漆黒の英雄譚   作:四季 春夏

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抵抗(レジスト)

ミータッチの屋敷は大きい。ただ大きいという意味ではなく必要最低限の大きさ。機能を重視した大きさという意味だ。屋敷は二階立てである。一階の誰にも使われていない部屋がある。

そこにモモンとミータッチはいた。

 

「さて今日から君に色々教えよう。まずは抵抗(レジスト)についてだ。」

 

「モモン、君の身体の中ではかなり微弱だが『毒』と『石化』の状態異常に掛かっている状態だ。」

 

「・・・」

 

モモンは黙って聞く。一言一句聞き逃しが無いようにするためだ。

 

「君の身体の中にある『毒』と『石化』の状態異常は治療可能だ。私はこの二つの状態異常を治すポーションを持っている。一応聞くが・・どうする?」

 

ミータッチがそう聞いたのはモモンが何というか理解していたからだ。

 

抵抗(レジスト)の修行をしたい。だから治療はいいです。」

 

「分かった。」

 

ミータッチは少し間を置くと話し始めた。

 

抵抗(レジスト)するに大事なのは二つのことだ。一つは『経験』。もう一つは『イメージ』だ。」

 

「『経験』と『イメージ』ですか?」

 

「あぁ。毒を受けたことが無いものは身体が理解できずイメージ出来ない。だが毒を受けた『経験』をした者は身体が毒を覚えており、また毒に対するイメージが出来る。」

 

「では『毒』と『石化』の状態異常のどちらから抵抗(レジスト)の練習をする?」

 

「『毒』からで。」

 

モモンがそう言ったのには理由があった。石化してしまっても切断すればいい。しかし毒は対処法が無いのだ。

 

(もしあの時・・石化だけならば・・)

 

あの男・・クワイエッセを斬ることが出来ただろうか。

そうすれば・・誰か一人だけでも助けることが出来ただろうか・・

 

「分かった。まずは自身の身体の中にある『毒』を意識してくれ。」

 

モモンは自身の胸に手を当てる。明らかに心臓の脈動がおかしい。これが毒の影響だろうか。

全身に流れる血液の中に違和感・・正確に言えば不純物が紛れ込んでいる。

 

「意識できたようだな。ならば次だ。身体の中にある毒を体内から押し出すイメージをしてみてくれ。」

 

モモンは想像する。体内から毒を押し出す。どのようなイメージが正しいだろうか・・

 

「?」

 

モモンはイメージをどれだけしようとも出来なかった。

 

「今すぐは無理でもいずれは出来るようになるだろう。それまで頑張ってくれ。」

 

ミータッチは部屋から出ていった。

 

_________________________________

 

「くそっ!!」

 

ミータッチが部屋を出てからもモモンはイメージを続けた。あれから何時間イメージしたかも分からない。

 

しかし結びつかない。

 

「・・・・」

 

ドアがノックされる。続いて「入りますね。」と女の声がした。ナーベだろう。

 

「どうしたんだ?ナーベ」

 

「私の名前を気安く呼ばないで下さい。イモムシ」

 

「・・・・」

 

「お昼ご飯を持ってきました。勝手に食べて下さい」

 

「ありがとう。ナーベ」

 

「・・息が臭いです。歯は洗いましたか?」

 

「・・・・」

 

「では失礼します」

 

ナーベが後ろ手でドアを閉めていくのを見たのを確認したモモンは思わず漏らした。

 

「結構ショックなことを言うんだな・・」

 

その瞬間、モモンが閃いた。

 

「そうか・・・『息』か!」

 

 

__________________________________

 

モモンは体内に流れる毒を息を吐くと同時に出すイメージをする。それは『息』である

 

深呼吸して・・毒を溜めて・・

息を吐いて・・毒を出す。

 

「あれ?」

 

モモンは自身の身体から不純物が抜けたのを感じる。

 

「随分早く抵抗<レジスト>を取得したな。まさか1日で取得するとは思ってはいなかった。凄いものだな。」

 

「いえ、ナーベの言葉のおかげです。」

 

「ナーベが?」

 

「えぇ。その言葉から見つけたんです。」

 

「・・何かすまない」

 

「いえ・・」

 

「よし。腹も減っただろう。夕食にしよう」

 

ミータッチがそう言ってその場を後にした。モモンもそれに付き合って部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 


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