「明日オーキド研究所に来いよな!異論は聞かねーから!」
と昨日いきなりこちらの予定も聞かず自宅にカチコミしてきた幼馴染を待つこと30分、せめて集合時間くらい決めて欲しかったと思いながら部屋の隅で暇そうにしている研究所の助手さんたちの手持ちポケモンのを愛でるレッド。普段なら表情筋が死んでいるとか鉄面皮だとか言われ放題のその顔は少し嬉しそうな雰囲気を持っていた。まあ口角が多少ゆるっとしてる程度の違いくらいしかなくともわかる人にはわかるものである(具体的に言うとオーキド博士とか孫の幼馴染姉弟とか)
ポッポのふわふわの羽毛やイーブイの素敵な毛並みを堪能しているとどこかぐったりとした疲労困憊のグリーンがようやく来たらしく、とりあえず周囲の撫でくりまわしたポケモンたちにあとはおしまいだと一匹ずつ頭を撫でて立ち上がる。ポッポとイーブイ、あといつの間にか混ざってたピカチュウ……ピカチュウ?連れてた人いたっけか?まあいいか新入りだろう多分。というかイーブイも何気に希少な種ではなかっただろうか
「いやーすまん遅れた!色々準備したり根回ししてたら遅くなっっ」
とりあえず反省の色が見えない
久しぶりの会心の一撃でみっともなく患部を抑えて痛みに悶えるソレはさておきとりあえず一言言わせて欲しい
「……………………要件は?」
「おじいちゃんがポケモンやるから旅に出ろだと」
「……………………は?」
「そこまでしか聞いてない」
何だそりゃとか思いながらよーし行くぞーとずんずん歩いて博士の仕事場に向かっていくが遅れたのお前のせいだからな?
机に山積みの沢山の書類、散乱するファイル、埃っぽい空気、目からハイライトの消えた助手さん、虚ろな目で何かをブツブツ唱え続ける助手さん、別の机で意識飛んでるのか全く動かない助手さんたちを素通りし、一番奥の部屋に二人は行き着く。
「おお!二人ともよく来たな!」
くったくたの白衣を来た……学会において知らぬ人はいないと言われるほどの研究者、オーキド・ユキナリ博士がそこに居た。
「ワシももうじじい!」
いやそれは見ればわかる
その後彼の話を短くまとめると、若い頃はバリバリのトレーナーだったけどさすがにこの年になるとしんどい。でもポケモン図鑑を完成させるのが長年の夢だった、若いトレーナーにあとは任せてデータを集めてほしい。つまりはこんな感じである
へーそんなんかーと思いつつあれ?もしかして自分も頭数に入ってる?ということに今更気がつき、この流れに既視感を覚えるレッドとノリノリで任せろと返事をするグリーン、返事ついでにお前(レッド)は戦力外だから別に頑張らなくったっていいんだぜー?という余計な一言を聞いて即答で「やかましいやらないとは言ってない」とドヤる幼馴染の右腕をこれでもかとつねる鉄面皮少女、「いってぇなおい!!」とキレる声を素知らぬ顔でスルー。彼女は結構負けず嫌いであった。
さて、待ちに待った手持ちになるポケモンとの対面……のはずだったのだが
「ポケモンいなくね?」
「……(頷く)」
モンスターボールすら置いてなかった
「んー?ありゃ、おかしいのう……間違いなく置いていたはずなんじゃが」
「ボケたかじーさん」
「そんなはずはないんじゃがのう……」
部屋のあちこちを探し始める二人を見ながらレッドは先ほどまで戯れていた黄色と茶色をひたすら愛でていた。
「確かピカチュウとイーブイがいたはずなんじゃが……」
「ふーんピカチュウとイーブイ……」
いやあこの手触り、ふわふわのイーブイと手触り最高のピカチュウいいですねえじつにいいですねえ惚れ惚れしてしまいますねえ
「こっちの棚にも無いな、ボール」
「おかしいのう」
部屋のそこかしこを探し始める二人がふと静かすぎる一名の方を向くと高速で目的の二匹をモフる姿があった。
「いや見つけたら声かけろよ!!」
もっとも過ぎるツッコミに当の本人はしれっと面倒の一言で済ませてオーキド博士に二匹を手渡した。
「ほっほ、それで?どちらにする?」
博士が二匹を床におろした瞬間、腹部に強烈な打撃を受けた
いや、ポケモン図鑑を君に~とか言われたあたりで何となく見覚えのある光景だと思っていたし、幼馴染がグリーンという時点で気が付かなかったのは何故だろう。普通は気がつくよな?オーキド博士とかポケモンとかそこら辺で違和感を感じるべきだったであろう、でも恐ろしい程にこの世界線に既視感も違和感も感じられなかったのはある種の呪いなのかそういう修正が入ってるのかまではわからない、そもそもこんな知識を知ってることの方が頭おかしい案件である。こんなこと誰にも言えるわけがない、もちろん幼馴染のかっこつけたがる少年にも。そんなことを思いつつ腹痛を堪えて腕の中の相棒を抱きしめる。
手持ちポケモン入手です、ここからトキワ、ニビと概ね沿って進めていこうかと思います