Bias:偏りの意。
物欲センサー搭載のマスターが10連で爆死するだけの話。

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その場の思い付き。もしかしたらこのネタで連載をするかもしれない。
……ただし、大幅に書き直すどころか100%別物になるのは確定ですが。


Fate/Biased Order

「……令呪を持って命ずる。スキルを俺に使え、キャスター」

 

 薄暗い部屋の中、男が3人。

 一人は、呆れたような顔で杖を掲げる魔術師のような男。

 一人は、頭を抱えてやれやれと言った様子の、若い男。

 そして、部屋の中心に佇み、そこに描かれた魔法陣の上に恐る恐る虹色に輝く30個の石を乗せ、祈るようにしながら呪文のようなものを唱える、目の下の深いクマが特徴的な、まだ少年と言ってもいいような男。

 

「───抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 部屋の中心で呪文を唱えていた男がその最後の言葉を紡ぎ、魔法陣が一際強く輝く。

 3人はそれぞれ違った面持ちで、これから起こることに備えた。

 呆れた顔をしていた2人は『またか……』という気持ちを隠そうともせず、中心の男はただひたすらに祈り続けている。

 

 そして、魔法陣は輝き続けながら、様々な物を吐き出し始めた。

 麻婆豆腐、麻婆豆腐、麻婆豆腐、麻婆豆腐。

 最初の4つは、全て麻婆豆腐。

 何故そこで麻婆豆腐が生まれるのかは疑問だったが、彼らにとってはもはや親の顔より見た、と言ってもいいものだったので無視し、5つ目に期待した。

 これ以上のものは存在しないであろうほど真剣に祈りを捧げながら、男は新たに表れたものに目を向ける。

 

「───バーサーカー、スパルタクス。突然だがマスターは圧政者かね?」

「またかぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ぬっ?」

 

 しかし、男の祈り虚しく、魔法陣の輝きが収まると同時に現れたのは、巨体の大男。

 彼はかつて多くの剣闘士を率い、反乱を起こした偉大なる英雄であった。

 その思考は狂気に犯されてこそいるが、力に関して言えば何も問題はない。

 もしこの男を味方にすることが出来れば、どんなに心強いことだろう(ただし、マトモな意思疎通は不可能であるが)か。

 ……だが、彼をここに呼び出した張本人である男の反応は、スパルタクスへの歓迎なんてものではなかった。

 

「マーリン、コイツを他の奴等に紹介してきてくれ」

「はぁ……だんだん私の扱いが雑になってきていないかい? マスター君」

 

 それは歓迎というよりもむしろ、『お前はお呼びじゃない』とでも言うべき態度だった。

 男は部屋の隅に移動していた、マーリンと呼ばれた魔術師風の男にスパルタクスを連れて行かせ、さらに呼び出されてくるものたちに目を向けた。

 

(まだ召喚は5回分残っている……大丈夫だ、まだ希望はある)

 

 そして魔法陣から吐き出される麻婆、麻婆、麻婆。

 残り5回の召喚は、あっという間にあと2回になった。

 

(強くなくていい、どんな狂人でも、悪人でもいい。だから───)

 

 男はより深く祈りながら、ラスト2回の召喚に全てを賭けた。

 1回目。

 

「また貴様かぁぁぁぁぁ! 倉庫行きじゃボケェェェェェェ!」

 

 祈り虚しく、魔法陣から現れたのはたった1枚のカード。

 そこにはこう書かれている。『カレイドスコープ』。

 

枯れ井戸スコープ(カレイドスコープ)とか要らねぇんだよ!?」

 

 男は半ギレになりながら、最後の最後、10回目の召喚で今度こそ悲願を達成せんと、一心不乱に祈る。

 

 ───体は聖晶石(いし)で出来ている。

 

 今まで何度、その祈りは踏みにじられてきただろうか。

 

 ───血潮は欠片で、心は亡者の如く。

 

 数百の召喚を超えてなお、彼の元には彼が求める条件を満たすサーヴァントが現れたことはない。

 

 ───幾度の召喚を越え全敗(大爆死)

 

 英霊の召喚は無数に存在する英霊の中からランダムに選ばれた1基が召喚されるのだから、仕方がないと思う誰かも居るかもしれない。

 

 ───ただの一度も成功はなく。しかし、ただの一度も理解されない。

 

 だが、きっとそんな考えの人間も、彼の望むその『条件』を知れば同情を向けることは間違いないだろう。

 

 ───彼の者の願いは叶わず、常に失意の底で憔悴する。

 

 

 

 

「「…………」」

 

 魔法陣がひときわ強く輝き、そこから骸骨の面を被った大男が現れる。

 10回目、最後の召喚で、男はまたサーヴァントを引き当てたのだ。

 召喚されたサーヴァントからは常に途方もない濃密な死の気配が放出され、辺りを満たしていく。

 どうやら、最後の最後でとんでもない大物を引き当てたらしい。

 ……しかし。

 

(う、嘘だろ……)

 

 男は、この結果に絶望していた。

 

(またかよ……まだ、足りないっていうのかよ……!)

 

 血反吐を吐きながら集めた30個の石でも、自身が願うサーヴァントを引き当てることが叶わなかった男は、もはや生きる希望がないとばかりに膝から崩れ落ちた。

 そんな情けない光景を前に、呆れ顔でその光景を黙って見守っていた若い男がこのままでは面倒なことになりそうだと考え、何も言わない男を置いて、召喚された大男をどこかに連れて行く。

 

(なんで、なんで俺は……)

 

 そして、1人残された男は、溢れかえる感情の激流を放出するように、叫びだす。

 

「……女子サーヴァントが引けないんだぁぁぁァァァァァァ!」

 

 

 

 ───故に、その召喚に意味はなく。

 

 ───その召喚は、男女比率が10:0で出来ていた。



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