漆黒の英雄譚   作:おしるこをしるこ

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モチベーションが上がらない……。
きっと夏のせいだ……。
うんきっとそうだ。

きっとモチベーションまでも溶けているんだ。そうに違いない。



というわけで本編どうぞ


別れの挨拶の仕方--鮮血帝編--

 

 

闘技場での戦いを終えたモモンは"四騎士"の一人であるニンブルから呼び止められた。

 

「陛下が貴方と話したいそうです。皇城にて場を設けさせて頂きたいのですが、今からよろしいでしょうか」

 

それは事実上「来い」と同義だ。だがモモンにとってはどんな言い方でも断る理由は無かった。既にナーベの件、アルシェの件、【英雄王】の件などを除いて謁見してみたいと感じていた。それは戦士としての誇りゆえか皇帝への好奇心ゆえかモモン自身ですら定かではない。

 

そのためモモンは急な呼び出しにも関わらず一人で皇城に招かれた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「先ほどは良き試合であったぞ」

 

 

 

 皇城の応接間に座る"鮮血帝"。その背後には二人の騎士と秘書が立っており、一人は貴族風の男ニンブル。もう一人は会ったことはないがニンブルと同じ格好をしていることから同じ"四騎士"であることが伺える。秘書の様な男は名前は確かロウネだった。皇帝の横にはフールーダ=パラダインが座っており自らの髭を触っている。

 

その前のソファに座る一人の戦士がいた。モモンは兜の中で表情を歪めた。先ほどの皇帝の言葉に一種の皮肉のようなものを感じたからだ。そのため声色を変えずに言葉を返す。

 

 

「先ほどは良き挨拶でした(・・・・・・)

 それは一種の皮肉。よくも自身に"武王"と同じ【英雄王】などという称号を公の場で授与してくれたな、帝国のトップが他国の者にそんな位を授けてくれたな。そういった意図で皮肉を込めて言葉を返す。相手は政治などにも長ける優秀な皇帝。モモンなりに皮肉で返したのはせめてものの抵抗であった。

 

 

 

「あぁ。ありがとう。君のような大英雄にそう言ってもらって私は幸せ者だな」

 そう言って笑顔で本気で嬉しそうな態度を取った。だがモモンには分かる。これは皮肉を理解できていない訳でもなく、当然本気でそう思っている訳でもない。皇帝は読んでいたのだろう。モモンが皮肉で返すことに、もしかしたら何通りかの返答を笑顔のまま読んでいたのかもしれない。だとしたら目の前にいる人物は……とんだ食わせ物だ。

 

 

「……っ」

 モモンは鎧の中で冷や汗を流した。だとしたらこの男にその手で敵う訳がない。政治を知らないモモンが敵う道理が無いのだ。モモンは政治を知らない。その代わり剣を振るうことは出来る。だが今この場で剣を振るうことは無意味でしかない。皇帝の行う"政治"という剣にモモンの"武力"という剣では相手にならない。いやそれ以上に断絶した武器を相手が持っているからかもしれない。

 

 

(立場……か) 

モモンはアダマンタイト級冒険者だ。自慢でき、モモン自身も密かにだが誇り(今となっては相棒のナーベとの唯一の繋がりに思えるからだが)に思っている。だが相手は皇帝であり、様々なものを支配している。戦うことが出来る戦士(モモン)と戦いそのものを支配する皇帝(鮮血帝)では相性が極端に悪いのだろう。チェス盤の駒がチェス盤の持ち手にどうやって抵抗できるというのだ。

 

 

(王国戦士長であるガゼフ殿はこんな気持ちを何十年と耐えてきたのだな……しかもあの王国のような国で。やはり大したものだ。私には真似できそうにない)

 モモンはこの場にいない男に敬意を向けた。向けられた本人は自覚していないがそれ自体がかなり凄いことなのだ。少なくともモモンはそう考える。

 

 

 

 

「さて挨拶はこの程度としよう。本題を話そうじゃないか」

「えぇ。お願いします」

 モモンは皇帝のその言葉を聞いて気を引き締めた。相手は"鮮血帝"…何を言うか注意して応対しなくてはならない。ある意味ではホニョペニョコなどよりも手強いのだから。

 

 

「まず最初にだが闘技場での一件は謝罪しよう。試合を見て興奮してしまったのだ。どうか許してほしい」

「なっ……」

 モモンが驚いたのも無理は無かった。皇帝という最上位に位置する人物がモモンに頭を下げたのだ。皇帝の傍にいる二人の"四騎士"と秘書であるロウネ。その者たちの顔が驚きに満ちる。それを見てモモンは予め決めていたことではないのかと考えるに至り驚いたのだ。ゆえに今は一種の思考停止状態。そんなモモンが従来の人柄そのままの言葉を紡いでしまったのはある意味当然といえよう。

 

 

「頭を上げて下さい。陛下が一冒険者である私に頭を下げる必要は無いでしょう」

「そうか……君の慈悲に感謝する」

 そう言って皇帝は頭を上げた。その表情は明るく嬉しそうだ。とても演技には思えなかった。

 

 

「謝罪を受け入れてくれた後で申し訳ないが、話を続けてもいいかな」

「えぇ」

 

 

「それでは次に…」

 皇帝が言葉を続けた時、モモンは「しまった!」と思った。先ほどの言葉は「【英雄王】の話を終わらせてもいいかな?」と同義であったことを理解したからだ。つまりモモンは【英雄王】という称号に関して受け入れたのと同じだ。あまりにもアッサリと流されたがこれが最後のチャンスだった。思わずナーベがいれば…そう考えずにはいられなかった。

 

 

「ナーベ嬢に関してだが……こちらの調査では"大遺跡"に入った以外の痕跡は無かった。実際に"大遺跡"に入った調査結果を報告してくれ」

「…分かりました」

 モモンは真の依頼人である皇帝を目の前にして一瞬のみ思考する。ナーベに関して真実を話すべきかどうかだ。だがここでの発言は結果的にエ・ランテルの組合にも伝わることになる、そう考えて真実を話すことにした。間違いなく厄介ごとになると分かっていたがそれでも他に選択肢があると思えなかったからだ。

 

 

「"大遺跡"、そしてナーベに関してですが……」

 

  モモンは出来るだけ冷静に……感情的、感傷的にならぬように淡々と言葉を紡いだ。

 

 

◇ ◇ ◇

 

◇ ◇ ◇

 

 

「成程……"大遺跡"は魔導国の領土であったか……。そしてナーベ嬢はどういうわけか魔導国に……」

 

 

「……」

 モモンは思わず黙ってしまった。報告するために頭を整理しようとした。そのせいで自らの胸の内が苦しくなったのを感じたからだ。この場で感情的になるなと自身に言い聞かせるも体がそれを許さないと言わんばかりに胸の奥が痛む。

 

 

 

「……報告ご苦労。それは……辛かったな」

「……いえ」

 

「今回の一件は非常にデリケートな問題だ。これ以上聞くような真似をしないさ」

「……」

 

 

「さて話は終わりか……それでは「陛下!」…うん?どうしたモモン」

 話が終わらそうにとする皇帝に対してモモンは口を挟んだ。話すべきは他にあったからだ。

 

 

「これは個人的な話で、冒険者組合とは全く関係無い話ですが、二つよろしいでしょうか」

「構わない。話してくれ」

 

「分かりました。フルト家をご存知ですか?」

「フルト家?……あぁ、知っているとも。その家がどうかしたのかな」

 

「実はその家の借金に関して相談がありまして……」

「……続けてくれ」

 

 

モモンは話した。

 

要点にすると以下の三つだ。

 

 

・フルト家の借金を取り立てるのをアルシェの両親にしてほしいこと

 

・アルシェの両親が担保にした二人の娘を取り戻してほしいこと

 

・アルシェと妹二人は一緒にフルト家を出るために、縁を切ること

 

 

 

 

「…分かった。取り立てに関しては私の代行者としてニンブルに向かわせよう。縁切りの件はロウネ!」

「はっ」

 

「帝国の法では『未成年者の戸籍に関してその親もしくはそれに該当する成人の住所に適用される』、だったな確か」

「はい陛下。その通りです」

 

「ならば本日づけでその法律は改善する。……だがいきなり全てを変更というのも難しいな。一文を付け加えるとしよう。『未成年者の戸籍に関してはその親もしくはそれに該当する成人の住所に適用される。ただし未成年者が戸籍の変更を強く求めた場合はその限りではない』に変更してくれ」

「…しかし陛下、今すぐというのは幾ら何でも…」

 

 

「私は変更してくれと言った。言い方が悪かったか?ならば変更しろ。今すぐにだ」

「…分かりました。そのように」

 そう言うとロウネはこの場を後にした。それを見送った皇帝はモモンへと視線を戻した。

 

 

「さてこれでいいかな?」

「感謝します」

 

 

「借金の件に関しては安心してくれ。後で解決したことも報告させてもらう」

「はい。それともう一つあるのですが」

 

「"大遺跡"の件か?エルヤー=ウズルスが自身の仲間を殺害したことなら知っている。それだったら既に真実を知っている者たちから話は聞いた」

「?それは一体…」

 

「安心してくれ。『グリンガム』『緑葉』のリーダー二人、それに『フォーサイト』のターマイトからも聞いている。ウズルスが下らぬ嘘を報告したこともな。明日にでも彼の者を問いただすつもりだ」

「それでは……」

 

「あぁ。【漆黒】の名誉が汚されることはない。安心してくれ」

 

 

 

 

 

 モモンが去った後、ジルクリフはテーブルに置かれたワイングラスを手に取りながら隣にいた男に声を掛けた。

 

「爺、これでモモンに帝国での称号を与えた(・・・)ことには成功した。あの場にいた観客たちも含め、あの"鮮血帝"も証人だそうだ」

 ジルクリフが授けるではなく"与えた"と強調したのはどんな形であっても良かったからであった。そうどんな形であっても……。

 

「しかし良かったのですかな?どんな形であれ帝国内で"称号"を与えた。ということは帝国内でモモン殿が何かしらの行動を起こしても咎めるのは難しくなりますぞ」

「問題ないさ。爺だって気付いているだろう。バハルス帝国は魔導国と同盟を結んでいる。自らの相棒を魔導国に奪われた大英雄が果たしてそこの同盟国に行くとは思えない。彼は……善人過ぎる。エ・ランテルを捨てることも魔導国とその同盟国へ下ることもないはず。でなければ私の謝罪をあぁも真摯に受け止めやしないさ」

 そう言ってジルクリフはワインを飲み干す。それはまさしく勝利の美酒であった。

 

 

「…爺。分かっているな?」

「えぇ。もうあの男(・・・)は用済み。そういうことですな」

 

 その言葉を聞くとジルクリフ、"鮮血帝"はただ笑った。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 帝都内といえど誰の目にも見られない場所というのは存在する。大半はそう思わせている(・・・・・)場所なのだが、それに自力で気付ける者は少ない。

 

その場所の一つである、帝都の西に位置する商人たちが使う倉庫街。そこで二人の人物が出会っていた。

 

 

「遅いですよ。パラダイン様」

「すまないのう。ウズルス殿」

 

「まぁいいでしょう。それで報酬の件は?」

「こちらにありますぞ」

 そう言って懐から革袋を取り出したフールーダ。それを見てエルヤーは自らの左腕を差し出した。利き腕でないのは警戒されているからだろう。だがフールーダにはそんなことなど関係無かった。

 

フールーダは普段の姿からは想像できない程腰が低かった。報酬を露骨に求める若造に一切の表情も崩さず左手で手の甲を掴み、右手で報酬の入った革袋を渡した。

 

 

「ん?」

 それがエルヤーの感想だった。金貨や白金貨が入った革袋にしては……軽く……そして柔らかかった。

 

だがそれに気付くのが遅かった。あのフールーダ=パラダインが自らにへり下っている。もしかしたら自分は"四騎士"になれるのでは……そんなものを幻視していた。だからだろう。フールーダの口から出た言葉を聞いて初めて行動を起こせたのは。

 

 

 

 

「<火球(ファイアボール)>」

 

 

 

エルヤーの右腕が燃え出したのだ。

 

 

「あぁぁぁ!腕がぁぁぁ。貴様ぁぁぁぁ」

 

エルヤーの腕が燃えたのには理由がある。フールーダには確かに高名な魔法使いだ。だがそれだけでここまで激しく燃えることはない。原因は革袋の中にあったのだ。そこに入っていたのは牛脂……それと金貨だと誤魔化すためにまぶした金属の粉。それらが錬金反応を示し、えるやーの腕を激しく燃やしたのだ。

 

 

 

「くそがぁぁぁ」

エルヤーは右腕一本で腰に差した刀を抜きフールーダ目掛けて振るう。エルヤーにとって最も強い攻撃手段は居合だ。隻腕になった彼はそれでも刀を振るう。自分ならば勝てると確信を得て……だがその刃は失った腕、動揺する精神、それらの要素も絡んで少し背後に跳んだだけのフールーダにすら届くことはなかった。

 

 

エルヤーは瞬時に判断する。二撃目はどうするか……。結論だけを先に告げるのであればそれが放たれることはなかった。動きを強制的に止められたからだ。

 

電撃を受け、一瞬の硬直。

 

いつの間にか現れた大きな盾を二つ持つ騎士が盾を振り上げていた。

 

 

 

 

「神よ……ぉぉぉ!」

そして頭上から巨大な盾を振り下ろした騎士により頭部ごと地面に叩きつけられた。エルヤーの頭部は地面への衝撃を受け止めきれず破裂、破壊された。

 

地面に鮮血が噴水の如くまき散らされた。

 

 

 

「終わりましたな。フールーダ様」

「あぁ。これで一件落着ですな。ナザミ殿」

 

 

 

 

 

 こうしてエルヤー=ウズルスは一生を終えた。

 

 彼は最後まで傲慢であった。ゆえに最後の言葉も自身を救わなかった神への怒りと傲慢さに満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





エルヤー「神ぃぃぃ」(助けを求める叫び)
????「いや俺、死の神なんだけど………」


エルヤー「神ぃぃぃ」(怒りの叫び)
????「いやお前誰だよ?ていうか既に死んでいる俺にどうしろと?おいツアー俺はどうしたらいい?」


エルヤー「神ぃぃぃ」
Mさん「あっ、そういうの間に合ってますんで……あっち行って下さい。いやフールーダお前もそっち行け。足を舐めようとするな」
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