アニメ星のカービィ   作:屋根裏部屋の鼠

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アニメ本編の時代より前のちょっとした昔話。
ストーリー本編は次話からとなります。



物語の幕が上がるその前に

 遥か昔のこと。

 

 

 何処とも知れぬ宇宙の中で、ある男が会社を立ち上げだ。

 男の名は『ナイトメア』

 夢を操る悪魔であり、夢でのみ生きられる存在であり、夢の中でのみ死ぬことを許された概念たった。

 

 創られた会社の名は『ホーリーナイトメア社』

 株式会社としての体裁を持つその会社は、ナイトメアのある思惑を達成する為だけに創られたと言っても過言ではなかった。

 

 

 それは────全ての銀河の征服。

 

 

 ともすれば大言壮語とも捉えられかねない目標ではあったが、彼と彼が創設したホーリーナイトメア社にはそれを成し遂げられる十全な準備と十分な能力があったのだ。

 

 手始めに、彼は生命という種の根源要素を改変する力の体系化に着手した。

 彼がそこで目指したモノとは、生物を遺伝的レベルに改造する技術をより飛躍させたことにより生じる、既存の種の改新と新な種の創造だった。

 

 そして彼の目論みは見事成功を果たし、やがては古代に栄え亡んだあの惑星ハルカンドラの科学技術にも引けを取らない程の、もはや魔法の域に足を踏み入れた超技術を得るに至った。

 残念ながら技術体系そのものの名称や、その技術自体の呼称は明らかにされていないが……一つだけハッキリしていることがある。

 

 その技術によって製造、いや生産された()達の名は『魔獣』と呼ばれていた。

 

 

 ホーリーナイトメア社は何千、何万、何十万と大量に生産した魔獣達によって瞬く間に周辺の惑星を侵略し、次々とその支配下においていった。

 

 彼の傘下に下った国や星や銀河の数は数知れない。

 彼に反旗を翻し儚くもその命を散らした者も、また数知れない。

 そして何十、何百、何千年と時が経つ間に、彼───ナイトメアは何時しか『闇の帝王』と呼ばれ畏れられるようになっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

    ◯ △ ◯ 

 

 

 

 

 

 ホーリーナイトメア社によって大量に創られた魔獣達には様々な種が存在している。

 また各々の種はそれぞれ異なる能力を保有しており、中には単独で国や惑星を滅ぼせる者もいた。

 

 巨大化する能力を持つ者。

 類い希なる剣技と剣才を持つ者

 金属すら容易く切断する爪を持つ者。

 大岩を軽々と持ち上げる程の膂力を持つ者。

 星を強制的に氷河期へ変えるほどの冷気を持つ者。

 

 「彼等の存在が無ければホーリーナイトメア社の征服範囲は今ほど広がっていなかっただろう」そう言われる程にホーリーナイトメア社にとって魔獣は欠かせない存在となっていた。

 事実、火や水や氷やガス等で構成された厳しい環境の惑星に暮らす住人達を素早く制圧・征服しえれたのも、多種多様な能力を持った彼等が大量に居たからこそ為しえたモノであるのは自明の理であっただろう。

 

 

 

 

 ────だが、ここでナイトメアが想定しなかったイレギュラーが起こることとなる。

 

 幾多もの能力を持ち、数多もの素質を持った魔獣達。

 そんな彼等を造っていくうちに“ある能力”を持った魔獣が生まれてしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

 そう、『正義の心』を持つ魔獣の誕生である。

 

 

 

 

 

 正義の心を持った魔獣達の行動は迅速かつ精確に行われた。 

 同じ意思を持つ者同士で徒党を組み、未だホーリーナイトメア社に抵抗していた国々と結託して徹底交戦を開始したのである。

 

 圧倒的な物量によるナイトメアの征服の前に、しかし彼等は臆せず挑み続け、戦況は均衡を保っていった。

 不思議なことに正義の心を持った魔獣達は、 “個としての質” が通常の魔獣と比べて異様に高かったのだ。

 

 自称か、はたまた他称かは分からないが、何時しか正義の心を持った魔獣である彼等は『星の戦士』と呼ばれ、そんな彼等が集った組織のことを『銀河戦士団』と人々は呼ぶようになっていた。

 

 

 

 時は流れ。

 ホーリーナイトメア社と銀河騎士団との戦いは依然として苛烈さを極め、両陣営ともに多くの犠牲を強いられていた。

 血で血を洗い、互いの屍で星々を埋めつくし、涙を流さんと見開いた瞳で敵を睨む、終わりの見えない血みどろの戦争。

 後に『銀河大戦』と言われる宇宙史上最大規模のこの大戦は、無力ながら天に縋ろうと伸ばす手首すら無惨に切り落とされる悲しき戦争だった。

 

 

 そんな膠着状態が続く最中、とある一人の剣士が伝説の武器を手に入れることで戦況は大きな転換を余儀なくされる。

 

 その剣の名は『宝剣ギャラクシア』

 

 光の種族フォロトンが鍛造した神秘の剣であり、ナイトメア本人をして宇宙征服の可否を握る鍵だと断じた至高の武器であった。

 

 

 

 

 

 

   ・ × ・

 

 

 

 

 

 抜刀時に雷を纏い刀身を形成する摩訶不思議な魔剣にして、相応しき所有者にのみ己が力を明け渡すと云われる宝剣ギャラクシア。

 そしてその伝説の剣の所有者として選ばれた剣士によって、長らく続く銀河大戦という名の天秤は漸く銀河戦士団の優勢へと傾くかと思われた。

 

 

 だが、現実はそれほど甘くはなかった。

 

 

 確かに宝剣ギャラクシアの性能は素晴らしかったのだろう。

 確かに伝説の剣に選ばれた剣士の才覚は目覚ましいものだったのだろう。

 確かに銀河戦士団の必死の抵抗には目を見張るものがあったのだろう。

 

 

 しかし忘れてはならない。 

 もはやホーリーナイトメア社の顔とも言える、強力な力を持った魔獣達。

 そんな様々な能力を持ち多種多様な特性を有する魔獣を、ホーリーナイトメア社は大量に生産することが可能だったのである。

 それこそ、()()()()()()()に。

 

 

 魔獣を1体倒されたなら、魔獣を10体作れば良い。

 魔獣を10体倒されたなら、魔獣を100体作れば良い。

 魔獣を100体倒されたなら、魔獣を1000体作れば良い。

 

 ホーリーナイトメア社がとった方法は策も戦略もへったくれもない、極めて原始的な人海戦術ではあったものの、戦力の補給が容易に出来ない銀河戦士団にとってそれは致命的とも言えるモノであった。

 

 倒せども倒せども一向に数が減らず、むしろ次第に苛烈さを増していく魔獣達の猛攻。

 銀河戦士団の団員はホーリーナイトメア社の攻撃の前に一人また一人と力尽きていく。

 

 

 

 ……そして、遂に崩壊が始まった。

 

 

 

 銀河戦士団の中でトップクラスの実力者である『戦士ジェクラ』、彼はナイトメアによって洗脳され味方を襲い出し貴い犠牲となった。

 

 諜報や暗殺において右に出るものはいないと言われ敵味方問わず恐れられていた『忍者ヤミカゲ』、彼は銀河戦士団を裏切りナイトメアの刺客となった。

 

 銀河戦士団で名実ともに最強と呼ばれた『パルシパル卿』、彼は当初はバラバラだった戦士団を纏めあげ皆を率いて戦ったリーダー『オーサー卿』と共に消息を断った。

 

 魔獣『キリサキン』による宝剣ギャラクシアの強奪。

 

 勇猛な女戦士『銀河戦士ガールード』の戦死。

 

 銀河戦士団きっての実力者『ノイスラート卿』と『パラガード卿』の行方不明。

 

 星の戦士の殺害に特化した魔獣『マンビース』の一斉投下による下級団員の大量虐殺。

 

 

 まさに阿鼻叫喚としか言えない惨状を前に、残された銀河戦士団の団員達は為す術がなかった。

 間もなくして銀河戦士団という組織は瓦解し、所属していた星の戦士達は全滅の一途を辿ることとなる。

 

 

 こうして弱き人々の希望の星『銀河戦士団』は“全滅”し、歴史の表舞台から姿を消していくのであった。

 

 

 

 

 ────およそ今から数万年前の話である。

 

 

 

 

 

 

   × ◇ ×

 

 

 

 

 

 

 

 時は遡り、現在。

 

 宇宙の片隅にある辺境の銀河の中に小さな影が浮かんでいた。

 それは星を模した形を持つ黄色い宇宙船だった。 

 そして丸みを帯びた5つの突起が特徴的なその宇宙船を良く見てみれば、中央にある透明な防護壁からピンク色の影が覗いていた。

 

 影は一体何者かのか。

 影がこれから何を為すのか。

 

 

 それはまた、後のお話。

 

 

 




作中でちょっとづつ小出しされ、語られていた銀河大戦の流れを大雑把に纏めたものです。

アニメ本編を見たことある方の中でもこのエピソードだけ聞いてピンとくる方は少ないかと思われますが、『戦士ジェクラ』という名前は正確に言えば誤りであり真の表記は『ナックルジョーの父』となっています。
あの公式本のプププ大全でも使われている名称なのでこれが正しい名前なのでしょうが、如何せん格好良く無いなという理由から海外ファンの間で呼ばれている(らしい)名称で本作品では呼称していきます。

また本作品はアニメ本編が100話もある超大作のため、自分の力だけでは作中の情報を全て集めきれないという理由から、幾つかはwikiやまとめサイトの情報を参考にしています 。
なおタグに独自解釈とあるように『ホーリナイトメア社の設立理由』や『マンビースの大量投下』など、原作では一切語られていない追加設定もちらほらあります。
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