アカム武器なめんな。   作:糸遊

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第9話 はきゅん、ほうきゅん、ずっきゅ〜ん

 

 

 

 

 

「……ここっ!」

 

 

連続殴りの隙を狙って、ラージャンの頭を射抜く。

構えた弓から放たれた拡散矢は、全弾命中とはいかなかったものの5本中4本が氷の結晶を撒き散らしながらヒット。

そして、ラージャンの頭の角が片方だけ砕け散った。

 

うん、なかなかいい感じだ、私は。

今回の依頼は原生林で激昂ラージャン2頭の狩猟。ギルドとしても想定していなかったラージャンの同時出現らしく、私とカルムの2人が急遽クエストに駆り出される事に。

まぁ確かに激昂ラージャンは強敵だ。

だけど、私達が相手ならそこまで難しいクエストではない。いつも通りの調子なら。

 

 

………そう、いつも通りの調子なら。

………いつも通りの動きをあのアホがしてるなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アァークッソォー! ナンテツヨイラージャンナンダー! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………あのアホの動きが随分と良くない。

ラージャンにアカム弓…の時点で物申したいところだけど、100歩譲ってそれはまだ許せる。龍属性が死ぬけど物理火力があるわけだし。実際、既に狩猟した1頭目を相手取った時はいい動きをしていた。

 

だけど今は溜め1をペチペチと放ち、辺りに悲しい威力の拡散矢をばら撒いている。

そもそもラージャンにヒットしていない。というか私に当たっている。迷惑なことこの上ない。

 

しかもあのアホ、このクエストで2回も力尽きた。 それも2頭目を相手している間だけで。

詰まる所、このクエストはあと1回力尽きた時点でクエスト失敗。とてもじゃないがそんなのは勘弁願いたい。

 

 

「ねぇアンタ!ベースキャンプで待機してろって言ったわよね!? なんで来てるの!?」

「…………」

 

 

アイツにしては珍しく口数が少ない。普段通りの動きでそれなら万々歳なんだけど、今は全然嬉しくない。

 

2回力尽きた後のプレッシャーは今までと段違い。 私1人で戦った方がまだマシなのでベースキャンプで待機してろとカルムに言ったのに、何故かノコノコ狩場に現れる。

バカか?バカなのか?あぁうん、バカだったなそういえば。

 

こうなったらしょうがない。

念のために持ち込んでおいた生命の粉塵をガンガン使いまくって、アイツを死なせないようにしないといけない。

カルムは向こうでクンチュウ4匹に絡まれてそれに手間取っている。応援は一切期待できない。

味方がいることで逆に足枷となる。随分とおかしな状況だ。

 

だけどやるしかない。

今回は私も久々にウカム武器。 ラージャン相手ならウカム弓はなかなか最適な武器なはず。だからきっと大丈夫。

たとえ私は一人ぼっちでも、酒場のマスターの期待に応えることができ…

 

 

「あいたっ」

「あっ…」

 

 

カルムから矢を当てられた。ラージャンには一切当たらず、私だけに。

 

そして、ラージャンは気光ブレスの構え。

えっ、ちょっと待って…?

空に向かって吠えた金獅子は口から光のレーザーを放ち、私に向かってぶっ放した。

これは……避けられない。

 

私の体がレーザーに飲み込まれ、全身に激痛が走る。

あっ…つぅ…。こんな大技をマトモに喰らうのは久しぶり…。最近はうまく立ち回ってたから、久方振りの痛さを味わった。

これはあまりいいものじゃないかな。

 

 

「か…回復しなきゃ…」

 

 

回復の隙を見つけるために、ラージャンの方を見る。

だけど、そこにいるはずのラージャンは消え失せていた。

………え?

 

エリア内にはまだ緊張感が漂っている。つまり、ラージャンは戦闘状態でいるということ。そして私は狙われているということ。

 

………どこから?

 

 

「上ッ…!」

 

 

すぐさま体を投げ出す。

次の瞬間、私の立っていた場所に向かってラージャンが回転攻撃を上空からかましてきた。

 

まだだ。G級個体のラージャンは連続で回転攻撃をする。だけど、その猛攻を乗り越えれば隙を晒してくれるのが嬉しい。

ここを乗り切れば…。

 

2回目の回転攻撃も回避。よし、いける。

3回目の回転攻撃も同じように……。

 

 

 

そこまで考えたところで…、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に、こちらに向かって転がってきているクンチュウが見えた。

 

 

 

 

「え?あたっ…」

 

 

 

空気を読まずに転がってきたクンチュウは、見事に私にヒット。

私は一瞬だけど怯んでしまった。

え、ちょっと待って?このままだと…。

 

 

 

 

そう思って上を見上げると、体を回転させてこちらに突撃してくるラージャンが見え……

 

 

 

 

私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うにゃっ……」

 

 

ネコタクから乱暴に振り下ろされ、原生林ベースキャンプの湿った地面の上にしたたかに体を打ちつける。

 

 

「あ〜…いったぁ…。 え?ちょ、ちょっと待って…」

 

 

私を運んで来たネコタクアイルーが、ベースキャンプに設置されている発煙筒を使って青い煙を上げた。

………も、もしかして失敗?

 

 

「ね、ねぇアイルーさん…。もしかして今回はクエスト失敗?」

「うニャ〜…残念だけど今回はそうなるニャ。惜しいところだったけど、ボク達もラージャンの攻撃を掻い潜って救出するのも一苦労なんだニャ。申し訳ないニャ〜」

 

 

ネコタクアイルーさん達はそう言うと、地面に潜って姿を消した。

あ、あはは…。

……クエスト失敗? 待ってよ…あと少しだったのに…。 私はいい動きをしてたのに…。

 

…………あのアホのせいだ。こうなるなら、ベースキャンプに引っ込んでもらっておいた方がマシだった。

アイツが戻ってきたら1発ぶん殴って…

 

 

そこまで考えたところで、ベースキャンプに緑色の煙が上がった。

煙が晴れると、そこにはアホが佇んでいた。

………やっと来たか。

 

 

「…………ねぇ、どうしてくれんのよ。アンタのせいでクエスト失敗よ。 ねぇ!どうやって責任とるのよ!?」

「…………」

 

 

思わず声を荒げる私だけど、カルムは黙ったまま。あぁ…イライラする。

 

 

「なんで黙ってるのよ!? なんか言ったらどうなの!?」

「………」

 

 

………ねぇ、なんで黙るの? これ以上私をイライラさせないでよ!?

 

 

「ちょっといい加減にして……」

 

 

そう言いながら、私は黙ったままのカルムに近づき────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルムが私を押し倒した。

 

 

 

 

 

 

「………は?」

 

 

カルムの息が荒い。

私の胸の辺りで荒い呼吸を繰り返し、腕で私の肩を押さえつけてくる。

 

 

「ちょ…ちょっと……なんの冗談よ…?」

 

 

カルムの息が熱い。

荒い呼吸をしながら、私の頬に掌を当ててくる。

私の体はカルムにのしかかられ、身動きができない。

ちょ、ちょっとこれはマズイ場面なんじゃないだろうか…?

 

 

「ねぇ!ふざけてるならいい加減にしないと…」

 

 

そこまで言ったところで、カルムが更に私の体を地面に押し付ける。

私の片腕と肩はカルムの両腕で押さえつけられ、身動きが取れない。

目の前には荒い呼吸をするカルムの顔。

熱い息が私の顔を撫でる。

 

 

思わず、ドキリとした。

 

 

 

「ね、ねぇ…?聞いてる…? ちょっと…!?そういうことするならこんなとこじゃないでしょ!? ねぇ!お願いってば! ダメ!今下着ダサいんだって────」

「………………」

 

 

私の願いはカルムには届かなかったみたい。

カルムは熱い息を吐きながら、私の顔に迫る。

 

思わず目を瞑った私。

熱い息が顔を撫でて、私の唇に向かって────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………ちょっと待って?

息が熱すぎる。目を閉じて感じることができるのは、熱すぎる息と、荒く…弱々しい呼吸。

 

そして、ドサリと重いものが私の体に倒れかかった。

 

 

「…………え?」

 

 

目を開けると、顔を真っ赤にしたカルムが私の体の上で倒れていた。

 

 

「ちょ…ちょっと!?大丈夫!?」

 

 

カルムにそう問いかけるが、返事は一切なし。念のため、カルムの額に手を触れてみる。

すると、触れた額には相当な熱がこもっていた。

 

 

「ちょっ……酷い熱じゃない!?早く寝かせないと…」

 

 

なんとかカルムの下から這い出て、倒れたままのカルムをベースキャンプのベッドに運び、横に寝かせる。

横になったカルムの額からは、かなりの量の粒汗が現れていた。

 

 

「ふぅ……バカは風邪ひかないってのは嘘だったのかしら…?

さて…と、汗拭いてあげた方いいのかな…?」

 

 

そう呟きながら、私はベースキャンプに備え付けられている布と手ごろな大きさの容器を手に取った。

あいにく今回は原生林でのクエスト。ベースキャンプには綺麗で冷たい水が流れてきている。

 

 

「これならまだラクになるわよね…?」

 

 

水を汲み、布を浸して絞る。

そして、ヒンヤリとした布でカルムの顔に浮かんでいる汗を拭き取った。

顔から幾分か熱が引いたような気はする。けれど、カルムの呼吸は依然として荒いままだった。

 

 

「な、なんで……。

…………あっ、防具外してあげた方楽かしら?」

 

 

………コイツの防具を外すのか。

い、いや…別にやましい理由なんて一切ない。

ただ、苦しそうだから汗を拭いてあげる…それだけだ。

 

そう自分に言い聞かせて、私はカルム自慢のアカム装備を脱がせ始めた。

 

 

「な、なかなかいい体してるのね…。

おっと、何言ってるんだ私は…」

 

 

装備を外すと、数々のクエストをこなしてきたハンターにふさわしい体が目の前に露わになった。 正直いい体をしてると思う。 流石は『覇王』の異名を持つといったところだろうか。

 

 

「さて…と、さっさと拭いてあげなくちゃね。………私もちょっと疲れてるんだ、動きやすい格好になったって文句ないでしょ」

 

 

腕と胴当部分の防具を外して身軽になった私は、無言でカルムの体に浮き出ている汗を拭く。………なんだろう、誰も見てないはずなのに何か恥ずかしいな…。

 

一通り拭き終わると、カルムの呼吸も幾分か穏やかになったような気もする。

うん、良かった。

 

 

「あとは…活力剤でも飲ませておけばいいかしら?」

 

 

というわけで、活力剤をカルムに飲ませることに。

今回は難しいクエストだったから、いにしえの秘薬の調合素材を持ってきておいたのが幸いした。 自然回復力を高める薬だから今回みたいなケースでも有効だろう。

 

 

「ほら……飲みなさいよ。少しはマシになるってば…」

 

 

カルムの口に活力剤を流し込む。 管のようなものがあれば1番いいんだけれど、残念ながらそんなものはなかった。

 

 

「……ゴ、ゴボッ、ガハッ……」

「あ……ご、ごめん……」

 

 

………むせてしまった。顔色も少し悪くなったみたい。

う〜ん…ちょっと悪いことしちゃったかな…?

でも…活力剤を飲ませてあげられれば、バッチリだと思うしなぁ…。

 

 

「寝てる相手にうまく薬を飲ませる方法ねぇ…。ハンターノートにでも乗ってるかしら?」

 

 

とりあえず困った時のハンターノートだ。

月刊誌『狩りに生きる』に並んで、ハンター稼業を勤しむ人ならこまめに目を通すべき書物の一つだと思う。

 

 

「………もともとギルドの迎えも少し遅くなるっていってたしね…。薬を飲ませてから私も一休みかな…。さて、薬の飲ませ方〜っと…」

 

 

パラパラとページをめくり、目的の箇所を探す。そして、回復薬を始めとしたいろんな薬が並んでいるページに辿り着いた。

 

 

「飲ませ方………………………………えッ!?」

 

 

薬の飲ませ方を見て、思わず声をあげた。

手に活力剤を持ったまま、寝ているカルムを見て固まってしまった私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「カルムさ〜ん。大丈夫ですか〜?」

「ん…………ぐっ…………」

 

 

誰かから呼びかけられ、重い体を起こす。

…………重い体?いや、そんなに重いわけじゃないな…。

 

 

「あ、あれ…? 俺寝てた…?」

「そうですよ〜。ウルスさんがそばにいてくれたみたいですね〜。うふふ、仲良しですね〜!」

 

 

どこかのんびりした口調のギルド職員さんからそう言われる。

あれ…?クエストはどうなった?

 

 

「あ、クエストは残念ながら失敗してしまいました〜…。ですが一頭は狩猟してくれたので、次の対応もかなり楽になりましたよ〜!ありがとうございます〜!」

 

 

あ、あぁ…失敗したのか……。

…………俺のせいだな。体調悪いのに無理して来たから…。

 

 

「とりあえず、今は龍識船に戻りましょう〜。 私は先に行ってるので、ウルスさんを起こしてあげてください〜」

 

 

ギルド職員さんは、のんびりとした口調のまま歩いて行ってしまった。

 

 

「んっ………。 あれ?体、軽くなってる?」

 

 

体を伸ばした時、一切重さを感じなかった。

あれだけ体調が悪かったのが嘘のようだった。………ウルスが?

 

 

「お〜い、ウルス〜。ギルドの迎え来たぞ〜」

「んん…」

 

 

ベッドのそばでウトウトしていたウルスに声をかける。

 

 

「あひゃっ!? カ、カルム!起きてたんだ!?」

「…………どしたい?そんなに慌てて…」

 

 

俺に起こされたウルスはなぜか慌てた様子。

どうしたんだ一体……。

 

 

「あ〜…。すまん。俺のせいでクエスト失敗しちまった。 本当にスマン。

なんとか埋め合わせはするから、許してほし…」

「あ〜〜!大丈夫、大丈夫!全然気にしてないから!ほら!早く帰りましょう!」

 

 

…………なんだか変だなぁ。

 

ふと、ベースキャンプの机の上に置かれている、空になった活力剤の容器が目に入った。

 

 

「あっ、もしかしてあれ飲ませてくれたのか?助かったよ! お陰で体がすっごい楽で……」

「良かったわね!それじゃ帰りましょ!」

 

 

………いや、ホントどうした。

 

 

「なぁ、ウルス。大丈夫か?顔が真っ赤だけど……」

「全ッ然大丈夫だから!ほら、早く帰るわよ!」

「あ、おう…?わかりました……?」

 

 

とりあえず帰ることにしました。

残念ながら今回はクエスト失敗してしまった。次は絶対に成功させてやる。

目を合わせてくれないウルスの背中を見ながら、そんな決意をした俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………ウルスの口から活力剤の香りがしたけど、アイツも飲んでたのかな?

 

 

 

 

 

 

 





アカム武器要素がないじゃねーか、どうなってやがる。

………アカム弓は、ダブルクロスでは優秀な龍属性連射弓というポジションにあるかと思います。どんな相手にも担いでいけるような物理火力は持ってないので相手を選ぶ武器になりましたが、それでも龍属性連射弓としてはかなり優秀かと。
ウカム弓はまぁ……スキルをしっかり揃えてラージャンに担ぐならいい武器だと思います。

本編でアカム武器要素が少ないので、こちらでしっかり解説するスタイル。

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