漆黒の英雄譚   作:おしるこをしるこ

116 / 116
むかしばなし編の始まりです。


のんびり投稿するつもりです。よろしくお願いします。


おまけ章
むかしばなし その1 ~初めての街~


 

ギルメン村

 

 

その村の石造りで出来た家の屋根の上で五人の人物が話していた。

 

 

「なぁ。モモン」

「どうした?ウルベル」

 

「この村には【流星祭】があるだろ」

 

 

【流星祭】……

 

ギルメン村で行われる一年に一度だけ行われる特別な祭りだ。

使われる道具は主に三つ。【星杯】と呼ばれる二種類の杯、これを大きなサイズのもの【大星杯】を一つと小さなもの【小星杯】を村人全員分(この場合四十人)、そしてその中身を満たす酒である。

 

【大星杯】を用意し、四十人分が飲めるだけの【酒】を満たす。それを特定の台座に設置し、その杯の飲み口と地平線に視線を合わせる。それで太陽が沈むのを確認すると大星杯の中身を小星杯に注いでいく。全員分を注ぐと今度は村人全員に小星杯を手渡す。今度は月が出てるのを確認すると大人は中身を飲み干し、子供は中身に指をつけてそれを三回自らに向けて指を弾く。一度目は肉体に、二度目は精神に、三度目は魂に。これらの流れは【星】の力を自らに取り込む、またはその【加護】を纏うことが出来るという考えかららしい。最初に村を作った【最初の九人】の内の一人がこれを考案したらしいが詳しいことは知らない。

 

 

 

「へぇ!お祭りか!行ってみたい!」

「おい、チーノ!無理言うな」

「馬鹿弟、お前少しは空気よめ」

 

 

「お前たちもいい歳だ」

「あれ?村長」

 

 

「どうだ?一度町に行ってみるか?」

 そう言うと村長はニヤリと笑った。

 

 

 

 

モモンたち一行は町、『エ・ランテル』と呼ばれる町にいた。

 

本来彼らがこの町に来ることはなかった。来る理由も何も無いからだ。

 

しかし村長の話いわく……

 

 

ギルメン村に必要なものが少し心許ないらしい、なのでそれらの買い出しをしてほしいということで、現在モモンたちは【エ・ランテル】という町に来ていた。

 

 

モモン、ウルベル、チーノ、チャガ、アケミラ、そして付き添いとしてブージン。彼らはみな村人の格好をしていたが、本日はお祭りということで様々な格好をした人たちがいる。村人であるモモンたちがそこにいても目立つような心配はなさそうだ。半数は身に着けているマジックアイテムの効果で人間にしか見えない。その必要がないのは人間であるモモン、怪しげな仮面を被るウルベル、自らの魔法で耳を人間に見せている。これらは全て"人間じゃない"ことでトラブルを避けるためだ。

 

 

街に着くと大柄な男性が口を開く。

「さて町に無事着いた訳だが、買い出しは俺の方で済ませておくからお前たちは各自好きに回っておいてくれ」

 

「いいの?」

「あぁ。構わない。あまり多くは無いが銀貨もそれなりにある。買い出しで必要な分は既に分けているから各自好きに使え。ただし犯罪行為に使うことは許さん!それと!……」

 そう言うとブージンはチーノに視線を向ける。

 

「……娼館に近づくのは許さん」

「えっ、何で?」

 

「弟、少しは考えなさいよ。娼館なんてトラブルの元よ。ただでさえ私たち余所者がそんな所に行って相手されると思う?せいぜい高く吹っ掛けられるのがオチよ。そしてその金額を払える程持ってないでしょ?アンタ"顔だけ"はいいけどさ…」

 

「あぁ……俺も……娼館に行きたかったなぁ……」

 

「……まぁ、チーノは置いといて……お前たちも気を付けろよ。お祭りでは"良い意味でも悪い意味でも人は集まる"からな」

 

「分かった。じゃあどうやって合流する?」

 

「そうだな。じゃあ……」

 

 


 

 

皆とはぐれてしまったモモン。

 

既に目的であった母親への贈り物は二つ買えたのだが、お金が思った以上に余ってしまった。チーノにでも渡そうかと考えたが無駄遣いになりそうだったから止めておいた。ウルベルやアケミラなら本を購入して、村のためにもなりそうだが……今頃ウルベルとアケミラがデートしているだろうから邪魔する訳にはいかない。チャガは性格からして人からのお金を受け取らないだろう。さてどうしようか……。

 

そんな考え事をしながら路地を歩いているとモモンは誰かとぶつかった。

 

「うん?」

すぐに財布がスラれたのが分かって瞬時に追いかけるもどうやら巻かれてしまったらしい。今自分がどこにいるかが分からない。合流場所は聞いているからそれ自体は問題ないんだが…。

 

 

(さて、どうしたものか……)

モモンは一人の少女が路地裏で泣いているのを見つけた。

 

「君、迷子?」

 

フードを被っていて顔はよく見えないが泣いている声から少女のもだと分かる。綺麗で清潔そうな恰好から良いところの出身な気がなんとなくした。多分大きくは間違えていないだろう。

 

モモンの声に反応したのか少女はこちらを見た。フードがパサリと落ちて顔が露わになる。そこにいたのはモモンと同じ黒髪黒目であった。この辺では珍しい容姿だ(……と村長が言っていた)。

 

 

「綺麗……」

「うるさい。ガガンポ」

 何の飾りもしていないがその必要がない程綺麗な黒髪だと思った。

 

 

「いや…でも…」

「うるさい!ガガンポ!」

 少女の強気な発言に反してその瞳には涙が浮かんでいる。

 

 

(……ほっとけないな。こういう時は!)

 

 

「実は俺も迷子なんだ。もし良かったら俺と一緒に人を探してくれないかな?」

「……分かったわ。それならいいでしょう」

 

 

 それがその少女とモモンの初めての出会いだった。

 

 そしてこの時の一連の出来事が彼らにとって最初の『冒険』だった。

 

 

 


 

 

【少女】

モモンがエ・ランテルで出会った少女。黒髪黒目。

容姿から判断するにモモンと同い年か少し下ぐらい(10歳ぐらい?)。

自身が認めた者以外は『虫』の名前で呼ぶ癖がある。

これは彼女の幼少期、両親から受け継いだ黒髪を近所の子供に『虫』と同じ色をしていると馬鹿にされたのが原因。

なおその後、その子供たちは少女に(主に雷系魔法を行使され)半殺し寸前にまでされてしまう。その子供たちのリーダーは『お金、あげます』と真っ先に言ったらしい。

彼女は天才と呼ぶに相応しく、この時既に第四位階魔法を使用出来、更に剣も一応振るえたという。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。