防犯意識とか何それ美味しいの?レベルの危機管理意識のマサキの家から一方通行、下りとはいえ全力ダッシュでポケセン方面へ向かったレッドは荷物と今後の予定を整理するためにポケセン休憩室で手持ちのブラッシングをしながらこう思った。
「(…………そろそろ徒歩が辛い)」
ここまでの道のりは全てにおいて徒歩オンリーの一択であり、これが序盤ならまだ問題は無いだろうがサイクリングロードなどもあるためどこかで自転車を手に入れなければならないのである。メタ発言すると初代ゲームは自転車を手に入れるまではBダッシュ連打であり、ダッシュ不可の場合は徒歩の速さが遅すぎるため凄まじくイライラしていたのが懐かしい。
ともあれ自転車が欲しい、その一言に限る。
ハナダシティにも一応自転車を売っているところはある、あるのだが……
「あ、ここの自転車の代金は100万でいいよ!」
どう見てもぼったくりですね、ありがとうございます今すぐくたばれ。
普通に考えて100万とは頭おかしいのではないかこいつと言われても仕方の無いほどの清々しいくらいのぼったくりレベルであり、店員のニヤニヤと底意地の悪い笑顔で接待をしてくる。レッドがさてどうしたものかと考えているとふと壁に貼ってある、何となく目についたポスターが気になった。
ごく普通の何の変哲もない、とあるポスター。
何か忘れているような、と疑問に思いつつ店員の100万がダメなら20万で手を打とうというどうあっても買わせたいですよオーラの込められた会話に適当に相槌を打っていたものの段々購入しなければ酷い目に遭うぞと脅迫じみたものに変わっていった。
100万から20万という辺り極端な値下がりに内心高値ならなんでもいいのかとか、なんで途中から損害賠償請求とかそういう話になってるのかなーとか適当なことを考えていたらとうとう怒鳴り声混じりに「さっさと買えよ!!」と叫ばれた。これは警察案件待ったなしですね。そういえばここロケット団の溜まり場というか資金流通ルートとかそういう噂的なのを聞いたことがあるような無いような?
しかもこの店員、店主がいないのにべらべらと「俺たちは泣く子も黙るロケット団~(以下省略)」とか言い始め隠密行動もへったくれもない馬鹿丸出しの行動を始めた。おいおいそんなので大丈夫かよロケット団、下っ端育成は組織として重要だぞと軽く半泣きのレッドは思わず考えてしまった。なお表情筋は安定の無表情のため店員からすれば煽られているようにしか受け取られていない。どうにかなるかな、なんて軽い気持ちで自転車くださいとサイクリングショップに入ったことを猛烈に後悔していた。
沈黙が部屋を埋めてしばらくした後、カランコロンとドアが開く音がしてすいません、自転車が欲しいのですがよろしいですかと女性と男性のカップルが来店してきた。
レッドが被害者リスト更新……となんとしてでもお客さんには無事に帰ってもらわねばと退散するよう声をかけるべく、口を開きかけると店員がそれよりも先に対応に向かってしまった。
焦るレッドとは裏腹にお客さんと店員の弾む小粋なトークは続き、それを聞きながら手持ち無沙汰のまま成り行きを見守っているとガチャリという金属音がした。
金属音=手錠ということに気がついたのは店員と会話をしていた二人組にご協力ありがとうございます、と言われた時だった。
さきほど通報?がありまして、と言われ首を傾げたところどうやら会話の一部を録音した物をピカチュウがこっそり拝借したフシギソウのボールを窓から投げ、トレーナーカードと一緒に持たせて交番に向かっていたらしい。ああ、だから通報の所が疑問符だったのかと腑に落ちる。ところでトレーナーカード、渡してないのにどうして持ってたんだ?ピカチュウてへぺろで誤魔化すな。お前だんだん手慣れてきてないか?
どうやらトレーナーや生身の人間に電気はダメだと説教したため第三者に任せる事にしたらしい。変装したジュンサーさんたちからは賢い子達ですねと微笑ましく可愛がられていたが、諭さなければおそらく店員が無事に引き渡されることはなかっただろう。
今後避けられないだろうロケット団関係の事件に憂鬱になり、防犯グッズ作らなきゃという使命感が生まれた瞬間である。手始めに唐辛子スプレーかな。
スキル上げなくていいのにガン上げされるピカチュウ(白目)