漆黒の英雄譚   作:四季 春夏

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大虐殺

「一体何が?」

 

スレイン法国の最奥の聖域にて13人の存在がいた。

その内の12人が慌てていた。

 

「分からないが・・陽光聖典隊長のニグンを見ようとした所、突如爆発したのだ」

 

10年前・・多くの異種族の村や集落を滅ぼしたクワイエッセ=クインティアはその功績と実力を認められてスレイン法国の特殊部隊である六色聖典の一つである最強の部隊『漆黒聖典』の四番席次に任命されることになった。その後続としてニグン=グリッド=ルーインに白羽の矢が立ったのだ。ニグンは今まで無事順調に人間種を守るための戦いに身を投じていただが・・・

 

「一体何が・・」

 

(このパニック・・・使えるかもな)

 

その者は口元を隠すように両手を組んで笑う。

 

「もしや『破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)』の復活か?」

 

「馬鹿な・・・『破滅の竜王』はスルシャーナ様が倒したはずだ」

 

(何も知らない。愚か者よ。スルシャーナは一時的に『封印』したに過ぎない。何も知らないのはスルシャーナがお前たちを信用していなかったからだ。)

 

その者は部屋を出ようと扉の前に立つ。

 

こんなことをしても何も言われないのは、誰もその者の存在に気付けていなかったからだ。視認や気配の認識すら出来ていなかったからだ。

 

その者は最後に『矛盾殺し(パラドックス・ブレイカー)』のあった場所を眺めた。

 

(『十三英雄』・・『八欲王』・・・そして『六大神』、これで『あの御方』の敵は完全にいなくなる。そして『あの御方』の完全復活も終えた今、ついに活動を開始する時だ。)

 

その者が部屋を出た。それに気付く者は一人もいなかった。

 

 

_________________________________________

 

 

「準備は出来たか?」

 

ミータッチはいつもの純銀の鎧を着たまま見送る。

 

「父上、お元気で」

 

ナーベがそう言ってミータッチを見る。その眼には涙が溜まっていた。

 

「モモンと仲良くな・・」

 

「師匠・・」

 

「モモン・・ナーベを頼んだぞ」

 

「はい。」

 

モモンとナーベが屋敷を出る。

 

それを見たミータッチが一言告げる。

 

「お別れだ・・2人とも・・」

 

 

___________________________________________

 

 

スレイン法国の上空に六人の影があった。

 

「そろそろか・・」

 

その中でもリーダーである男が口を開いた。男は仮面を被っていた。

 

「ただいま戻りました」

 

「久しぶりだな。ラスト。相変わらずあいつらは無能だったか?」

 

あいつらと言うのはスレイン法国の上層部のことだ。

 

「はい。いつも通りでした」

 

「そうか。エンヴィー、グリード」

 

「「はっ」」

 

「私が隕石落下(メテオ・フォール)を使い、神都を襲撃した後、スレイン法国の聖域を襲いアイテムなどを全て奪え。」

 

「「かしこまりました。」」

 

「ラース、グラトニー、スロウス」

 

「「「はっ」」」

 

「お前たちはスレイン法国の民を一人残らず殺せ。神都から一人も残すな」

 

「「「かしこまりました。」」」

 

「ラスト。」

 

「はっ。」

 

白い華美な婦人服を着てる女性。頭部には帽子を、顔には仮面を被っていた。その眼には赤い光を宿していることが分かる。

 

「お前はアレを召喚して、逃走する奴を狩れ。お前自身は私の横で護衛だ」

 

「かしこまりました」

 

「それでは始めよう。隕石落下(メテオ・フォール)

 

 

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「『神都』が!!?あれは爆発!!?」

 

「よせ。ナーベ」

 

「しかし・・」

 

「なーにをしーているーのかな????」

 

モモンとナーベが神都から出ようとした所でその者が現れる。

四本足で歩く存在が現れる。犬でも狼でも熊では無い。

 

「何者だ?」

 

「わーたーし。ホニョペニョコ!!」

 

大口で凶悪な雰囲気をまき散らしながら近寄ってくる。目から赤い光が漏れている。

 

(こいつ・・強い!!)

 

ホニョペニョコがナーベを見る。

 

「うまそぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

そう言ってナーベに向かって跳躍する。

 

「くっ!!」

 

モモンは剣を抜くとホニョペニョコの前に出た。

 

「くそがぁぁぁぁぁ!!!!じゃまぁぁぁぁぁ!!!」

 

「『飛翔斬(ひしょうざん)』!!」

 

モモンは武技を発動した。飛ぶ斬撃がホニョペニョコの右半身を斬りつけた。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!痛ぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ホニョペニョコの右半身の切り口が元に戻っていく。

 

(再生能力・・吸血鬼か!!?)

 

ホニョペニョコが激痛のせいか暴れまわる。今ならば攻撃することが出来そうだ。

 

(どうすべきだ。このまま戦うべきか・・逃げるべきか・・)

 

ホニョペニョコがナーベに向かって右腕を振り上げた。

 

「にがすかぁぁぁぁっっ!!!!!!」

 

一閃・・

 

ホニョペニョコがナーベの頬に傷をつけるのと同時にモモンが飛翔斬を使用した。

 

モモンの飛翔斬がホニョペニョコの右腕を切り落とした。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

ホニョペニョコが激痛でのたうち回っている。

 

「ナーベラル!」

 

モモンは懐からポーションを取り出した。そのポーションは血の様に赤い。

 

ナーベに振りかける。頬の傷が治っていく。

 

『ナーベを頼む』

 

「逃げるぞ。ナーベ」

 

「はい・・」

 

「ちっ!にがすかぁぁぁっっ!!!!」

 

そう言ってホニョペニョコが追いかけようとした時だった。

 

「!!っ。わかりました。いますぐむかいます!」

 

そう言ってホニョペニョコは神都の中心へと向かっていった。

 

(チャンスだ。今しかない!)

 

「早く逃げるぞ!!」

 

『ナーベを頼む』

 

「絶対に死なせるもんか・・・絶対に守って見せる」

 

モモンはナーベの手を取ってその場を後にした。

 

その日、スレイン法国の上空から再び隕石が落下した。

その隕石は全ての痕跡を消すように爆発した。

スレイン法国の人口は約5割・・約750万人の死傷者を出した。

後にこの日のことを多くの者がこう言う。

『大虐殺』と。

 

 

 


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