お待たせしました!
質はアレですが何とか投稿できました。
三人のワーカーたちが固まり、話していた。
「老公、彼はどうだった?」
そう問いかけたのは『ヘビーマッシャー』のグリンガムであった。
「ほっほっほ。ありゃ強いなんてもんしゃないわい」
老公と呼ばれたワーカー…パルパトラはそう答えた。
「そこまでか……」
思わずそう呟いたのは『フォーサイト』のヘッケランだ。
何故こんな話になったか?
それはここにはいない『天武』のエルヤーの一言が切っ掛けであった。
"目的地まで"の護衛として雇われた冒険者。その冒険者たちを見て……
「冒険者ごときで大丈夫なのですか?…荷物運びとしては合格なのは一目瞭然なのですがね。危険を払いのけてくれるかが不安で……全然眠れませんでしたよ」
傲慢……そう言われても仕方無い言動。しかしエルヤーの実力はかの王国戦士長ガゼフにも匹敵すると噂される程であり、他のワーカーたちは誰もが口を閉じた。だが内心ではこう思っていたに違いない。
(勘弁しろよ。仲良くしろとは言わないが、せめて険悪にだけはならないようにはしてくれよ。同じワーカーならまだしも相手は冒険者たちだぞ。仕事だから多少は我慢してくれるだろうが。実力があるからって見下し過ぎだろ。これだからスレイン法国の者は……)
そこで現れた冒険者の一人を見て____事前に知っていた『フォーサイト』でさえ____目を見開いた。そこにはかの生きた伝説……"漆黒の英雄"と呼ばれた『漆黒』のモモンがいたからだ。
「そうですか……ならば実力をお見せしましょうか?」
「!っ…アレは」
「"漆黒の英雄"!ギガントバジリスクを討伐したとかいう!」
「難度二百以上の大悪魔"ヤルダバオト"を撃退したとか」
「難度二百!?流石にそれは……」
モモンの登場にワーカーたちがざわめきだす。そんな中エルヤーだけは不満気にモモンを睨みつける。
「誰か手合わせでもしましょう。そうすれば不満もなくなるでしょう」
そんな中パルパトラはモモンに質問しようと前にで出る。しかしそれをヘッケランに手で制されてしまった。少しの間沈黙が流れる。誰も名乗りを上げないので
「そうですね。では遠慮なく……」
沈黙を破ったのはエルヤーであり、そう言うと刀を抜いた。
「……構わないが手加減できる自信は無いですよ?」
対してモモンは身近にいた冒険者から借りた何の魔力も持たない杖を手にした。
『漆黒』のモモンと『天武』エルヤー=ウズルス。
勝負の結果は明白であった。
その結果、エルヤーは自身のテントに引きこもることになったのだ。微かに
ゆえにこの場にはエルヤーはいない。
この場にいるのは三人。
『
『ヘビーマッシャー』のグリンガム。
そして『フォーサイト』のヘッケラン。
彼ら三人はエルヤーに隠れて話をしていた。
「モモン殿は強いな。あの感じだと王国戦士長よりは強いんじゃないのか」
「ふむ……儂もそう思う。恐らく比べることすら無意味しゃろ」
グリンガムとパルパトラが話す。心なしか目標の建造物の前なのに二人の口調が明るい。
「あぁ。同じ戦士として感動した。あそこまで人間は強くなれるもんなんだな。それでもって人格面にも問題無しと来た。大したもんだ」
「あぁ。全くだ」
「それで老公、ヘッケラン……話を変えるが……」
グリンガムはそこで言葉を一度区切った。
「『大遺跡』探索の全体の指揮権は誰が持つ?」
グリンガムの話はずっと意図的に避けていた話題であった。この場にエルヤーがいないのが救い、いや…この場にエルヤーがいないからこその話題なのだろう。それをヘッケランは瞬時に理解した。
「………その役は必要ないんじゃないのか?」
「いや遅かれ早かれ必ず必要になる。問題を先延ばしするだけだ。老公はどう考える?」
「儂はいてもいなくてもいいそ。ただその役をこなせる者がいるのかは疑問しゃか」
その言葉を聞いてヘッケランは考え込む素振りを見せる。自分が思い描いていた会話の流れになったからだ。自身の考えを提案するにはここしかないと仕掛けた。
「さっき話した全体の指揮権だが、思い切ってモモンさんにやってもらうのはどうだ?」
ヘッケランはそう言うとグリンガムとパルパトラの顔色を伺う。両者とも何やら考え事をしているようだ。
(こういう時は余計な事を言わずに相手の答えを待った方がやりやすいからな……)
「人柄、実力ともに申し分無いだろう。しかしだ、ヘッケラン……結論を出す前に汝に一つ聞きたい」
「どうした?」
「護衛を務める彼に本気で指揮を任せるつもりか?」
グリンガムの疑問は当然だろう。ここにいる者たちは各自チームを率いているリーダーだ。メンバーの命を預かる以上、それらの責任をリーダーである自分たち以外に任せるのかと問うているのだ。
「いや実は本当の狙いはそこじゃない」
「どういうことだ?」
「これの狙いは『天武』、いや正確にはエルヤーのみを黙らせるだけの理由が欲しい。考えてもみてくれ。未知の遺跡、四つのワーカーチーム、そこにあの仲間のエルフを虐待する最低野郎のエルヤーがいるんだ。嫌な予感しかしないだろう?」
「……我らはドラゴンの威を借りるゴブリンになる。そういうことか」
グリンガムも俺の言いたいことは分かってくれたみたいだ。エルヤーは身勝手な奴だ。だから奴が独断に走ってチームに危険が及ぶ可能性は少しでも減らしたい。そうでなくても剣の腕だけは王国戦士長に匹敵すると言われているのだ。そんな奴が暴走したら確実に大きな被害が出る。まぁモモンさんが護衛として一緒にいてくれるならその可能性は限りなく低くなるはず。まぁ本当の狙いはそこじゃないんだが……今はそれを言うべきではない。二人は知らないのだから。
「あぁ。正直言うとプライドという意味ではありえない選択肢だ。でも俺たちはワーカー、どんな報酬も生きてこそだろ。泥に塗れた金でも同じ金だ。違うか?グリンガム」
「名ではなく実を取る……そういうことか。汝の考えは分かった。我はそれでいい。老公はどうする?」
「ふむ……儂も一つ聞きたい。お主何故モモン殿を指揮官にしたいなどと思った?」
(やはり老公は聞いてきたか……予想通りだな)
ヘッケランは一呼吸すると事前に考えていた内容を口にした。
「……また見てみたいんだよ。アダマンタイト級の冒険者の戦いってやつを。戦士としての彼を」
「ふっ……そうかそうか。なるほと……実は儂もしゃ」
そう言うとパルパトラは笑った。先程の戦いを経て何か思う所があったのだろう。その顔は若々しい印象を受けた。
「決まりだな。早速モモン殿に提案してみよう」
◇◇◇◇
◇◇◇◇
「私が君たちの指揮官に?私は護衛だぞ?」
モモンは自分のテントに訪れた三人に突然そう言われ驚いた。護衛の依頼のはずが何故指揮官になるになってしまうのか。
「えぇ。俺たちはこれから未知の遺跡を探索する。その場所での指揮官をモモン殿にお願いしたい」
そう言って先頭に立ち話すのはヘッケランであった。
「……全ワーカーチームの総意と考えていいのか?」
「はい」
(ここにいないということは……どう考えても『天武』とやらの同意を得ていないだろうが………。いやこの場合『天武』の彼の暴走を抑えさせるために"形だけの指揮官"になれということか。彼の言動はあまりに”あの国”を思い出させるからな……もしや"あの国"の出身者なのか?彼の暴走する可能性を疑うも当然か。ならばここは引き受けた方が彼らも助かるか…)
モモンは彼らに分からないように兜の中で一度息を大きく吸った。
「……分かった。力になれるかは分からないが……全体の指揮を取ろう。ただし私が指揮をするのはリーダーに対してだけだ。各チームのメンバーには今まで通りリーダーが指揮してくれ。これでいいな?。(これでいいだろうか。これなら各チームの機動性を失うことなく、『天武』を牽制できるだろう)」
ヘッケランたちが頷いているのを見る限りどうやら正解だったらしい。
「あぁ。感謝する。それでどう探索する方針ですか?」
そのヘッケランの言葉を聞いてモモンは理解した。ヘッケランのもう一つの目的を。そして密かに感謝した。
(彼は私を自由に探索させるために指揮官にさせたかったのか……感謝する)
「出発は十五分後、各自装備などの点検を。そして全チーム合同で『大遺跡』を探索する。時間は掛かるだろうが少しずつ探索をしていこう」
「モモン殿、感謝します」
そうヘッケランが言うと他の二人も礼を言ってテントを後にした。
◇◇◇◇
◇◇◇◇
モモンたち一行は『大遺跡』の前に立っていた。それは巨大な三角形の建造物。砂や土で固められたであろうその建造物。そしてその周囲にはおびただしい数の墓が建てられており、周囲一帯は不自然な程平野が広がっていた。事前に確認した特徴と一致する。間違いない。アレが『大遺跡』だ。
モモンは首に掛かっている
(本当にここにいるのか?)
(納得できるわけないだろう。いきなりいなくなって……せめてお前の口から理由を聞くまでは)
モモンはそのプレートを鎧の中に戻す。
(だから…無事でいてくれ。……………ナーベ!)
背中の大剣を抜くと『大遺跡』に大剣を向けて言い放つ。それと同時に武技<心頭滅却>を発動。周囲を感知し始めておく。
「『大遺跡』探索開始だ」
そう言うとモモンたちは『大遺跡』に踏み込んだ。
一言で言えば士気は微妙だった。最初は良かったのだが……。
それぞれのワーカーたちの胸には未知の遺跡への興奮といつモンスターや罠に襲われるかの緊張感があった。ある者はいつでも武器を振るえるように両手で持ち、ある者はいつでも魔法を詠唱できるように額から出る汗すら拭かなかった。そしてある者は不機嫌そうに刀を鞘から出し入れしてキンキンと金属音を鳴らす。
『大遺跡』に入った時、そこには巨大な
興をそがれた彼らの士気が低くなるのも当然だろう。
「これはどういうことだ?見つけたのは床に沈んだ
ワーカーの一人がそんなことを呟いた。
(確かに……。あの跡は謎だ。そもそも何故地下へと下りる階段だけがあった?それも他に何も置かずに……これではまるで地下へと誘導しているようじゃないか)
モモンはそう考えた。しかし現状モンスターもいなければ罠の一つすら発見できていない。
(この流れそのものが罠だとしたら警戒が必要だろう。しかしそれだと何故ここまで大掛かりな施設を建造する必要があった?何も無い空間を悪戯に作ったとでも……あの跡の意味が分かれば何か解るかもしれないが……)
『大遺跡』、墓場があったことからアンデッドあたりが出現すると考えていたのだがどうやらそうではなかったらしい。
(もしやあの跡はアンデッドの足跡か?だとしたらそれなりのサイズのやつがそれなりにいるか……もしくは巨大なアンデッドが何体かいるか……その辺りが妥当か?)
今は地下二階。そこには先程とは異なり戦闘の跡があった。ただし既に誰かが勝利したであろう跡だ。
(いや……壁や床が所々焼けている。ナーベが<
床にはスケルトンらしきモンスターが大量に倒れている。その眼窩には本来あるはずの生者への憎しみの炎が宿っていなかった。
(確かにナーベならばこの程度なら通り抜けることなど造作も無いだろう。しかし先程見たモンスターの中に____知識でしか知らないが____
そしてやはりというか明らかに見つけて下さいと言わんばかりに階段があった。
(ここは一体……もしやアンデッドが生まれる遺跡なのか?それとも……)
____誰かが意図してアンデッドを生み出したのか……。
「階段だ!下に降りられるぞ」
ヘッケランのその言葉にモモンはハッとした。他の者たちも注意をそちらに向けていた。
(先程までは武技に引っかかるものは何も無かった。だが気を引き締めないとな……)
「どうする?」
ヘッケランのその言葉に他のワーカーチームのリーダーが話し出す。
「ここには何も無いんしゃ。行くしかあるまい」
「進むべきだ。この空間が何も無いのは気になるが。何の収穫も得られぬままなど我が許せん」
「私も進むべきかと思います。何より進まないとここまで来た意味が無いですから」
「モモンさん!」
「えぇ。分かりました」
一同が下りるとそこは再び真っ暗な空間であった。
「誰か明かりを!」
松明、魔法などにより明かりを点けると部屋全体が照らされる。今まで同じように砂岩で出来た空間が広がる。だが戦闘の跡も無く、さらに空間の奥に一つの大きな石の扉があり、その手前に椅子が一つだけあった。
「こんな場所に?……この【大遺跡】の関係者か?」
そしてその上に一人の女性が座っていた。まるで奥に続くであろう扉を守る様にして座っている。
その服装は舞踏会用ドレスで、スカート部分は大きく膨らんでおり存在感を出している。ひらひらしたフリルと可愛らしいリボンのついたボレロガーディガンを羽織り、レース付きのフィンガーレスグローブを纏っている。肌はほとんど出ていないが顔や手から見えるのは白蝋じみた白さであった。長い銀髪を頭部の片側に集めており、その髪はとても手入れされているようであった。だがそんな存在が何故か瞳も口も閉ざされており、その様子から一見すると生きているかすら分からなかった。
モモンは武技を発動し、周囲を感知する。どうやらこの階層にはあの椅子に座る女以外はいなさそうだ。
(だが妙だな……。あの女。妙な気配を感じ取ったな。死んでいるのか?だが何というか……どこかでこの気配の感じを……)
モモンは少し考えるとその理由が分かった。
(そうだ!アインズ殿だ!だが何故アインズ殿を?………まさかあの女の正体は!?)
モモンが考え事をしている間、ワーカーたちが散っていた。だがその中で明らかに椅子に座る女に歩み寄る者がいた。エルヤーだ。
「死んでいるのですか?(随分と胸が大きいですねぇ)」
そう言ってエルヤーは女に近づき胸に手を伸ばす。
「よせ!その女は
モモンが最後まで言い切るまでに何者かがエルヤーの腕を掴み引っ張った。モモンはそれが誰なのか捉えていた。
エルヤーは自身の腕を掴んだ正体を探ろうと掴まれた腕を見た。そこには椅子に座っていたはずの女の白い手があった。
「!?生きてるのですか…」
驚愕するエルヤー。女の腕力に男であり実力者であったはずのエルヤーの腕がビクともしない。
「くっ!」
そんな状況を打破しようと刀をすぐに抜こうとした時であった。耳元から今まで聞いたことの無い声が囁かれた。
「死体漁りとは感心しないでありんす」
エルヤーはギョッとして女の顔を見た。女が目を見開いていた。その真っ赤な瞳に見られた瞬間、エルヤーの身体は動く意思すら奪われた。まるでドラゴンに睨まれたゴブリンだ。
「さて……いつまでそこにいるでありんすか?さっさとどいてくんなまし」
女がそう言うとエルヤーを投げ飛ばす。ワーカーの方へと投げ飛ばされたエルヤーを---一応今回合同の依頼だしということで---とりあえず抱き止めようとするもあまりの衝撃にそのワーカーごと吹き飛び壁に衝突させられた。
「ビンゴ!でありんすね」
エルヤーを投げ飛ばした際も武技を使い続けていたモモンだけは女の実力に底知れないものがあると判断した。
(この女強い!仮にも王国戦士長と剣だけは同じくらいのエルヤーを投げ飛ばした時、微塵も力を引き出していなかった)
モモンは目の前の存在を最低でも"あのセバス"と同等の実力者だと考えた。
「ぬし、名前は?」
「モモンだ」
女は明らかにモモンに---優雅に---手の平を向けて名前を尋ねた。
「そうか……ぬしが…‥あの。ならばこちらも名乗らないと失礼でありんしたね」
そう言うと女はスカートの両端を持ちお辞儀をする。所謂カーテシーだ。
「わたしはシャルティア・ブラッドフォールン。【ナザリック地下大墳墓】の第一・第二・第三階層の【守護者】でありんす」
やっと書けました!
ちなみに今はそれなりにモチベーション上がっているので勢い重視で書いていく所存です。
次回も割と早く投稿する予定です。多分早くて今週中です。