すみません。クライムとの出会いが良く解らなくて、かなり捏造入ってます。
俺は馬車に揺られながらラナーと街道を進んでいる。最近、領土で起こった地震によって建造物の崩壊などが起こり、慰問として各地、各都市を見舞に訪れているのだ。
まあ、それでも滅多にない外出にそれなりにワクワクしていたが、ラナーが子供という事もあって王都近郊の小さな町を回った後は父上達はそのまま訪問を続け、俺はラナーの保護者として一緒に王都へと帰ることになった。
帰り道でラナーと二人で馬車に揺られながら、先程通り過ぎた町に再び訪れつつ走らせていると、窓の外をラナーが怪訝な顔で見ていることに気づいた。
「ん? ラナーどうした?」
「……お兄様、あの瓦礫ですけど」
「危ないから馬車から降りちゃ駄目だぞ」
「あの辺りを良く見て下さい」
ラナーに促され俺は目をこらして良く見てみる。
「っ!? ラナー、見ちゃ駄目だ!」
瓦礫の中から子供の手がピョコっと突きだしていたのだ。
いくらラナーが普通の子供ではないとはいえ、子供の遺体に触れて欲しくはなかった。
俺が手でラナーの目を塞ごうと顔に触れた瞬間、ラナーが冷たい声で言う。
「触らないで下さい。それに違います。良く見て下さい」
ラナーが俺の耳を掴んでグイッと引っ張って強制的に
「?」
「……さっきと指の形が違う?」
俺がそう呟くとラナーは「そのようですね」と
「生きている……んだよな?」
「はい 事故発生から一週間ほど経ちますが、人は意外と頑丈らしいですよ」
俺は急いで馬車の中で従者と俺たちを隔てていた窓ガラス(これがあったからラナーは平気で話してた)をキコキコとハンドルを回して降ろすと、「馬車を停めろ!」と叫んだ。
馬車はようやく停まり、俺は急いでカーゴのドアノブを捻って、外へ出ようとする。すると周囲を走っていた警備騎兵がわらわらと集まってきて「王子!?いけません!」と口々に叫んでくる。
「クッ いや、あそこに瓦礫に埋まった子供が居るんだよ」
「はあ、そうですか解りました。後で村の者に伝えておきます」
「後で?……今、動けよ!俺たちは何人居るんだよ!復興中で大変な時に俺たちが助けて何が悪いんだ!」
俺は思わず怒鳴った。温厚で変人なポッチャリ殿下だと俺のことを思っていた騎士達は驚いたようだ。
「し、しかし……瓦礫がいつ崩れてくるかも解りませんし……平民の命と殿下の身の安全では、明らかに重きをおかなくてはならないのは後者であります!」
と、従者が口を出してくる。
「いや しかしだな」
「ザナック様は余りにも王族としての意識が薄うございます!普段からの別け隔ての意識なくんば、緊急時にて守られる者としての意識が薄くなり、それが大事に繋がるかも知れませんぞ!」
ああ……あの子供の物と思われる手は、まだ動いてくれているだろうか? 市民たちが助けに行くまで頑張ってくれるだろうか?……今も、今までも必死に生きていたのにまだ?
「……仕方ないですねお兄様は」
やるせない思いに焦燥感を募らせている俺を横目で見たラナーは、小さなため息とともに俺にだけ聞こえる声で、ぶっきら棒に呟いたかと思った瞬間、突然大きな声で悲鳴を上げた。
「キャアアアア!?お兄様!大変!あそこの瓦礫に幼い子供が埋まっているの!?早く、早く助けてあげてえぇぇぇ!」
振り返るとラナーが「ハイハイ、あとは頑張んなさいよ」とでも言わんばかりに「ふう」とため息をついていつもの無表情に戻った。俺はラナーにニヤリと笑ってサムズアップする。そして慌てふためいたように
「おおおー 大変だあー!? ほら!お前たちも来るんだ!騎士ともあろう者が、よもや姫の悲痛な叫びに答えないなんて事があるまいなあ!」と出来うる限りの大声を上げながら馬車から飛び降りて、瓦礫へ向かってズンズンと歩き出す。
警備兵や侍従たちは「は……え?」と一瞬顔を見合わせたあと、その多くが「自分は
……そこには大人の女性が居た。色んな……色んな所が歪んでしまって、顔や腕もアザだらけで……命の灯火はそこには見当たらなかった。ただ、その女性……は、全身で子供を……少年を庇うようにして亡くなっていた。そして、その少年が母親であろう女性の下から必死に伸ばしていた手が、腕が、俺達が見つけた光だった。このお母さんが必死に、ただ必死に守った命がそこにあった。命の煌きが……子供は眩しくなって何かに気づいたのだろうか、僅かに瞼を開いて母親を見た。見つめていた。じっとじっと見つめていた。俺は……今、二人を離すことをしたくなかった。母親と少年を一緒に抱きかかえて立ち上がった。警備兵が手を差し伸べようと一瞬動いたが、眼で制した。馬車へ連れて行って手当をしなければ……俺には剣の才能が無かった。馬術の才能も無かった。魔法も欠片も無かった。ただ努力だけは延々とした。筋力と体力は人並み以上にあるんだ。……今、この親子を
抱えたまま歩き続けて馬車についた時、後ろで市民の子供が「王子様……すごく泣いてたよ」と誰かに言っていたのが聞こえた。
少年の名はクライムといった。母親を墓地に埋め、行き先が無くなった少年を俺は城に連れて帰り、まずは近習として育て、ゆくゆくは警備兵なり騎士なりにしてやれれば良いと考えている。しかし何故かラナーのクライムへの関心が強い。今までだって多くの貴族の子どもたちがラナーの友人にと引っ切り無しに紹介されているはずだが、ラナーはむしろ自分と同じくらいの大きさという共通項があるが故に、理解できない彼、彼女たちを不快に思い、大人と違い打算的な考えが少ない子供達もまた、ラナーを不気味だと感じていたようで、ラナーに友人が出来たという話は聞いたことがなかった。
しかしながらクライム少年はラナーの心を捉えたようだった。
ラナーがクライムと出会ったのは、俺が彼を拾い出した馬車の中だった。
ラナーは母親の遺体を一瞥したあと、その冷たい手を黙って握り続けるクライムを不思議そうな目で見ていた。しばらくしてクライムを俺が預かろうと思うと宣言した時にクライムは「ぼくのような平民が、王子様にお仕えするなんて、無理です」と静かに強く断られた。周囲からも「ふん、良く
クライムとラナーの眼は対極の位置にあると言って良いと思う。
その2つの瞳の出会いが、俺には珍しく強引な手に出を使わせた。
「君は俺に恩があるはずだな」と言った。
クライムは輝く目はそのままに「はい!王子様には返すことの出来ない御恩が!本当に有難うございました」と真っ直ぐに答えた。
「うん じゃあ……恩返しにさ、俺の小姓として働いてくれ。ずっとじゃなくて良いし、嫌になったら辞めていいからさ」
「え……いえしかしボクなんて……不器用で、家の手伝いも何ひとつ上手く出来ないんです」と悲しそうに言った。
するとラナーが突然「私の
場は一気に騒然とした。誰もが認める
当然、周囲からは「新入りにラナー様の近習など任せられるか!」「平民が麗しの姫の側仕えだと!ふざけるな!」「オマエにはザナック様がお似合いだ!」「ラナー様の
……おまえらエ・ランテル送りにするぞ。あと、なんか高レベルな変態が居たな。
しかし、この騒ぎに乗じるほかはないだろう。
「というわけでクライム。俺の近習が嫌ならラナーの近習になりなさい。これからの君の事を考えると一時的でも良いから、その身を預けてくれないと心配でならないんだ」
「……本当にお優しすぎるお言葉と御恩に、どうすれば良いのかわかりません。ぼくで宜しければどのようにでもお使い下さい」
そういうとクライムは土下座をしたまま涙を地面に落とし続けた。
「じゃあ、私の所に来る? 助けたのはお兄様だけど、見つけたのは私なのよ?」
え?とクライムの顔が上がり、ラナーと近距離で眼があう。クライムは命の恩人への慕情の想いを、ラナーは実験動物を見るような好奇心に溢れた眼をお互い交錯させた。俺はそんな二人の出逢いとすれ違いが同時に起きているボーイ・ミーツ・ガールを困ったような顔で見守っていた。
クライムは「出来たらお二人の召使いとしてお仕えしたいのですが、ボクは男ですのでザナック様のお側でお仕えさせて頂いた方が……」と宣言し警備兵の評価を買った。いやいやありがとうクライム。おかげでラナーの
「まあ 俺とラナーは仲良しだからな。良くお茶会もするし、ちょくちょく会えるだろうさ」
「誰が仲良しなんですか……」というラナーの小声の非難は無視する。
「それは……その……嬉しく……思います」
凄く顔を真赤にしながらシドロモドロになるクライムはとても可愛かった。まさに「ふふふ、
……なぜだか俺の悪代官ポイントが急にウナギ登りに上がった気がするな。えっそんなポイントあるのか!?
「
「え!?」と絶句したクライムが「ラナー様は……とてもお美しいと思いますが」とフォローしてきた。いい子だ。
「またこの兄は変なことを言ってる……この兄は……」とラナーは白く濁った眼で見てくる。やめろ。ハイライトの無い眼で俺を見るんじゃない。
so~tak様 俺YOEE様 誤字脱字修正をありがとうございます