デュエル・マスターズ Another Mythology   作:モノクロらいおん

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 ライトユーザー向けTCGが題材だからって容赦はしない、殺伐とした世界。いや原作漫画からして殺伐とかそんなレベルじゃないほどドロドロしてるけどね、デュエマって。それに比べればAMの世界観はまだ優しいんじゃないかと思えてくる。


第8節 勝ち戦に負け戦

「――暁!」

 

 伸びた鎖は、暁の首に巻き付き、ギリギリと締め上げる。

 

「ぅ、ぐ……!」

 

 固い金属が、柔らかな喉元を圧迫する。

 気道が塞がり、苦しい。皮が裂け、肌が軋み、肉が悲鳴を上げている。骨すら圧壊しそうだった。

 振りほどこうにも、力が出ない。そもそも、力で敵うのだろうか。小さき者とはいえ、クリーチャー相手に。

 鎖を掴んで、気休めにもならない抵抗をするだけで、精一杯だった。

 

「さぁ、このまま締め落としてしまおうか」

「んなことオレがさせ――」

「おっと勘違いしないでくれよ」

 

 キュプリスから、もう一筋の鎖が伸張する。

 それはコルルの身体を絡め取り、縛り上げた。

 

「ぐっ、クソ、が……!」

 

 コルルも藻掻くが、やはり、光の鎖は振りほどけないし、引きちぎれない。

 ギリギリと、暁とコルル。2人は締め上げられていく。

 

「君も同罪だ。彼女諸共縛り首さ……で、いいんだよね? ラヴァー」

「別に……好きに、すれば……」

「肝心なところだけ指示をぼかすなぁ。まあ、じゃあ、ボクの判断でやらせてもらおうか」

 

 ぐんっ、とキュプリスはコルルを縛る鎖を引き寄せる。

 地面を引きずられ、コルルはキュプリスの前に跪く。

 身動きが取れず、羽ばたくこともできず、地に失墜した太陽に語り手に、慈愛の語り手は問う、

 

「で、どうだい? こういうの脅しっぽくて好きじゃないんだけど、素直になってくれないかな?」

「素直だぁ? オレたちはいつだって自分に正直に生きてんだよ! 死ぬも生きるも、全部てめぇで決めてんだよ!」

「このまま縊り殺されるとしてもかい?」

「たりめーだ! 手も足も、翼さえも雁字搦めじゃ、なんもできねぇ! なにもできない人生なんざ、そんなの死体と変わらねぇじゃねーか! オレたちは! 今を! この時を! 自分が納得したいから生きてるんだよ!」

 

 コルルは自由を奪われてもなお、叫ぶ。

 自由のために、天まで轟くほど、叫び続ける。

 それだけは、譲れないことであると。

 

 

 

「誰が決めたかもわかんねー正義なんざに付き合ってられるか! 俺は、俺たちは! 俺たちが納得できる今を生きてんだ!」

 

 

 

 慟哭などではない、確かな熱を持った咆哮。

 滾るほどに熱い血潮の躍動を感じさせる、魂からの叫び。

 野蛮で、粗野で、暴力的。しかしそれは、火文明のほんの一側面にしか過ぎない。

 本当の彼らの姿、その自由な生き様は、コルルの雄叫びに、すべて込められていた。

 

「コ、ルル……」

「…………」

 

 咆えるコルルに、暁は顔を真っ青にしながらも、どこか誇らしげに笑っていた。

 しかしラヴァーは、ジッと彼を見つめ、そして――

 

「……キュプリス」

「ん?」

「やって」

 

 ――処罰を、命じた。

 

「……御意に」

 

 キュプリスは一切の微笑みを消して、鎖を手繰る手に力を込める。

 緩やかな終わりなど迎えさせない。

 一瞬で、首をねじ切り、縊り殺す。

 キュプリスは鎖を力の限り引く――しかし。

 

「……あれ?」

 

 ひゅんっ、と鎖は空を切り、手元に戻ってきた。

 その先端は、どろりと溶けている。

 刹那。

 空気が爆ぜる音が轟く。

 

「おっと!?」

 

 咄嗟に鎖を展開し、飛来するそれを弾く。

 小さな二つの塊が、地面を穿った。

 

「……銃撃」

 

 小さく呟いて、彼女たちはそちらを見遣る。

 そこには、3人の人影。3体のクリーチャー。

 仲間、だった。

 

「……ちゃっかり語り手のほうの鎖も溶けてるし。ボクの鎖は生半可な熱じゃ溶けないはずなんだけどなぁ」

「組成がわかれば融解くらい簡単ですよ。然るべき手順で構造を分離させればいいだけです」

「いつの間にって感じなんだけど、その知識をひけらかす感じ、横からサラッと掠めていく感じ、賢愚神話の語り手かな」

 

 キュプリスは溶けた2つの鎖を眺めている。

 ――お喋りが過ぎたかもしれないなぁ。

 仲間がいることなんてわかっていたのだから、救援が来る前に終わらせるべきだったな、とキュプリスは己を戒める。

 

「あきらちゃんっ!」

「ルー、ルー!」

 

 鎖から解放された暁に柚が駆け寄り、コルルはプルが回収する。

 

「げほっ、ごほっ……うぇ、死ぬかと思った……」

「だ、大丈夫ですか……?」

「なんとかね。ありがと、ゆず」

「わたしはなにも……今のは、ぶちょーさんと、かいりくんが……」

「厳密には、この軟派野郎と、エリアスちゃんだけどね」

「うん。みんな、ありがとう」

 

 窮地を脱し、暁は仲間たちと共に、改めてラヴァーとキュプリスと向かい合う。

 しかし変わらず、無表情に、陽気に、彼女らは相対している。

 

「うーん、この様子だと他の連中もやられてそうだし、これは流石に多勢に無勢かな?」

「……うん」

 

 ラヴァーは、くるりと踵を返した。

 

「帰る……キュプリス」

「はいはい」

 

 キュプリスは新たな鎖を天に伸ばす。ラヴァーがそれを掴むと、鎖は天上へと引き上げられていく。

 

「非常に小物っぽい言い回しになってしまうが、これで勝ったと思わないことだよ」

「なんだと……!」

「ふふふ、これがボクらの本気じゃないってことさ。これは戦争だからね、常に全力ってわけにはいかない。けれど次に君らと戦う時は、きっと本気を出す……そうだろう? ラヴァー?」

「…………」

「ちぇ、答えてくれないでやんの。それとも、言葉にするまでもないってことかな?」

「キュプリス……うるさい……」

「おっとごめんよ」

 

 キュプリスを言葉で制し、ラヴァーは鎖で引き上げられながら、暁を見下ろす。

 そして小さく、言い放った。

 

「……次は……たたきつぶす……」

「!」

 

 それだけ言い捨てると。

 ラヴァーとキュプリスは、白雲の中へと吸い込まれ、完全に姿を消してしまったのだった。 

 

「逃げられたわね」

「まさか追いかけるだなんて無謀なこと言うなよ。こっちだって、町中駆けずり回って余力なんて残ってないんだ」

「あきらちゃん、今日はもう帰りましょう……あきらちゃん?」

 

 柚の声は、暁には届いていなかった。

 彼女はただ、ラヴァーが消えていった空を見据えて。

 

「……私だって」

 

 歯を喰い縛り、ぽつりと、悔恨を漏らす。

 

 

 

「私だって、負けるもんか……!」




 ここまでの一連の話、ひとつの節に纏めても良かったなと今更ながら思った。もしかしたら後で修正して一纏めにするかもです。
 それはそれとして、新キャラ、敵となるラヴァー、そして語り手のキュプリスの登場。今後は彼女を目的としつつ、物語が展開していくでしょう。お楽しみに。
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