アカム武器なめんな。 作:糸遊
ただ、
あと、カルムさんはほぼ出ません。
「ウルスさん。私、彼氏が欲しいです。」
「いや、急に何を言いだすのよ。」
大空を駆けるハンターたちの拠点『龍識船』の中にある酒場『ホーンズ』で、私は友人のハンターに呼ばれてお話をしにきた。
だけど、いきなりなんなんだ。彼氏が欲しいとか私に言われても困る。
「だって…だってさぁ!なんで私は独り身なんだ!?
正直スタイルや顔立ちはいいだろう!?なんで男が寄り付かない!?」
目の前にいる銀髪の彼女は涙を流しながらそんなことをのたまう。彼女がお酒に強いことはよく知っているから、達人ビールで酔っ払ってはいないんだろうけれど既に呑んだくれの様な言葉遣いになっている。
「いや、なんで相手が見つからないって言われてもね…。」
涙をちょちょぎらせ、鼻水だって流れ始めている残念な顔の彼女を見る。整った顔立ちが台無しだ。
綺麗な銀髪のロングヘアー、スタイルは抜群。
出る所はボンッと出て、締まる所はキュッと締まっている。野郎どもが好みそうなスタイルはしている。
けれど、男どもが寄り付かない。まぁきっとその理由はこの一言に尽きるだろう。
「アンタ強すぎるのよ…。いくら容姿端麗でも二つ名や獰猛化モンスター出現の報告を聞いたら、嬉々として突撃していく様な女性に寄ってくる男はいないと思うわ…。」
「んがああぁぁあ!何でだ!?ハンターなら強敵に挑めることはこの上ない喜びだろう!?」
「だからって限度があるわ。聞いたわよ?
アンタこの間、二つ名ディノバルドを防具無しで討伐したみたいじゃない…。正直ドン引きレベルだわ…。あの酒場のマスターですらちょっと引きつった笑いを浮かべてたわよ?」
とまぁこの彼女は見た目は問題ないのだが、その性格に問題がある。
早い話、戦闘狂なんだ。
いくら美人だからって強敵相手に尻尾振って突っ込んでいく様な女性だと、彼氏の方の身がもたない。
彼女、ハンターの彼氏がいい!とかほざいているし…。
「うっ…。でも!わたしはもう25なんだ!
四捨五入したら30!元のパーティのみんなはピチピチの10代20代なのに私だけオバさんになっていくのは嫌なんだ!
知り合いハンターから届き続ける、『私達、幸せになります。』のお手紙!結婚式への招待状! そしてそれを眺め、1人枕を濡らす私…。
結婚だなんて言わない!せめて彼氏くらいは作っておきたい!」
う〜ん、必死すぎる…。
でもこの彼女は見た目はいいほうだから、30直前でも大人のお姉さんって感じで通用すると思うけれど…。
なんかズレているよなぁ。あの赤い髪の子はよくこの彼女をまとめていたと思う。
「怒り喰らうイビルジョーをソロで狩れる様な人なら理想なんだが…。
ウルスはそんな人を知らないか?」
ほら見ろ、ハードルが高すぎる…。
………ん?でもそれならウチのアホがちょうどいいんじゃないか?
「あぁ、ウチのアカム武器狂いはちょうどいいんじゃない? アイツを引き取ってくれるなら私としても好都合だわ。」
彼女にそう持ちかけてみる。
けれど…
「ん?だってアカムの彼はウルスの彼氏じゃないか。」
そんなことを言われて、私は達人ビールを噴き出した。
な、何を言いだすんだ…。
「いやだって…。ウルスは私に会う度に彼の話ばっかりじゃないか。
アカム武器を使ってあんな強敵を倒していただの、何だかんだで頼りになるだの、惚気話を聞かされるこっちの身にもなってくれ…。」
の、惚気話……!?
嘘だ。私がアイツのことをそんな風に言うはずがない。
「やめてよもう…。そんなこと言ってないって…。」
「まぁ、どうでもいいか…。
でも私は彼にいい印象を持たれてないんじゃないか?
私ったら以前、『アカム武器とかwww』と彼に言ってしまったじゃないか。
いや、普通に強い武器もあるというのにあんなことを言ってしまうとは早計だったな…。」
あぁ、そうだ。 彼女とあのアホは仲があんまりよろしくないんだった。
アホはこのことを根に持ってはいないようだから簡単に仲直りは出来そうだけど…。
「そういえば、その彼はどこにいるんだい?
この機会に仲直りを…なんて思っていたんだが…。」
「アイツは遺群嶺にジンオウガの狩猟に行ってるわ。
『覇爆砲で蜂の巣にしてやるぜ!』なんて叫びながら1人で突撃。 私が行けるまで待っていればいいのに…。 怪我とかしてないかしら?」
私がそう言うと、彼女はクスリと笑った。
「ほれみろ、やっぱり彼のことが気になってるんじゃないか。
やっぱりウルスと彼はなかなかお似合いだと思うぞ?」
うっ…。この間、マスターにもそう言われた。
た、確かによく思い返してみるとここ最近はアイツのことをよく考えている気がする…。
「まぁ彼氏云々については自分でどうにかするよ。
私だって『英雄』パーティの一員なんだ!それくらい乗り越えてみせる!
いざとなったらパーティメンバーに恋愛事情に詳しそうなヤツもいるしな…。
あの黒髪娘はお淑やかな女性の皮を被ったムッツリスケベだし…。」
こらこら、パーティの人をそんな風に言うんじゃないよ。
というかこんなポンコツ女が副リーダーで『英雄』なんて呼ばれて大丈夫なのかな…?
「……まぁ頑張れば素敵な出会いもいつかは来るでしょ。
私、あのアホからアイテムボックスの整理を頼まれてるからそろそろいくわね。」
「おっ?そんなことを頼まれてるとは…将来はいい奥さん間違いなしだな!」
「………うるさいってば。 貴女はこれからどうするのよ?」
とりあえずこの流れを無理矢理に断ち切ることにする。
「私か…?まぁ次はベルナ村に滞在する予定かな…。
メンバーから連絡があってな。久しぶりに全員で揃うことができるらしい。それに…紹介したい人もいるだとか…。
まさか私にいい人を連れてきてくれたなんてことがあったり……?
ともかく期待が持てそうなんだ。」
う〜ん…。何故だろう…?修羅場の予感がするのは私だけなのか…?
「そう、それじゃあルファールも頑張ってね。
じゃあ私は行くことにするから。」
「あぁ、今日はありがとうな。またいつか。」
そう言って私は席を立った。
う〜ん…、アイツと私がお似合いだっていうのが気にくわない…。
こちとらアイツと一緒にいるのは疲れるから願い下げだというのにな…。
そんな考え事をしながら歩いていたせいなのか、私は影から出てきた人に軽くぶつかってしまった。
「あっ…すみません。ちょっと考え事を……」
「んん?ウルスじゃんか。ジンオウガ終わらせてきたぞー。
やっぱり覇爆砲はガチで強いな!雷ワンコをキャインキャイン言わせてやったぜ!」
………そこにはアホがいた。
「……なんか浮かない顔してんなぁ?
あれか?恋する乙女はどうたらこうたらってヤツか?
ふっふ〜ん、だったら俺が相談相手になってやろう! そんじゃあ酒場で達人ビールでも一杯…」
…あぁ、疲れる。
とりあえずなんかイラっときたので、私は右の拳を強く握りしめる。
そしてカルムのアホ面めがけて渾身の右ストレートをかました。
「……え?ウルスさん何を… ボヘァッ…」
カルムは一発でダウン。
うん、いいストレートだった。
今の私だと、アオアシラくらいなら素手で勝てそう。
ピクピクしているアホを見ながら私は言葉を落とした。
「……本当にアンタと組んでるのは疲れるわ。
まぁ…たまには楽しいな、なんて思うことだってあるんだから、しょうがなく組んであげてるのよ?
だからあんまり私を困らせないようにしなさいね?」
ふぅ…なんかスッキリした。
……今の私がコイツに抱いている気持ちがどんなものなのかは自分でもわからない。
好意とも思えるけど、それともまた違う何かのようにも思える。
まぁ、わからないことを考えたってしょうがないか。
とりあえずコイツと組んでクエストをこなしていれればそれなりに満足なんだ。それで充分。
そんなことを考えながら、私はその場を後にした。
覇爆砲については、次回にカルムさん視点で別に書きます。
そして、作者の別の作品の宣伝を入れていくスタイル…。
気になったら目を通して見てください。
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