「あのー!どちら様ですか?」
門の奥の櫓から一人の少女が尋ねてきた。エンリ=エモットだ。
「やぁ。エンリ・・依頼で近くまで来たんだ。悪いが村で休ませてくれないか?」
「あっ!モモンさん。分かりました!カイジャリさん、門を開けて下さい!」
「へい」特徴的な名前・・恐らくゴブリンだろう人物が返事した。
カルネ村の門が開いた。
「何故ゴブリンが?」武器に手を掛けるも村人とゴブリンとの関係を見て手を放すベロテ。
「ここの村人たちはゴブリンと共存しているのか?」武器に手を掛ける前に冷静な分析で両者の関係を見極めるモックナック。
「・・・・っ!」ゴブリンを敵として認識しているからだろう剣を抜いたイグヴァルジ。
それぞれ反応が違っていた。
(人間とゴブリンの共存がそんなに珍しいのか?)
モモンはこの時に確信する。ミスリル級で一番優秀な人物が誰なのかを・・・
(間違いなく『あの人』だろうな)
そういったことを考えていたが、このまま剣で攻撃してはいけないので冒険者たちを手で制した。
「大丈夫。ここにいるゴブリンは友好的です。武器を抜かないで下さい」
「そういうことですね」
そう言って開いた門からエンリが出てくる。
「モモンさんとナーベさんは前回お会いしましたが・・・・初めましてエンリ=エモットです。皆さんの休む場所を案内しますのでついてきて下さい」
「よろしく頼む」真っ先にそう言ったのはモモンであった。
「さて・・・1時間休憩後、トブ大森林の入り口前で集合しよう」モックナック
「分かりました」モモン
「了解」ベロテ
「分かった」イグヴァルジ
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カルネ村 空き家
モモンたちは各チームごとに空き家に入った。先に口を開いたのはナーベだった。
「どうやらカルネ村とは縁があるらしいですね」
「そうみたいだな」
モモンは全身鎧を一旦脱ごうとヘルムに手を外そうとした時であった。
コンコンとノックされる。
「どなたですか?」
ナーベがドアを開けた。そこにいたのはシニョンの髪型をしたメイドの恰好をした少女であった。
「エントマさん、どうしたんですか?」
「私の名前を憶えていてくれて感謝致しますぅ。モモンさん、ナーベさん、アインズ様がお呼びですぅ」
(案外、縁があるのはカルネ村じゃなくてアインズ殿なのかもしれないな)
「分かりました。すぐに行きます」
そう言うとモモンは兜を元に戻し、ドアの外に出た。
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カルネ村 丘の上
カルネ村を一望できる丘にアインズ・ウール・ゴウンがいた。
「やぁ。よく来てくれたな。モモン、ナーベ」
相変わらず仮面とガントレットを嵌めていた。
「お久し振り・・・ではないですね。アインズ殿」
「今回は依頼でこの村に訪れました。アインズ殿」
「二人ともそんなに固くならなくていい。楽にしてくれ」
「「分かりました」」
「エントマ、お前も案内ご苦労だったな」
「はっ。勿体なきお言葉です。では私は再び村の管理に戻ります」
「よろしく頼む」
エントマが村の中心部に歩いていく。
「さてと・・モモンとナーベ、お前たち二人に話さなければならないことがある」
「?」
「ンフィーレアのことなんだが・・・・」
「彼がどうかしたんですか?」
ンフィーレアは今はカルネ村にいるはずだ。何かあったのだろうか?
「あぁ。ンフィーレアの・・・
「えっ・・・・」
最初に訪れたのは驚きよりも衝撃であった。一瞬思考が止まる。
「ンフィーレアさんの
何とか口を開いたのはナーベだ。
「あぁ。『あらゆるマジックアイテムが使用可能』というものだ」
モモンはアインズを見る。その視線に気付いたアインズが口を開く。
「あぁ・・・。今まで使用できたマジックアイテムはほとんど使用不可になっていた」
(『ほとんど』ということは彼が努力で使用できるようになったマジックアイテムなどは今まで通り使えるのだろう。ただしその場合どれくらい使用できなくなったかは私たちには分からない。アインズ・ウール・ゴウン殿なら把握していると思うが・・)
「そんなことが・・・」
「ただの憶測でしかないが、原因はクレマンティーヌなる女が彼に装着させた
(クレマンティーヌのことをアインズ殿が知っているのはンフィーレアたちから聞いたのだろう)
「・・・アインズ殿。彼は今一体・・」モモンはンフィーレアが心配になった。
「元気ではないな・・・・だが今は彼と会わないでほしい」
「・・分かりました」
(依頼は果たせていなかったのか・・・・リイジーとの約束事を守れていなかったのか・・・)
モモンは拳を作る。
(ちくしょう・・・・やっぱり『英雄』なんかじゃない。俺は・・・)
「アインズ殿。このことを誰が知っていますか?」
尋ねたのはナーベであった。
「知っているのは私と知り合い・・その一人のエントマ。それに身内であるリイジー、エモット姉妹、村長夫妻ぐらいだな」
「そうですか・・」
(なら他に漏れる心配は無い?)
王国に知られてしまった場合、彼が不当な扱いを受けないか心配になったナーベであった。
(だけど最悪なのは・・・)
これはナーベで理解できたことだ。自分より遥か格上であろうアインズなら気付いているはずだ。
「アインズ殿。お尋ねしたいのですが」
(間違いであってほしい・・・)
「どうした?」
「彼の持つ
その発言に衝撃を受けたのはモモンだった。
「!!?っ・・そんなこと可能なのですか?アインズ殿」
『あらゆるマジックアイテムが使用可能』・・・・
そんなものが何者かに奪われたとしたら、それは非常に危険である。
ンフィーレア=バレアレという悪意を持たない少年が所有していたからこそ危険は無かったといえる。
だがそれを誰かが『強奪』したとしたら『その誰か』は間違いなく『悪意』の持ち主。
彼自身が自我を奪われ利用される形でエ・ランテルという街が危険に晒されたのだ。
もし『強奪』した『その誰か』が悪用した場合、街一つでは済まないかもしれない。
今度は国一つが危険に晒されるかもしれない。
後で分かることだが、実際はもっと大きな危険だったのだが。
「私は知らない・・・だがスレイン法国の者なら何か手段を知っているかもしれないな」
「スレイン法国が?」
「あくまで可能性だ・・・真実は知っている者にしか分からない」
「・・・・」
(エ・ランテルに帰ったらクレマンティーヌに面会してみるか・・何か知っているかもしれない)
「以上だ」
そう言ってアインズはその場を後にしようとする。
「・・・・」
「そうだ・・忘れる所だった。二人にはもう一つ言っておかなければならない」
「まだ何かあるんですか?」
(これ以上、一体何があるというんだ・・)
「エントマ曰く、トブの大森林の中で危険な香りや気配がするらしい。だから注意して行った方がいい」
モモンとナーベはアインズ・ウール・ゴウンに礼を言うとその場を後にした。