デュエル・マスターズ Another Mythology 作:モノクロらいおん
「そーゆーわけなんで! 私、強くなりたいんだけど!」
「どういうわけ? っていうか僕にそんなこと言われても……」
先日、ラヴァーに大敗を喫した暁は、リュンにそう詰め寄っていた。
その様子を、柚、浬、沙弓は遠巻きに眺めている。
「話は聞いたが、それ、どう考えてもデッキ相性が悪いだろ」
「そうなんですか?」
「天門入り白単サザンだっけ? 変わった構築だけど、基盤が強いしメタカードモリモリのデッキだからね。単調なバトル、踏み倒し依存の展開、中型止まりのフィニッシャーなあなたのデッキじゃ厳しいでしょうね」
「でーもー! それでも勝つのー! 負けっぱなしは悔しいじゃん! どーにかならないのリュン!」
「どうにかと言われても……君たちの強さは君たちに磨いてもらうしかないんだけどな。僕、こっちの遊戯としてのクリーチャーのあれこれには詳しくないし」
迫る暁に、困り顔のリュン。
そこに、浬が口を添える。
「相性が悪いならデッキ選択を見直せ。基本だ」
「暁、プレミは多いけど腕は悪くないし、勝てるデッキ選べば勝てるわよ」
「そ、そうですよっ! あきらちゃん、昔は大会とかでもたくさん勝ってましたし、つよいんです!」
「えぇー……デッキは今のが気に入ってるっていうか、コルルと一緒に勝たないと勝った気がしないっていうか……」
「我儘な奴だな……」
「ならせめてデッキを調整しなさい。相手のデッキが多少わかってるなら、仮想的を定めてこっちもメタカードを用意すればいいだけよ」
「あー、それかぁ」
沙弓の至極真っ当なアドバイスに、暁は渋い顔を見せる。
嫌だ、というより、上手くいかなかった、とでも言いたげに。
「実はブロッカー除去のカード、入れてたんだけどねぇ」
「引けなかったの?」
「一枚も見えなかった」
「枚数が足りないんだろ」
「いっぱいれたもーん! 部長のスレイヤーブロッカーめっちゃウザいから!」
「私もあなたとやる時はこっそり対策してるからね。バトってくるならスレイヤーよ」
「陰湿な部長だな……」
対人メタはほどほどに。
「色々カード入れ替えたんだよ? でもなんか、あっちでデュエマすると、デッキの中身入れ替わってる気がするんだよねぇ」
「あ、それは私も感じてたわ。どうにも、カードが固定されてるというか、狙ったのが来ないというか」
「言われてみれば俺もだな。入れたはずのカードが来ないと思ったら、入れてないはずのカードが見える。記憶違いか、部長の仕業かと思っていたが」
「そんなことしないわよ」
「あれなんで?」
「そりゃあ当然さ」
首を傾げる遊戯部一同に、リュンは言う。
「あちらの世界で力を持つのは、あちらの世界のクリーチャー。君たちは各々の神話の語り手を旗印として、彼らに縁のある力だけをたぐり寄せているんだ。だから、語り手や君たちに力を貸してもよい、というだけの縁がなければ、その力は使えないだろうさ」
「難しい話だ! わかんない!」
「要するに、使えるカードに制限があるってことか」
「語り手に縁のあるカードね……私の場合、ドライゼの人望で集められるクリーチャーしか使えないってことかしらね。どうりでろくなカードが来ないと思ったわ」
「呪文の扱いなどが気になるが、なんにせよ俺たちの語り手に依存したデッキしか使えないということだな。どうしても単色デッキになるのは、そのへんが理由か」
各々が有する語り手に因んだカードだけが、彼らの手元に集まる。そのため、いくらこちらでデッキを組み直しても意味がないようだ。
「毎回デッキの中身が微妙に変わるのも、そのせいか」
「楽しいけど、やりにくいわね」
「えー、じゃあどうすんの? 一生デッキこのまま?」
「どうって、仲間を増やせばいいだけじゃないか」
「はひ?」
「……あー、そういうことね」
「どういうこと?」
「仲間を増やして次の町へ、ってことよ」
「?」
「比喩表現だと通じないぞ、こいつには」
「あの世界ではクリーチャーは生きている、意識がある。なら、こちらの言葉にも耳を傾けてくれる――仲間になってくれるかもしれないわ」
語り手の縁に依存して集うクリーチャーたち。それはつまり、デッキに入るクリーチャーたちにも、各々の意志があるということ。
新たなクリーチャーをデッキに入れたいというのなら、縁を結べばいい。力を貸してくれるよう、懇願して。
「なーるほど!」
「クリーチャーさんに、おねがいするんですね」
「なーんだ簡単じゃん! リュン! なんか強いクリーチャーのとこ案内してよ! ドラゴンの王様とか!」
「なんだその単純馬鹿なノリ……」
「ドラゴンの王……火文明……ふぅむ」
しばし考え込むリュンは、やや渋い顔をするものの、やがて口を開く。
「……そういうのも、いるにはいるね」
「お? マジで? じゃあ連れてって連れてって!」
「まあいいけど……いや、いいのかなぁ。彼は気性難だしなぁ。太陽神話と同調するかというと……うぅん」
「気難しい方なのでしょうか……?」
「どんなクリーチャーなのよ。言ってみなさい」
「うん。火文明は他の文明よりも“ドラゴン”の力が強いんだ。水文明の解析によると、天然の龍素と呼ぶべき因子だね」
「それがどうした」
「火文明にとってドラゴンとは、他文明以上に特別な存在だってことだ。だからこそ、火文明領には、龍の世界があり、龍の王が存在する」
「……龍の世界に、龍の王? それって……」
沙弓と浬は感付く。
そして、リュンはその名を告げた。
「彼の名は――《龍世界 ドラゴ大王》」
本作は元サイトで掲載していたエピソードからより抜いたものを(かなり)改稿して投稿しているのですが、これはわりとお気に入りのエピソードだったりします。