男は五人の仲間たちと共に戦っていた。
目の前にいる亜人たちにはまるで手も足も出なかった。
「くそ」
悪態をつくも状況が改善されることは無いのだ。現実は非情である。
男たちは持っていた武器を構えようとするも力は入らなかった。
(あぁ・・・・死んだな・・)
その瞬間であった。目の前に一人の男が現れる。
「えっ・・・どうして」
「・・・・・」
視覚や聴覚がボンヤリしてはっきりとは分からない。だが目の前にいる『ある者』は彼ら六人の目前にいた亜人たちを一閃する。その一閃により数百の亜人が倒れる。
「力を貸そう」
『ある者』のその言葉に彼ら六人・・・後の『六大神』は武器を何とか構えると亜人の軍勢に飛び込んでいった。
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
かつて亜人に苦戦していた彼らは力を付けて『六大神』と呼ばれるようになっていた。
男は五人の仲間と共に戦っていた。全員が満身創痍であり、地面に流れる血液が地面を濡らしていた。六人の内、四人が地面に伏し息絶えていた。
当然蘇生はした。しかし蘇生に回せる魔力やアイテムは既に底を尽きて、彼らを蘇生させる手段・・いや余裕は現時点では無かった。
男と仲間の前には『神』がいた。
目の前にいる者は『神』を名乗り、大陸中を恐怖に陥れた。
人類を滅ぼすことを公言し、亜人たちを使って人類を一人残らず滅ぼそうとした。
『神』の名前は分からない。ただ『あの国』では『
手足の如く動く尻尾。
胸には赤黒く光るものがあり、それを中心に「6」の数字が三つ回るように並んでいる。
角は全て天に伸びるように曲がっており、その形は王冠の様にも思えた。
翼は近づくもの全てを燃やし尽くすように赤く染まっており、その色は太陽の様にも思えた。
手足は凶悪な姿をしており、天を堕とそうとする意思を感じさせた。
だが何故かは分からないが顔は仮面で隠していた。恐らく傷があるのだろう。胸部から首にかけて大きな傷があったのだ。ただしそれは私たちがつけた傷ではない。
「流石は『神』を名乗るだけはある。『
『神』は満身創痍から程遠く、息も荒げていなかった。恐らく体力の半分も消耗していないのだろう。
対して二人の男女は満身創痍で息を荒げており重傷なのは明白であった。
全身を黒い鎧にフードという恰好の骸骨の男。
全身を白い鎧で包み込む女。
「ここまでよく頑張った。誉めてやろう。名前を言うがいい。」
「私のことはスルシャーナと呼んでくれ。」
「アーラ・アラフよ。」
アーラが口を開く。
「私たち・・六人掛かりでも倒せない奴がいるなんてね・・あんた何者?」
2人は確信していた。この『神』は・・・
「・・・何者なのだろうな。強いて言えば『世界の敵』だろうな。」
『神』は笑うとアーラ目掛けて跳躍した。
『神』は空中で腕の一本を女に向けた。
「『
『神』が唱えたのは
「くっ!『次元断層』!」
アーラが手に持ったメイスを薙ぎ払い武技を発動する。次元を盾として使用する武技であり、最強の防御を誇る武技であった。
この場にいる六人が『ある人物』から師事を受けたことで習得した武技でもある。ただしその内の四人は既に死亡してしまってはいるが。
『神』の魔法がアーラの武技に吸い込まれた。
それを見てアーラはホッとする。だがそれが致命的なミスだとスルシャーナが気が付いた。
「アーラ!」
スルシャーナが叫ぶ。それを聞いたアーラはハッとする。目の前には『神』の尻尾が迫っていた。
急ぎ防御しようとするも時すでに遅く、谷間に激痛が走っていた。
「ドジっちゃったかな・・あはは」
尻尾を抜かれたアーラが倒れる。
心臓を貫かれたのか、大量の鮮血が噴き出す。
命を失った肉体が痙攣を起こす。その様子は死を拒絶しようとする最後の行動の様にも思えた。
だがやがて人形の様に動かなくなった。
「後は私だけか・・」
『神』は笑うとスルシャーナに向かって飛行する。
「くそがぁぁ!!」
『神』は笑うとスルシャーナに向かって再び走り出した。
「・・・・」
(もう・・・『アレ』を使うしかない。)
スルシャーナは懐に忍ばせたそれがあるかを確認する。
(大丈夫。ある・・・)
『神』がスルシャーナに目掛けて腕を伸ばす。
「
「
スルシャーナが最強の武技を発動させる。それは次元そのものを切断し、対象を切断する武技。『神』が使おうとした始原魔法の詠唱を阻止した斬撃が『神』に向かって飛んでいく。
「___________。」
『神』が何かを詠唱した。
その途端、『神』の姿が消えた。
スルシャーナの背中から胸に掛けて何かが貫いた。
それは『神』の右腕だった。
「これは『
『神』が使用した始原の魔法は『
「くっ・・」
スルシャーナは『神』の腕を右腕で掴んだ。もう逃がさない。
スルシャーナは『神』の腕ごと振り向く。身体の骨が一部砕け散るが痛みは無い。
スルシャーナは右手に掴んだ大剣を振り上げる。その大剣の名前は『
『神』に最もダメージを与えた武器だ。
「・・・・」
『神』は左腕でスルシャーナの斬撃を防ごうとした。
スルシャーナは笑う。
(これでこの戦いは終わりだ!)
スルシャーナが気付く。『神』が笑っていることを。
『神』の目前にそれがが現れる。
スルシャーナの斬撃は『神』の次元の盾に吸い込まれていった。
「それは『
「・・・」
スルシャーナは気付けなかった。使用した武技に驚愕していたからだ。
『神』が右腕を振り上げた。
スルシャーナがそれにようやく気付けた。だがしかし遅かった。
『神』が武技を使用した。
それは次元を切り裂いた。
「がっぁぁ!!」
スルシャーナの身体が左右に引き裂かれる。
(これは『
(くそ!強過ぎるだろう!!)
「お前たちの負けだ。」
「まだだ。」
(例えどれだけの私の魂が犠牲になろうとこいつだけは何とかしなければならない!!!)
スルシャーナは『それ』を使用した。それは【連鎖の指輪】と呼ばれるアイテム。『ある者』から授かったアイテムである。
「指輪よ!<こいつを永遠に封印しろ!>」
『神』の胸元を中心に真っ黒い空間が広がる。
「ふはははははっっ!!!!!!!!!そうか・・封印か!!」
『神』が笑う。
やがて『神』は飲み込まれていった。そして黒い球体自体を吸い込むように圧縮されるとその場から消失した。
「はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・」
スルシャーナがその場に倒れこむ。
(やった。封印したぞ。)
『神』こと『
この時のことはまだ序章でしかなかったのだが・・・
それにスルシャーナや他の者たちが気付くのは随分後になる。