展開していた。

 そして、理性が壊れた(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

「(<(((⚫)))><(((⚫)))>)」

 逃ガサナイ。絶対、逃ガサナイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブチ犯す」

 

 

 

 

 

 

Another side out

 

 

 

───────

────

 

 

 

 

 

side 提督

 

 

──大本営、カウンセリング課──

 

 

 

10:50。

 

 

「押し倒されて、嬉しかったか?」

 

「嬉しくありません」

 

「あぁん?嬉しくねぇのかよ。つまんねぇ」

 

 先生、日本酒飲み干さないで?

 

「かぁ〜!美味い!もう一本!」

 

「幾らなんでも、飲み過ぎでは?」

 

「だ〜いじょ〜ぶだって!」

 

「は、はぁ……」

 既に6本の日本酒──一升瓶──を空けているのに、顔は全く赤くならないし、ふらついていない。

 先生曰く、昔艦娘をやっていて、艤装の影響でどれだけアルコールを摂取しても、全く酔えなくなってしまったらしい。

 つーか、仕事中に飲酒しても大丈夫なのだろうか?そう聞いたら、「全く酔わないから、水分補給みたいなもんだ。大丈夫!」と言われた。いや、そうじゃなくてですね……もういいや。ツッコミ入れるの、やめる。

 

「しっかし、良かったなぁ?ギリギリ間に合って」

 

「先生が助けを呼んでくれなかったら、(社会的な意味で)死んでいました」

 

「アッハハハハ!!!確かに、あと少し救助が遅かったら、(テクノブレイクして)死んでいたかもな!」

 

 なんか、俺と先生の「死ぬ」の意味が違う気がするが、ツッコまん。

 

……さて、あまり話したくないが、加賀さんが覚醒(・ ・)した後の話をしよう。

 

 

───────

 

 

「ブチ犯す」

 

「ヒエッ……」

 

 加賀さんは真っ赤なお目目(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)で俺の目を見つめ、真顔のまま上半身を一切ブレさせずに猛スピードで走ってきた。

 いやぁ、まるでター○ネーター2のT1000みたいだったよ。俺、ジ○ン・コナーじゃないよ?ジュン・ワタラセだよ?

 

 アホな事を考えたせいで、逃げるのが遅れ、僅か数m走った所で捕まった。

 

「鎧袖一触よ」

 

 そう言いながらウェスタンラリアットをぶちかまされ、俺は地面に組み伏せられた。

 そして、あれよあれよという間に上着をはだけさせられ、次にベルトに手をかけられた。

 必死に抵抗するも、全く歯が立たなかった。

 普段、瑞鶴達に襲われても火事場の馬鹿力で何とかなったが、加賀さんは瑞鶴達を遥かに超える力で俺の手足を押さえ付けてきた。その為、加賀さんの拘束から逃れられなかった。

 

「着衣プレイ。流石に気分が高揚します」

 

 ハイライトが完全に消えた目で。しかも、真顔で。更に、感情を全く感じさせない声で言われたから、滅茶苦茶怖かった。

 今まで体験した事の無い恐怖に襲われ、思わず怯えてしまった(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)。すると、何故か加賀さんは戸惑ったような顔をし、ベルトから手を離してくれた。

 一体何が起きたんだ?訝しんでいると、

 

「ち、違うの!違うのよ!」

 

 突然、加賀さんが泣きそうな顔をしながら、そう言ってきた。その目は、先程までの真っ赤な目から、焦茶色──暗い金色?どっちだろう?ともかく、赤い目から、元の目の色に戻っている。

 

 もしかしたら、艤装の影響で暴走したのかもしれない。そう思っていたら、

 

「加賀さん、随分と楽しそうな事をしていますね?」

 

 おっとりとした声が聞こえてきた。慌てて声のした方を見ると、

 

「見た所、想い人(・ ・ ・)さんに会えたみたいですね?」

 

 栗毛の長髪を加賀さんみたいにサイドテール……でいいんだよな?長髪を片側に纏め、艦娘の装束──焦げ茶色のセーラー服──と、艤装を纏った小柄な少女──艤装の形状と制服から推測するに、駆逐艦娘──が立っていた。

 

「あ、綾波……さん!?」

 

 綾波?白いプ○グスーツを着て、汎用人型決戦兵器に乗る娘かな?

 

「ファーストチルドレンの方じゃ無いですよぉ〜?」

 

 ごめんなさい、ふざけました。真面目になります。なので、殺気を飛ばさないでください。

 

 加賀さんに綾波と呼ばれた少女(・ ・)は、恐らく俺の顔を見て、何を考えて(・ ・ ・ ・ ・)いるのか分かった(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)のか、殺気を飛ばしてきた。ちなみに、ニッコリ笑顔のまま、だ。

 

(本能的に分かる。この娘(・ ・ ・)。綾波って呼ばれた娘、ヤベぇ(・ ・ ・))

 なんつーの?千歳さん的オーラを感じる。つまり、ヤベぇ。

 

「さて、加賀さん。色々言いたい事があると思いますが、まずはお仕置きですね♪」

 

「ぁ……ぁぁぁ……」

 

 加賀さんが怯えている。めっちゃガタガタ震えている。やっぱり、この綾波って娘、ヤバい──

 

「……」

 

──大変申し訳ございません。二度と変な事考えません。ですので、殺気を飛ばさないでください。

 

 この後、加賀さんは綾波と呼ばれた少女の殴打を受け、何度も宙を舞った、と言っておく。勿論、加賀さんは抵抗したが、全く歯が立たなかった。

 そして、綾波さん(・ ・)は気絶した加賀さんを片手で軽々と担ぎ、何処かへ行ってしまった。

 去り際、綾波さん(・ ・)が、

 

「渡良瀬少佐、先程カウンセリング課の先生が、診察が終了したと申しておりましたよ?」

 

 ニッコリ笑顔でそう言ってきた。慌ててスマホ──カウンセリング課が貸し出している端末──を確認すると、診察が終了した、とメールが届いていた。

 

 

 

───────

 

 

 

 そして、慌ててカウンセリング課に向かい、今に至る。

 

……おっと。何故、綾波さん(・ ・)が助けに来てくれたのか、説明していなかったな。

 先生によると、診察終了のメールを出したのに、一向に来ない俺を不審に思った先生が、ふと外を見ると、加賀さんに襲われている俺を見かけたらしい。

 そして、綾波さん(・ ・)に俺を助けるよう頼み、加賀さんをノして診察が終了した事を教えてくれた。

 以上。

 

「まさか、あの(・ ・)加賀の想い人が少佐、アンタだったとはねぇ……」

 

「正直、頭が追い付いていません」

 マジで驚いています。あの人──加賀さんともい、麻子さんに想われていたなんて。

 

「加賀の奴、此処に配属されてから毎日、奇行に走ってて、手を焼かされているんだよなぁ……」

 

 先生曰く、加賀さんは、

 

 深海棲艦を文字通り生きたまま素手、もしくは(やじり)で解体したり。

 デスソースを一気飲みしたり。

 自分の艤装に助走をつけて頭突きしたり。

 

 他にも沢山聞かされたが、長くなるので割愛する。

 とにかく、奇行に走りまくっているそうだ。その度にカウンセリング課にお世話になっていたとか。

 

 ちなみに、現時点で奇行に走っている、大本営所属の艦娘は、加賀さんと大淀さんの二人だけ、との事。

……大淀さん、あなたもか。

 先生曰く、大淀さんは突然「霞"マ"マ"ーーーーーーーーーッ!!!」と叫び出したりするそうだ。

 

(大本営……というか、日本大丈夫か?)

 物凄く不安だ。

 

「……おっと、そうだ。大鳳だけど、元に戻ったよ」

 

「本当ですか!?」

 加賀さん──麻子さんと再会出来たこと。襲われたことのインパクトが強烈過ぎて忘れかけていた。最低だな、俺。

 

「あぁ。ただ……」

 

「ただ?」

 なんだ?人格が変わっちまったとか、何か後遺症が残ったのか?

 

「人格が変わったり、後遺症が残ったりはしていない。安心しな」

 

 俺の顔を見て、何を考えていたのか分かったのか、先生がそう言ってきた。

 じゃあ、何が?疑問に思っていると、

 

「……幼児退行していた時の記憶が、残っているんだよ」

 

「あ・・・(察し」

 

「……少佐、ここから先はアンタの仕事だ。しっかりケアしてやんな」

 

「わ、分かりました」

 大鳳、俺は決してバカにしたり、からかったりしない。あと、ウチの鎮守府に所属する娘達も、他人をからかったり、バカにするような娘は居ない。だから、安心してくれ。

 

「大鳳は隣の部屋に居る。今呼んでくるから、待っててくれ」

 

「は、はい!」

 そう言うと、先生は診察室の奥にある部屋に向かって行った。

 程なくして──

 

 

<ほれ!いいから行くよ!

<嫌ァ!行きたくないいいぃぃぃぃ〜!!!

 

 

 先生と大鳳──(おおとり)の声が聞こえてきた。鳳は部屋から出るのを拒んでいるみたいだ。

 

 

<渡良瀬少佐なら大丈夫だって!ぜってーからかったりしない!

<嘘よ!絶対からかわれる!「パパでちゅよ〜?」とか言って、あやそうとしてくるわ!

 

 

 鳳、俺は決してそんな事しない。嫌がる事は絶対にしないと誓う。だから、安心してくれ。

 あと、ウチの連中(第603鎮守府に所属する艦娘達)も、からかうようなゲスは居ない。

 

 

<オメーは渡良瀬少佐の事を、信じられないのか?

<───ッッ!?

 

 

……あ、静かになった。程なくして、先生と鳳がやってきた。

 

(俯いていて、表情を伺えない)

 鳳は俺と目を合わせようとしてくれない。

 先生は目で「どうにかしろ」と、訴えかけてきた。

『大丈夫だ』とか、『気にするな』と声をかけると、余計に追い込む恐れがある。う〜ん、何て声をかけよう?

 

「……渡良瀬少佐(・ ・)

 

「なんだい?大鳳(・ ・)?」

 俯いたまま、大鳳が俺を呼んできた。俺は出来るだけ優しい声で返事をした。

 

「お願いします、幼児退行していた時の事を、忘れてください」

 

「幼児退行?なんの事だ?」

 俺は何も見ていない。聞いていない。大鳳が幼児退行していたなんて、気のせいだ。言葉にこれらの意味を込めて返答。

 すると、俺の考えが伝わったのか、大鳳は顔を上げて──大鳳さん、落ち着いてください。お目目。お目目がエラい事になっていますよ?

 

 俯いていた顔を上げて俺を見てくれたんだけど、大鳳の目がとんでもない事になっててビビった。

 ハイライト?完全に消えてる。

 眼球?血走っていて、オマケに飛び出して(・ ・ ・ ・ ・)いる。

 ハッキリ言わせてもらうよ。怖いです。

 

(ホラーが苦手な山城が見たら、確実に発狂して、手と足(・ ・ ・)が出るだろうな)

……アホな事考えてる場合じゃない。早く、何とかしないと。

 

「ホントに、忘れてくれますか?」

 

「俺にはなんの事か、サッパリだ」

 何も見ていない。聞いていない。だから、落ち着いて?ほら、せっかくの可愛いお顔が色々台無しだよ?顔芸するのは俺と瑞鶴、翔鶴、それから、涼月と榛名、由良、扶桑さんの七人だけでいい。

 

「……ありがとうございます」

 

 あっ、お目目が引っ込んだ。しかし、ハイライトは消えたままだ。

 

「少佐、まだ暫く様子を見る必要があるから、一週間後に、また来てくれ。詳しい時間は、こっちから知らせる」

 

「分かりました。診察して頂き、ありがとうございました」

「先生、色々と、ありがとうございます」

 

 俺と大鳳は先生にお礼を言い、今後の事について軽く話し、診察室を後にした。

 

 

……。

 

 

「……さて、帰る──前に、何処かに寄って、昼飯でも食べよう」

 駐車場に向かう途中、大鳳に声をかけ、昼食を何処かで摂らないか提案。

 昔、爺ちゃんが言ってたけど、空腹だと、考えがどんどんマイナスになって、気分が益々落ち込む。だから、落ち込んだりした時は、胃に何か詰めた方が良いらしい。

 

「……うん」

 

 小さな声だったが、大鳳は返事をしてくれた。財布に余裕があるから、残さないのなら、幾らでも食べていいぞ?

 

「……Y浜に来たから、崎○軒のシュウマイ弁当が食べたいわ」

 

「シュウマイ弁当ね、了解」

 ○陽軒のシュウマイ、美味しいよね。あの豚肉独特の甘みと香りを楽しめるから、俺は大好きだ。

 えっと、此処(大本営)から一番近い、崎○軒のシュウマイ弁当を売ってる所は何処だろう?調べたいが、俺のスマホは先日壊れた(・ ・ ・)。車のナビで調べられるかな?そうだ、大鳳に頼んで、調べてもらおう。

 

「なぁ、大鳳、スマホで調べ物をしてくれないか?」

 

「調べ物?いいけど、何を調べればいいの?」

 

「崎陽○のシュウマイ弁当を売っている所を調べてくれないか?」

 

「了解よ、待ってて」

 

 ポケットからスマホを取り出して、調べてくれた。

……この様子を見るに、以前の大鳳に戻ってくれたみたいだ。

 

(しかし、完治したわけじゃない)

 様子をしっかり見よう。

 

「……あった。此処から一番近いのは、Y浜駅みたい」

 

「Y浜駅ね、了解」

 駅に向かう道や、駅周辺は人が多いから、気を付けて運転しないとマズいな。考え事をしていると、人を轢いちまう恐れがある。

 

(たった数時間の間に色々あり過ぎて、正直、精神崩壊しそうだけど、今だけは何も考えず、昼飯を。○陽軒のシュウマイを買って食べる事だけを考えよう)

 艤装に秘められた力や、大鳳。そして、加賀さんの事は一先ず忘れよう。

 そうだ、買う前に提督服から普通のスーツ──紺色の、社畜サラリーマン達が着るようなスーツに着替えよう。此処に来る時は、提督服の上着と帽子を脱いで、Yシャツ姿で運転したから、周りに提督だとバレなかったが、白いズボン──スーツ姿のまま車から降りたら、提督だとバレる。

 

(車内で着替えよう)

 着替える際、大鳳には目を瞑ってもらおう。

 

 

 

side 提督 out

 

 

 

───────

────

 

 

 

Another side

 

 

「…………は?」

 何?今の。

 麻子?麻子って、あの人?

 

「冗談でしょ?」

 あの人が、艦娘になっていた?しかも、準の事を想っていた?

 

「ふざけるな!」

 しかも、彼とディープキスした。私、まだキスすらされていないのに!ふざけるな!!!

 

「──あっ!」

 いけない、盗聴器を握り潰しちゃった。あーあ、結構高かったのに。

 

「……買い直さなきゃ」

 また第8492離島鎮守府の明石さんに頼んで、用意してもらいましょう。

……出血してる。まぁいいわ。入渠すれば、すぐ治るし。

 

「……会いたい」

 準……早く帰ってきてくれないかしら?

 

 

 

Another side out

 

 

───────

────

 





次回予告


 レ級出現の報告から、結構時間が経ったけど、未だ邂逅していない。
……おかしい。普通なら、一度くらい邂逅している筈なんだけど。何か、嫌な予感がするわ。
……あら?翔鶴さん、どうしました?元気が無いわよ?足柄特製カツでも作ってあげましょうか?……要らない?そ、そう。分かりました。
……ハイライト消えてる。提督、何かしたの?


第78話・白いのに黒い姉鶴


「今日の私は淑女的よ。一発でぶち犯してやります♪」



【補足的なナニか】

・ガンハザード…1996年に「大宮ソフト」が開発した、スーパーファミコン用ソフト。2008年より、Wiiのバーチャルコンソールで配信。
 無骨なメカ。重厚なストーリー。とても面白いゲームです。興味を持ったら、遊んでみよう!(ダイマ)

・ビショップ…上記の「ガンハザード」に登場するキャラ。とにかくヤベぇ奴。
 気になった人は「ガンハザード」をプレイしよう!(二度目のダイマ)

・T1000…映画「ターミネーター2」に登場する、流体多結晶合金(液体金属)製のボディを持つ架空のアンドロイド。
 主人公、ジョン・コナー抹殺の為、過去に送られてきた。

・プラグスーツ…「エヴァンゲリオン」に登場する、特殊なスーツ。詳細は長くなるので割愛します。

・崎陽軒…神奈川県横浜市西区に本社を置く、主にシュウマイの製造販売ならびにレストラン経営をおこなう企業。読みは「きようけん(崎陽軒)」。
 艦これの聖地巡礼等で、横浜にお越しの際は一度食べてみてください。

・加賀・…変態淑女。

・綾波…大本営本部所属、綾波型駆逐艦一番艦、綾波の適性者を指す。
 艦娘歴が長いらしい。


以上、補足終了。



※次回から、非常に頭の悪い内容に戻ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。