想雅は見覚えのある部屋で目覚めた。
滝から落ちた時、目覚めた部屋だった。
「なんでここに来て3回も意識を失わないといけないんだ……」
いやほんと、こんなに意識を失ったのは初めてだ。っていうか意識を失う事態、初めてだった。十年前は知らんが……。
意識を失う確率が半端ない。意識失うグランプリだったらすごい成績を収めることもできるだろうか?
現実にそんなグランプリなんてありゃしない。あっても参加はしない、絶対だ。断言できる。
「しかし、あの力はなんだろう……。失った記憶?を見たら、なぜできると思ったんだ俺は……」
「まぁ後でチャラ神にでも聞いてみるか」
この力はチャラ神が知っているだろう。『アストラル界』でチャラ神は能力がどうたらこうたら言っていたな。そいつに聞くのが妥当だろう。しかし、気になることは、あれは本当に
「ん?」
想雅は右肩を触ってみた。
さっきから痛みが無い思っていたが、傷は治っていた。
腕を回してみるが、痛みがなく完全に完治したのだろう。
「いや、まてよ……。肩の傷が治っているということは、俺、何ヶ月意識を失っていたんだ」
肩の傷は大きく、しかも血の噴水も出たのだ。そう簡単に治るはずはない。つまりだ、俺はすごく眠っていたことになる。
ここに来て早くも、何ヶ月という歳月が尽きてしまったんだ。滝に落ちた時は1日で目覚めたらしいが、
障子が開き、見覚えのある少女が入ってきた。
「意識は戻ったみたいですね」
「あぁ、おかげさまで」
椛はほっとしたかのように胸をなでおろした。
「このたびは本当に申し訳ございません」
いきなり、土下座をした。
「な、なにが」
想雅は慌てた。いきなり土下座なんて俺なんかした!?
「あなた様に重傷を負わせたことです」
「え?それ?」
「え?」
想雅が言ったことに、獣耳っ娘は目を丸くした。
「それは、俺の意志でやったことだし、君が抱え込まなくても」
「し、しかし」
「謝罪する方は君じゃなくて俺の方なんだ」
「俺は君のことをてっきり俺を殺しに来たんじゃないかって、それで頭が真っ白になり、話も聞かずに逃げてしまった。本当に申し訳ない」
想雅は土下座をした。女の子に土下座されるなんて自分には性に合わない。
「あ、頭を上げてください」
椛は慌てた。謝っているのは私であって、あなたではないからだ。
「そのことは私もお詫び申し上げます。いきなり人前に出てきた格好が、片手に刀、もう片方は盾、あなたが殺されると思ってもしょうがないことです。刀をしまっておけば、滝に落ちることはありませんでした。誠に申し訳ありませんでした」
「いや、俺が……」
「いえ、私が……」
この状態は、もう謝り合戦にしか見えない光景だった。
ついに、
「な、何が楽しいのですか?」
自分が思っていることが、つい表情に出てしまった。
「わるい、わるい。こう言い合っても、終わりがなさそうに見えてな」
椛もわかったのか、笑みがこぼれてしまった。
「それも、そうですね」
なんだかいい雰囲気だ。
「そういえば、君の名前は?」
まだ名前を聞いていなかったはず。
「私は、犬走椛といいます。妖怪の山の警備担当の白狼天狗です」
椛か、いい名前だな。
「……!!!//////」
「ん?どうした?」
「何でもありません」
「いい名前だなんて……」
椛はそっぽを向いてしまった。俺、本当に何かやったのか。
「と、ところであなたのお名前は」
そうだった。まだこっちも名乗っていなかったな。
「俺は、天上想雅だ。この世界に来て右も左もわからない人間だ。よろしく」
「て、天上!?」
やはりその反応か……。
「いやそんな大層な苗字じゃないから、気にしないでくれ」
「は、はい」
この
「もうすぐで、朝食が出来上がりますので用意できたら、縁側を歩いて二つ目の扉の先に食事ができるところがありますので、そこでお待ち下さい」
「あぁ、すまないな」
朝食か、ここに来てからいろいろなことがあったからな、なんか懐かしく感じるような気がする。
ん?……朝食……。
「そういえば俺どれぐらい寝ていた」
すごく気になることだった。
「そうですね……。だいたい
エ? イッシュウカントフツカ?……
よ、よし聞き間違えかもしれないからもう一度訊いてみよう。
「そ、それって本当?」
「はい。本当です」
マジスカ……。
「化け物じゃねぇぇぇぇぇか!」
ちょ、待て、俺人間だぞ。純粋な人間だぞ。人種だけ違うだけの純粋な人間だぞ。
化け物でしたーーーってオチか……
笑えねぇぇぇぇぇよ!一週間と二日、俺人間やめちゃったのか!?
想雅がパニックになっていると椛から追加攻撃が、
「あと、肋骨だけじゃなく他の骨も折れていました」
ハ?ナンデスト……
人間をやめたレベルじゃねぇよほんと……
まさかその状態のまま、おっさんとやりあったのか……
人体の不思議こえぇぇぇぇぇ!
出版社が販売中止するレベルだろ!
自分で自分をツッコんでいたらすごく疲れた。
「か、顔色が悪いですが大丈夫ですか」
「だ、大丈夫だ問題ない……。用意してすぐ行くから」
椛は先に部屋を出て、その五分後、精神がすぐれないまま想雅は部屋を後にした。
しかし、想雅の心の中でこう決めた。
よしあのチャラ神、一回ぶん殴るか。