原作未読なので、文体、口調が曖昧です。
暖かい目でお読みください。
「君はすごく優しいね」
私の物語に彼は必要不可欠になってしまった。でも、彼の物語に私は必要なのかな?
彼は、彼の物語の中で誰をメインヒロインに選ぶのだろう。
美人の雪乃ちゃん?それとも、かわいいガハマちゃん?それとも、あのあざとい後輩のいろはちゃん?
現時点、彼の物語の中で、私は同じ部活の友達の姉というサブキャラでしかない。私がメインヒロインになることなんてないのだろう。
あの彼の事だから、どんなタイプが好きなの?と直接聞いても妹の小町ちゃんと大天使の戸塚くんとか言うのだろう。
ふむ…………いくら私とはいえ、年齢と性別を変えるのは少し厳しいな。
毎日ぐるぐると色々考えてしまっている今日この頃。
あーあ、どこかに比企谷くんでも落ちてないかなー。
街を歩きながらそんなことを考えていると、猫背で無造作な髪型にちょこんとアホ毛の立った制服姿の彼の背中を見つけた。流石私、神に愛されてる。
これは私がメインヒロインになる大チャンス。簡単じゃないけど、今日は少し強引に誘ってみようかな。
「ひゃっはろー、比企谷くん!」
彼はビクッと肩を震わせると彼の普段の濁った目を更に濁らせながら、ゆっくりこちらに振り向く。
「……げ」
「げ、とはなんだね、全くひどいなぁ比企谷くんは。およよ」
「いや、およよって……てかなんか用すか、用ないなら帰っていいっすか、てか帰りますそれではさようなら」
そう言って彼はまた帰り道へ向けて歩きだそうとする。
全く、つれないなぁ。でも、相変わらずの反応がなんだか少し嬉しくって、にやけちゃう。
「あれぇー?お姉さんこの後暇だなぁ、誰か近くに一緒に夜ご飯食べながらお話でもしてくれる比企谷くんは居ないかなぁ」
彼が振り向く。更に目が濁ってる。
「いや、比企谷くんって言っちゃってるし……行きませんよ。家で愛しの小町が帰りを待ってるので。」
「えぇー、じゃあ、私から小町ちゃんに連絡するからね」
そう言って私はスマートフォンを取り出して小町ちゃんに電話をかける。
「いや、なんで小町の連絡先知ってるんすか……」
君が思ってるより私の交友関係は広いのだよ。
「あ、もしもし小町ちゃん?ひゃっはろー!」
『ひゃっはろーです陽乃さん!今日はどうしたんですか?』
「さっき八幡くんと会って、夜ご飯2人で食べたいんだけど、今から借りてもいい?」
『はちっ…………はい!!是非!!夜ご飯楽しんでください!!あんなごみいちゃんですが、末永くよろしくお願いします!』
「ごめんねー!ありがとー!小町ちゃんも今度一緒に遊ぼうねー!」
『はい!!兄妹2人共々これからよろしくお願いします!!』
「はーい!じゃーね!」
『はい!また今度です!』
電話を切って彼の方を向いて一言。
「じゃあ、出発しんこーう!」
「まてまて、明らかに誤解を産む電話でしたよね!?八幡くんとか言われたの小学校低学年以来だし、勘違いして告白して振られるまである。いや、振られちゃうのかよ」
「んー?お姉さん的には勘違いしてくれてもいいんだけどなー?それとも八幡くんって呼んだ方がいい?」
私がそう言うと彼は少し頬を赤くしてそっぽを向いてしまう。
「いきなり何言ってるんすか、てか、雪ノ下さんのことだから、俺じゃなくても大学の友達とか話せる人とかたくさん居るでしょ」
「私は、君と一緒がいいの。あと、私のことは陽乃って読んで欲しいな」
「マジで勘違いするのでやめてもらえませんかね、ほら行くなら早く行きますよ雪ノ下さn」
「陽乃」
「……」
「陽乃」
「…………はいはい陽乃さん、どこか行くんでしょう、早く行きますよ、早く帰りたいので」
………やば。頬の緩みが抑えきれない。このままじゃダメだ、いつもの私戻ってこい!…………よし、復帰完了。
「陽乃って呼び捨てがいいんだけどなぁー、まあ、今日のところはそれでよしとしよう!ところで、比企谷くんは夜ご飯どこにいきたい?」
「……サイゼ」
「………あははっ!この場面でサイゼ選ぶなんてやっぱり君は面白いね!それじゃ、サイゼにレッツゴー!」
サイゼに歩き始める私と比企谷くん。彼は私のちょうど2歩後ろをポケットに手を入れながら着いてくる。
「比企谷くん、なんで私の後ろを歩くの?」
「いやむしろなんで隣を歩く必要があるんですか、雪ノs……陽乃さんも俺と歩いてて周りの人に見られて勘違いとかされたら色々困るでしょ」
ちゃんと陽乃さんって呼んでくれる。すごく嬉しい。
そしてすごく優しい。
「勘違いって何の勘違いかなー??私は何も気にしないよー。そうだ!せっかくだから、手、繋いで歩いてみる……?」
「いや、手繋ぐってなんすか、てか、陽乃さんが気にしなくても俺が気にするんでs」
「えいっ!」
素早く比企谷くんの手を掴む。いわゆる恋人繋ってやつだ。ふふふ、比企谷くん唖然としてる。
「よーし、これでおっけー、再度、出発!」
ちょっと強引に引っ張ると、そっぽ向きながらもちゃんと着いてきてくれる。
やっぱり君は優しいね。
そう思うとついつい頬が緩んでしまう。私の強化外骨格なんてこんなものだよ比企谷くん。
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「ミラノ風ドリアとドリンクバーで」
彼は席につくなりメニューも見ずに店員さんにそう言った。
「じゃあ私もそれで」
私はメニューも見ずに彼に続いてそう言った。
「本当に同じので良かったんですか?」
彼は律儀に確認してくれる。
「いいんだよ、君が食べたいものなら私も食べたいから」
「そ、そうっすか」
彼はそっぽを向いてるからバレなかったけど、言った私も少し照れてしまった。
しばらくするとミラノ風ドリア2つが席に届いた。そのときふと彼の手元を見ると茶色の飲み物と残骸と化した大量のシロップがあった。
「そんなシロップ沢山入れたらMAXコーヒーより甘いでしょ、そんなに甘いもの飲んでると体に悪いよ!」
「いいんですよ、今日は特別甘くても」
でたいつものセリフ。と思ったけど今日はいつものセリフとちょっと違った。
「ところで、最近雪乃ちゃんとどう?もしかしてもう付き合ったりしてる?」
「いやなんでそうなるんですか、あいつはただの部活仲間ですよ」
「そうなの?じゃあ、ガハマちゃんとかいろはちゃんとかの方が好きなのかな」
「いやあいつらもただのクラスメイトとただの後輩ですよ。雪ノ下と同じでちょっと他人より喋る回数が多いぐらいです」
「ちょっとって、、同じ部活なのに他人よりちょっとしか変わらないんだ……」
「俺はぼっちだから、基本的に自分から話しかけないので、あっちから話しかけらない限り全然話さないですね」
相変わらず、ぼっちじゃないのにぼっちを自称してるみたい。
「あらら、じゃあさ、例えばその3人の中で付き合うとしたら誰がいいの?」
「特に誰とかは別に……」
「じゃあ、お姉さんとかどうかな?」
「いや、遠慮しときます」
「ありゃ、お姉さん振られちゃった、およよ」
ちょっと悲しい。残念ながらメインヒロインにはなれないみたい。
でも今度また頑張って誘ってみよう。
「いや別に振っては無いですよ、そんな、陽乃さんを振るとか烏滸がましいというか、そんなの周りに言いふらされたら学校の居場所マジで無くなりますね、あ、元から無かったわ…………てか、そんな話する為に夜ご飯食べにきたんですか」
「うーん、まあそうとも言えるかな、でもいいや、久しぶりに比企谷くんと一緒にたくさん話せたし、楽しかった!そろそろ帰ろうかな」
「そっすか、すみません、出る前にちょっとトイレ行ってきます」
そういってサラッと伝票を手に持っていく比企谷くん。
こういうところ、優しい。
「今日は私が誘ったし私がおごるから、伝票置いてていいよ」
「いや、いいですよ、また今度別のご飯奢ってください」
「え?次も一緒にご飯食べてくれるの?」
サラッと今度とか言う辺り、あざとい。
「あっ、いや、まあ、機会があれば前向きに善処します」
「あはは、なにそれ!次、楽しみにしてるね!」
「あー、まあ、はい。」
あんまり積極的じゃ無さそうだけど、次の約束が出来た。ふふふ、これで楽しみがひとつ増えた。いつになるかな〜。
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会計を済ませ店を出る。もうすぐお別れの時間だなぁ。
「今日はありがとう比企谷くん!」
「あーまあどうせ暇でしたしね、家まで送りましょうか?てか、送ります。送らないと怒られるので。小町に」
「いやいや、近くに迎え呼んであるから、大丈夫だよ!じゃあね!」
「そうっすか、うっす」
「あ、陽乃さん」
お別れかと思ったら呼び止めてくれた。少しでも長く話せることが嬉しい。
「ん?何?」
「えーと、…………まあ、あの3人よりは、陽乃さんの方が一緒にいて楽しいですよ。それじゃあ、また」
やはり彼の優しさとあざとさは私に直撃する。