息を切らしたレッドが辿り着いた場所はどうやら野生のピカチュウたちが数匹暮らす小さな集落だったらしく、何匹か木陰に隠れながらこちらの様子をちらちらと警戒をしながらまっすぐと見つめている。よく見ると怪我をしている仲間がいるのか庇うようにして頬の電気袋からバチバチと火花を散らせてくる子もいた。
これはいったい、と絶句したその瞬間、少し離れた東の方角から突如落雷の轟音がレッドの鼓膜を貫いた。自分はあの子に何があったのかはわからない、でも彼を探さなければという思いを胸に無我夢中で走り始めた。
一方その頃、その相棒は激怒していた。
集落に辿り着いた彼が見たのは数匹の仲間が人間に─黒い服の男とその手持ちに痛めつけられている光景だった。迷わず背後から男の両脚へ『銀色』に変化した尻尾で叩きつけ、そのまま手持ちのアーボに渾身のかみなりを直撃させた。
今思えば、オニスズメとスピアーの群れに襲われた時、不自然なところがあったのだ。彼らは縄張りを持ってはいるが、よほどのことがない限りあんな大軍で、しかも同時にこちらが襲われる筈がないのだ。
──おそらくこの男が主犯だろう
視界に入れるだけで胸がざわざわして落ち着かない。アイツが、アイツのせいで、仲間たちが傷つけられたのだと思うだけでどす黒い感情が湧き上がる。
ばちり、と、頬から電気が零れるがその目は男から一度も逸らされることは無かった。
男は両脚を押さえながら「こんのっ……!クソネズミが!!」と屈辱故に顔を赤くさせて睨みつけ、未だにかみなりのダメージが抜けきらないアーボに一言「そいつを殺せ!!」と苛立ちながら叫ぶ。命令通り若干ふらつきながらもこちらへ口を大きく開き飛びかかりかけたアーボだが、一瞬で周囲の視界が充満された煙によって大きく空振りすることになる。
「…!ピカチュウ!こっち!」
「クソが……っ!ガキ風情が調子に乗りやがって!」
ピカチュウを呼び寄せ、いつ襲われてもいいように隠れたうえで、本来であれば野生のポケモンから逃げるための『煙玉』によって虚をつかれた男……ロケット団の(おそらく)下っ端がギャンギャンと喚いているのを確認したレッドは大きく息を吸い
「ジュンサーさんこっちです!!」
いっそ堂々と大きな声で嘘をついた。
舌打ちしながら流石に分が悪いと考えたのか、下っ端は手持ちのアーボを回収し途中何かを落として走り去って行った。
近くの草木の陰に隠れていたレッドは緊張の糸がゆるんだのかピカチュウを抱えながら長く深いため息を吐きながら眉間のしわをぐりぐりと指で、広げながらぼそっと呟いた。
「……前途多難」
途中何かを落としたのはモンスターボールだったようで、中に誰か入っているようだ。まあいいやと深く考えず、とりあえずえいやーと中身を開けると中にいたのは水色に甲羅……ゼニガメだった。
脳裏に「他人のポケモンをとったら泥棒!」という言葉を思い出したがそもそもこのゼニガメは泥棒が落としてったものである。放っておくことも良心が痛むので保護ということに……とながらピカチュウの方を見てみると彼は真顔でこちらを見つめていた。目がくわっ!!とカッ開いているのはきっと気の所為。多分きっと。
「……ピカチュウさんイケメンが台無しですよ」
思わず敬語で話しかけたレッドに目もくれずひたすら目をカッ開いてゼニガメを無言で見つめるピカチュウと、まったく気にせずこちらに握手を求める懐っこいゼニガメ。すると突然ピカチュウが啖呵を切ってきた。
『なんなのお前!』
『えー……?見ての通りゼニガメだけど』
『見ればわかるわ!!』
『あんたはピカチュウ?』
『見ればわかるだろうが!!』
何を話してるかさっぱりわからないが、きっとこれも彼らのコミュニケーションということだろうとレッドはとりあえず見守ることにした。
『黒いやつのとこにいた手持ちなんか信用できるわけねーだろバァァアカ!』
『そんなこと言わずに頼むよぅ行く宛もないんだよぅ』
『こっちくんなし!!』
「…………(仲いいなこいつら)」
(※普通の鳴き声にしか聞こえていません)
とりあえず二匹を抱えてトキワの森から出た私はニビの交番で話をしたものの、ゼニガメの失踪届が出ていないとのことで引き取ることになった。そのことを知ったピカチュウの眼力に軽くビビるレッドは、眼力を向けられているゼニガメがへらーっとしているのを見てこいつもこいつで大物になる気配を察知した。
トキワの森出る前にピカチュウに回復系きのみを持たせてあの集落に届けるようにしておいた。
きっと
このあとピカチュウはゼニガメにめっちゃ懐かれます()