黄金の日々   作:官兵衛
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金色王ザナック

 

 

 

 

 

 

「はあ?生活習慣病?」

 

 アインズさんが戸惑いを隠せないまま口にする。

 

「……間違いなく、俺たちの時代でいうところの生活習慣病だと思うんです」

 

 俺は椅子に座った状態で、アインズさんにも椅子を勧める。

 

「頭痛、動悸・息切れ、肩こり・めまい、胸の痛み、むくみ……これは高血圧の症状です。しかも重度の」

「ふむ……」

「そして俺のアキレス腱に出来た脂肪の塊……あと俺の黒目の縁を見て欲しい」

「……ん?白い輪?」

「……それはコレステロールが溜まって出来た物です……高脂肪による脂質異常のサインです」

「脂質異常……」

 アインズさんは俺の体を見た後、チラッと自分の体と比べた。いや、比べるまでもないとは、この事ではないだろうか?

「……そして異常な喉の渇きと少量多尿のトイレ、時折訪れる全身の倦怠感や痺れ。典型的な糖尿病だと思う」

「……いや、しかし生活習慣病だからと云って、その……死ぬ訳ではないのだろう?」

「生活習慣病は死に至る病です。合併症で様々な病気を引き起こします……最近、高血糖からくる嘔吐感などがあって、「あ やべえ」とは思っていたんですけどね。大方、俺の膵臓や肝臓、腎臓が悲鳴を挙げているのでしょう。なんて言うんでしたっけ?へモグロビンとかガンマとか、なんかありましたよね」

「やけに詳しいじゃないか?」

「リアルの父が……ね」

「だから痩せろと言っただろうが!」

「だって!?美味しすぎるんですよ!この世界の食材は!本物の肉や果物がこんなに美味しいなんて!」

「それで死にかけていたら意味ないだろうが!」

 アインズさんは骨張った拳で俺のこめかみをグリグリとしてくる。

「痛い痛い痛い痛い!?」

「……ポーションやヒールで何とかならないのか?」

「一瞬だけ楽になるんですけどもね。恐らく人工透析の様に少し血を綺麗にする効果があるのかも知れない。でも根治治療は難しいみたいです。すぐに同じ症状が出始める。確かにヒールで治せるなら掛けられた時に痩せないと根治治療にならないものな……でも、ヒールを掛けられて痩せた奴なんて、確かに見たことねえわ!」

「ヒールダイエットで大儲けするチャンスを逃したな……」

「全く惜しいことをしましたよ。ふふふ」

「とにかく痩せろよ」

「いや……ヘタに無茶すると低血糖になって命に関わりますから」

「さすが詳しいな……いや、詳しいなら気をつけろよ!」

「はい」

 

 

 俺は、この世で最も死神っぽい人物に「命と体を大切にしろ!」と説教をされた貴重な人間なのではないだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

「お兄様。さすがに仕事に根を詰めすぎで御座います」

 

 珍しくクライムが非番の日なのにラナーが俺の執務室に一人でやってきた。

 非番で無ければクライムに会うためにココに来ることは多いし、非番であればクライムと二人でここに顔を見せることはある。しかし、クライムを連れずに? また何か企んでいるのだろうか?

 

「いや 毎日毎日、朝から夕方までを王の儀典で追われるから、夜に自室に帰ってからしか書類に目を通せなくてな」

「なぜそんなに書類が?」

「レエブン侯と彼の抜擢した官僚達は実に優秀でな?今までの国が放置しておいた細かな決済や悪法の改善など多岐にわたり活躍してくれている。さすがに悪い頭ではなかなか難しい書類なので理解するのに時間がかかるんだよ」

「……お手伝い致しましょうか?」

 

 こわっ なにこの親切で優しいラナーは!? 池に落として女神様に正直に答えた覚えはないぞ?

 ……いや、俺じゃなくクライムが池に落としたんじゃないか? アイツなら女神様に正直に答えるからな、うん。まて、そうすると何処かにあと一体、もしくは二体のラナーが居ると言うことだろうか?……国が滅ぶな。

 

「大丈夫だ。最低限の仕事をするのに手間取っているだけだ」

「いえ 正直に申しますと、これまでのお兄様の様子から、王になったからといってここまで無理をされるとは予想外でした。もっと大臣に丸投げするものかと……そのためのレエブン侯でしたし」

「オマエ……そんなにレエブン侯を便利使いするなよ……あの人、子供と会える回数が減って、マジで元気が無くなってきているぞ?」

 

 前世はやたらと与えられた立場(形から入る)や責任感と生真面目さに溢れる民族性だったからな……魂に刻み込まれているのかも知れない。社畜としての精神が。

 

「とにかく、こんなに遅くまで働いているとお体に触りますのでお手伝いします。この前も御倒れになられたではありませんか」

 

 そう言ってラナーは執務用の机とは別に来客用の机に書類を広げてペン立てを設置する。

「そうか……なら、この辺りの決算書などの書類を頼む。サインは俺がするから」

「大丈夫ですわ」

 そういうとラナーはスラスラと内容を読むと、並ぶ数字に注釈をサラサラと加えながら最後の俺の署名欄にも、俺のサインを真似てススッとサインをする。

「おお!?オマエ、俺のサイン真似るの上手いな!?」

「うふふ」

 むむ……こいつ、本当に何でも出来るのな。

 

 俺が黙々と書類を進めていると、突然「お兄様。もしやご病気なのではないでしょうか? 耐えることのない喉の渇き、やたらとトイレに駆け込まれるそのお姿は、症状を看るに『サイフォン』とか『消渇』と呼ばれる類の物かと推察致しますが」と目線は書類のままで話しかけてきた。

 

 サイフォン?消渇? ……あっ この世界での糖尿病のことか!?

 昔から記録されてる病気だもんな。さすがに鋭いな。うちの妹は。

 

「んん……まあ、オマエには隠してもバレるだろうな。大抵そうだと俺も思う」

「まあ!?」

「いや 大丈夫だ!確かに完治というよりも上手く付き合っていく病気だが、これで即・死ぬわけじゃない」

「しかし不治の病とも聞いております。甘い物や、小麦粉などを使った料理は禁止です」

「え!?」

「えっではありません。明日から私が紅茶をお入れ致します。いつもハチミツや砂糖をタップリ使われておりますよね?食事制限もするべきです」

「うっ」

 バレバレだな……。ストレスからストレス・イーターになって暴飲暴食になっていたからな。そりゃ病状も悪化するよ。

「解りましたね?」

 ラナーがニッコリと微笑む。

「はい」

 俺は諦めたように頷いた。

 

 

 

 

 夕方頃、厨房に赴くとシャビエルが奥で忙しそうに指示を出しているのが見えた。

 俺はシャビエルを手招きして呼び寄せる。

「どうしたんですか?王子……じゃないやザナック王」

「ふはは 小腹が空いた。何かおくれ?」

「……駄目です。ラナー姫から厳重な戒告が出ておりまして、ザナック様にお食事時以外で何かをお渡しすることは出来ません」

「な!?」

 そんな!?子供の頃からのつき合いで俺には甘々の料理長シャビエルが!?

「そんな事よりも、早く逃げないと知りませんよ?」

「え?」

 その時、四方八方から「ザナック王だ!?ザナック王が出たぞー!」という声が上がった。

 料理人やメイド達がわらわらと集まってくる。

 そして俺を遠巻きに包むと「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」「ヘイヘイヘヘイ!」と喚声を挙げながら床をドンドンドンドンと足踏みに大きな音を鳴らし続ける。

 

 なにこの追い込み猟!?

 

「イノシシ狩りか!?ふざけてんのかオマエラ!」

「ふざけているのはザナック王で御座います。あれだけ優しい王妹であるラナー様が涙ぐみながら『どうか、お兄様のためにも餌を与えないで下さい……私心配で心配で』とお頼み下された願いを我々が聞かぬはずがないでしょうが!?」

 

 おい!その悲劇の王妹「餌」と言ってるからな!!

 

「ぐぬぬ お、王の命令である。そこの肉とパンを献上するが良い」

「お断り致します」キッパリ。

「ちょっとは悩めよ!?うわあん!あほ――!」

 俺は厨房を飛び出す。

「あ、王様!」

 お 引き留めてくれるのか?ふひひ。

「ちょうど良いので、そのまま宮殿を10周してきて下さい」「運動は大切ですぞ!」

 

 

 

 

「ヒザが砕け散るわ!?」

 

 

 デブを舐めるな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 








団栗504号様 ヨシユキ様 Sheeena様 誤字脱字修正を有難うございました







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