漆黒の英雄譚   作:おしるこをしるこ

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E.T<6.--十三英雄--真の仲間と(ノロイ)の果て--前編>

200年前、とある存在がこの大陸に現れた。

 

それは【魔神】と呼ばれた存在。何故彼らが出現したかその原因を知る者はいない。

 

【魔神】は一人残らず強く、周辺諸国を荒らしまわった。

 

ある時は国が荒れ、またある時は国が滅びた。

 

【魔神】はあらゆる種族、あらゆる国家にとって【英雄】と呼ばれる者たちですら殺し、脅威として認識された。まるで何かを探している(・・・・・・)ようだと一部の識者は語るがそれが表に出ることは決して無かった。

 

そんな中、周辺諸国の首脳陣が集まり、一つの話し合いの場が設けられ一つの決定が成された。

 

対【魔神】軍とでも称すべき傭兵団の結成である。

 

 

 

 

その傭兵団の特徴は【国家に属さない】【政治的不干渉】、更に一度傭兵団に属した者は国家の重職に就けないことなどであった。

 

ある国家は国内での厄介払いとして事実上の追放として、またある国家は有能な存在を探すために、他の国家では新たな国の象徴が誕生を恐れて……傭兵を出した。だがここで問題が一つ。

 

各国が各国同士を傭兵という表現ではいずれ各々が国家に戻った際に軍事力として利用されることを危惧した。だからだろう。こんな下らないことで口論になっているようでは魔神対策は進まない。そう考えたスレイン法国の付き添いの一人の女性(後に、水晶城を支配し十二人の騎士を従えている姫君と称される人物)が口を開く。傭兵団で駄目ならば【冒険者】は如何かと。

 

胸元に金属製の一つの認識表(ドッグタグ)があったことからその提案は受け入れられたことがよく分かる。

 

 

 

 

そして彼らは戦う。

 

【魔神】と……。

 

 

 

 

【魔神】と呼ばれるようになってしまった存在と………。

 

そして彼らは求める。破壊ではなく、自らの失った存在を求めて……。

 

 

 

 


 

 

 

 カッツェ平野にて戦う者たちがいた。

 

 後に【十三英雄】と呼ばれる彼らと不思議な装いをした存在である。

 

 

 

 神官を思わせる服装に帽子。

 

 一見すると少し怪しい人間の聖職者を連想させるが、その体格は縦に異様に伸びていた。

 

 だがその者の頭部は二本の触手と大きな複眼が付き、両腕からは鎌を連想させる鋭い刃が伸びており、その異形の姿から人間でないことが伺える。

 

 『十三英雄』と呼ばれる彼らが対峙するその者は『蟲の魔神』と呼ばれている。彼らが戦い討伐することになる六体目の【魔神】である。

 

 

 

 

 

「ガッ……カ…」

 暗黒騎士は『蟲の魔神』の左腕を一閃。まるで処刑人が罪人の首を切り落とすようにするりとそれは落ちた。暗黒騎士の持つ剣の1つ、とてつもない切れ味を誇るそれが腕を切り下したのだ。

 

「どけ!ダアク!」

 エアジャイアントの戦士長のニッグが斧を振り回す。暗黒騎士ことダアクはその言葉に反応するように無言でそっと離れた。

 

 

「おら!次は俺の番だ!さっさとくたばれ!このデカブツ」

 そう言ってニッグは斧を振るう。すると大きな旋風が魔神を襲う。

 

「グッ…」

 ほんの一瞬、魔神が意識が刈り取られ複眼から光が失われる。それを見てニッグは追撃を決めて斧を振り上げる。

 

 

「…エセ…ャナ…ヲ…エセ」

 魔神は自身に迫った斧を残された右腕一本で受け止めると口を大きく開けてニッグの首元に嚙みつこうとする。

 

 

「こいつ!放しやがれ!」

 ニッグは首元を噛まれ、出血、肉が抉れ、痛みが走る。だが巨体ゆえに致命傷になるのは時間が掛かった。ゆえにニッグは反射的に斧を投げ捨て、即座に魔神の首を掴み反対に首を折ろうと試みる。

 

 

「ぐっ…ぐぎぎぎぃ……こいつ強ぇな」

 魔神の首は固くとても折れそうにない。ニッグは自分の行いを後悔した。今まで何度もとあるドワーフから「脳筋」と呼ばれていたがまさに今の自分がそうだなと思ったからである。

 

 そんなことを考えている内に首元の痛みが極限に達する。血が噴き出したのである。

 

 

(あっ……やべ。これ死ぬやつだ……っ!!?)

 だが突然魔神の口と手が自分から離れた。それに反応し腹部を蹴り飛ばして距離を取る。蟲の魔神が屈むようにして倒れた。その背中には大きな切り傷があった。

 

 

「遅いんだよ!イジャニーヤ!」

「若い者はこれだから……教育がなっとらん……そもそも『若い』の定義というのは……」

白い髭を生やした男イジャ二―ヤの手に握られている鎌の刃からは血がついていた。隠密行動からの不意打ち、ゆえに魔神にとって大きな傷を負う形となる。

 

 

「…エセ……エセ!!」

 イジャニーヤは魔神から距離を取るため飛び跳ねた。だが腹部に斬撃が飛んでいく。イジャニーヤはそれを空中で躱そうとするも間に合わずに斬撃を浴び腹部から血が噴き出る。

 

 

「……ぐっ……痛いのう……だがそもそも『痛み』とは……」

「イジャニーヤ!喋ってないで早く解毒しろ!」

 そう言って暗黒騎士はイジャニーヤに向かって解毒用のポーションを投げつけた。イジャニーヤはそれを無駄の無い動きで掴むと蓋を開けて飲み干した。

 

 

(ぬし…いつも思うがよー知っとるのー。まさかおぬし【魔神】を最初から(・・・・)知ってるんじゃ……いや、今はよすとしよう。それよりも……)

 

 

「ババァ」

「誰がババァじゃ!このジジィ!」

 イジャニーヤは自身の元へ再び攻撃するために接近してくる魔神をその目で確認。その間にリグリットが入った。

 

 

「<デスナイト>!」

 リグリットの言葉通り、アンデッドであるデスナイトがどこからか召喚される。その右手にはフランベルジュ、左手に巨大なタワーシールドを持っており魔神の鎌にうよる攻撃をその巨大な盾で防ぎ切った。

 

 

「奴の動きを封じろ!デスナイト」

 リグリットの言葉に従いデスナイトは魔神の動きを封じようとフランベルジュを振るった。盾により攻撃を防がれた硬直、その状態から未だ解けていなかった魔神は左の触手・複眼の上から真下に振り下ろされた斬撃を受けて左半身にダメージを受ける。だがその鎧を纏ったような肉体が硬く思った程のダメージを与えられない。それに気付いたリグリットは一先ず距離を取ろうとするも、魔神の背後から飛行している一人の少女の姿を見て考えを改めた。

 

 

「ニッグ!」

「おうよ!」

 リグリットの言葉に反応しニッグは魔神の背中から斧を振るう。再び背中からダメージを受けた魔神は硬直してしまう。更に振るった斧の旋風を受けて僅かな間意識を刈り取られる。

 

魔神は即座に振り返りニッグに視線を向けた。いや向けてしまった(・・・・・・)。ゆえに戦闘対象から一人が消失してしまったのだ。頭上に飛行していた少女のことを。だが気付いた時には前後で挟まれていたため動けなかった。

 

 

「<蟲殺し(ヴァ―ミンべイン)>!!」

 

 

 飛行(フライ)の魔法を使って現れた一人の少女は自身がつい最近作った魔法を魔神に向かって放った。口や鼻らしき部分から泡を出し、身体が痙攣を起こす。だが致命傷とまではいかずまだ立っていた。だがそのダメージが想像以上に大きかったようで魔神は残った右の複眼を少女に向けるも既に光を失っていた。それを見て少女は心の中で達成感に満ち溢れガッツポーズした。そして勝利を確信した。それは魔神の正面にいるリグリットと召喚されたデスナイト、背後にいるエアジャイアントの戦士長、少し離れた位置から攻撃の隙を伺うドワーフでもなければ、棒立ちしている暗黒騎士でもない。ましてや『封印』しか出来ないツアーはありえない。

 

 

魔神は頭上にいる少女に目を向けた。

 

少女を殺そうと手を伸ばしてしまった。

 

本来であれば見えたであろう。

 

だが少女の魔法により魔神は自身の敵を感知するあらゆる感覚が狂っていた。少し時間があれば回復したであろう。だがここまで攻撃を畳みかけてきた者たちにより一切の余裕を失くしていた。

 

 

そして気付く。自身の横から剣を両手で持ち逆袈裟の構えを取る男がいたことに。

 

斬るのに適していないその剣の攻撃を受けて魔神は首を両断された。引き裂かれた頭部が地面にコロコロと転がり、胴体はデスナイトにもたれかかるようにしてドスという音がした。その後ドサリと音がしてデスナイトごと巻き込んで地面へと倒れこんだ。

 

 

 

「…終わったな」

 そう言ってリーダーであるカイズは剣を収めた。

 

 誰もが安心した。確信した。これでようやくこの魔神との戦いは終わったのだと……。

 

 

 

 

「アッ……アッ……」

「!?」

 

だが魔神は生きていた。既に頭部のみとなったはずだが辛うじて生きていた。まさに虫の息とでも言うべき状態であったが、それでもそこにいた者たちは驚き身構えた。ただ一人、暗黒騎士を除いて。

 

 

 

「カ……エセ……カエセ…」

 

 

 

「………」

 暗黒騎士はその手に握られた大剣を振り上げた。だがその様子はどこかぎこちなく、まるで身内相手に処刑人が剣を振り上げたようであった。僅かにだが剣が、それを持つ腕が震えていた。

 

 

 

 

 

 

「……カエセ……ャナ……ヲ……エセ……」

 

 

 

「カエセ?……『返せ(カエセ)』か?……ならば一体何を返せというんじゃ?」

 リグリットの疑問は当然である。何故そもそも『魔神』は各地で暴れまわったのか、その詳細は誰も知らないのだ。それはかつて自分がいたスレイン法国ですら例外では無かった。勿論ごく僅かに知っていた者がいた可能性は否定できないが……。

 

 

(可能性があるとすればやはりスレイン法国か……)

 だが次に蟲の魔神が言った言葉を聞いてリグリットはその理由を知ることになる。

 

 

 

 

 

 

「カエセ!スルシャーナサマヲ!カエセ!」

 

 

 

 

 

 

 魔神の瞳には涙が浮かんでいた。そこに宿る感情は怒りか悲しみか、もしくは寂しさかそれは誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

「……スルシャーナサマ……」

 

 

 

 

 

 

 暗黒騎士は剣を振り下ろした。その攻撃を受けた蟲の魔神は最後に再び同じ言葉を吐いた。

 

 

 

 

「スルシャーナサマ……」

 そして『蟲の魔神』は完全に絶命した。

 

 

 

 

「『蟲の魔神』……お主……まさか」

 そう言ってのはリグリットだ。自身の中で疑問に思っていたことが全て繋がったのだ。そしてスレイン法国ならばそれら知っていることを確信する。

 

 

「今回勝てたのはお前がいたからだろうな。アレは良い魔法だな」

「ほっ……ほっほっ。やはり若いものが一番じゃな」

 ニッグやイジャニーヤがそんなことを口走る。それに対して少女は眉間に皺を寄せて怒鳴る。

 

「うるさい!この脳筋!ロリコン爺!」

 

 

 

 

「…………」

「リーダー?どうかしたのかい?」

 ツアーが声を掛ける。

 

 

「…………後何回こんなことを繰り返せばいいんだろうな」

 リーダーはそう言って拳を作る。

 

 

「兄貴は優しいな!」

 そう言ってリーダーの肩を叩いたののはゴブリンのジュゲムだ。先ほどまで重傷を負っていたためエルフの仲間により戦場を離脱していた。だが今や回復していることからポーションなどを渡されたのは言うまでもない。

 

 

「そんなんじゃないんだ……」

 

 

例え『魔神』と呼ばれる存在でさえ倒すことに心を痛める優しい青年カイズ。

 

身体も心も傷つきながら剣を振るい続けた英雄……

 

それが彼ら『十三英雄』の知るリーダーの姿であった。

 

 

 

 

幸か不幸か、そんな彼の戦う本来の理由を知る者は二人しかいなかった。

 

 

(リーダー、それは君の本音かな?君の本質が仮に善だとしても僕は君が脅威になりうる可能性がある以上、殺さなくてはならない。許してくれとは言わないよ。例え『彼』が許しても…)白銀の鎧はリーダーに顔を向けながらそんなことを考えていた。そして『彼』に目を向けた。

 

 

「すまない……サンタテレサ(・・・・・・)

 呆然と立ち尽くし、ボソリと呟いた『彼』の言葉が聞こえた者はいなかった。

 

 

軽いネタバレ:魔神(六大神のNPC)が暴走した理由は六大神のギルド武器破壊ではない

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