漆黒の英雄譚   作:四季 春夏

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バレアレ家

エ・ランテルにモモンたちが帰還した。

 

「すっかり夜だな」

 

ルクルットのその言葉にみんなが同意する。

 

「モモンさんとナーベさんはとりあえず組合の方にですね」

 

「えぇ。それでは行ってきます」

 

そう言ってモモンはハムスケに乗ったまま冒険者組合を目指す。それにナーベも付き従う。

 

去っていく彼らを見てモモンは一言告げる。

 

「ナーベ。ゴウン殿の話では『不審者』がいるそうだ。念のために彼らの方に行ってくれるか?」

 

「しかし依頼は終わりましたよ?」

 

「分かってはいる。だが念のためだ。一応彼らに気を遣わせない様にする為に少し距離を取っておいてくれ」

 

「分かりました。確かにバレアレ家の場所も知りませんし・・そうした方がいいですもんね」

 

「あっ・・そうだな。そうしてくれると助かる」

 

ナーベが去っていくのを見るとハムスケは再び歩き出した。

 

 

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エ・ランテル冒険者組合

 

「それでは新しい魔獣登録でよろしいですか?」

 

「はい。頼みます」

 

こうしてハムスケはモモンのペットとして登録されることになった。

 

組合からモモンとハムスケは出る。

 

「早かったでござるな。殿」

 

「それでは行くぞ。ハムスケ」

 

そこでモモンは気付いてしまう。

 

(ナーベはまだ来てないか。先に行くか。でもバレアレ家ってどこだ?)

 

「困ったなぁ・・・」

 

モモンがそう口に出すとハムスケが不思議そうに尋ねた。

 

「殿。どうしたでござるか?」

 

「バレアレ家の場所、私は知らない」

 

「ふむ。バレアレ殿は薬師であったでござるな。それがし分かるかも知れぬぞ」

 

「えっ・・もしかして匂いとかで分かるのか?」

 

「そうでござるよ。何やら薬草の苦い匂いがするでござる」

 

(バレアレ家の匂い?いや匂いがするいうことは他の薬師の可能性が高いだろうが・・だが、それでもエ・ランテルで一番の薬師ならば店の場所を知らないということは無いだろう。居場所を教えてくれるか・・)

 

「分かった。ハムスケ。そこまで行ってくれ」

 

「了解でござる」

 

そう言ってハムスケが早めに歩き始めた。

 

曲がり角を二つ曲がって・・・

 

「殿。この者でござる」

 

「ん?」

 

ハムスケが言っていた薬師だろう。ハムスケの正面にはンフィーレアと同じような恰好をした老婆がいた。

 

「なんと!?大きな魔獣じゃ・・」

 

「失礼・・あなたは薬師の方ですか?」

 

そう言ってモモンはハムスケから降りる。

 

「あぁ。そうじゃ。私はリイジー=バレアレじゃ。そなたは?」

 

「私はモモンです。こちらの魔獣が『森の賢王』改めてハムスケです」

 

「よろしくでござる」

 

「ほう。こんな大きくて立派な魔獣とは・・」

 

ハムスケが嬉しそうにして自慢げに鼻息を鳴らす。

 

「実はこのハムスケを組合で登録したばかりでして、後でバレアレ家の方で合流して果実酒を頂くことになっていたのですが、その場所が分からなくて・・」

 

「あぁ。それなら私も帰る所じゃから一緒に来ればいいじゃ」

 

「ありがとうございます」

 

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バレアレ家

 

 

 

「どうしたんじゃ明かりも点けずに・・」

 

「?・・」

 

「ンフィーレアぁ!モモンさんが来たよぉ!」

 

そう言ってリイジーが家に入る。モモンもそれについていく形で入った。

 

その瞬間であった。

 

(!・・この感じ・・・魔法で音や気配が遮断されている?もしや!)

 

モモンは大剣を背中から抜く。

 

「リイジーさん。家の外にハムスケと一緒にいてくれ。ハムスケ。リイジーさんを守れ。何やら不穏な空気が流れている」

 

「了解でござる。リイジー殿、こちらに。」

 

「一体何が?」

 

リイジーはどうやら理解できなかったらしい。でもそちらの方が都合が良いかもしれない。パニックを起こして動けなくなるよりはマシかもしれない。

 

モモンの耳に金属音が聞こえる。

 

(無事でいてくれ!)

 

モモンは音がした場所へと走り出した。

 

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「大丈夫か!?」

 

モモンが入った場所は薬草の保管庫であった。

 

モモンが一番最初に感じたのは薬草の匂いでは無かった。

 

ありえない程の鉄の・・いや血の匂いであった。

 

その部屋の中で血塗れに倒れている『漆黒の剣』の四人。傍らには頬から血を流すナーベがいた。ンフィーレアはどこにもいなかった。

 

「ナーベ!何があった?」

 

そう言って懐から赤いポーションを取り出した。それをナーベに手渡す。

ナーベはそれを一気に飲み干した。

 

「モモンさん!申し訳ありません!」

 

ナーベはポーションを飲んで落ち着いたのか、はっきりとした声で喋る。

 

「ンフィーレアさんが攫われてしまいました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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