デュエル・マスターズ Another Mythology   作:モノクロらいおん

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 更新再開はマジカルベルだけではない。こちらもゆるっと更新していくよ。


第5節 町に平和と騒乱

「――というわけだから、火文明の方の鎮圧を優先するのがいいと思うんだ」

「だる……めんどい……」

「気持ちはわかるよ。あいつら野蛮だからね。どれだけ抑えようとしても、すぐ反抗するし」

「面倒事……多い……前も、自然文明の方で……なんかあった、って、報告あったし……」

「あぁ、あれね。なんだっけ、大地の神様の化身(アバター)だか憑霊(スピリット)だかが暴れたんだっけ? 珍しいよね、あそこの神様が怒るなんて。あっちはあっちで、ちゃんと抑えてるんでしょ?」

「今は……そう、らしい、けど……それよりも……」

「あぁ、火文明だね。確かにそれがボクらの役目だ。けど、雑兵のためにリソースを割き続けられはしないし、どうしようか?」

「……あぁ、めんどい……私が、直接……やるか……」

「おっと? 君が直々に」

「らち、あかないし……めんどいけど、しょうがない……」

「そうかそうか。君がそうするなら、是非もない。当然ボクもついて行くよ」

「……好きにして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、この……町?」

「江戸の下町みたいねぇ。江戸の町なんて見たことないけど」

 

 いつものように、リュンの導きによってクリーチャーの世界へと連れてこられた遊戯部一行。

 これまでは山や森など、人気のない場所にばかり連れてこられていたが、今回は違った。

 そこは町のようだっだ。土が剥き出しの地面。不揃いな石材を適当に積み上げたような家々。そして、道行く異形の超獣(クリーチャー)たち。彼らは物珍しそうにこちらに視線を向けることはあるが、いきなり襲ってくるようなことはない。

 あまり豊かな暮らしをしているようには見えないが、町が形成されているということは、クリーチャーも獰猛なだけの獣のような生物ではなく、社会性が存在する。

 リュンは、この世界に秩序を取り戻すことが目的だと言っていた。具体性のない、曖昧な目標だが、この町の光景を見れば、そのビジョンも多少は見えてくる。

 しばらく歩いていると、暁の傍らで飛んでいるコルルが、首を傾げる。

 

「火文明にこんな町なんてあったか? このへん、太陽神話の領地だろ? 俺この町に覚えがねーんだけど」

「私たちの記憶は一部ロックされており、かなり断片的になっています。当時の記憶が封じられているのかもしれませんよ。まあ、コルルさんであれば、単純に忘れている可能性もありますが」

「いや、知らないのも当然だよ。文明ごとの区切りが辛うじて残っているだけで、もはや神話ごとに支配していた領地の境界は崩壊している。それに、ここは最近になって形成された町なんだ」

「だろうな。どの家も、石材の切断面が比較的新しい。短い期間で急造した町といったところだろう」

「へー、そんなことわかるの?」

「俺は狙撃手だからな。目がいいんだよ」

「ハンドガンで狙撃手とか、なに言ってるのかしらねこいつ」

「俺の本当の得物はライフルなんだよ」

「その二頭身の身体でライフルなんて扱えるのか?」

「……そのはずなんだがな。さて、どうなっているのやら……」

 

 ドライゼは、不可解に目を細める。

 やがて、リュンが足を止めた。

 そこは他の家よりも大きく、そして戸口が大きく開かれていた。煙突からは濛々と煙が噴出しており、どことなく焦げ臭い。

 

「ここは……?」

「今回は皆に渡したいものがあってね」

「渡したいもの? 今まで働いた分のお給料かしら?」

「バイト感覚かよ」

「まあ、間違ってはいないかもしれないね」

「間違ってないのかよ」

 

 リュンは一同を家屋へと入れる。

 その瞬間、暁が叫んだ。

 

「あっつ! なにここ! っていうか臭い!」

「人の家で騒ぐな」

「くんくん……金属が溶けたにおい、ですね。作業場でしょうか」

「鍛冶場だよ」

「え、火事? ヤバいじゃん!」

「火事場じゃなくて鍛冶場ね」

 

 中は土間になっており、大きな炉がいくつか見え、そこらには鉄片やら金属の塊やらが無造作に転がっている。

 壁にはハンマーなど見慣れた工具から、用途不明な謎の器具が無秩序に掛けられていた。

 地面に転がった鉄屑を踏み散らしながら、リュンは奥へと叫ぶ。

 

「ウルカさーん! いる?」

「あー、はいはい。今出るよー」

 

 奥から気怠げな声が聞こえてきた。

 がちゃがちゃと耳障りな金属音を掻き鳴らし、屑鉄の山からひょっこりと首が出て来る。

 

「うわっ!? 生首!」

「おや、お客さんだ。珍しい。初めて見た」

「……人間、なのか?」

「いいえ、クリーチャーですよ。この世界に、ご主人様たち以外の人間はいませんので」

「ウルカだよ。ここで鍛冶屋をやってる……といっても、客なんていないし、趣味で金槌叩いてるだけだね。よっこらせっと」

 

 ウルカと名乗った彼女は、一見すると人間の少女にしか見えなかった。

 煤けた金髪に目深にキャスケット帽を被っている。しかしショートパンツだけと軽装な下半身に対し、上半身は分厚そうな作業着に軍手まできっちりと付け、肌を一切晒していない。

 ウルカはキャスケット帽をクイッと上げ、顔を晒す。

 

「……かわいこちゃんだ!」

「表現古くないかしら? あなた、私より年下よね?」

「でもこの子、可愛いよ。顔ちっちゃ! まぶたパッチリ! ちょっと汚いし臭いけど!」

「最後の一言ですべてをぶち壊していくなこいつ」

「そんなことより、ウルカさん、例のものは」

「とっくの昔に作り終わってるよ、えーっと、確かこのへんに……」

 

 ウルカは屑鉄の山に手を突っ込んでがちゃがちゃと漁ったり、放り投げたり、かと思えば別の箱の中に頭を突っ込んで不可解な機械を引きずり出して床に叩き付けたりしている。

 そんな奇行を繰り返し、最終的に作業台の上に積み上がっていたそれを引っ掴んで、それらを暁たちに放り投げた。

 それは布のようだった。と、いうよりも。

 

「……服?」

「見た目はね。けど性能的には鎧だから、それ」

「鎧?」

 

 確かに手触りは綿とも麻とも絹とも違う。強いて言うなら皮っぽいが、皮ほど固くない。けれど生地は頑丈で軽い。

 

「着れる結界とも言えるかもね。耐寒耐火耐圧耐衝撃……その他にも色んな耐性を付けてみた。そもそも、繊維自体が頑丈だから破損もまずないしねー、神話級の攻撃が直撃でもしない限りは」

「はぇー、よくわかんないけどすっごい」

「これは、誰が?」

「必要になるかと思って、ウルカさんに頼んだんだよ」

「あたしゃ鍛冶屋だけど、裁縫も楽しいもんだね。いい息抜きだったよ」

「……なぜこんなものを?」

「言っただろう、必要になると思ってだ。この先、どんな環境に君たちを連れて行くか、わからないからね」

「それは暗に、今後とんでもない極地まで連れ回す可能性がある、ということか?」

「否定はしないよ」

 

 浬は露骨に顔をしかめる。

 装備を向上させたことで、より危険なことをやらされるのでは溜まったものではない、と言いたげだが、恐らく文句を言っても彼には通じないので、口を噤んだ。

 

「この前のようにクリーチャーの群れに襲われたら、君たちの命そのものが危険だ。人間の肉体は思ったよりも脆いようだし、力もない。ならせめて、装備で身を守れるようにしとくべきだろうと判断したんだよ」

「理由が若干ムカつくけど、あなたにしてはちゃんと考えあってのことなのね」

「僕としても君たちの存在は重要なんだ。可能な範囲で保護しないとね」

「あ、ありがとうございます、リュンさん。それと、ウルカさんも」

「仕事だしねぇ」

 

 ニヤリと笑うウルカは、だから、と切り返した。

 

「そろそろ、報酬の話をしようか」

「ほ、報酬?」

「お金取んの!?」

「私たちの預かり知らぬところで交わされた約束に従う必要なんてないわ」

「まったくもってその通りだ。本人の同意がない契約なんざ無効だ」

「まあまあ、落ち着いて。そういきり立たないで」

「お前のせいだろうが」

 

 理不尽で一方的な負債を押し付けられ、そろそr殺意が芽生えそうな浬であったが、ウルカは首を横に振った。

 

「お金なんていらないよ。そんな鉄クズ以下のゴミなくても生きていけるし、必要ならその辺のチンピラから巻き上げればいいし」

「その発想こそがチンピラだな」

「バイオレンスね」

「……火文明の方は、本当に野蛮です」

「ま、なんにしてもお金なんていらない」

「でも報酬って……」

「なにも金銭だけが対価じゃないってことさ」

 

 鉄屑を蹴り飛ばしながら、ウルカは工房から出る。

 

「君らさ、強いんでしょ? ならさ」

 

 そして親指で、外を指さした。

 

 

 

「あいつらシメるの手伝ってよ」

 

 

 

 空には、光の龍たちが、群れを成していた。




 基本はマジカルベルを中心にしつつ、AMや、メソロギィの方もゆるりと更新していきたい所存。特にAMは結構自由が利く設定と世界観だから、最近お気に入りのディスペクターをどこかで盛り込みたいですね。
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