漆黒の英雄譚   作:四季 春夏

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決戦後

真っ暗の世界で自分の存在だけがはっきりと認識できた。

 

 

 

----モモン-------------

 

----ウルベル?---------

 

 

 

 

 

----モモン-------------

 

----チーノ?-----------

 

 

 

 

----モモン------------

 

----チャガ?----------

 

 

 

 

----モモン------------

 

----アケミラ?--------

 

 

 

 

ギガントバジリスクがどこからか現れる。

 

それに向かって四人が構える。

 

 

-----駄目だ!みんな行っちゃ駄目だ!殺されるぞ!---------

 

-----みんな!俺を置いて行かないでくれ!!!!!---------

 

 

 

一人、また一人と殺されていく。モモンも剣を振るうが硬い鱗により折れてしまった。身体をくねらせた衝撃でモモンが吹き飛ぶ。モモンは立ち上がりギガントバジリスクを凝視する。最後の一人であるモモンをギガントバジリスクは凝視する。横たわる四人の無残な死体を見て拳を握る。

 

 

 

-----俺を一人にしないでくれ!!!!!!-----------------

 

-----もう一人は嫌なんだ!!-----------------------------

 

-----俺のせいだ!---------------------------------------

 

-----俺が判断を間違えたから!!-------------------------

 

-----俺がみんなを殺したんだ!!!-----------------------

 

-----早く俺を殺してくれ!!!---------------------------

 

-----早くみんなに会わせてくれ!!-----------------------

 

 

だがギガントバジリスクは興味をなくしたのかモモンに背を向けて去っていく。

 

 

 

-----何で・・・誰も俺を殺してくれないんだ-----------

 

-----誰か俺を・・・みんなを殺した俺を殺してくれ-----

 

 

母さん?

 

 

-----あなたは生きて旅に出なさい--------

 

-----分かったよ。だからポーションを!--

 

-----ありがとう。モモン----------------

 

 

全身にひどい傷を負いながらも自分にポーションを飲ませてくれた母さん。

 

-----どうして俺から家族を・・『みんな』を奪うんだ!!?-------

 

地面に膝をつける。何となく右の手の平を眺める。そこには何も無かった。

 

誰かの手を掴むことも、剣を振るい続けることも出来なかった。

 

空っぽな手。

 

そんな手を横たわる彼らに向かって伸ばす。

 

伸ばした手がガラスの様に砕け散った。

 

 

-----ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!-----

 

-----こんな『世界』なんて壊--------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----大丈夫。君のせいじゃない------------

 

壊れていく手を掴んでくれた人がいた。壊れた手を治してくれた人がいた。

 

 

 

 

 

 

----君のせいじゃない-------------

 

----でも俺はみんなを死なせてしまった。俺がみんなを殺したんだ!!-------

 

----君のせいじゃない。-------------

 

----でも!!俺のせいで!!--------

 

----君が何度も自分を責めようと私は何度も言うよ。君のせいじゃない---------

 

----何でこんな俺を・・・------------

 

----クワイエッセやスレイン法国でもない。君が最も憎んでいるのは________だろう----

 

----うっ・・・------

 

 

----君が剣を二本持つのは『誰かを守りたい』からだろう?盾を持たないのは・・手を空けないのは最後の一瞬まで自分を犠牲にしてでも誰かを守りたいんだろう------

 

----うっ・・・うっ----

 

----ほら。これで涙を拭くといい。気が済むまで泣くといい-------

 

----・・・どうして貴方は俺にそこまで優しくしてくれるんだ?--------

 

----それはね・・・・・『____________________』だから----------

 

 

 

その言葉で俺は・・・・

 

 

 

 

 

_________________________

 

 

 

 

 

 

「・・・・・っ!ここは!?」

 

 

「カルネ村です。身体の方は大丈夫ですか?」椅子に座って問いかけるのはナーベであった。

 

 

 

モモンは自分の状況を理解するために周囲を見渡した。モモンはベッドの上で包帯を巻かれていた自分の身体を見る。

 

(あれは夢か・・・それにしても昔のことを随分と鮮明に見たことだ)

 

 

「あぁ。大丈夫だ。傷が治っているみたいだが・・」

 

「えぇ。アインズ殿がポーションを分けて下さりました」

 

(あの方にはいつか恩返ししたいな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はどれくらい寝ていたんだ?」

 

「半日・・・といった所ですね」

 

「ホニョペニョコは倒したんだよな?」

 

最後の方は意識が朦朧としてしまったせいで奴の最期が幻覚だったんじゃないかと疑問に思ったのだ。

 

 

 

 

 

「えぇ。おかげで私やハムスケも無事ですよ」

 

「ハムスケは?」モモンはすぐに尋ねたが内心でホッとした。

 

 

 

 

 

 

「外です。窓からモモンさんを心配して覗いていますよ」そう言って指さされた場所を見ると涙目になっているハムスケがいた。それを見たナーベは窓を開けた。

 

 

 

「すまなかったな。ハムスケ」

 

「いや何のこれしき!殿やナーベ殿に比べたらこの程度などでも足りないでござる」

 

「いや本当に助かった」そう言ってモモンはハムスケの頭を撫でた。

 

「殿ぉぉぉぉっ!」ハムスケは大きな瞳から涙を零す。

 

 

・・・・

 

・・・・

 

・・・・

 

 

数十秒間ハムスケの頭を撫で続けた結果、泣き疲れたのか今度はハムスケが眠ってしまった。

 

「殿・・・むにゃむにゃ・・」

 

「寝かせてやろう」

 

「そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

「・・・・?」

 

「ナーベ」

 

「どうしましたか?」

 

「すまなかった」

 

「・・・モモンさんが謝ることなどありません」

 

「だが俺の戦い方のせいでナーベたちは・・」

 

「モモンさんは最善を尽くしてくれました。足手まといになったのは私たちです」

 

「ナーベ!!?」

 

「モモンさんがいなければ私たちは間違いなく死んでいました。でもモモンさんは私たちを助けてくれました」

 

「しかし・・・」

 

「私たちが襲われるかもしれないと思い、武技を使い過ぎたのでしょう?」

 

「確かにあの時は慌てていた。だが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しまぁすぅ。ナーベさんっ」その時ドアをノックする存在がいた。この声はエントマである。

 

「エントマさん?」

 

「はいぃ。モモンさんは目覚められましたかぁ?」

 

「はい。もう起きていますよ。どうかしたんですか?」

 

「アインズ様がぁ、モモンさんたちにぃお会いしたいとのことですぅ」

 

「分かりました、すぐに行きます」

 

モモンは返事をすると全身鎧を着込んでいく。

 

_______________________

 

 

村が一望できる場所にアインズ・ウール・ゴウンはいた。エントマに連れられてモモンとナーベは案内される。アインズはそれに気づきこちらに視線を向けた。

 

「それでは私はこれで失礼します」

 

「案内ご苦労、エントマ。下がっていてくれ」

 

「はっ」そう短いがハッキリと返事をしてエントマはカルネ村の巡回に戻った。

 

 

 

 

 

 

「すまないな。疲れている所悪いが幾つか大事な話がある。聞いてくれるか」

 

「えぇ。勿論です」

 

モモンの返事にナーベも頷く、それを見たアインズは語りだした。

 

 

 

 

「まず初めにあの吸血鬼は何者かに召喚された類のモンスターだ」

 

「何故それをアインズ殿が知っているのですか?」アインズを疑った訳ではないがモモンは疑問に思う。『十戒』を知ってたり『誰かが困っていたら助けるのが当たり前』の発言など疑問に感じる点が多い。

 

 

 

 

「私の部下に様子を見させていたんだが、その時気になる発言があったらしくてな」

 

「もしかして『ラスト様』という発言ですか?」

 

「あぁ。そうだ。それと消えていく様子が召喚主に従うモンスターが消えていく様と同じなのでな」

 

「それで召喚されたモンスターだと?」

 

「間違いない」

 

「もしかして私とホニョペニョコとの戦闘の最後にホニョペニョコに何かしたのはアインズ殿かアインズ殿の部下の方ですか?」

 

 

 

 

明らかにホニョペニョコは何かに注意を逸らしていた。もしあの時に攻撃されていたらモモンは今こうして立ってはいないかもしれない。

 

 

 

「あぁ。そうだ。私の部下にアウラという者がいる。君も会っただろう?」

 

モモンは『薬草採集』の依頼を思い出す。あの時森に入ることを注意してくれた少女だろう。

 

 

 

「えぇ。会いましたよ」

 

(確かに彼女ならホニョペニョコの注意を逸らせるだけのことは出来るだろう)

 

 

 

 

「ここまでで何か質問は?」

 

「いえ特には・・」

 

 

 

 

「それではモモンとナーベ、君たちがずっと疑問に思っているであろうことに応えよう。私と・・・ミータッチの関係だ」

 

 

「!!!っ・・」

 

「私と彼は『友人』だ」

 

「!!っ・・」

 

モモンが何かを言おうとする前にナーベが口を開いた。

 

 

 

 

「父上は!!生きているのですか!!?」

 

それはずっとモモンも気になっていたことだ。ミータッチが誰かに負ける所は想像できない。

 

 

 

「彼は・・・ミータッチは・・・恐らく・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ・・・」

 

 

「彼とは定期的に連絡を取り合っていたのだがそれが未だに無い」

 

 

「しかしそれでは生死は分からないんじゃ・・」

 

 

「彼は私にこれらを預かって欲しいと頼んだのだ」そう言ってアインズは空間から何かを取り出した。

 

 

「それらは!!?」モモンの目の前にはあの日ミータッチが装備していた剣や鎧などがあった。そしてそれが意味する所は・・・

 

 

「あぁ。彼の持つ『純銀』の装備だ」

 

 

「そんな・・・・」

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

「そして彼が私に託したものはもう一つある。コレだ」そう言ってアインズが取り出したのは透明な石板の様なもの。モモンとナーベには瞬時にそれが何か理解できた。

 

 

 

 

「エメラルドタブレット!!」

 

 

 

「モモン、ミータッチから話は聞いている。コレに触れてくれ」

 

「・・・・分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

何やら話が飲みこめないがモモンはエメラルドタブレットを手に持つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、最初の時と同じく幻覚が現れる。ただし今回ははっきりと見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異様な光景だった。

 

どこか薄暗い空間、まるで地下室だ。

 

そこで首から六大神の信仰者を意味する首飾りをかけた男たち。

 

横たわる女たち。その目には生気が無かった。

 

そこに『死神』の如く立つアンデッド。その手には鎌が握られていた。

 

モモンはそのアンデッドに見覚えがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----これが私たちが・・友人たちが愛した人間の正体か!!-------------

 

そう言ってアンデッドが怒りを込めて口を開いた。

 

 

 

--------どうかお怒りをお鎮め下され。これも国の為です!スルシャーナ様!!--------

 

そう言って何故か全裸の男はひれ伏し命乞いをしているようだった。

 

 

 

----ふざけるなぁぁぁっ!!このクズがぁぁぁっ!!------------

 

激怒して声を荒げるスルシャーナの目線の先には生気の無い目をした女が複数人いた。何故か全裸である。

 

 

 

--------人間なんて!!!こんな国なんて!!滅びてしまえ!!!---------

 

そう言ってスルシャーナは鎌を大きく振り上げて・・・

 

 

 

 

 

 

そこでモモンの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 


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